8月11日~20日

8月20日(5名)
小口泰與
枝豆や妻の繰り言聞き流す★★★
あけぼのの赤城の冷気小鳥來る★★★★
蜩や谷川岳の雲乱れ★★★
多田有花
百日紅今日も残暑は厳しそう★★★
秋の庭鉄砲百合の咲き残る★★★
もじゃもじゃに烏瓜咲く八月の朝★★★★

廣田洋一

秋暑し瓦礫積出す工事現場★★★★
検診の採血終へて秋暑し★★★
遊園地行列長き残暑かな★★★
古田敬二
なすび捥ぐほの温き温度持つ★★★
捥ぎし茄子ほの温かき温度もつ★★★★(正子添削)
滝の前水のしぶきと涼風と★★★
父めでし釜研ぎ上げて草を刈る(原句)★★★★
釜ではなく鎌?
父の遺愛の鎌を研いで、父がしたように草を刈る。鎌の刃の具合、柄の具合など、使い込んだものは違う。繁茂した草もサクサクと切れ味よく刈れる。手つきまで似ているような。(高橋正子)

桑本栄太郎

歩みゆく程に香りぬ稲の花★★★★
稲の花の匂いに気づくのは、田んぼのほとりを歩いているときなど。稲の花の匂いは、米の清らかさを思わせるような品のある匂い。歩いていく程によく香る。(高橋正子)
秋暑し鳴くもの黙の昼下がり★★★
ひぐらしや峰のはるかに茜空★★★
8月19日(4名)
小口泰與
迫り来る一ノ倉沢露の底★★★
流星や山家の瑠璃へ強き風★★★
朝顔の煽らるばかり山の風★★★★
山では思いもよらぬ強い風が吹くのだろう。朝顔は煽られてばかり。山の朝顔は山の雄々しさにも負けず、花びらを風にままにさせている。(高橋正子)
廣田洋一
ダウン着て寝ころび仰ぐ天の川★★★
サバンナの草々照らす天の川★★★★
サバンナの気候は大まかのことしか知らないが、熱帯で乾季と雨季に分かれ、年間平均気温は18℃。植生は疎林とイネ科の丈の高い植物が育っているということである。乾季にはこれらは落葉したり草原はきつね色に枯れるとのこと。何月ごろの季節かお教えいただきたい。
アフリカのサバンナの草々を照らす天の川。天の川や夜空の無数の星が照らす草々もまた無数。一茎、一茎が輝き、そよぐ広大な風景を一度見てみたいものだ。(高橋正子)
徳利の花火打ち上げ幸祈る★★★
多田有花
芋の葉の露を集めて転がしぬ★★★
アメリカ芙蓉華やかに咲く朝なり★★★
カンナ咲く小さき踏切の横に★★★

桑本栄太郎

残暑なるキバナコスモス青空に★★★★
日は天の高きところやカンナ燃ゆ★★★
ひぐらしや入日の嶺の黒き影★★★
8月18日(3名)
小口泰與
夕さりの田を飛び交わす秋燕★★★★
ポケットに飴玉一つ小鳥來る★★★
霧迅し赤城大沼駆けりくる★★★
多田有花
かなかなの声に始まる夜明けかな★★★
残暑まだ届かぬ朝早き街へ★★★
わが影を稲田へ投げかける朝日★★★★
朝も早い時間、稲田を歩くと、朝日が自分の影を大きく稲田へ投げかける。自分の影ながらその大きさと黒さに気づかされる。秋の朝日の澄んだ鮮やかさを思う。(高橋正子)

桑本栄太郎

威し銃早やもとどろく未明かな★★★★
つぎつぎに名乗り出でたるつく法師★★★
かなかなや想い出深き母の里★★★
8月17日(4名)
小口泰與
朝顔や今日は新聞休刊日★★★★
水切りに妹も混ざりし女郎花★★★
色鳥や撮りたる写真見せ合えり★★★
廣田洋一
隣の家と声かけ合ひて送り火焚く★★★
送り火の灰を片付け盆終わる★★★
曇り空風に乗り来る秋の蝶★★★★
日に目がくらむこともない、曇り空。8月、9月には蝶が盛んに飛び回り、風に誘われ、高く舞い上がり、やがて風に乗りきって飛んでゆく。風に高く上った蝶の姿には力がある。(高橋正子)
多田有花
蓮の花満開盆の境内に★★★★
蓮の花は夜明けに開き、昼頃にすぼむ。それだけに盆の境内の満開の蓮の花は、さながら、極楽浄土のような清らかさ。(高橋正子)
底紅や高く朝日に咲き匂う★★★
朝顔やまだ人影のまばらな街★★★

桑本栄太郎

底紅や青空透かし見上げ居り★★★
残暑とは斯くも厳しき暑さかな★★★
山の端のほのかに赤く秋入日★★★★
8月16日(4名)
廣田洋一
黄桃の色濃き玉を選びけり★★★
枝豆をお通しに出す女将さん★★★
枝豆をどんと盛り上げ生き生きと★★★★
小口泰與
あけぼのの浅間赤顔初嵐★★★
老犬と共に老いたり稲つるみ★★★
秋虹や湖へ竿出す妻と吾★★★★ 
多田有花
わらわらと降りて飛び立つ稲雀★★★
燕去り青空少し高くなる★★★★
燕が去ってしまった青空。声もなく、どこか寂しいが、青空は少し高くなった感じだ。「少し高く」に少しずつ移りゆく季節がよく捉えられている。(高橋正子)
おごそかに開き初めにし白芙蓉★★★
桑本栄太郎
残暑とは斯くも厳しき極みかな★★★
巣籠りのひと日暮れ行く残暑かな★★★
かなかなのかなの余韻の終いけり★★★★
8月15日(5名)
小口泰與
星飛ぶや赤城のすそ野黒黒と★★★★
訪ねきて馳走の風や秋の丘★★★
嬬恋の素風を浴びて駅に立つ★★★
廣田洋一
コロナとの戦い止まず終戦日★★★
終わつたねと母の一言終戦の日★★★
道端に朱を点じたり白粉花★★★★
桑本栄太郎
戦後とは吾の齢や終戦日★★★
傘雲の大山見上ぐ墓参かな★★★★
秋蝉のせっつき鳴きぬ昼下がり★★★
多田有花
ジョギングの人とあいさつ秋の朝★★★
小ぶりなれど皮まで甘き西瓜食ぶ★★★
集落を囲み高らか落し水★★★★
「落し水」は、種まきから145日目頃、出穂してから約30日後、稲刈りの約10日前を目安に、水を落とし て、稲を乾かすことにより登熟を完了させるために行う。
集落を巡って、どの田からも落し水の音が聞こえる。その水音に、秋の進みを思いしみじみとした心になったものだが、昨今は、残暑厳しい8月に落水期を迎え、むしろ水音が高らかで涼しくさえ思えるのだ。(高橋正子)
古田敬二
天気図の皆んな真っ赤に秋旱★★★
雲の峰飛騨山脈を越えて立つ★★★
初茜ホルバリング国道に(原句)
この句の「初茜」は紛らわしいです。
ホバリングして国道を秋茜★★★★(正子添削)
茜=茜草のこと。初茜=新年の季語。秋茜=赤蜻蛉のこと。
8月14日(4名)
小口泰與
嬬恋の畦川清し鰯雲★★★
狼の吠えたる岩や月明り★★★
指差すは神話の神や秋の星★★★★
秋の星は少しさびしいものの、夜空が澄んで、アンドロメダ、ぺガススなど神話に登場する見ごたえある星座が現れる。それらを指さし神話の神々に思いを馳せ、広がる夜空を楽しむことができる。(高橋正子)
多田有花
新盆の御霊のことを語る宵★★★
ぶらんこを漕げば起こりぬ秋の風★★★
桃を剥く力加減の難しさ★★★★
廣田洋一
日暮れ前一人迎火焚きにけり★★★
盆供養母の好みし干菓子かな★★★★
里芋の葉の裏帰り朝曇★★★
桑本栄太郎
打ち寄する白兎海岸盆の波★★★★
自粛とて望郷募る盆の海★★★
盆棚の茄子と胡瓜や乗物に★★★
8月13日(4名)
小口泰與
木漏れ日や蓮華升麻へ秋の蜂★★★
秋の色二つのレンズ使いわけ★★★
ボート漕ぐ二人の影や秋の声★★★★
廣田洋一
揚羽二頭つかず離れず舞ひにけり★★★★
プールにてマスクをしたる歩行者かな★★★
炎天下観客入れぬ高校野球★★★
多田有花
青空を見せつつ盆の雷雨来る★★★★
芋の葉を騒がせ雨がやってくる★★★★
盆のころは、雷雨も多くて、雨は急に降りだす。芋の葉を騒がす風が吹いたと思うと、大粒の雨が降り出す。雨の前触れがあきらかに分かるも面白い。一雨来て、涼しくなってもらいたいものだ。(高橋正子)
新盆の遺影に花を供えけり★★★

桑本栄太郎

自粛とは斯くも哀しき盆帰省★★★
ふるさとの遠くにありぬ盆の海★★★★
お供えと思い家にて桃を食ぶ★★★
8月12日(5名)
小口泰與
爽やかや妙義大の字風の中★★★★
林間の無言館へと秋没日★★★
秋晴やすそ野の長き赤城山★★★
廣田洋一
浴衣着て外湯を巡る夕べかな★★★
駅前の銀座華やぐ浴衣の娘★★★
くつろげる揃ひの色の宿浴衣★★★★
仲間との旅。旅着を着かえ宿浴衣に。湯に入ったものも、まだの者も。そろいの浴衣に着がえると、みんな同じでくつろげる。談笑の笑顔が見える。(高橋正子)
多田有花
マスクしてみな静かなる盆休み★★★
ぶらんこに乗りて見上げる秋の空★★★★
窓からの風の秋めく朝かな★★★

桑本栄太郎

律儀なる時季とし知りぬ法師蝉★★★
激雷の後降り来たる豪雨かな★★★
涼風のたちまち来たる雨の午後★★★★
古田敬二
クマゼミの路面に死して透きにけり★★★
飛騨川(ひだ)蛇行億年褶曲裾濡らし★★★★
コロナ禍や孫二人来て冷や麦喰う★★★
8月11日(3名)
小口泰與
清流の川上村の秋気かな★★★★
秀麗や蓮華升麻のふふみける★★★
身に染むや一ノ倉沢幽ノ沢★★★
廣田洋一
茹で上げし枝豆並ぶ総菜売場★★★
手作りの飛行機供へ魂祭★★★
離れ澄む娘を呼びて盆供養★★★★
桑本栄太郎
白粉の早やも咲き分け紅と白★★★★
白粉花は、紅と白。色が混じりやすくて、白に紅の斑ができていたりするが、純粋に白と紅に咲き分かれているのに遭うと、夕方の涼しいさが心地よいものになる。(高橋正子)
飛ぶものと鳴くもの黙や炎暑来る★★★
巣ごもりの一日終わりぬ極暑の日★★★自由な投句箱 (桑本栄太郎)2020-08-15 15:32:08★

自由な投句箱/8月1日~10日

※当季雑詠3句(夏の句・秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
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今日の秀句/8月1日~10日

8月10日(2句)
★新米や故郷の香り吹き出しぬ/廣田洋一
新米を炊く香りは、特別なもの。すぐそれと分かる。その香りは、故郷の家で嗅いだ香り。今新米を炊くとその香りが吹く出してくる。炊き上がる新米のご飯が待ち遠しい。(髙橋正子)
★思い出の校舎今なく雲の峰/古田敬二
幼いころ通った校舎が過疎化の影響なのか、なくなってしまった。その跡に立つと、空いた空に入道雲が湧き上がっている。せつなさもあるが、湧き上がる雲に元気づけられる。(高橋正子)
8月9日(1句)
★歩みゆく程にきらめく草の露/桑本栄太郎
「歩みゆく程にきらめく」に実感がある。歩いてゆくと、ゆくほどに露がおびただしくなる。朝日があたると、増えていく露がきらめく。きよらかなで、目が澄んでくるようだ。(高橋正子)
8月8日(1句)
★初秋や押印確と申請書/多田有花
初秋の訪れとともに、なにか新しいことをはじめるためか、申請書を書く。朱色の押印がしっかりと押されて目にさやか。初秋の爽やかさがいい。(高橋正子)
8月7日(2句)
★立秋や庭草揺らす風のあり/廣田洋一
秋立つ日、あきらかに秋の風が吹き、風に草々がやさしく揺る。その姿に心和む。(高橋正子)
★山の端の空ももいろに今朝の秋/多田有花
「ももいろ」という言葉を最近めったに聞かなくなったが、語感がやさしくほんのりしている。今朝の秋にこそ感じる朝空の「ももいろ」が新鮮。(高橋正子)
8月6日(3句)
★夕虹や二番ホームに列車待つ/小口泰與
夕虹と一番ホームではなく二番ホームの取り合わせが絶妙。控えめでありながら、
心の思いは自由なのだろう、列車を待っている。(高橋正子)
★思ひ出す赤と黒の絵広島忌/廣田洋一
広島の原爆を絵で描くと、その色は赤と黒を使わざるを得ない。放射能を含んだ黒い雨や焦げたもの、火の赤。おそろしい光景が、赤と黒で象徴的に思い出される。(高橋正子)
★拭きあげし窓のむこうの晩夏光/多田有花
晩夏の光というのは、ふつう、夏の疲れで黄ばんだような光線が、やるせなさを誘うもの。でも、この句は、そうではなく、きれいに拭き上げたガラス窓の向こうに、きらっとする透明な光線なのだ。そこが生き生きとして、新しい。(高橋正子)
8月5日(1句)
★登山靴履きて格好整ふる/小口泰與
登山するときの格好は、山行き用のシャツ、帽子、ベスト、ズボンなどそれ登山以外のときも着用するかもしれないが、さすが登山靴はそうではあるまい。最後に登山靴を履いて、登山の格好が整う。自画像が見えて面白い。(高橋正子)
8月4日(2句)
★夕風に添いて鳴き居り螽斯/桑本栄太郎
「螽斯」は「きりぎりす」と読む。草むらでチョンギースと鳴く。「夕風に添いて」がいい。さびしさのにも優しさがあって、きりぎりすの声にふさわしい。(高橋正子)
★朝蝉の空を鳴らして飛び立てり/川名ますみ
朝の蝉が思い立ったように飛び立つとき、空を鳴らすかのように、翅を打つのだろうか、カタカタというように音を立てて飛び立つ。鋭い感覚の句。(高橋正子)
8月3日(3句)
★赤赤と火のほとばしる香魚かな/小口泰與
香魚は鮎のこと。焼いた鮎を食べるとき、川藻を食べているせいか、ふっといい匂いがする。炭火で焼かれるのであろう。赤々と火がほとばしるのである。あつあつが旨そうな香魚。(高橋正子)
★緑陰に広げて読みし恋物語/廣田洋一
緑陰での読書。ビジネス書や難解な書ではなく、恋物語を楽しむ読書が涼しそうでいい。肩の力が抜けて、余裕があって、それになんとなく高等で。(高橋正子)
★梅雨明けや妻の顔も晴れやかに/古田敬二
梅雨明けは誰しもが望むもの。一番は洗濯物が乾かなくて困っていた主婦かもしれない。主婦である妻の顔が晴れ晴れしているのは、家族も嬉しいものだ。(高橋正子)
8月2日(2句)
★梅雨明けや浮かべる雲の白きこと/廣田洋一
梅雨明けの嬉しさが、「雲の白きこと」に飾らず素直に表現されてすがすがしい。(高橋正子)
★見上げれば青空遠き木下闇/桑本栄太郎
木下闇は暗い。けれどもそこから青空を見上げれば、青空は果てしなく遠い。その感覚がいい。(高橋正子)
8月1日(1句)
★白南風や朝の散歩は木蔭行く/桑本栄太郎
梅雨が明けてからは吹く南風を白南風という。梅雨の間に吹いた黒南風の語感はじっとりした感じだが、白南風は明るい。長い梅雨が明け、気分爽快となった朝は、涼しい木陰を選んで散歩することになる。(高橋正子)

8月1日~10日

8月10日(5名)
小口泰與
秋澄むや渓流の魚岩の間に★★★★
雲流る鬼押し出しの秋気澄む★★★
次次に波が波つぎ利根の秋★★★
廣田洋一
新米や故郷の香り吹き出しぬ★★★★
新米を炊く香りは、特別なもの。すぐそれと分かる。その香りは、故郷の家で嗅いだ香り。今新米を炊くとその香りが吹く出してくる。炊き上がる新米のご飯が待ち遠しい。(髙橋正子)
街角に明るい色気酔芙蓉★★★
残照に花を閉じたる芙蓉かな★★★
多田有花
初秋のJazzの流れる部屋にいる★★★★
どこへも出かけぬ海の日も山の日も★★★
窓にさす午後の日差しの秋めける★★★

桑本栄太郎

じじじじと蝉も夢見や夏の夜★★★
秋暁の三角屋根やすべり台★★★
顎に掛くだけのマスクや夏の道★★★

古田敬二

白い花ばかりの狭庭梅雨明ける★★★
思い出の校舎今なく雲の峰★★★★
幼いころ通った校舎が過疎化の影響なのか、なくなってしまった。その跡に立つと、空いた空に入道雲が湧き上がっている。せつなさもあるが、湧き上がる雲に元気づけられる。(高橋正子)
広島忌西に向かいて黙祷す★★★
8月9日(3名)
廣田洋一
四半分の西瓜並びて瑞々し★★★
冷やされし小玉西瓜を子と分ける★★★
新涼の風の渡れる街の川★★★★
小口泰與
秋暁や渓流に日の差し来たる★★★
秋の朝缶ドロップをリックへと★★★
長き夜や史記全集を手元にと★★★★
桑本栄太郎
さやさやと夜気の入り来る夜半の秋★★★
歩みゆく程にきらめく草の露★★★★
「歩みゆく程にきらめく」に実感がある。歩いてゆくと、ゆくほどに露がおびただしくなる。朝日があたると、増えていく露がきらめく。きよらかなで、目が澄んでくるようだ。(高橋正子)
唖蝉の枝より枝へ朝日かな★★★
8月8日(4名)
廣田洋一
シニア向け体操終えて新米炊く★★★
兄弟三人恙なきかな今年米★★★★
新涼の風を通せり腕上げて★★★
小口泰與
桔梗やすぱっと辞めし大企業★★★
一段と入荷の菓子の秋めきぬ★★★★
新涼やボートより見る榛名富士★★★
多田有花
幻のオリンピック済む八月★★★
秋初め今日は一日断食を★★★
初秋や押印確と申請書★★★★
初秋の訪れとともに、なにか新しいことをはじめるためか、申請書を書く。朱色の押印がしっかりと押されて目にさやか。初秋の爽やかさがいい。(高橋正子)

桑本栄太郎

新涼の夜気の入来る窓辺かな★★★★
文月や夕ともなれば風の出ず★★★
「文月や夕ともなれば風の出(い)づ」ではないでしょうか。
赤とんぼ想い出遠き母の里★★★
8月7日(4名)
廣田洋一
立秋や庭草揺らす風のあり★★★★
秋立つ日、あきらかに秋の風が吹き、風に草々がやさしく揺る。その姿に心和む。(高橋正子)
カンナ咲く上り電車を見送りつ
「見送りつ」の「つ」は助動詞ですが、意味は完了「・・(し)た」で、意志をもって行った場合に使います。
カンナ咲き上り電車を見送りつ(添削①)(作者が見送った)
カンナ咲く上り電車を見送りつつ(添削②)(カンナが見送る景色の場合)
黄カンナの群がり咲きし団地かな
「咲し」の「し」は、過去をあらわす助動詞「き」の連体形です。「(過去に)群がり咲いた団地」
黄カンナの群がり咲ける団地かな(添削)
この句の場合は、過去の助動詞「き」ではなく完了・存続を表す「り」を使うとよいと思います。「り」は、4段活用語の場合は、已然形に接続しますから、「咲けり」となりますが、続いて「団地」に接続するので「り」を連体形にしなくてはいけません。従って「咲ける」となります。
小口泰與
矢狭間より夕日沈みて夏の果★★★
落鮎や利根の川音にぎにぎし★★★
書肆の灯に送らる家路夜長かな★★★★
多田有花
山の端の空ももいろに今朝の秋★★★★
「ももいろ」という言葉を最近めったに聞かなくなったが、語感がやさしくほんのりしている。今朝の秋にこそ感じる朝空の「ももいろ」が新鮮。(高橋正子)
秋来ぬと夜明けの窓を開け放つ★★★
立秋のBGMはハワイアン★★★

桑本栄太郎

巡りゆく池の静寂や今朝の秋★★★
路地曲がり出会いがしらや鬼やんま★★★★
想い出の歌となりたるあきつかな★★★
8月6日(4名)
小口泰與
里住みの裏は掃かずや夏の果★★★
空蝉や句評賜る事も無し★★★
夕虹や二番ホームに列車待つ★★★★
夕虹と一番ホームではなく二番ホームの取り合わせが絶妙。控えめでありながら、
心の思いは自由なのだろう、列車を待っている。(高橋正子)
廣田洋一
思ひ出す赤と黒の絵広島忌★★★★
広島の原爆を絵で描くと、その色は赤と黒を使わざるを得ない。放射能を含んだ黒い雨や焦げたもの、火の赤。おそろしい光景が、赤と黒で象徴的に思い出される。(高橋正子)
カナダにて鎮魂の鐘原爆忌★★★
真夏日やゴーヤの緑二階まで★★★
多田有花
拭きあげし窓のむこうの晩夏光★★★★
晩夏の光というのは、ふつう、夏の疲れで黄ばんだような光線が、やるせなさを誘うもの。でも、この句は、そうではなく、きれいに拭き上げたガラス窓の向こうに、きらっとする透明な光線なのだ。そこが生き生きとして、新しい。(高橋正子)
成すべくを着々と成し夏の果★★★
朝涼に熱きブラックコーヒーを★★★

桑本栄太郎

式典のいつも炎暑や広島忌★★★
想い人の今日逝きにけり芙蓉咲く★★★
朝涼のキバナコスモス早や風に★★★★
8月5日(4名)
小口泰與
放下して綿菅の如風の中★★★
波寄せて青葦原の蘇生かな★★★
登山靴履きて格好整ふる★★★★
登山するときの格好は、山行き用のシャツ、帽子、ベスト、ズボンなどそれ登山以外のときも着用するかもしれないが、さすが登山靴はそうではあるまい。最後に登山靴を履いて、登山の格好が整う。自画像が見えて面白い。(高橋正子)
廣田洋一
午前九時仕事と共に猛暑開始★★★
外に一歩眼鏡の曇る溽暑かな★★★
吾が時の来たるとばかり極暑かな★★★★
多田有花
田を渡る風に吹かれて向日葵よ★★★★
秋近きことを思いし朝の月★★★★
来る人を迎えて立てり紅蜀葵★★★

桑本栄太郎

あぢさゐの収斂来たる木蔭かな★★★★
炎天の地の塩噴きぬ草田男忌★★★
ひそやかに妻の湯浴みや夏の夕★★★

8月4日(5名)
小口泰與
花合歓や入日の浅間望みける★★★★
老鶯や野路へ散歩の歩を伸ばす★★★
対岸へ水切り石や夏の果★★★
廣田洋一
八月に咲きたる百合や白々と★★★
峰雲へクレーン高く伸びにけり★★★
峰雲やくっきり映すフィヨルド★★★★
多田有花
グラジオラス花の重さに傾けり★★★
街灯の色の褪せゆく夏未明★★★
軒先に子らの遊びぬ夏の朝(原句)
軒先に子らの遊べり夏の朝★★★★(正子添削)

桑本栄太郎

底紅や民は悪気の無けれども★★★
炎天の地の塩噴きぬ草田男忌★★★
夕風に添いて鳴き居り螽斯★★★★
螽斯はきりぎりすと読む。草むらでチョンギースと鳴く。「夕風に添いて」がいい。さびしさのにも優しさがあって、きりぎりすの声にふさわしい。(高橋正子)
川名ますみ
山の端や梅雨の日暮れの穏やかに★★★
朝蝉の空を鳴らして飛び立てり★★★★
朝の蝉が思い立ったように飛び立つとき、空を鳴らすかのように、翅を打つのだろうか、カタカタというように音を立てて飛び立つ。鋭い感覚の句。(高橋正子)
朝顔のつぼみの先に明日の色★★★★
8月3日(4名)
小口泰與
念ずればそよと揺れけり虞美人草★★★
赤赤と火のほとばしる香魚かな★★★★
香魚は鮎のこと。焼いた鮎を食べるとき、川藻を食べているせいか、ふっといい匂いがする。炭火で焼かれるのであろう。赤々と火がほとばしるのである。あつあつが旨そうな香魚。(高橋正子)
裏庭の水車の音や麻暖簾★★★
廣田洋一
緑陰に広げて読みし恋物語★★★★
緑陰での読書。ビジネス書や難解な書ではなく、恋物語を楽しむ読書が涼しそうでいい。肩の力が抜けて、余裕があって、それになんとなく高等で。(高橋正子)
緑陰に置かれし遊具子らの声★★★
緑陰に一服したる喫茶店★★★
桑本栄太郎
鈴なりの枝を想いぬ蝉しぐれ★★★
唖蝉の居所の移動やぶち当たり★★★
炎昼の鳴くもの黙に午後三時★★★
古田敬二
鷺草の群舞の構えに咲きそろう★★★
天を指す芝生に一本ねじり花★★★
梅雨明けや妻の顔も晴れやかに★★★★
梅雨明けは誰しもが望むもの。一番は洗濯物が乾かなくて困っていた主婦かもしれない。主婦である妻の顔が晴れ晴れしているのは、家族も嬉しいものだ。(高橋正子)
8月2日(3名)
小口泰與
葭切や沼も眠たき時あらむ★★★★
夕まずめ簗誇りして鮎数多★★★
縄張の岩を舐れる香魚かな★★★
廣田洋一
梅雨明けや浮かべる雲の白きこと★★★★
梅雨明けの嬉しさが、「雲の白きこと」に飾らず素直に表現されてすがすがしい。(高橋正子)
蝶のごとひらひら舞へる病葉かな★★★
病葉に残れる緑まだらなり★★★
桑本栄太郎
見上げれば青空遠き木下闇★★★★
木下闇は暗い。けれどもそこから青空を見上げれば、青空は果てしなく遠い。その感覚がいい。(高橋正子)
朝涼のキャッチボールの親子かな★★★
大復活の遂げる力士や名古屋場所★★★
8月1日(3名)
廣田洋一
小蠅ども五月蠅く飛べる厨かな★★★
夏草に小さき花の灯りけり★★★
刈り取りし夏草の山匂ひけり★★★★
小口泰與
花合歓や水琴窟の音の淡し★★★★
高嶺より下山の人や一夜酒★★★
草刈りや手拭ねじり一休み★★★
桑本栄太郎
八月やコロナ災禍と共に居り★★★
白南風や朝の散歩は木蔭行く★★★★
梅雨が明けてからは吹く南風を白南風という。梅雨の間に吹いた黒南風の語感はじっとりした感じだが、白南風は明るい。長い梅雨が明け、気分爽快となった朝は、
涼しい木陰を選んで散歩することになる。(高橋正子)
青空にうす雲浮かぶ晩夏かな★★★

自由な投句箱/7月21日~31日

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今日の秀句/7月21日~31日

7月31日(1句)
★梅雨明けや真白き雲の立ち上がる/多田有花
「真白き」「立ち上がる」に、梅雨明けの晴れ晴れした気持ちが読み取れる。何よりも雲が真白であるのがいい。伸びあがるように、「立ち上がる」のがいい。(高橋正子)
7月30日(2句)
★一文字の「氷」の旗やかき氷/廣田洋一
かき氷を売る店には、必ずといってよいほど「氷」と一文字書いた旗が吊るされている。一目見て、その昔ながらの旗は、「氷」一文字ながら、いろんなシロップのかかったかき氷を思い起こさせる。「氷」の旗がイメージさせるものが力強い。(高橋正子)
★熊蝉の声に囲まれ洗濯を/多田有花
朝から熊蝉がシャンシャンシャンシャン鳴きたてる。熊蝉に囃したてながら洗濯をするが暑さの中、水を使う楽しさがある。(高橋正子)
7月29日(1句)
★新しきすだれ越しなる西日さす/桑本栄太郎
西日を避けるために新しいすだれを垂らした。西日を遮るためながら、すだれをもれる西日のなんと新しく新鮮なこと。新しいすだれば、西日までも新しくした。(髙橋正子)
7月28日(1句)
★朝涼や嬬恋村の広き畑/小口泰與
嬬恋村は夏はキャベツなどの高原野菜が一面に育ち、目にも涼しさを誘う景色が広がる。広い畑は、朝の涼しさに満ちている。(高橋正子)
7月27日(1句)
★送電線の峰から谷へ梅雨の山/桑本栄太郎
送電線が峰から谷へ渡っている光景は、よく見かける。それが感興をもって詠まれたのは、梅雨の山の緑濃き重量感。思えば男性的な風景だ。(高橋正子)
7月26日(1句)
★滝の音杉大木の向こうから/古田敬二
杉が大木となるまでには、数十年、あるいは百年とかかるだろうが、大木となり風格を備えた杉の向こうのほうから瀧が落ちる音が聞こえる。山の冷気、滝の冷気に触れたような句。(高橋正子)
7月25日(1句)
★雨に濡れ幹つやつやと百日紅/廣田洋一
暑い日にもかがやかに花を咲かせ続ける百日紅は、雨の日には、そのつるつるした幹がつやつやとして印象に残る。雨の日の百日紅の良さ。(高橋正子)
7月24日(1句)
★河童忌の溝川速し畦の草/桑本栄太郎
河童忌は、7月24日の芥川龍之介の命日。龍之介が河童の絵を好んで描いたり、短編小説に「河童」があるところから、「河童忌」と呼ばれるようになった。
河童は水に棲む架空の動物。畦の草を押し流さんばかりに溝川が急ぎ流れている。溝川ながら、泳ぎの得意な河童も流されそう。溝川の様子に河童忌を重ねた。(高橋正子)
7月23日(2句)
★昼顔や工事現場を明るくす/廣田洋一
工事現場には、ショベルカー、コンクリート、金属パイプなど、荒っぽい殺風景な景色なのだが、あわいピンク色の昼顔が周りに咲くと、工事現場は明るくなる。人のこころまでがやさしくなりそうだ。(高橋正子)
★落蝉の仰のけなりぬ翅が透き/桑本栄太郎
落蝉の躯が仰向けになって転がっている。哀れを誘う落蝉であるが、翅が透き通っているのが、命がかよっているようできれいなのだ。(高橋正子)
7月22日(1句)
★過ぎし日の旅の思ひ出団扇風/廣田洋一
団扇をつかいゆっくりと風を起こしていると、過ぎし日の旅の思い出がよみがえって来る。ゆるやかに過ぎる時間こそが、思い出を蘇らせてくれるのだろう。(高橋正子)
7月21日(1句)
★それぞれの生きる距離とや炎暑来る/桑本栄太郎
新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、人との距離をとることが推奨されている。そうなれば、これまで集団で行動しやすかった日本人も、それぞれが、それぞれの生き方をするようになるのではと思われる。炎暑のときは、人それぞれに合った生き方が大事なのではなかろうか。(高橋正子)

7月21日~31日

7月31日(4名)
廣田洋一
生垣に殻を残して蝉の声★★★
人気無き公園に降る蝉時雨★★★
飛び来たり鳴き声出さぬ蝉一匹★★★★
小口泰與
抜きんでて風の中なるダリアかな★★★★
国道へ迷い出づるや蟇蛙★★★
ダリア咲き江戸より続く和菓子店★★★
多田有花
昼過ぎの白雨明るく降りてやみ★★★
熊蝉に交じりサイレン聞こえ来る★★★
梅雨明けや真白き雲の立ち上がる★★★★
「真白き」「立ち上がる」に、梅雨明けの晴れ晴れした気持ちが読み取れる。何よりも雲が真白であるのがいい。伸びあがるように、「立ち上がる」のがいい。(高橋正子)
桑本栄太郎
被うもの天に無くなり梅雨明くる★★★
鳴くものの空より降りぬ夏木立★★★
宵闇の木々の影なり七月尽★★★★
7月30日(5名)
小口泰與
行く夏の夕べの風に思うべし★★★
黒揚羽隠り沼越えてかけり来る★★★
鳰の海を治めて見事雲の峰★★★
廣田洋一
「氷」一文字の旗かき氷(原句)
一文字の「氷」の旗やかき氷★★★★(正子添削)
かき氷を売る店には、必ずといってよいほど「氷」と一文字書いた旗が吊るされている。一目見て、その昔ながらの旗は、「氷」一文字ながら、いろんなシロップのかかったかき氷を思い起こさせる。「氷」の旗がイメージさせるものが力強い。(高橋正子)
懐かしき宇治金時てふかき氷★★★
長き列順番待ちのかき氷★★★
多田有花
夏の朝霧立ち昇る雨あがり★★★
熊蝉の声に囲まれ洗濯を★★★★
朝から熊蝉がシャンシャンシャンシャン鳴きたてる。熊蝉に囃したてながら洗濯をするが暑さの中、水を使う楽しさがある。(高橋正子)
夏霧の彼方に朝日昇り来る★★★

古田敬二

川向う連結列車麦の秋★★★★
守宮来るコロナ禍厨のガラス戸に★★★
待ちわびし守宮来たれり厨窓★★★

桑本栄太郎

遠雷や今日は降らざる夕茜★★★★
峰の端のすだれ越しなる入日かな★★★
夕映えや雲の茜の西の空★★★
7月29日(4名)
古田敬二
故郷の山高さ変わらず雲の峰★★★★
友逝けり夏の白花に埋もれて★★★
薄暗き木陰に一つ茗荷の子★★★

小口泰與

杣道のはずれに枯れし独活の花★★★
七月やゴッホの黄のワンピース★★★
渓流の匂える流れ鮎遡上★★★★
廣田洋一
草刈るや並木の根本黒々と★★★
草刈るや草の匂ひをまき散らし★★★★
校庭の草の刈られし休校日★★★
桑本栄太郎
新しきすだれ越しなる西日さす★★★★
西日を避けるために新しいすだれを垂らした。西日を遮るためながら、すだれをもれる西日のなんと新しく新鮮なこと。新しいすだれば、西日までも新しくした。(髙橋正子)
干し物を慌て取り込む梅雨の雷★★★
かなかなのたそがれ迫る茜かな★★★
7月28日(4名)
小口泰與
朝涼や嬬恋村の広き畑★★★★
嬬恋村は夏はキャベツなどの高原野菜が一面に育ち、目にも涼しさを誘う景色が広がる。広い畑は、朝の涼しさに満ちている。(高橋正子)
梔子の暁の庭おば匂わせり★★★
三山を従え凛凛し雲の峰★★★
廣田洋一
双葉から本葉となりぬ夏の朝★★★
大鯉の二匹寄り添ふ夏の朝★★★★
冷やし中華添えられし具を味わへり★★★
桑本栄太郎
でで虫の急ぎ足とや雨催い★★★
アベリアのうす紫や溽暑来る★★★
夕暮れのうすき茜やあぶら蝉(原句)
夕空のうすき茜やあぶら蝉★★★★(正子添削)
7月27日(4名)
小口泰與
塩焼きの鮎頬張るや川の風★★★★
忽然と地震に起こさる夏の暁★★★
冷酒や夕日飲み込む潦★★★
廣田洋一
メロン一つ親子二人に余りけり★★★
デザートはメロンにしたる夕餉かな★★★
生ハムの紅映ゆるメロンかな★★★★
桑本栄太郎
雨止みて涼風来たる窓辺かな★★★
コロナ憂し梅雨の長きも更に憂し★★★
送電線の峰から谷へ梅雨の山★★★★
送電線が峰から谷へ渡っている光景は、よく見かける。それが感興をもって詠まれたのは、梅雨の山の緑濃き重量感。思えば男性的な風景だ。(高橋正子)

古田敬二

思い出の夏草茂るダムサイト★★★★
街で見ぬ高き樹木やねむの花★★★
億年の褶曲見せて飛騨川(ひだ)流る★★★
7月26日(4名)
小口泰與
賑わしや蜘蛛の囲光る雨しずく★★★★
公園の遊具周りや蟻の列★★★
遠雷をかこちながらも憎からず★★★
廣田洋一
冷奴独りの酒によく似合ふ★★★★
娘よりラインの電話冷奴★★★
雨音を聞きつつ昼餉冷奴★★★
桑本栄太郎
サングラス掛けて尚濃き木蔭かな★★★★
夕暮れて雨の上がりぬ油蝉★★★
雨上がり早やも鳴き出づきりぎりす★★★
古田敬二
滝の音杉大木の向こうから★★★★
杉が大木となるまでには、数十年、あるいは百年とかかるだろうが、大木となり風格を備えた杉の向こうのほうから瀧が落ちる音が聞こえる。山の冷気、滝の冷気に触れたような句。(高橋正子)
植林を縫って聞こえる滝の音★★★
故郷や噴煙のごと雲の峰★★★
7月25日(4名)
廣田洋一
雨に濡れ幹つやつやと百日紅★★★★
暑い日にもかがやかに花を咲かせ続ける百日紅は、雨の日には、そのつるつるした幹がつやつやとして印象に残る。雨の日の百日紅の良さ。(高橋正子)
人気無き公園の彩百日紅★★★
雨止みて枝に絡まる杉落葉★★★
小口泰與
似合わしや赤城従え雲の峰★★★
旧盆へ倉庫の菓子の賑々し★★★★
雷電や微動だにせ鬼瓦★★★
桑本栄太郎
目覚むれどそのまま眠る夜立かな★★★
降り足らぬ雲のとどまり梅雨はげし★★★★
昼寝より目覚めて欲しき甘いもの★★★
多田有花
底抜けに明るきヨーデル聴く土用★★★★
鬼百合が入母屋造りの庭に咲く★★★★
梅雨明けを待つひまわりに雨続く★★★
7月24日(3名)
小口泰與
老犬にならう子犬や風薫る★★★
老鶯や茶請けの五家宝置かれおり★★★
隠り沼に何の水輪や時鳥★★★★
廣田洋一
俯きて紫光る茄子の花★★★★
下向きて雨浴びて居り茄子の花★★★
茄子一つ採られぬままに萎みをり★★★
桑本栄太郎
河童忌の溝川早し畦の草★★★★
河童忌は、7月24日の芥川龍之介の命日。龍之介が河童の絵を好んで描いたり、短編小説に「河童」があるところから、「河童忌」と呼ばれるようになった。
河童は水に棲む架空の動物。畦の草を押し流さんばかりに溝川が急ぎ流れている。溝川ながら、泳ぎの得意な河童も流されそう。溝川の様子に河童忌を重ねた。(高橋正子)
空蝉のものを語りぬ遠眼★★★
漁り火の水平線や梅雨の闇★★★★
7月23日(3名)
小口泰與
釣糸の絡みし難儀香魚かな★★★
蝦蟇鳴いて溶岩原忽と地震起こる★★★★
塩焼きと味噌が好みや鮎料理★★★
廣田洋一
紫陽花や咲き残りたる濃紫★★★
川風に波打ちたるや玉蜀黍の花★★★
昼顔や工事現場を明るくす★★★★
工事現場には、ショベルカー、コンクリート、金属パイプなど、荒っぽい殺風景な景色なのだが、あわいピンク色の昼顔が周りに咲くと、工事現場は明るくなる。人のこころまでがやさしくなりそうだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
京なれや町家の軒に炎暑来る★★★
落蝉の仰のけなりぬ透き通る(原句)
落蝉のすべてが透き通っているのではないでしょうから、原句では、無理があります。
落蝉の仰のけなりぬ翅が透き★★★★(正子添削)
落蝉の躯が仰向けになって転がっている。哀れを誘う落蝉であるが、翅が透き通っているのが、命がかよっているようできれいなのだ。(高橋正子)
風涼しジェルのハニカムシート来る★★★
7月22日(3名)
小口泰與
習わしの昼寝や外は粉ぬか雨★★★
鮎の事鮎にならえと老釣師★★★
雨続き天変地異の氷雨かな★★★
廣田洋一
国産の鰻を奢る土用かな★★★
梅雨前線張り出せしまま土用入★★★
過ぎし日の旅の思ひ出団扇風★★★★
団扇をつかいゆっくりと風を起こしていると、過ぎし日の旅の思い出がよみがえって来る。ゆるやかに過ぎる時間こそが、思い出を蘇らせてくれるのだろう。(高橋正子)
多田有花
よく晴れた大暑の朝の白い雲★★★★
つややかに葉陰に育つ青柿よ★★★
開け放つ窓に入り初む南風★★★
7月21日(4名)
小口泰與
何ゆえにひと夜咲かな女王花★★★
沼へ影なべて映すや夏茜★★★★
浴衣きて岸辺に立てり灯のあかり★★★
廣田洋一
避暑地にて組みたるペアのテニスかな★★★
遺影にも声を掛けたり避暑の旅★★★★
赤信号待つ間に見上ぐ百日紅★★★
多田有花
夏の暁鴉の声に始まりぬ★★★
一斉に口ばかりとなる燕の子★★★
梅雨の川晴れれば青き空映す★★★★

桑本栄太郎
それぞれの生きる距離とや炎暑来る★★★★

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、人との距離をとることが推奨されている。そうなれば、これまで集団で行動しやすかった日本人も、それぞれが、それぞれの生き方をするようになるのではと思われる。炎暑のときは、人それぞれに合った生き方が大事なのではなかろうか。(高橋正子)
音ばかりつづき降らずやはたた神★★★
かなかなの入日茜の遠嶺かな★★★

夕空のうすき茜やあぶら蝉★★★★(

自由な投句箱/7月11日~20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆花冠発行所◆
◆月例ネット句会
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/7月11日~20日

7月20日(1句)
★からからと鳥除け風車青トマト/多田有花
トマト畑に鴉などのトマトを食べに来る鳥を寄せ付けないように、風車がとりつけられている。おおよそプラスティックでできているものなのであろう。風に「からから」と回っている。青トマトと、からからなる軽やかな風車が楽しいそうだ。(高橋正子)
7月19日(1句)
★かなかなの早やも哀しき茜かな/桑本栄太郎
蝉の鳴き出す順番からいえば、かなかなは一番遅れて鳴き始める。夏も盛りをすぎたころ盛んに鳴くが、早も鳴き出したかなかながいる。夕焼けにカナカナカナと鳴いてはやも「哀しき」思いをかきたてる。(高橋正子)
7月18日(1句)
★甲斐犬と走る吾子をり雲の峰/小口泰與
甲斐犬について調べると、大まかには、甲斐の山岳地方で育てられ、中型犬で、猟に向き、気性が強く、一人の主人につく習性があるということだ。雲の峰の下で、元気いっぱい甲斐犬と走る少年の姿が、すがすがしい。イメージがくっきりと浮かぶ。(高橋正子)
7月17日(2句)
★背泳ぎや水中眼鏡外したり/廣田洋一
水中眼鏡をして水の中を楽しんでいたが、飽き疲れたのだろうか、背泳ぎの姿勢をとって、水中眼鏡をはずした。顔に太陽を浴びながら、自在に泳ぐ人の姿。(高橋正子)
 
★茅舎忌の入日の空に日照雨かな/桑本栄太郎
川端茅舎の忌日は、7月17日。茅舎は、画家川端龍子の異母弟で、写生の目に徹しているが、のち病を得て、「茅舎浄土」と呼ばれるキリスト教や仏教を背景にした句を生むようになった。その句境を思いやっての句。「入日の日照り雨」は、茅舎浄土の景色。(高橋正子)
7月16日(2句)
★水遊び門前に水溢れさせ/廣田洋一
水遊びの子らが無邪気に門前に水を溢れさせて遊んでいる。通りすがりの人も巻き込みかねない元気さが想像できて、楽しい句だ。(高橋正子)
★日焼けせる腕運転席より出る/多田有花
面白い光景。運転席の窓から、運転手の日焼けした腕だけが突き出ている。日焼けした逞しい腕におおよそ運転手が想像できる。(高橋正子)
7月15日(1句)
★凌霄花砂場に遊ぶ子に落ちぬ/廣田洋一
砂場近くに咲き上っている凌霄花が、花を落とすところは子供たちが遊ぶ砂場。
子どもたちに散華のように降って、のどかな光景。砂場も凌霄花も明るいのがいい。(高橋正子)
7月14日(1句)
★戦争のあと静かなる滴かな/小口泰與
戦争のあとの澄み深むような静寂が、「滴」に象徴されている。その思いを別の言葉に言い換えようすれば、どこか違ってくる。(高橋正子)
7月13日(1句)
松葉牡丹ぱっちり一つ咲きにけり/廣田洋一
松葉牡丹は生命力旺盛ながら、くっりきとした色の可憐な花が咲く。咲きはじめ、目を覚ましたようにぱっちりと咲いた松葉牡丹に、見詰められたかのように驚いた作者。
(高橋正子)
7月12日(2句)
★アスファルトを裸足で駆ける少年ら/多田有花
今頃裸足の少年を見ることも少ない。アスファルトを裸足で駆ける少年に、アフリカの少年が重なって思えた。少年であることのさびしさ、しなやかさが感じられた。(高橋正子)

★烏賊刺しとげその煮付けの夕餉かな/桑本栄太郎

烏賊釣りのいさり火に故郷を思う作者が前提にある。今日の夕餉は、烏賊の甲の刺身に、げそは煮付けにの烏賊まるごとの夕餉。夕餉の食卓に広がる故郷へのしみじみとした思いが読める。(高橋正子)
7月11日(1句)
★高原や車より振る夏帽子/小口泰與
高原を走る車から降られる夏帽子。青春小説のひとこまのような場面が夏の高原にはあるのだ。(高橋正子)

7月11日~20日

7月20日(4名)
小口泰與
土用灸何かと妻は良く太る★★★
何事も几帳面なり心太★★★★
夏芝や淡き緑の五家宝よ★★★
廣田洋一
蝉の声競ふがごとく子らの声★★★
団扇もて飛び来る虫をはたきけり★★★
団扇絵の場所を選びて扇ぎけり★★★
多田有花
からからと鳥除け風車青トマト★★★★
トマト畑に鴉などのトマトを食べに来る鳥を寄せ付けないように、風車がとりつけられている。おおよそプラスティックでできているものなのであろう。風に「からから」と回っている。青トマトと、からからなる軽やかな風車が楽しいそうだ。(高橋正子)
入念に羽づくろいの川鵜かな★★★
風の道示す青田となりにけり★★★★

桑本栄太郎

底紅の青空見上げ積りけり★★★
こつ然蝉しぐれ止む静寂かな★★★
ふるさとの遠き想い出蠅入らず★★★★
7月19日(3名)
小口泰與
岸辺へとなだるる波や月見草★★★★
野牡丹や夕暮の山紫紺なる★★★
子より届きし冷酒なと飲みたまえ★★★
廣田洋一
採れたての茗荷の子にてすまし汁★★★
赤きつや食欲誘う茗荷の子★★★★
新じゃがの粒を揃へて売られをり★★★
桑本栄太郎
底紅の青空見上げ積りけり★★★
絡みつく金網哀しやいと花★★★
かなかなの早やも哀しき茜かな★★★★
蝉の鳴き出す順番からいえば、かなかなは一番遅れて鳴き始める。夏も盛りをすぎたころ盛んに鳴くが、早も鳴き出したかなかながいる。夕焼けにカナカナカナと鳴いてはやも「哀しき」思いをかきたてる。(高橋正子)
7月18日(4名)
小口泰與
ステテコや我が机にて畳みける★★★
夢うつつ虹の輪のなか駆け回る★★★
甲斐犬と走る吾子をり雲の峰★★★★
甲斐犬について調べると、大まかには、甲斐の山岳地方で育てられ、中型犬で、猟に向き、気性が強く、一人の主人につく習性があるということだ。雲の峰の下で、元気いっぱい甲斐犬と走る少年の姿が、すがすがしい。イメージがくっきりと浮かぶ。(高橋正子)
廣田洋一
朝の庭草々揺れて涼しけり(原句)
助動詞「けり」は、活用語の連用形に接続します。「涼し」は、シク活用なので、連用形は「涼しかり」で、「涼しかりけり」となります。
朝の庭草々揺れて涼しかり★★★★(正子添削)
アパートの解体進み涼しかり★★★
風涼し雨の切れ間の並木道★★★
多田有花
梅雨明けを近しと思う今朝の晴れ★★★★
親去れば所在なげなり燕の子★★★
翅欠けし揚羽がゆっくり飛んでいる★★★

桑本栄太郎

溝川の流れ涼しき里を行く★★★★
ぼつてりと葉柳風に連なりて★★★
<ジャズ演奏の追憶より>
白服のジャズの夕べや神戸の夜★★★
7月17日(3名)
廣田洋一
背泳ぎや水中眼鏡外したり★★★★
水中眼鏡をして水の中を楽しんでいたが、飽き疲れたのだろうか、背泳ぎの姿勢をとって、水中眼鏡をはずした。顔に太陽を浴びながら、自在に泳ぐ人の姿。(高橋正子)
 
晴天に遊泳禁止の札高し★★★
優しげな波に乗りつつ泳ぎけり★★★★
小口泰與
星涼し金平糖の淡き色★★★★
郭公や牧草ロールトラックへ★★★
奥利根の休耕田や閑古鳥★★★
桑本栄太郎
との雲る空の明るき送り梅雨★★★
宵口の月下美人を愛でにけり★★★
茅舎忌の入日の空に日照雨かな★★★★
川端茅舎の忌日は、7月17日。茅舎は、画家川端龍子の異母弟で、写生の目に徹しているが、のち病を得て、「茅舎浄土」と呼ばれるキリスト教や仏教を背景にした句を生むようになった。その句境を思いやっての句。「入日の日照り雨」は、茅舎浄土の景色。(高橋正子)
7月16日(5名)
小口泰與
水羊羹台車に積まれいざ出荷★★★★
朝なさな糠雨似合う四葩かな★★★
伝統の笹蒲鉾や冷やし酒★★★
古田敬二
浜木綿の次々天差す蕾かな★★★★
夕暮れてカサブランカの良く香る★★★
万緑の向こうに霞む高層群★★★★

廣田洋一

水遊び門前に水溢れさせ★★★★
水遊びの子らが無邪気に門前に水を溢れさせて遊んでいる。通りすがりの人も巻き込みかねない元気さが想像できて、楽しい句だ。(高橋正子)
通りがけ水鉄砲の流れ弾★★★
父親を追ひ回す子の水鉄砲★★★
多田有花
日焼けせる腕運転席より出る★★★★
面白い光景。運転席の窓から、運転手の日焼けした腕だけが突き出ている。日焼けした逞しい腕におおよそ運転手が想像できる。(高橋正子)
梅雨晴や傘カラフルに並びおり★★★
夏の朝車線変更して前へ★★★

桑本栄太郎

木洩れ日の影のまだらや木下闇★★★
青空のヘリコプターや梅雨晴間★★★★
園児らの輪になり愛でる梅雨きのこ★★★
7月15日(4名)
小口泰與
D51の坂道駆くや雲の峰★★★★
習慣の踵落しや網戸にて★★★
訳ありの菓子に集まる日の盛り★★★
廣田洋一
凌霄花アーチをなして咲き進む★★★
凌霄花縋る梅木の花やげり★★★
凌霄花砂場に遊ぶ子に落ちぬ★★★★
砂場近くに咲き上っている凌霄花が、花を落とすところは子供たちが遊ぶ砂場。
子どもたちに散華のように降って、のどかな光景。砂場も凌霄花も明るいのがいい。(高橋正子)
多田有花
楠の緑陰続く下をゆく★★★★
楠の緑陰ひたと続くなり(正子添削例)
「緑陰」に対して感じたことが表現されれば、一層いい句になります。「下をゆく」も気になるところです。
継続は力なりとて百日草★★★
雨あがる藪萱草に夕日さす★★★

桑本栄太郎

起きてすぐ窓を開ければ梅雨寒し★★★
梅雨冷えのコーヒー熱き朝餉かな★★★★
下校児の声に目覚むや梅雨晴間★★★
7月14日(4名)
小口泰與
夏の夜の夢に魘さる焼夷弾★★★
戦争のあと静かなる滴かな★★★★
戦争のあとの澄み深むような静寂が、「滴」に象徴されている。その思いを別の言葉に言い換えようすれば、どこか違ってくる。(高橋正子)
混乱の戦後豊原木下闇★★★
(豊原=サハリンの日本統治時代の呼び名)
廣田洋一
パリ祭の屋台賑やか丸の内★★★★
香り良きワイン片手に巴里祭★★★
フォションの紅茶を入れて巴里祭★★★
多田有花
目覚めれば今朝も雨音梅雨長し★★★
病院の中庭に咲き金糸梅★★★
梅雨晴間テイクアウトの幟揺れ★★★

桑本栄太郎

嵐止み峰の茜や蝉の声★★★
風止みてひと日終わりぬ梅雨の冷え★★★
風落つや夕日に映ゆる木槿咲く(原句)
 ※一句に動詞が多すぎてイメージが散漫になっています。
風落つや夕日に映ゆる花槿★★★★(正子添削)
7月13日(3名)
小口泰與
夕立や通せん坊のグレートデン★★★
赤腹や鬼押し出しへ溶岩の道★★★
いたどりや鎖樋より水荒ぶ★★★★
廣田洋一
松葉牡丹ぱっちり一つ咲きにけり★★★★
松葉牡丹は生命力旺盛ながら、くっりきとした色の可憐な花が咲く。咲きはじめ、目を覚ましたようにぱっちりと咲いた松葉牡丹に、見詰められたかのように驚いた作者。
(高橋正子)
日射し濃き庭を濃く染め松葉牡丹★★★
サウナ出てかぶりつきたるアイスクリーム★★★
桑本栄太郎
長梅雨や会話無くなる老二人★★★
物言えば憂き世の事は黴だらけ★★★
深梅雨の黙のままなる夕餉かな★★★
7月12日(4名)
小口泰與
鷺草や紙飛行機の宙に飛ぶ★★★
山翡翠やテンカラ釣りの糸の先★★★★
風鈴や母の遺せし鯨尺★★★
廣田洋一
すいと舞ひ屋根をすれすれ夏燕★★★
貯水池の日を照り返す夏燕★★★★
夏掛けを掛け直したる夜明けかな★★★
多田有花
救急車二台連なり梅雨の街★★★
バナナ食ぶそぼ降る雨を眺めつつ★★★
アスファルトを裸足で駆ける少年ら★★★★
今頃裸足の少年を見ることも少ない。アスファルトを裸足で駆ける少年に、アフリカの少年が重なって思えた。少年であることのさびしさ、しなやかさが感じられた。(高橋正子)

桑本栄太郎

初蝉のしぐれとならず消え失せり★★★
梅雨冷えや明日の予報も雨模様★★★
烏賊刺しとげその煮付けの夕餉かな★★★★
烏賊釣りのいさり火に故郷を思う作者が前提にある。今日の夕餉は、烏賊の甲の刺身に、げそは煮付けにの烏賊まるごとの夕餉。夕餉の食卓に広がる故郷へのしみじみとした思いが読める。(高橋正子)
7月11日(3名)
小口泰與
一瞬の命ふるわす油蝉★★★
山間の落人部落揚羽蝶★★★
高原や車より振る夏帽子★★★★
高原を走る車から降られる夏帽子。青春小説のひとこまのような場面が夏の高原にはあるのだ。(高橋正子)
廣田洋一
水羊羹冷たき皿に切り分けぬ★★★
災いを乗り越えたるや水羊羹★★★
昼日中静まる家の水羊羹★★★★
桑本栄太郎
雨の止み窓を開ければ風涼し★★★
雨止みて一時明るき梅雨晴間★★★
初蝉の何処に行くや今朝の雨★★★★