今日の秀句/4月1日~4月10日

4月10日(2句)

★引き返し一枚羽織る花の冷え/桑本栄太郎
出掛けたのはいいが、思いのほかの花冷えに家に引き返して一枚羽織ってきた、と言う。今年は冷え込んり、雨が降ったり、桜が満開になるまで日にちがかかった。(髙橋正子)

★清明の雲を迎える湖の青/ 弓削和人

「湖の青」が「迎える」という清明の雲。「迎える」には、泰然とひろがる湖の青色が流れくる清明の日の雲を受け入れる特別感がある。(髙橋正子)
4月9日(2句)

★飛花落花雨の雫を散らしけり/廣田洋一
満開の桜が雨に当たって雫がついている。散る花びらに、ひらひら落ちる花びらに雨の雫がついたまま。「雨の雫を散らす」花となって、みずみずしい美しさが詠まれている。(髙橋正子)

★花桃や裏窓今朝は開けられて/多田有花
花桃が咲く時期は、新暦の3月3日ごろではなく、旧暦の3月3日ごろ。これはほぼ正確であろうが、少しずつ気温があがらい、北風の入る裏窓が久しぶりに開けられている。新しい季節が来ていることが印象付けられる。(髙橋正子)
4月8日(1句)

★そちこちに燕ひらりと身をかわし/多田有花
身辺に燕が自由に飛び交っている。透明な空気が見える感じがする。(髙橋正子)

4月7日(2句)

★満開をせかせる如く花の雨/廣田洋一
桜が咲くのを今か今かとまっているが、咲くときになって冷え込んだせいか、なかなか満開にならない。雨さえも、はやく満開になれとせかすようだ。満開の花を待つ心持。(髙橋正子)

★山桜若葉の色もさまざまに/多田有花
山桜の咲いている山は、早も若葉が湧き出していろんな色あいを見せている。山桜と若葉の色が、春から夏へ変わっていく景色の色を美しく織り成している。(髙橋正子)
4月6日(2句)

★暮れかねているよ花盛りの山は/多田有花
山に桜が咲いていると、そこが白く、明るく暮れ残る。暮れるのを惜しんで、暮れかねている山の雰囲気がよく出ている。(髙橋正子)

★葉の彩のともに美わし山ざくら/桑本栄太郎
山桜は花と葉と同時に見られて、葉の彩も捨てがたい。ともにうるわしい。(髙橋正子)

4月5日(2句)

★夕映えの山の桜よまた明日/多田有花
夕映えの山の桜は、咲き誇って今日の光を放っている。その桜を残して暮れて、さよならと言わなければいけないのは、心残り。「また明日」と言って、友達のように別れる。(髙橋正子)

★太陽光パネルへ春日垂れており/弓削和人
春の日のとろりとした感じがよく出ている。「太陽光パネル」と言う新しい素材に挑んでを詠んだのもいい。(髙橋正子)

4月4日(2句)

★鯉濃に舌打つ春の信濃かな/小口泰與
佐久の鯉濃を小諸の水煙大会のときに頂いたが、鯉濃は信濃の滋味深い料理。遅い春の寒さに熱い鯉鯉に舌鼓が打てるのも信濃の国にいてこそ。(髙橋正子)

★けさ二輪雲のいろしてさくら咲く/川名ますみ
ようやく咲き始めた桜が、曇り空なのだろう、雲とまがうような色に二輪咲いた。桜が桜色でなく、雲の色というのが、いい。たった二輪も可愛い。花時の空の様子がよく知れる。(髙橋正子)
4月3日(1句)

★雨に濡れ明りとならず花三分 /桑本栄太郎
桜が満開になると、あたりが明るくなり、「花明かり」と、言われるようになる。雨に濡れ、まだ三分咲きの花は、期待ほどの「明かり」とならない。それも花の風情としてとどめておくべきであろう。(髙橋正子)
4月2日(1句)

★桜咲くいつもながらの子らの声/廣田洋一
桜が咲くと日本は新年度を迎え、季節が一新される。子供たちは、桜が咲いてもいつもどおりに活気に満ちて遊んでいる。変わるもの、変わらないもの、それぞれが混じって時が進むのを実感するのが、「桜咲く」と言うことだろう。

4月1日(1句)

★山桜朝の光に咲きそろい/多田有花
朝の光が差す山桜は、匂うような清々しい風情。「咲きそろい」と言い切っているのがさわやか。(髙橋正子)

4月1日~4月10日

4月10日(5名)

小口泰與
公園の春燈切れし数数多★★★
危ぶみて行くを躊躇う春の川★★★
もみじの葉ほぐれほぐれて春の風★★★

多田有花
電線に腰赤つばめやや離れ★★★★
川波の光るにあわせ桜咲く★★★
土手の道桜並木を愛で歩く★★★

廣田洋一
白き富士後にそびえ山笑う★★★
道端の燃ゆるが如き躑躅かな★★★
秘めやかに黒絹まとい欝金香★★★

桑本栄太郎
引き返し一枚羽織る花の冷え★★★★
西山の鉄塔並ぶ花の雲★★★
石垣を零れ倒るる芝ざくら★★★

弓削和人
春風の方へ向きたるベンチかな★★★
頂の雲より下の初音かな★★★★
清明の雲を迎える湖の青 ★★★★
4月9日(5名)

小口泰與
天ざかる里に住みけり桜まじ★★★
天霧らう谷川岳や里は春★★★
天ざかる鄙に住みけり雪解水★★★

廣田洋一
飛花落花雨の雫を散らしけり★★★★
花の雨中止されたる道路工事★★★
合掌をほどきて揺れるチューリップ★★★

多田有花
花桃や裏窓今朝は開けられて★★★★
梅桜ともに咲きたる川の土手★★★
雨降りだす前に終わりぬ入学式★★★

桑本栄太郎
一陣の風に目覚むる春あらし★★★
風吹けば桜吹雪となりぬべし★★★
さくら散る急くな急くなと念じけり★★★

弓削和人
花冷えの蚋は玻璃戸の隙にゐる★★★
春雨のしずく梢にとどまれり★★★
菜の花と宵の境を歩きけり★★★
4月8日(5名)

小口泰與
池の面を微風ふわりと匂鳥★★★
水槽の春の金魚の仰向きに★★★
仰向きて春蝉川を下りけり★★★

多田有花
幸せは桜七分に咲く晴天★★★
雉鳴くや日曜大工の音もして★★★
そちこちに燕ひらりと身をかわし★★★★

桑本栄太郎
想い出す小坊主さそう甘茶寺★★★
行き交うや背割堤の花見客★★★
虚子の忌や芦屋の坂の雨に濡れ★★★

廣田洋一
生誕の150年虚子忌かな★★★
ひっそりと一本咲きし黒チューリップ★★★
チューリップ並びて迎え診療所★★★

弓削和人
花の道おが屑敷きし花見山★★★
連翹のたもと動かぬ亀の首★★★
山茱萸の四弁の小花四方向き★★★
4月7日(4名)

小口泰與
春日濃し我が髪膚をば溶かしけり★★★
紅梅や山のあわいに白き雲★★★
青空を奪い合いたる雲雀かな★★★★

廣田洋一
枝垂れには柔らかく降る花の雨★★★
満開をせかせる如く花の雨★★★★
硬き顔一瞬はじけ山笑う★★★

多田有花
陽の差せばすぐに開きぬチューリップ★★★
雲の影山に落ちたり放哉忌★★★★
山桜若葉の色もさまざまに★★★★
 桑本栄太郎
さくら咲く競馬場なる仁川駅★★★
夙川の河川公園花満開★★★
春宵の山並み六甲茜かな ★★★
4月6日(5名)

小口泰與
赤黄の花に木蓮ほのかにて★★★
池の面をふはりと風や雀の子★★★
夕映えの浅間雪解や紫木蓮★★★

弓削和人
整然と立ちゐるビルの穀雨かな★★★
茅葺きの屋根たるむなり紫木蓮★★★
景色はよくわかります。(髙橋正子)
蒼天をのこしてカモメ翔び立ちぬ★★★

多田有花
咲き初めし染井吉野に陽の高し★★★★
花の峰つなぎ日輪渡りけり★★★★
暮れかねているよ花盛りの山は★★★★

廣田洋一
旧友と酒酌み交はし春の星★★★★
小雀飛び目の前の枝揺らしけり★★★★
露天湯の湯気立ち登り山笑ふ★★★

桑本栄太郎
柳絮降る川辺の地道歩きけり★★★
坂道のなんば歩きや花の昼★★★
葉の彩のともに美はし山ざくら★★★★
4月5日(5名)

小口泰與
ばらの葉の赤青さやか春の雨★★★
うぐいすや小沼ひびかす日の光★★★
様ざまな鳥語飛び交う小沼かな★★★

廣田洋一
連翹や養生中の園の中★★★
鈴振りて人を迎へるスノーフレーク★★★
紫躑躅上品に見ゆ狭庭かな★★★

多田有花
花朧よきことのみを思い出す★★★
夕映えの山の桜よまた明日★★★★
跪き見るやスノーフレークを★★★

桑本栄太郎
あおぞらの隙間にありぬ花万朶★★★
歩みゆく山の里へと花の雲★★★
花の雲仰ぎ見て居り嵐山★★★

弓削和人
太陽光パネルへ春日垂れており★★★★
藤波をくぐる車両や接骨院★★★
単線の柑子に覚めり山笑う★★★
4月4日(5名)

小口泰與
鯉濃に舌打つ春の信濃かな★★★★
足裏のつぼの数多や桜もち★★★
赤青の新芽ほぐるる春のばら★★★

多田有花
洗濯の前に挨拶朝桜★★★★
鶯の盛んに鳴くや朝の雨★★★
雨あがり清明の朝日差し来たり★★★

廣田洋一
地震の町希望を灯す春の星★★★
黄の花をついと立てたりクローバー★★★
青き葉の先に開きし桜かな★★★

桑本栄太郎
濡れつつも咲きつづけ居り花の雨(原句)
濡れつつも咲きつづけ居り雨の花(正子添削)
意味を考えると添削句のようになるのでは、ないでしょうか。(髙橋正子)

咲き満てど蒼ざめいたる花あはれ★★★
「蒼ざめ」と「あはれ」がつきすぎと、思います。(髙橋正子)

菜種梅雨ふるさと遠くしのびけり★★★

川名ますみ
けさ二輪雲のいろしてさくら咲く★★★★
栗鼠の尾をなびかせており春北風★★★★
雪やなぎの光がビルの向こうから★★★
4月3日(5名)

小口泰與
春の池朝日差し込み麗らかや★★★
水槽に遊ぶ諸子や子犬の眼★★★
集めたる野鳥の本や春うらら★★★

弓削和人
雪やなぎ風にまかせて触れ合いて★★★★
春の風門の構えを越えゆけり★★★
春愁や雑貨の向きを窓際へ★★★

多田有花
高架橋花の姿を近く見て★★★★
せせらぎを聴きつつ咲けり山桜★★★
なつかしき人と再会花の山★★★

桑本栄太郎
雨に濡れ明りとならず花三分★★★★
白れんの傷つき落つや地に襤褸★★★
大正の母の着物や紫もくれん★★★

廣田洋一
雨空に咲きつのりたる桜かな★★★★
枝から枝忙しく飛べる小雀かな★★★
東天に新しき灯や春の星★★★
4月2日(4名)

小口泰與
頬白を追いたるカメラ朝の丘★★★
春なれやわが産土の山と川★★★
朝夕の日の見事なり山笑う★★★

多田有花
花々の向こうに大きく山桜★★★★
道山に迫れば近し山桜★★★
光太郎忌山小屋に籠りたし★★★

廣田洋一
桜咲くいつもながらの子らの声★★★★
新人の挨拶回り桜咲く★★★
ビル谷間ゆっくり上る春の星★★★

桑本栄太郎
日の本の大和ごころや山ざくら★★★
花あはれあまた蕾の三分かな★★★
嶺の端の夕日にじむや花ぐもり★★★
4月1日(4名)

小口泰與
朝寝せり鶯来るを待ちつつも★★★
朝戸出や雉声近し風の中★★★
正面を見据えし雉やほろろ打つ★★★

多田有花
山桜朝の光に咲きそろい★★★★
桜咲く公園に人影はなけれども★★★
紫木蓮咲かせ大きな門構★★★★

桑本栄太郎
川風にしなり枝垂るる柳の芽★★★
摘草の姉妹屈める川辺かな★★★
乙女等の白き足裏(あうら)や青き踏む★★★

弓削和人
菜の花の黄色は陽(ひ)より賜われり★★★
春あけぼの地下鉄階をあがるほど★★★
上座にも下座も等し初桜★★★

自由な投句箱/3月21日~3月31日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/3月21日~3月31日

3月31日(1句)

★今日よりは庭の桜と明け暮れを/小口泰與
庭に桜の木があると、朝夕、桜を眺めることになり、それが生活の楽しみとなる。時間により、日が過ぎるにつれ、いろんな表情を見せる桜との明け暮れは
情趣深い生活。(髙橋正子)
3月30日(1句)

★早起きは雉鳴く声に目覚めおり/多田有花
山の雉が鳴く声を聞くのは、朝早く起きているとき。夜明けも次第に早くなる春の朝の冷たいが、潤いのある春の空気の中に、雉の声に山のかげりを感じながら過ごす貴重な時間がいい。(髙橋正子)

3月29日(1句)

★ふらここを漕ぎし揺れあり二人分/弓削和人
ぶらんこを漕いだあとの揺れがまだ残っている様子。二人が漕いだのだろう、ぶらんこは二つ揺れている。漕いだのは幼い二人の子か、もっと大きい小学生か、想像して、ふらんこを漕いだ昔を思い出してみても楽しい。(髙橋正子)

3月28日(1句)

★白れんの無垢というよりうすみどり/桑本栄太郎
白れんはその純白を特徴とする花。純白は、無垢や清らかさを象徴する色だが、その「無垢」の色というより、「うすみどり」の色だと発見した。白れんは早春から咲き始めるが、春が進むと人の気持ちは「うすみどり」の色合いを感じるのかもしれない。(髙橋正子)

3月27日(1句)

★日を浴びて未だ二輪なる桜かな/廣田洋一
日を浴びた桜を目にするが、まだ二輪しか花を開いていない。咲き始めた二輪の桜への慈しみが感じらる句。(髙橋正子)

3月26日(1句)

★さらさらと流れる川や花を待つ/廣田洋一
桜が咲きそうで、開花宣言がされないこの頃。降り続く雨のせいではなく、積算温度で開花が始まるそうだ。川の水が柔らかく、さらさらと流れるのを見れば、桜の開花も近いと思う。花を待つ心がきれいだ。(髙橋正子)

3月25日(1句)

★降りつつも天の明るき木の芽時/桑本栄太郎
木の芽が立つ頃の天気は、雨が降りながらも、どんよりと暗いのでなく、ほのかに明るい。これこそ、木の芽が芽吹くころの天気。(髙橋正子)

3月24日(2句)

★桜色の傘をさせる子花の雨/多田有花
桜の季節。女の子が桜色の傘をさし花の雨を受けている。それだけで、日本の女の子らしいかわいらしさがある。(髙橋正子)

★囀りや右かと思へば左にも/廣田洋一
鳥の鳴声は四季を通して聞くことができるが、季語としての「囀り」は春の求愛の鳴声のこと。 囀りが聞こえるほうに顔を向けると、そちらだけでなく、反対側からも囀りが聞こえる。右に左に聞こえる囀りに、たのしい、いい季節を実感する(髙橋正子)

3月23日(1句)

★ゆで卵きれいにむけて春の朝/多田有花
春の卵と言えば、「よみがえる」、「生まれる」印象がある。春の朝、ゆで卵がつるんときれいに剥けて光っている。小さな希望のように思える幸せ感がいい。(髙橋正子)

3月22日(1句)

★自転車の光に向ひ漕げば春/小口泰與
自転車を光の方へどんどん漕いでゆくと、春を実感することになった。春を光で感じ取った句に、人の力で動く自転車が大きい働きをしている。(髙橋正子)

3月21日(1句)

★燦々と陽射しながらも春の雪/桑本栄太郎
春の雪は、燦々と陽が射しながら、降ってくる。この明るさが春の雪なのだ。(髙橋正子)

3月21日~3月31日

3月31日(3名)

小口泰與
餌運ぶ鳥の明け暮れ春の風★★★
今日よりは庭の桜と明け暮れを★★★★
遠峯の春あけぼのの山の色★★★

桑本栄太郎
庭梅の小花咲き初む朝かな★★★
坂に沿い疎水に沿いぬ桜咲く★★★
つり鐘の房と咲き居り土佐みづき★★★

廣田洋一
園児らの声上げ渡る春の泥★★★
庭の隅花弁拡げチューリップ★★★
水仙やムスカリの群従へり★★★
3月30日(5名)

小口泰與
沼鯉のあぎとう朝やうららなり★★★
楤の芽やあくまで白き浅間山★★★★
眼間の真白き浅間ばら赤芽★★★

弓削和人
垣の蔦空より春の土くれへ★★★
ふらここの風やふるさと同じ風★★★
パンジーの列ややくずれ幼稚園★★★

廣田洋一
土手道の明るく続き木の芽吹く★★★
公園の園児らの声木の芽晴★★★
春泥を覆ひし水の煌めける★★★

多田有花
軒先を出入り忙しつばくらめ(原句)
軒先の出入り忙しつばくらめ(正子添削)

早起きの雉鳴く声に目覚めおり(原句)
早起きは雉鳴く声に目覚めおり(正子添削)
春はあけぼの磯鵯の声盛ん★★★

桑本栄太郎
入園の幼子愚図る朝の門★★★
初蝶の風に抗い舞い行けず★★★★
下枝より咲き初む朝やさくら咲く★★★
3月29日(5名)

小口泰與
春雪に新聞かざし駐車場★★★
社を挙げて訳あり市や春の朝★★★
木蓮のほけて蒼空日の光★★★

多田有花
はくれんを咲かす家々馬車道に★★★
母乗せて見上げた尾根の山桜★★★★
忘れ物取りに戻りし日永かな★★★

廣田洋一
葉になる木の芽膨らみ緑濃し★★★
ひとつひとつ声をかけたり木の芽晴★★★
子を乗せし自転車はねる春の泥★★★

弓削和人
ムスカリの群青色につづく空★★★
ふらここを漕ぎたる跡の二人分(原句)
「跡」がはっきりするといいです。(髙橋正子)
ふらここを漕ぎし揺れあり二人分(正子添削)

ものの芽の防草の布(ふ)を破りけり★★★

桑本栄太郎
咲き分けの八重の椿や生垣に★★★
花ゑんどう支柱の丈に未だ足らず★★★★
春宵の尾灯つぎつぎ交差点★★★

3月28日(4名)

小口泰與
ばらの木を春雪ほのと覆いける★★★
庭の木の春雪かざる朝まだき(原句)
庭の木を春雪かざる朝まだき(正子添削)
立春も十日も過ぎし寒さかな★★★

多田有花
話はずむ春のケーキをいただきぬ★★★
春の日の銀の馬車道走りけり★★★
うららかや役場もキャッシュレスとなり★★★

廣田洋一
奥ゆかし少女の如く桜草★★★
庭の隅ひっそり咲きし桜草★★★
風なくもかすかに揺れて遊蝶花★★★

桑本栄太郎
木の芽吹くバス通り行く散歩かな★★★
白れんの無垢というよりうすみどり★★★★
釣り鐘の重なり咲くや土佐みづき★★★

3月27日(4名)

小口泰與
剣道の足音一閃春の雷★★★
春なれや足裏に温み伝わりし★★★
あかねさす白き浅間や初桜★★★

多田有花
春雨に濡れしホームへ電車来る★★★
花時や従姉妹同士の食事会★★★
センバツも甲子園も百年の春★★★

桑本栄太郎
山茱萸の葉の無き花や幼保園★★★
縁石を伝う仔犬や草萌える★★★
無垢と云ううすき緑の白木蓮★★★

廣田洋一
日を浴びて未だ二輪なる桜かな★★★★
花馬酔木小さく揺れる神の庭★★★
黒き蜂紅く染めたり陽光桜 ★★★

3月26日(5名)

小口泰與
あかがねの妙義の峰や春夕焼★★★
利根川に浮かぶ春月掬ひたし★★★
噴煙の朝は鳴きけり百千鳥★★★

弓削和人
妻の弾くピアノ凸音桃の花★★★
花冷えや蛇口の水滴知らず落つ★★★
囀りやあめあめ降りて雲切れ間★★★

桑本栄太郎
春雷の何処か遠くに目覚めけり★★★★
誓子忌や凪の浜辺を彷徨いぬ★★★
ぽつぽつとうすき緑の芽吹きかな★★★

廣田洋一
悲しげに鴉鳴きたり春の雨★★★
さらさらと流れる川や花を待つ★★★★
雨の朝辛夷の花の一つ散る★★★

多田有花
雨に始まる三月最終週★★★
反故紙切りメモ帳にする日永かな★★★
雨に濡れミモザの黄色鮮やかに ★★★

3月25日(4名)

小口泰與
春彼岸過ぎ来し足裏白きかな★★★
利根川と阿吽の山の白きかな★★★
あえかなるばらの赤芽や白き山★★★

弓削和人
囀やつま先地につく停留所
「つま先地につく」はどんな情景でしょうか。(髙橋正子)
永き日のピアノ敷布に積読本★★★
春分の菜園いまを立ち止まり★★★

多田有花
<患者会オンラインミーティング二句>
彼岸過Zoomに集う患者たち★★★
彼岸過あわてずあせらずあきらめず★★★
油揚げ大豆とあわせひじき煮る★★★

桑本栄太郎
降りつつも天の明るき木の芽(原句)
降りつつも天の明るき木の芽時(正子添削)

望郷の募るばかりや菜種梅雨★★★
ほんのりと蕾色づく桜の芽★★★

3月24日(4名)

小口泰與
乙女子に遠き春なり大試験★★★
上州の春をののける今朝の冷え★★★
沼の木へ春翡翠のおりおりに★★★

多田有花
降りしきる雨をぬいおり初つばめ★★★
桜色の傘をさせる子花の雨★★★★
厚揚げと韮を炒めて夕食に★★★

廣田洋一
囀りや右かと思へば左にも★★★★
囀りやガラスの森の光りをり★★★
桃の花ぼってりと咲き線路際★★★

桑本栄太郎
<遠い日の上京の追憶>
春宵や想い出胸に上京す★★★
手荷物をチッキに春の出雲号★★★
おそ春や寝台列車の少年に★★★

3月23日(3名)

小口泰與
春雪の降り収まりて庭真っ白★★★★
沼の鯉魚籠よりあふれ麗らかに★★★
おとついの事忘れたる遠霞★★★

多田有花
春朝の靄晴れ快晴の残り★★★
ゆで卵きれいにむけて春の朝★★★★
花冷えのなかに朝の干し物を★★★

桑本栄太郎
木々の枝の赤くうるみぬ木の芽雨★★★
<ふるさとの遠い追憶>
大山の残雪見つつ通学す★★★
春潮のはるかに見ゆる隠岐の島★★★

3月22日(4名)

小口泰與
春光やみどりの森の鳥の数★★★
自転車の光に向ひ漕げば春★★★★
春光のおさなき木の葉つつ包みける★★★

多田有花
昇り来る陽が溶かしおり春の霜★★★
彼岸かな部屋に朝日の入り初めし★★★
初桜今年はこちらの尾根に咲き★★★★

桑本栄太郎
淡雪の日当たりながら降りにけり★★★
悪戯つ子の帰り静寂や春休み★★★
<遠き日の追憶>
残雪のありて峡なる母の里★★★

弓削和人
駅頭に集まる春の衣かな★★★
春分のきざはしあえて登りけり★★★
貨車は荷を載せたままなり百千鳥★★★★

3月21日(4名)

小口泰與
男盛りを過ぎても男春の雪★★★
辞書揃え春の句会を怠らず★★★
春寒し赤城の風を浴びにけり★★★

廣田洋一
ふっくらと鰆煮えたり吟醸酒★★★
鋤返す土の香りて春田かな★★★★
小諸なる古城の町の春田かな★★★

多田有花
岩津葱抱えて春分を来たり★★★
手作りのデザート春分に届く★★★
春分の荒れ去り日差しのあふれおり★★★

桑本栄太郎
春雪の斜めによぎる嵐かな★★★
燦々と陽射しなれども春の雪★★★★
「燦燦と・・なれども」を添削しました。
燦燦と陽射しながらも春の雪(正子添削)
佐保姫の裳裾おさえる春あらし ★★★

自由な投句箱/3月11日~3月20日

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今日の秀句/3月11日~3月20日

3月20日(1句)
★にわか雨待ちて暫く春の風/弓削和人
「にわか雨」を「待つ」は、時間的に言えば、あり得ないが、短い時間を総体的に捉えた場合の感じ方と思えばいい。にわか雨が降りそうな感じがして、春の風が暫く吹いたという。(髙橋正子)
3月19日(1句)

★山茱萸の花にしばらく晴れ続く/多田有花
山茱萸の花が咲くころ、晴れの日が続くと、気持ちが晴れやかになる。山茱萸の花の黄色と青空の対比にはおどろくほどの明快さがある。(髙橋正子)
3月18日(1句)

★ごうごうと雪解谷川近寄れず/小口泰與
雪解の谷川は、雪解け水にごうごうと鳴り響き、そこに飲み込まれたらと思うと、恐ろしい。「近寄れず」の思いを強くする。(髙橋正子)

3月17日(1句)

★春場所や浪花の空のにわか雨 /桑本栄太郎
春場所は三月大阪で催される。この季節は、春の長雨や、急な天気の変化があって、浪花ののどかな空もにわか雨に見舞われる。「浪花」と「春場所」が句に雰囲気を与えている。(髙橋正子)

3月16日(1句)

★公園のいずこも子らに日永の陽/多田有花
日が永くなると、公園にもくまなく陽があたり、子供たちが大勢遊ぶようになる。明るい陽のしたで、元気に遊ぶ子供たちを見るのは楽しいことだ。(髙橋正子)

3月15日
該当句無し

3月14日(2句)

★一日を終えし雲かも鳥帰る/弓削和人
空の雲も空で一日を過ごす、という感じ方がいい。一日を過ごした雲の中へ、入っていくように、鳥たちは北へ飛んでいく。詩情をもって詠まれた句。(髙橋正子)

★子午線を越えれば春の大橋に/多田有花
明石には東経135度の子午線が通っている。最初に子午線が引かれたのが、今から113年前というから、ずいぶん古い。子午線のある街、その子午線をこえれば瀬戸を渡る大橋につながる。このスケール感がたのしい。(髙橋正子)

3月13日(1句)

★蕨狩りひとり離れて切りもなし/廣田洋一
数人で蕨狩りに出かけたとしても、次々蕨を見つけて、人から離れていってしまう。それほどたくさんの、きりもないほどの蕨があって、十分に蕨狩りを堪能したのだ。(髙橋正子)

3月12日(1句)

★鎌倉や八重の椿の盛りなる/廣田洋一
古都鎌倉が良い季節を迎えた。椿の多種多様なこと。八重の椿も、寺を巡れば、一寺に何種類もあって、楽しめる。可憐な花から妖艶な花まで。(髙橋正子)

3月11日(1句)

★新句碑を据ゑて整へ春の土/廣田洋一
新しい句碑を据えるのに、土を動かしたのだろう。据えてから、きれいに土を整え句碑が建立された。新しい句碑がいきいきとしているように思える。(髙橋正子)

3月11日~3月20日

3月20日(4名)

小口泰與
如月や里の社に絵馬の数★★★
のどかさに言葉巧みな鸚鵡かな★★★
松の花おぐらき森の鳥の数★★★

多田有花
小綬鶏の朝から盛んに鳴くことよ★★★
干し物を乾かす彼岸の風ひかり★★★
春の庭ゴールデンクラッカー弾けおり★★★

桑本栄太郎
目覚めいて夢想い出す朝寝かな★★★
春陰の枝先更にうるみけり★★★
午後よりの風雨強きやお中日★★★

弓削和人
にわか雨待ちて暫く春の風★★★★
春雨やど真ん中なるスカイツリー★★★
椿落つ余白に憩うようにおり★★★
3月19日(5名)

小口泰與
春なれや餌を見つけし野鳥二羽★★★

鶯や水面をかすむ風やわき(原句)
鶯や/水面をかすむ/風やわき
「かすむ」はマ行下二段活用の文語動詞です。かすむと終止形にした場合、句が3つに切れてしまいます。これは避けます。
鶯や水面かすむる風やわき(正子添削)

苗代や郷の親爺の自慢にて★★★

弓削和人
春雪やとまりたそうな波がしら★★★
石階に春や花鉢ととのえて★★★★
虫出しの雷のゐる湖沼かな★★★

多田有花
囀りが降り来る頃となりにけり★★★
山茱萸の花にしばらく晴れ続く★★★★
彼岸かなそぞろ歩きの軽やかに★★★

桑本栄太郎
山茱萸の軒の明るき狭庭かな★★★
スイスへと遠出の孫の春愁う★★★
春陰の今に降りだすような空★★★ 
 
廣田洋一
湘南の台地に残る春田かな★★★
春田奥高架鉄道通りけり★★★
旬と言ふ値札に惹かれ鰆買ふ ★★★

3月18日(4名)

小口泰與
ごうごうと雪解谷川近寄れず★★★★
曇天のわけても峡の冴返る★★★
佐保姫を招き寄せたる豁の郷★★★
 
多田有花
なるほどと暑さ寒さも彼岸入★★★
髪多きは幼き日より初手彼岸★★★
いぬふぐりまだ地に近く咲いており★★★

廣田洋一
公園の新しき池春の草★★★
残雪に煙りうっすら浅間山★★★
独り居の厨に座り春眠し★★★

桑本栄太郎
建付けの悪きドア鳴り春疾風★★★
くいくいと日差しに向う桜芽木★★★
釣り鐘の重なり咲くや土佐みづき★★★

3月17日(4名)

小口泰與
落椿ふいに二手に分かれけり(原句)
落椿ふいに二手に流れけり(正子添削)
鳥の恋森の緑のわかわかし★★★
料峭や九十九折なる山の径★★★

廣田洋一
くっきりと犬の足跡春の土★★★
門の側つらつら椿客迎へ★★★
春眠し陽光浴びて深呼吸★★★

多田有花
永き日の交差点に人溢れ★★★★
父は子を肩車してうららけし★★★
春の夕われ乗せ電車は西へ西へ★★★

桑本栄太郎
朝の日の俄か曇りぬ春しぐれ★★★
木蓮の遅速あり居り咲く構え★★★
春場所や浪花の空のにわか雨 ★★★★
3月16日(5名)

小口泰與
芽柳や浅間はいまだ白きまま★★★
楓の芽ほつほつと解く山の風★★★
楤の芽や山路荒れたる風の音★★★

弓削和人
鷹鳩に化すしらじらと雲すきま★★★
誰となく北窓をひらく草そよぐ★★★
半仙戯まなかいの山越ゆるかな★★★

廣田洋一
線路際古巣忘れず燕来る★★★
新築の軒に巣作り燕かな★★★★
白き球空に浮かべて辛夷かな★★★

多田有花
つややかな髪に春陽のあたりおり★★★
春風の中をかけゆくランドセル★★★

公園のいずこも子らに満つ日永(原句)
「日永が満つ」は言葉の使い方が不自然なので直しました。(髙橋正子)
公園のいずこも子らに日永の陽(正子添削)

桑本栄太郎
木蓮のにつと微笑み咲く構え★★★
春日燦々ひがな捗る大掃除★★★
春宵や鴉ねぐらへ二羽三羽★★★
3月15日(4名)

多田有花
おだやかに須磨の浜辺は春陽満ち★★★
地下鉄を出て三月の陽のなかへ★★★
春昼や待合室でランチとす★★★

小口泰與
じあしあと春の水湧く小川かな★★★
山茱の台座開きて黄の玉
眼間の庭の木の芽のわかわかし★★★

弓削和人
かりそめに春の寒さを言い合える★★★
長靴を仕舞いし暮のなごり雪★★★

みちのくの陽ちらと見ゆ朝霞(原句)
「見(み)ゆ」は「見える」と言う意味です。「見ゆ」は「見る」に受身・自発・可能の意味が含まれた動詞で、自分からではなく自然と見える時に使われます。 
みちのくの陽ちらと見ゆ朝霞(正子添削)

桑本栄太郎
歩みゆく眼前や嶺の遠かすみ★★★
初蝶の翅をひこひこ震え居り★★★
遅咲きと云えど紅梅色の濃く★★★
3月14日(5名)

弓削和人
一日を終えし雲かも鳥帰る★★★★
ものの芽にものごころつくわっぱかな★★★
糸遊の数だけ行楽人だかり★★★

多田有花
病院へ春の電車を乗り継ぎて★★★
子午線を越えれば春の大橋に★★★★
春風が発電風車を回しおり★★★

小口泰與
卒業や日向日陰を尾根分かつ★★★
迫り来る白き浅間や竹の秋★★★
庭の木の蔓を鎧て忘れ雪★★★

廣田洋一
白々と三分開きし辛夷かな★★★
朝日浴び繚乱たるや雪柳★★★
古き家の入口飾る桜草★★★

桑本栄太郎
白れんの開き今にも翔びたそう★★★
ベランダの春日燦々干しふとん★★★
稜線のうすき茜や春の宵★★★

3月13日(5名)
弓削和人
春曙朗唱の句ののびやかに★★★
春風邪の予感に羽織る小雨かな★★★

一と声の白鳥春の窓辺かな(原句)
白鳥の一と声春の窓辺かな(正子添削)

小口泰與
残雪の溶岩の浅間や木木の色★★★
深渕の水の流転や山笑ふ★★★
水槽に昼夜を通し春目高★★★

桑本栄太郎
夜もすがら雄叫び聞きぬ春疾風★★★
戻り来て日差し明るき春の雨★★★
料峭や妻の帰宅を外で待つ★★★

多田有花
ピアノコンチェルトを聴く春の部屋★★★
雲間より夕陽さしけり春しぐれ★★★
春三日月明るさ残る夕空に★★★

廣田洋一
くるりと巻く芽を目印に蕨摘む★★★
蕨狩りひとり離れて切りもなし★★★★
口揃へ春を告げをる風信子★★★

3月12日(4名)

小口泰與
裏庭の蓬生の荒れ他も知らず★★★★
粉塵の廊ふき取りし春の夕★★★
埒も無き物を咥えし春の雁★★★

廣田洋一
雨上がり湿る匂ひや春の土★★★
鎌倉や八重の椿の盛りなる★★★★
顔寄せて香り確かめ沈丁花★★★

桑本栄太郎
コンクリートの割目繋ぎぬ草芽かな★★★
父母在りてこその故郷や春愁う★★★
雨風の斜めに吹くや春疾風★★★

多田有花
炒めおり巻きやわらかき春キャベツ★★★
花束の香り溢れる春の部屋★★★
きさらぎや真正面に城ありて★★★

3月11日(3名)

小口泰與
春鳥の声の汚れて枝に居り★★★
梅咲くや赤城のすそ野どっしりと★★★
一族の齢を超ゆや春うらら★★★

桑本栄太郎
風光る手押し車に子犬かな★★★
東北のあの日あの時震災忌★★★
上空を飛行機雲や遠かすみ★★★

廣田洋一
ほぐしたる土の匂ひや診療所★★★
新句碑を据ゑて整へ春の土★★★★
生垣のつらつら椿空見上げ★★★

生成AIの見る自由な投句箱

生成AIが、世間で話題になっています。では、「自由な投句箱/3月1日~3月10日」を生成AIはどう見ているでしょうか。

<生成AIの内容>
自由な投句箱の3月1日から3月10日までの季節の句をご紹介いたします。以下はいくつかの素敵な句です:

弓削和人さんの句:
沫雪や湖の漣舐め尽くし
ものの芽のわれさきの芽と競いけり
雪解けの水すくなしと言い交わす

小口泰與さんの句:
雨の中ぽつと一輪梅の花
ぼつぼつと枝を震わす梅の花
梅早も開きて鳥の声盛ん

多田有花さんの句:
春の夜にひとりホルンの音を聴く
三月やいま人生のどのあたり
春なかば河川工事の進みおり

桑本栄太郎さんの句:
夜もすがら咆哮聞きぬ春北風
起き見ればベランダ荒るる春疾風
ぎらぎらと日差し眩しく三月に

これらの句は、春の美しさや季節の移り変わりを詠んでいますね。心が動く瞬間を切り取った素晴らしい句です。
●ご感想があれば、下のコメント欄にお書きください。
2024年3月9日
髙橋正子