今日の秀句/4月1日~4月10日(転記)

4月10日(1句)

★きゃべつの葉水に浸ければ飛花の浮く/川名ますみ
きゃべつの葉を水に浸けて洗おうとすると、桜の花びらが浮きだした。思わぬところの風雅の景色。きゃべつ畑の近くに桜が咲いているのかも。そう思うのもいい。(髙橋正子)

4月9日(2句)

★山桜ランプの宿の眼間に/小口泰與
ランプの灯る宿のちょうど眼間に見える山桜。山桜は、古代から詩歌に詠まれて来た淡紅白色の桜。清楚なロマンティズムの句。(髙橋正子)

★あけぼののごとく色変え朝桜/多田有花
朝の桜はとりわけ白がちにすがすがしい。それが、時が進むにつれて、あけぼのの空の色のように変わっていく。あけぼのと一体化した桜が美しい。(髙橋正子)

4月8日(1句)
★分葱の根洗われ白く珠なせり/多田有花
分葱は一見小葱ににているが、葉も違うが、特に根元が少し膨らんでいるところが顕著に違っている。洗うとくりくりと白く「珠」のように輝く。洗って改めて気づく分葱らしさ。(髙橋正子)
4月7日(1句)
★散るさくら地下駐車場まで染むる/川名ますみ
桜が散り始めた。根元に散って地面を埋めることがほとんどだが、なかには、風に運ばれて思わぬところを染めていることもある。地下駐車場もそのひとつ。行く春がこんなところにも惜しまれる。(髙橋正子)
4月6日(1句)
★囀りや芝にたっぷり水打てリ/小口泰與
囀りは、繁殖期の雄の縄張り宣言と、雌への呼びかけの鳴き声をいい、地鳴きとは区別されている。明るくなごやかな声が、水をたっぷりと打たれた芝に響いている。その快さが明るく詠まれている。(髙橋正子)
4月5日(1句)
<京西山の嶺の中腹>
★あの辺り金蔵寺とや花の雲/桑本栄太郎
金蔵寺は嶺の中腹にある天台宗の古刹。山門に入るや急な石段が続く。そんな金蔵寺を麓から遠く眺めて、花の雲の向こうのあの辺りに金蔵寺があると示されたか。思い見る金蔵寺は花の雲の向こう。(髙橋正子)
4月4日(1句)
★山葵田やすいすい魚は本流へ/小口泰與
山葵は清流で育つが、そこに棲む魚も清流にしか棲まない魚。その魚もしだいに育って本流へと泳ぎ出してゆく。「すいすい」がいい。(髙橋正子)
4月3日(1句)
★こきこきと三輪車こぐにわざくら/桑本栄太郎
「こきこき」と「にわざくら」が幼子のかわいらしさ、視線の低い世界がやさしく詠まれている。(髙橋正子)
4月2日(1句)
★7標準時示す時計のうららかに/多田有花
日本標準時は、東経135度上の明石天文台の時計の時刻とされている。明石天文台の時計塔は、3代目と聞くが、淡々と時を刻み、何事もなく、それがうららかである。(髙橋正子)
4月1日(1句)
★水嵩の増ゆる田川や揚雲雀/小口泰與
雪解けが進んで、田川も水嵩を増してきた。田植えの準備が始まるのも間もなくだ。空には雲雀が鳴き、田園の春がきらきらしている。子どものころの春の嬉しさを思い出した。(髙橋正子)

4月1日~4月10日(転記)

4月10日(3名)
川名ますみ
きゃべつの葉水に浸ければ飛花の浮く★★★★
飛花ひとひら内に巻きいるきゃべつの葉★★★
花びらを巻いて届きし春きゃべつ★★★
小口泰與
押しなべて狂気の流れ雪解時★★★
振り返り振り返りして山桜★★★★
草餅を恭しくも媼より★★★
桑本栄太郎
連翹の垣根明かりや朝日差す★★★★
西山の峰を愛で居り花の雲★★★
春昼や事故の現場に供花ありぬ★★★
4月9日(3名)
小口泰與
山桜ランプの宿の眼間に★★★★
白波のおりおり高き雪解川★★★
大利根に諾う支流長閑さよ★★★
桑本栄太郎
芥子菜や嘗て庄屋の屋敷跡★★★
亡き母の着物想いぬ紫木蓮★★★★
遅き日の黒猫塀に憩い居り★★★
多田有花
あけぼののごとく色変え朝桜★★★★
友よりのLINE遍路を始めたと★★★
心地よき緊張ありぬ入学式★★★
4月8日(3名)
小口泰與
打ちつけに雉鳴きにけり狐雨★★★
青麦の打ち靡きたり鳶の笛★★★★
田蛙の訴ふる事ありて鳴く★★★
多田有花
前山の花眺めつつ洗濯を★★★
分葱の根洗われ白く珠なせり★★★★
分葱は一見小葱ににているが、葉も違うが、特に根元が少し膨らんでいるところが顕著に違っている。洗うとくりくりと白く「珠」のように輝く。洗って改めて気づく分葱らしさ。(髙橋正子)
分葱軽く炒め梅肉で和える★★★
桑本栄太郎
バスに乗り車窓吟行花の昼★★★
葉の色の濃くなり来しや山桜★★★★
ほんのりと酔いたる様に花の屑★★★
4月7日(4名)
小口泰與
ただ一羽岸に佇む残り鴨★★★
薄墨を刷きたる山や筆の花★★★★
打ち返す岩へ白波雪解川★★★
多田有花
<春日山城跡三句>
春日山に登り見渡す春景色★★★
城跡は夢の跡かも桜咲く★★★★
城跡より遠くに望む春の海★★★
川名ますみ
辛夷咲き番のからす交互に来★★★
時折はしろき雨滴に花の雨★★★
散るさくら地下駐車場まで染むる★★★★
桜が散り始めた。根元に散って地面を埋めることがほとんどだが、なかには、風に運ばれて思わぬところを染めていることもある。地下駐車場もそのひとつ。行く春がこんなところにも惜しまれる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
枝ぶりの重たそうなり花の昼★★★★
ほんのりとうす紅乗りぬ花の屑★★★
花鳥の枝をふるわせ啄みぬ★★★
4月6日(3名)
小口泰與
囀りや芝にたっぷり水打てリ★★★★
囀りは、繁殖期の雄の縄張り宣言と、雌への呼びかけの鳴き声をいい、地鳴きとは区別されている。明るくなごやかな声が、水をたっぷりと打たれた芝に響いている。その快さが明るく詠まれている。(髙橋正子)
青麦や湖は日を呑み山は風★★★
海棠に夜ごとの雨の重きかな★★★
多田有花
花見にもソーシャルディスタンス指定★★★
花見上ぐ大地にその身を横たえて★★★
三分五分枝垂桜の開きおり★★★
桑本栄太郎
つんつんと尖る庭木や新芽立つ★★★
菜の花の畦を伝いて撮りにけり★★★★
うす紅の乗りて散り初む花あはれ★★★
4月5日(3名)
小口泰與
芽柳や渓流奔り小石駆け★★★
言の葉の貧しき吾や月朧★★★
宿下駄や磴より仰ぐ春の星★★★★
多田有花
花の雲下に人々集いけり★★★
花の下で開くや花見弁当を★★★
犬連れて子どもを連れて花見かな★★★★
桑本栄太郎
玄関に新聞ありぬ花蘇芳★★★
堰水の煌めき落つや風光る★★★
<京西山の嶺の中腹>
あの辺り金蔵寺とや花の雲★★★★
金蔵寺は嶺の中腹にある天台宗の古刹。山門に入るや急な石段が続く。そんな金蔵寺を麓から遠く眺めて、花の雲の向こうのあの辺りに金蔵寺があると示されたか。思い見る金蔵寺は花の雲の向こう。(髙橋正子)
4月4日(3名)
小口泰與
血圧の乱高下せり春の雷★★★
山葵田やすいすい魚は本流へ★★★★
山葵は清流で育つが、そこに棲む魚も清流にしか棲まない魚。その魚もしだいに育って本流へと泳ぎ出してゆく。「すいすい」がいい。(髙橋正子)
春昼や湖畔の御者の大欠伸★★★
桑本栄太郎
カーテンを開けて眼下に新芽立つ★★★★
あの辺り金蔵寺とや花の雲★★★
菜の花や田道をたどり路線バス★★★
多田有花
春の海辺歩きし後の明石焼★★★
眼張あり魚棚の昼網に★★★
<播州北条節句祭り>
花曇る中を屋台が巡行す★★★★
4月3日(3名)
小口泰與
天空へ点となりたる揚雲雀★★★
袈裟斬りに急降下ぜり初燕★★★
打ちつけに雉の鳴けり雨の丘★★★★
桑本栄太郎
こきこきと三輪車こぐにわざくら★★★★
「こきこき」と「にわざくら」が幼子のかわいらしさ、視線の低い世界がやさしく詠まれている。(髙橋正子)
ひこばえの幹に咲きたる花あはれ★★★
校門の紅濃き枝垂れざくらかな★★★
多田有花
花ミモザ庭いっぱいの陽光に★★★
彼岸桜雲無き空へ高く咲く★★★
明石城の二つの櫓桜時★★★★
4月2日(3名)
小口泰與
花虻や釣竿を振る吾の顔へ★★★
囀りや次つぎ来ては枝渡り★★★
風も無く動く電線鳥交る★★★
桑本栄太郎
生垣の芽吹き火炎や要糯★★★★
ブロッコリー茎立ち来たる小花かな★★★
畦道を伝い菜の花撮りにけり★★★
多田有花
標準時示す時計のうららかに★★★★
日本標準時は、東経135度上の明石天文台の時計の時刻とされている。明石天文台の時計塔は、3代目と聞くが、淡々と時を刻み、何事もなく、それがうららかである。(髙橋正子)
社殿への長き石段春の昼★★★
登り来て人丸神社桜咲く★★★
4月1日(3名)
小口泰與
正座せる法事の席や花馬酔木★★★
敷き藁に雨に風添う花苺★★★
水嵩の増ゆる田川や揚雲雀★★★★
雪解けが進んで、田川も水嵩を増してきた。田植えの準備が始まるのも間もなくだ。空には雲雀が鳴き、田園の春がきらきらしている。子どものころの春の嬉しさを思い出した。(髙橋正子)
多田有花
アスファルト隙間を埋めてスミレ咲く★★★
坂道を上ればふわり紫木蓮★★★
桜咲くプラネタリウムへ続く道 ★★★★
桑本栄太郎
沈丁の花の終わりや零れ居り★★★
無残なや風に散り敷く白木蓮★★★
自転車の幼児うつむく目借時★★★★

今日の秀句/3月21日~3月31日(2022年)(転記)

3月31日(1句)
★初花に静かや丘の動物園/川名ますみ
丘の動物園の動物たちは、のどかな日を満喫しているのだろ。訪ねる人もまばらかもしれない。初めて桜が咲き、小さな動物園は、夢見ごこちのようだ。(髙橋正子)
3月30日(1句)
★木蓮のみな榛名へと向きにける/小口泰與
木蓮の花は、勢ぞろいして、どちらか一方を向く。木蓮の蕾は日がよく当たる南側が膨らみ、したがって蕾は北側を向く指方向性の植物。作者の産土の山、榛名山は北の方に見えるのか。榛名山へ一斉に靡いている。(髙橋正子)
3月29日(1句)
★春日差すこんな狭庭にリラの花/桑本栄太郎
日当たりのいい小さな庭に、まさかのリラの花が咲いている。リラの花がさき、狭庭は幸せの庭に。(髙橋正子)
3月28日(1句)
★春の雲アンカレイジを見上げれば/多田有花
アンカレイジは橋のケーブルの端を定着する大きなブロックのこと。瀬戸大橋のアンカレイジは霞が関ビルほどの体積があるという。その巨大なアンカレイジを見上げると、目に入るのは空に浮かぶ柔らかな春の雲。見上げる人間の小ささを思う。(髙橋正子)
3月27日(1句)
★満開に早や舞い落ちる桜かな/友田  修
虚子の句に「咲き満ちてこぼるる花もなかりけり」があるが、この情景は満開の頂点のほんの一瞬と言ってよいほど短い時期だろう。すぐにひらり、ひらりと桜の花びらは舞い落ちる。時の移ろいが目のあたりに見える。(髙橋正子)
3月26日(1句)
★故郷の春の遠きや犀星忌/桑本栄太郎
室生犀星については、「故郷は遠きありて思ふもの そして悲しくうたふもの」に始まる詩を思い出すが、この詩は遠く故郷を離れてつくった詩ではなく、彼の故郷金沢に居て作った詩といわれている。それはともかく、冒頭の詩句と関連付けられた句と言えよう。栄太郎さんの故郷は鳥取。今、故郷の遅い春はどんな風だろうと、おりしも犀星忌に思う、のだ。(髙橋正子)
 
3月25日(1句)
★うぐいすの未だ錆びある初音かな/桑本栄太郎
三月も終わりに近づいた。笹鳴きのころから比べると鳴き方もうまくなったと思えるが、そうでもない鴬の声。錆びのある初音は事実でおかしみもあって、
これから美しい声を聞くのが楽しみ。(髙橋正子)
3月24日(1句)
★赤城より烈風吹けり揚雲雀/小口泰與
春になったとは言え、今日は赤城山からの烈風が吹く。烈風に揉まれながらも高みへ揚がる雲雀。その姿に感銘を受ける。(髙橋正子)
3月23日(1句)
★洗濯す遠く近くに雉の声/多田有花
雉は高山や深山ではなく人里近い山の畑や山裾の野に住んでいる。求愛の声も含めて、哀愁を帯び、また力強い声は、よく響き渡る。洗濯をしながらも雉の声が聞こえ、いよいよ春らしくなっていく。(髙橋正子)
3月22日(2句)
★残雪や芯を整うランプの灯/小口泰與
残る雪にランプの炎がまっすぐに燃えたつ。メルヘンのような光景ながら、「芯を整う」で背筋の伸びるような気持ちになる。(髙橋正子)
★みな上に蘂の黄色や落つばき/桑本栄太郎
みな上に見つけた落つばき。落ちた場所は湿りがちなところであろうが、蘂の黄色に、つばきの息づきを感じる。(髙橋正子)
3月21日(1句)
★風に乗り帰雁の迅き峠かな/小口泰與
峠の空を帰りを急ぐかのように、風に乗るまま飛んでゆく雁の群れ。
峠の空が高ければ高いほど見送る寂しさがわいてくる。(髙橋正子)

3月21日~3月31日(2022年)(転記)

3月31日(4名)
小口泰與
パレットに赤青黄と春の丘★★★
皿に盛る青き野菜や春の朝★★★★
丁字路の書肆の暗きや花青木★★★
桑本栄太郎
咲き初めの遅速ありたる花の昼★★★
雨降れど天に明るき花辛夷★★★★
咲き満てば花狩人とならん吾★★★
多田有花
標準時子午線ここに梅咲きぬ★★★★
のどけしや海遠くなり公会堂★★★
花韮を咲かせる道や春の昼★★★
川名ますみ
青空の裾をゆらせる花菜風★★★
風吹けば色の消えたり初桜★★★
初花に静かや丘の動物園★★★★
丘の動物園の動物たちは、のどかな日を満喫しているのだろ。訪ねる人もまばらかもしれない。初めて桜が咲き、小さな動物園は、夢見ごこちのようだ。(髙橋正子)
3月30日(3名)
小口泰與
木蓮のみな榛名へと向きにける★★★★
木蓮の花は、勢ぞろいして、どちらか一方を向く。木蓮の蕾は日がよく当たる南側が膨らみ、したがって蕾は北側を向く指方向性の植物。作者の産土の山、榛名山は北の方に見えるのか。榛名山へ一斉に靡いている。(髙橋正子)
鳥の巣や移住の家族子沢山★★★
大農の大庇より雀の子★★★
多田有花
丈低きチューリップなり並び咲く★★★
六神社神々は春の海に向く★★★★
快晴に大島桜咲き始め★★★
桑本栄太郎
咲き初めの三分がよけれ桜咲く★★★
ふかふかの地道歩むや草青む★★★
少女らの自転車に乗り春休み★★★
3月29日(3名)
小口泰與
揚雲雀杖をお供に畷径★★★
人生の最終章や花の中★★★★
川風に柳の花のふわふわと★★★
桑本栄太郎
川べりのさくら並木や花曇り★★★
休耕と云えど咲き満つ花菜かな★★★
春日差すこんな狭庭にリラの花★★★★
日当たりのいい小さな庭に、まさかのリラの花が咲いている。リラの花がさき、狭庭は幸せの庭に。(髙橋正子)
多田有花
春日和触れればローズマリーの香★★★
春の空ふわりと浮かぶ航空機★★★
大橋のしだいに遠く風光る★★★★
3月28日(3名)
小口泰與
我と犬影重なりて春の月★★★
ごうごうと水嵩増せり鼓草★★★★
蒲公英や川の岸辺へなだれ咲く★★★
多田有花
春の雲アンカレイジを見上げれば★★★★
アンカレイジは橋のケーブルの端を定着する大きなブロックのこと。瀬戸大橋のアンカレイジは霞が関ビルほどの体積があるという。その巨大なアンカレイジを見上げると、目に入るのは空に浮かぶ柔らかな春の雲。見上げる人間の小ささを思う。(髙橋正子)
 
春光や淡路島へと橋まっすぐ★★★★
移情閣明治華僑の春の夢★★★
桑本栄太郎
春寒や病院への道いそぎ居り★★★
川べりの白き明かりや辛夷咲く★★★★
芽柳の風に青める川辺かな★★★
3月27日(4名)
小口泰與
いささかも動かぬ藏や初燕★★★
囀りや投網うつ腕老いの技★★★
檜塀壊れたところ恋の猫★★★
友田修
公園の桜に集う昼下がり★★★
追分の辻に古木の桜かな★★★★
満開に早や舞い落ちる桜かな★★★★
虚子の句に「咲き満ちてこぼるる花もなかりけり」があるが、この情景は満開の頂点のほんの一瞬と言ってよいほど短い時期だろう。すぐにひらり、ひらりと桜の花びらは舞い落ちる。時の移ろいが目のあたりに見える。(髙橋正子)
桑本栄太郎
白木蓮咲き満つ空の青さかな★★★★
校門の記念桜や咲き初むる★★★
八重と云う白つばきさえ朽ち来たる★★★
多田有花
夜明けより春の嵐が窓揺らす★★★
洗濯屋閉じてひっそり木瓜の花★★★
釣り船の数多や春の海峡に★★★★
3月26日(2名)
小口泰與
蜜蜂の花粉に塗れまみれして★★★
朝日受けばらの新芽のほわほわと★★★
砂浴びの穴にいさかう春の鳥★★★
桑本栄太郎
故郷の春の遠きや犀星忌★★★★
室生犀星については、「故郷は遠きありて思ふもの そして悲しくうたふもの」に始まる詩を思い出すが、この詩は遠く故郷を離れてつくった詩ではなく、彼の故郷金沢に居て作った詩といわれている。それはともかく、冒頭の詩句と関連付けられた句と言えよう。栄太郎さんの故郷は鳥取。今、故郷の遅い春はどんな風だろうと、おりしも犀星忌に思う、のだ。(髙橋正子)
 
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
初めてのズーム句会や春の雨★★★
亀鳴くやジーンズ姿のハイヒール★★★
3月25日(3名)
小口泰與
隠り沼の器の漏れや囀れり★★★
野放図に風にほぐるる牡丹の芽★★★
蜂の巣や竹竿持ちて子供たち★★★
多田有花
鶯や夜明けを告げて鳴き始め★★★★
夕陽浴び東の山の初桜★★★
朝一本夕べに二本桜咲く★★★
桑本栄太郎
もつれつつ天の高みへ蝶の昼★★★
三年目の桜つぼみの咲く構へ★★★
うぐいすの未だ錆びある初音かな★★★★
三月も終わりに近づいた。笹鳴きのころから比べると鳴き方もうまくなったと思えるが、そうでもない鴬の声。錆びのある初音は事実でおかしみもあって、
これから美しい声を聞くのが楽しみ。(髙橋正子)
3月24日(3名)
小口泰與
赤城より烈風吹きし揚雲雀(原句)
赤城より烈風吹けり揚雲雀★★★★(正子添削)
春になったとは言え、今日は赤城山からの烈風が吹く。烈風に揉まれながらも高みへ揚がる雲雀。その姿に感銘を受ける。(髙橋正子)
はくれんやテレビアンテナ榛名向く★★★
野良犬のその後は知らず水草生う★★★
多田有花
永き日の門さきボール遊びの子★★★★
夜の雨あがりき終い彼岸の朝★★★
いつもあの桜が咲くよ真っ先に★★★
桑本栄太郎
若枝のうすきみどりや枝垂れ梅★★★
咲き分けの八重の花咲く落つばき★★★
山茱萸の咲いて狭庭の明かりかな★★★★
3月23日(2名)
小口泰與
鯛かまの眼の疎ましや春の雪★★★
揚雲雀浅間へ急ぐ夕日かな★★★★
庭の池ランプ灯すや影朧★★★
多田有花
暁を覚えつつ春眠より覚める★★★
洗濯す遠く近くに雉の声★★★★
雉は高山や深山ではなく人里近い山の畑や山裾の野に住んでいる。求愛の声も含めて、哀愁を帯び、また力強い声は、よく響き渡る。洗濯をしながらも雉の声が聞こえ、いよいよ春らしくなっていく。(髙橋正子)
終い彼岸静かな雨に終わりけり★★★
3月22日(3名)
小口泰與
春塵や古手拭を顔に巻き★★★
うららかや日を賜わるる水の星★★★
残雪や芯を整うランプの灯★★★★
残る雪にランプの炎がまっすぐに燃えたつ。メルヘンのような光景ながら、「芯を整う」で背筋の伸びるような気持ちになる。(髙橋正子)
多田有花
にんじんを炒めて甘し春の昼★★★
雨あがり彼岸の郵便局まで歩く★★★
木の芽時稜線の影やわらかし★★★
桑本栄太郎
地球儀を回し確かむ寒戻る★★★
朝よりの山の端見えず春の雨★★★
みな上に蘂の黄色や落つばき★★★★
みな上に見つけた落つばき。落ちた場所は湿りがちなところであろうが、蘂の黄色に、つばきの息づきを感じる。(髙橋正子)
3月21日(3名)
小口泰與
春暖炉足輪の光る伝書鳩★★★
風に乗り帰雁の迅き峠かな★★★★
峠の空を帰りを急ぐかのように、風に乗るまま飛んでゆく雁の群れ。
峠の空が高ければ高いほど見送る寂しさがわいてくる。(髙橋正子)
暖かや胸の毛光る伝書鳩★★★
多田有花
お彼岸の月山の端にかかりおり★★★★
春分の朝の雀がちゅんと鳴き★★★
脊柱を真っ直ぐ伸ばす鳥雲に★★★
桑本栄太郎
葉ぼたんの渦の儘なり茎立ちぬ★★★
木々の枝の揺れて歌うよ百千鳥★★★★
傷ましき顔の上向く落つばき★★★

今日の秀句/3月8日~3月20日(2022年)(転記)

3月20日(1句)
★浅間山隈なく晴れて雪解かな/小口泰與
雪解けが進む浅間山。陰るところもなく晴れて、雪解けは隠しようもなく進んでいる。本格的な春へむかう自然の巡り。(髙橋正子)
3月19日(1句)
★曇天を颯爽と切り初つばめ/多田有花
今年初めて見たつばめ。曇天ではあるが、颯爽と切って飛ぶ姿は、間違いなくつばめ。「つばめよ、ようこそ」。(髙橋正子)
3月18日(1句)
★東天に輝く星や春ショール/小口泰與
春の良き日、夫婦ででかけたのであろう。家路につくころには、東天に大きな星が輝き、春ショールでは少し寒い。料峭の道すがらのさり気ない夫婦愛。(髙橋正子)
3月17日(2句)
★峡空を潤す河津桜かな/小口泰與
山峡の空は、さみしい。2月下旬ごろから咲きはじめる河津桜は、少し色が濃くて、咲けば、山峡の空もはなやかに、潤って感じられる。ここにも春が来たのだ。(髙橋正子)
★野放図と云う枝振りの野梅かな/桑本栄太郎
野梅は枝を切られることもなく、奔放に枝を伸ばしている。伸びて交差する枝は、野放図というのにふさわしい。庭梅にない奔放さ、逞しさが野梅にはある。(髙橋正子)
3月16日(1句)
★鶯を間近に聞ける夜明けかな/多田有花
夜明け、間近に鴬の声が聞こえた。まだ薄暗い夜明けの鴬の声はうるわしく、妙なる声。「間近に聞ける」が嬉しい。(髙橋正子)
3月15日(1句)
★いささ舟公魚釣りの只中へ/小口泰與
公魚釣りは、氷上に穴を開け、そこから釣り糸を垂らして釣り上げる様子をテレビでよく見る。凍ってないところに小舟を出して、釣り三昧の人たちに近づこうというものか。(髙橋正子)
3月14日(1句)
★高らかに応えて卒業証書受く/多田有花
卒業式は、卒業証書授与式。「高らかに応えて」は、名前を呼ばれて「はい」と応える誇らしく、明るい学生の声。教師も学生も、卒業を喜びあう感慨深いときが詠まれている。(髙橋正子)
3月13日(1句)
★奔放と云うは林の野梅かな/桑本栄太郎
林にゆくと梅が枝を奔放に伸ばして咲き満ちている。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と俗に言われているが、梅を適宜剪定しなければ、野放図というか、奔放というか、勢い余った感じがする。それが野梅の魅力だが。(髙橋正子)
3月12日(1句)
★岩陰の雪代山女飛び出しぬ/小口泰與
春の雪解けの頃釣れる山女を雪代山女と呼ぶ。「雪解け水で増水し白く濁った流れは早く、冷たい。水温が低いと食いが悪く釣るのは難しいが、釣人にはそれもまた魅力。」と言われている。その山女が岩陰から飛び出して、おどろくことやら。(髙橋正子)
3月11日(1句)
★引鴨や上越の空慌ただし/小口泰與
この句の上越は新潟、群馬を指してよいであろう。鶴が北に帰っていく様子は美しいが、たくさんの鶴が空に湧くように飛ぶと、「慌ただし」とも思える。引鶴を目の当たりにした実感。(髙橋正子)
3月10日(1句)
★申告書終えて散歩へ春うらら/桑本栄太郎
確定申告の季節。今は国税庁のネット画面から簡単に申告できるようだが、やはり、慣れない文言や数字の処理のわずらわしさに困惑する。申告書を書き終えるとほっとするものだ。気持ちも軽く散歩へ足が向く。おりしも麗らかな陽気に、足取りが軽かったことだろう。(髙橋正子)
3月9日(1句)
★雲浮かぶ浅間南面雪解かな/小口泰與
ぽっかりと雲を浮かべた浅間山。南面は、雪解けが進んでいる。雄々しくそびえる浅間山がいよいよ春を迎えている。
私は小諸へ行くときに浅間山を間近に見したが、実際、大きさに圧倒されました。(髙橋正子)
3月8日(1句)
★葉牡丹の茎立のさき軽き色/川名ますみ
葉牡丹が茎立って、茎の伸びた先には淡い黄色の花を咲かせている。決してたくましくはないが、「軽い色」こそ命のかぎりの色と言えそうだ。(髙橋正子)

3月8日~3月20日(2022年)(転記)

3月20日(2名)
小口泰與
青空へ峰の紅梅雲を上げ★★★
浅間山隈なく晴れて雪解かな★★★★
はくれんやはるか榛名へ雲一朶★★★
桑本栄太郎
白れんのつぼみ膨らみ青み居り★★★
八重椿斑入りと云えど紅ほのか★★★
紅梅や閉じらるままの喫茶店★★★
3月19日(3名)
小口泰與
鳥交る窓を震わす山の風★★★
花虻や洗濯物の風に乗る★★★★
春泥や畝間を進むねこ車★★★
多田有花
初つばめ曇天なれど颯爽と(原句)
「なれど」が理屈になっています。ストレートに情景を述べましょう。(髙橋正子)
曇天を颯爽と切り初つばめ★★★★(正子添削)
春の畑杭打つ音の響きけり★★★★
また雨の降り出している彼岸かな★★★
桑本栄太郎
葉ぼたんの渦巻くままに茎立ぬ★★★
白木蓮の無垢と云えども深傷負う★★★
「云えども」が理屈です。ストレートに述べるのがいいと思います。(髙橋正子)
地球儀を回し愁うや冴え返る★★★
3月18日(3名)
小口泰與
ばらの芽のほぐれ赤子の手のごとし★★★
水中のペンギン速し鳥曇へ★★★
東天へ輝く星や春ショール(原句)
東天に輝く星や春ショール★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
春雨や濡れて鴉の止まり居り★★★
卒園の親子の帰途や春の雨★★★
との曇る空を見上げて木の芽立つ★★★
多田有花
豆苗や春陽の方へ伸びてゆく★★★
切り花の百合馥郁と入り彼岸★★★★
入り彼岸静かな雨の一日に★★★
3月17日(3名)
小口泰與
かの庭の闇夜の中の沈丁花★★★
峡空を潤す河津桜かな★★★★
ばらの芽のほぐるや数えきれずなり★★★
多田有花
磯鵯さえずり高らかなる夜明け★★★★
野の道や菜の花の黄を両側に★★★
AIに運転指導受く春昼★★★
桑本栄太郎
野放図と云う枝振りの野梅かな★★★★
堰水の煌めき落つや水温む★★★
山の端のほんのり赤く春の宵★★★
3月16日(3名)
小口泰與
滔滔と利根の白波鼓草★★★★
雨上がり雪解の浅間眼間に★★★
くさり樋伝いし鳥や花きぶし★★★
多田有花
突然の気温上昇彼岸前★★★
鶯を間近に聞ける夜明けかな★★★★
たっぷりとうるおっている春の月★★★
桑本栄太郎
心地良き風の木蔭や春暑し★★★★
木々の枝のゆらぎ鳴き居り百千鳥★★★
うぐいすの物まねしたる初音かな★★★
3月15日(2名)
小口泰與
いささ舟公魚釣りの只中へ★★★★
忽然と鶏の声せり夜半の春★★★
浅間燃え春天へ禽一列に★★★
桑本栄太郎
干しものの弄られなびく春の風★★★
ビリビリとポスター破れ春疾風★★★
遅き日の目覚めてお菓子ひとつまみ★★★
3月14日(3名)
小口泰與
揚雲雀今朝の赤城は靄の中★★★
単調な田川の調べ鼓草★★★
鶯や山の橅林峰走り★★★★
多田有花
高らかに応えて卒業証書受く★★★★
卒業式は、卒業証書授与式。「高らかに応えて」は、名前を呼ばれて「はい」と応える誇らしく、明るい学生の声。教師も学生も、卒業を喜びあう感慨深いときが詠まれている。(髙橋正子)
卒業生より花束を贈られる★★★
祝卒業紅白上用饅頭食ぶ★★★
桑本栄太郎
雨上がり芽ぐむ梢や青空に★★★★
若枝の枝垂れみどりや庭の梅★★★
もくれんの芽の色めきし日差しかな★★★
3月13日(2名)
小口泰與
春なれや長きすそ野に憩いける★★★
利根はいさ雪代山女居りしかな★★★
いざいなん雪解の川へ魚釣りに★★★
桑本栄太郎
くいくいと天を目指せり桜の芽★★★
奔放と云うは林の野梅かな★★★★
林にゆくと梅が枝を奔放に伸ばして咲き満ちている。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と俗に言われているが、梅を適宜剪定しなければ、野放図というか、奔放というか、勢い余った感じがする。それが野梅の魅力だが。(髙橋正子)
心地良き風の木蔭や春暑し★★★
3月12日(2名)
小口泰與
渓流の雪解の流如何にせむ★★★
渓流の雪解の水に憤る★★★
岩陰の雪代山女飛び出しぬ★★★★
春の雪解けの頃釣れる山女を雪代山女と呼ぶ。「雪解け水で増水し白く濁った流れは早く、冷たい。水温が低いと食いが悪く釣るのは難しいが、釣人にはそれもまた魅力。」と言われている。その山女が岩陰から飛び出して、おどろくことやら。(髙橋正子)
桑本栄太郎
礼服のトンネル抜けて卒園す★★★
庭梅の枝垂れしだるる狭庭かな★★★
ミニ鉢の木瓜の花咲く花卉農園★★★★
3月11日(2名)
小口泰與
つくつくし巨石あるべき妙義山★★★
引鴨や上越の空慌ただし★★★★
この句の上越は新潟、群馬を指してよいであろう。鶴が北に帰っていく様子は美しいが、たくさんの鶴が空に湧くように飛ぶと、「慌ただし」とも思える。引鶴を目の当たりにした実感。(髙橋正子)
塩梅のなれて蕗味噌良かれかし★★★
桑本栄太郎
待合の長き廊下や春愁う★★★
診察を終えて明るき春の昼★★★★
囀りの団地の空に真似したる★★★
3月10日(2名)
小口泰與
三山は丈を競わず笑うなり★★★
春祭赤き腰巻あらわなり★★★
芽柳や利根の流れの荒らかに★★★★
桑本栄太郎
申告書終えて散歩へ春うらら★★★★
確定申告の季節。今は国税庁のネット画面から簡単に申告できるようだが、やはり、慣れない文言や数字の処理のわずらわしさに困惑する。申告書を書き終えるとほっとするものだ。気持ちも軽く散歩へ足が向く。おりしも麗らかな陽気に、足取りが軽かったことだろう。(髙橋正子)
残りしか棄てられ居しや春の鴨★★★
目覚めても未だ明るき遅日かな★★★
3月9日(2名)
小口泰與
春眠や影の伸び來る利根の瀞★★★
春昼や太柱にてひと眠り★★★
雲浮かぶ浅間南面雪解かな★★★★
ぽっかりと雲を浮かべた浅間山。南面は、雪解けが進んでいる。雄々しくそびえる浅間山がいよいよ春を迎えている。私は小諸へ行くときに浅間山を間近に見したが、実際、大きさに圧倒されました。(髙橋正子)
桑本栄太郎
いつまでも面影追いぬ春の夢★★★
料峭と云えど日差しの眩しけり★★★
学び舎の昼のチャイムや春うらら★★★★
3月8日(3名)
小口泰與
花辛夷獣の声の聞ゆなり★★★★
春霞赤城は岫もあらなくに★★★
風船のあらぬ風受け踊り行く★★★
桑本栄太郎
鉄塔の並ぶ青空春の嶺★★★
来て見ればすでに咲き居り花菜かな★★★
囀りの木々の間や青き空★★★★
川名ますみ
葉牡丹の茎立のさき軽き色★★★★
葉牡丹が茎立って、茎の伸びた先には淡い黄色の花を咲かせている。決してたくましくはないが、「軽い色」こそ命のかぎりの色と言えそうだ。(髙橋正子)
葉牡丹の茎立風をつかまえる★★★★
茎立や切なき歌はニ短調★★★

自由な投句箱/3月1日~7日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之