1月8日-14日

1月14日(6名)

●川名ますみ
【原句】青天に裸の銀杏枝払う
青天に銀杏裸木枝払われ★★★★(正子添削)
真っ青な空にそそり立つ銀杏の裸木。この季節に枝が打ち払われ、すっきりと樹形が整えられる。芽吹く季節が楽しみだ。(高橋正子)

胸もとのスワロフスキー冬の灯に★★★
冬の夜にスワロフスキー揺れており★★★

●小口泰與
葉牡丹の葉虫の穴のまた増ゆる★★★
青空や裾野も雪の浅間山★★★
からからに乾びし大地虎落笛★★★★

●河野啓一
冬温し夕日に映ゆるちぬの海★★★

枯芝に青きを探し小道ゆく★★★★
小道を辿り、枯芝の根本を覗きこんだりすると、柔らかな緑の芝が目につき、驚く。表面の枯れ色からは、想像もできないけれど、着実に春への準備がされている。小道を辿る楽しさとなる。(高橋正子)

寒中に旧友(とも)の訃報を知らされて★★★

●多田有花
青空へおのおの枝を寒の木々★★★★
寒晴れの浪花の街のアイスショー★★★
アイスショーリンクの上の成人式★★★

●桑本栄太郎
<鴨川・四条大橋>
曇り来る遙か鞍馬や雪もよい★★★★
四条大橋からの眺め。空が掻き曇る思えば遥か鞍馬は雪催いのようだ。鞍馬へと思いが馳せ、動きのある句となった。(高橋正子)

【原句】川中に突つ込み餌の百合かもめ
川中に突っ込み餌獲る百合かもめ★★★(正子添削)

冬萌えや土手に日射しの留まりぬ★★★

●小西 宏
発電の煙の高く太く冬★★★
満天星(どうだん)の冬芽の紅し空青し★★★★
枯芝を駆けて嘴餌(え)を咥う★★★

1月13日(5名)

●古田敬二
夢に見る
頬に皹指に皸少年期★★★
皹の頬皸の手で風呂を焚く★★★★
皸の手で風呂釜に火吹き竹★★★

●小口泰與
夕影の湖の一点大白鳥★★★
夕映えの湖へ着水大白鳥★★★★
夕映えの湖に大白鳥が羽を広げて、シルエットのように着水する。着水の水しぶきがきらめく。大白鳥の存在感に固唾を呑むような素晴らしい光景だ。(高橋正子)

老いてなお着飾る我や日脚伸ぶ★★★

●河野啓一
冬枯れて野に万葉の遺跡かな★★★★
初場所や神も宿るや熱気満ち★★★
山眠る箕面の山も六甲も★★★

●桑本栄太郎
冬日さす車内まぶしき家路かな★★★★
晴れた日には、日脚が伸びた印象がもてるこの頃。所用で出かけた車内にも冬日がまぶしく差し込んで、家路もうららかな気持ちになる。(高橋正子)

剪り口の白き並木や冬ざるる★★★
漱ぎもの干すや山よりしまき風★★★

●多田有花
リフォームのレッグウォーマー寒四郎★★★
城跡の残りし山へ初登山★★★

寒晴れに山城の山連なりぬ★★★★
「山城の山」に連なる山々が見渡せ、寒晴れの空のもとに、気持ちが壮大になる。(高橋正子)

1月12日(8名)

●多田有花
寒の光照り返してや照葉樹★★★
寒の雲陸より海へ流るる昼★★★★
初打ちのコートを出ればしぐれかな★★★

●小口泰與
上州へ風花おろす赤城山(あかぎ)かな★★★★
また一人寒鮒釣りに現れし★★★
ぼつぼつと終活準備日脚伸ぶ★★★

●内山富佐子
冬ざるる通りにポストひとつ立つ★★★★
大き口開けて雪呑む流雪溝★★★
街角に小さき地蔵埋もれをり★★★

●祝恵子
水流し七草の葉を選りわける★★★★
七草のパックが売られているが、ひとまとめになった七草を、名を確かめながら水を流して洗い選り分ける。七草が揃っているのも新春らしくてうれしいものだ。「水を流して」に七草に清冽さが加わった。(高橋正子)

阿吽の像めざめし蕾冬の梅★★★
句帳出しメモして急ぐ冬の街★★★

●桑本栄太郎
<京都ゑびす神社>
青空を掃かんとしたり枯柳★★★
福笹の京の町家に露店かな★★★
ちらほらと笹の路地ゆく残り福★★★★

●河野啓一
若者に意見難し寒の水★★★
誇り高く咲いて散りしも枇杷の花★★★
子らの乗る車の行く手冬夕焼け★★★★

●佃 康水
青竹に並ぶ柄杓や初詣★★★
回廊に薦樽積まれ淑気満つ★★★

餅の花菓子舗の梁に幹這わし★★★★(正子添削)
正月の餅花を個人の家で飾ることは少なくなったが、菓子舗などでは華やかに飾っていることがある。この菓子舗は老舗なのだろう。梁も立派で、その梁に添わせて幹の堂々とした餅花が大ぶりで新春の明るさを振りまいている。(高橋正子)

●小西 宏
餌(え)を撒けば池の氷を駆ける鳩★★★
声掛け合い松持って今日どんど焼き★★★★
枯山の朱のやわらかに夕映える★★★

1月11日(7名)

●小口泰與
水仙を朝の冷気と剪りにけり★★★★
ごうごうと風吹く里や水仙花★★★
鳶を追う二羽の鴉や雪浅間★★★

●内山富佐子
雁木下町内のどんど焼き告ぐ★★★★
雁木のある雪国にも、正月のお飾りなどを集めて焼く「どんど焼き」の日が来た。雁木を通って町内に「どんど焼き」を知せて歩く雪国の暮らしがしのべる。(高橋正子)

引越しの荷物並ぶや蔵開き★★★
背の丈の万両のある店の景★★★

●迫田和代
春近く原爆ドームや空高く★★★
ごうごうと白波狂う冬の海★★★

雪道と朝焼けの色混じり合う★★★★
雪道を朝日が染めて、雪に朝焼けのバラ色が見える。雪道に絵画的な明るい美しさを見た。(高橋正子)

●小川和子
 佐倉
正月の枯木影なす城址かな★★★
竹林に日差しゆたかや藪椿★★★

 追悼
友召され岩木の山に雪降り積む★★★★
岩木山は津軽富士と呼ばれているが、富士山よりも優しい山容。岩木山を友と眺めたことであろうが、その友が天に召されて、ただ今は、静かに雪が降り積もる。悲しみがあまりにも静かである。(高橋正子)

●桑本栄太郎
(鴨川、四条大橋)
橋上の人集まりぬ都鳥★★★
外つ人の橋にあまたや初写真★★★
寒釣りや底のきらめく竿の先★★★★

●河野啓一
七福神めぐり終わりしご朱印帳★★★★
正月のテレビを孫子とともに見る★★★
初凪や鳥声さえも澄みわたり★★★

●古田敬二
風邪癒えて山茶花朝に透き通る★★★
風邪癒えて庭の山茶花いよよ紅★★★
湯たんぽを抱きて山本周五郎★★★★

1月10日(5名)

●小口泰與
蝋梅や妙義山(みょうぎ)の風のやわらかし★★★★
轆轤のこけしの音や寒椿★★★
侘助に雨の校庭子犬かな★★★

●河野啓一
戎講青笹どっと奉じられ★★★★
この句は100万人の人出で賑わうという今宮神社の十日戎の様子だろう。福笹の青笹に千両万両の小判を付けて捧げる。青笹は目に爽やかで、芳しく縁起がよい。それが「どっと」というほどの量で思わず笑みがこぼれる。(高橋正子)

お偉方揃いの法被で戎講★★★
天下茶屋戻れば今宮戎かな★★★

●桑本栄太郎
<雪の四条大橋界隈>
雪積みの祇園小路や弁柄壁★★★★
寒釣りの魚籠(びく)下がり居り鴨川に★★★
せせらぎの小枝雪乗せ高瀬川★★★

●小西 宏
泥にまみれ素手赤くして氷遊び★★★★
遊ぶ野に冬暖かな日の恵み★★★
藪低く冬鶯の跳ぶ忙しさ★★★

●古田敬二
庭のものまん丸くして雪積もる★★★★
暁暗に仕事はじめの子を送る★★★
薄暮なる街路樹枝までくっきりと★★★

1月9日(6名)

●小口泰與
我が影の冬田越えける朝ぼらけ★★★
寒梅や湯宿の柱黒光★★★★
寒鴉声高らかや家庭ごみ★★★

●河野啓一
千両を鳥運び来て木の根元★★★★
ほのかなる食パン焼ける香りして★★★
正月も歯を大切に医者初め★★★

●祝恵子
スノータイヤ履かせ犬連れ皆でくる★★★
穂を散らす注連縄つつく雀いて★★★

五日には天神宮へペダルこぐ★★★★
松の内も過ぎ、五日となった今日は、日常に戻りはしたもののどこか正月気分がまだ残っている。馴染みの天満宮まで自転車を漕いで初詣がてらに出かけたのであろうか。うきうきした気分楽しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<雪の桂川>
蕭条と白き中洲や枯尾花★★★
<雪の四条大橋>
見渡せば遙か鞍馬や雪の嶺★★★
南座の大屋根雪の初化粧★★★★

●小西 宏
ユニクロで身を固め行く冬の月★★★
動かざる人あり寒の松手入★★★★
枯れ蔦にまだ住む人の在りや無しや★★★

●高橋秀之
松過ぎて神社の本殿幕を替え★★★★
八日の町名残りは門松だけとなり★★★
尾道へ在来線の旅初め★★★

1月8日(6名)

●古田敬二
夕食は鍋よと菜を抜く鍬初め★★★
子へ持たす最後の一株冬野菜★★★★
銀色に光りて遊ぶ冬花芽★★★

●小口泰與
山風のビル駆け抜けし達磨市★★★
群雀四方に居りし枯野かな★★★★
蕭条とした枯野にも、四方に雀の群れが居て草の穂からこぼれた種などを啄んでいる。枯野と言えど生き生きと暮らす雀を育んでいる。(高橋正子)

あけぼのの霜を鎧ひし車かな★★★

●河野啓一
餅花の明るき朝やデイの窓★★★★
正月明けデイサービスに通うと、窓には餅花が明るく、柔らかな色合いで垂れ下がっている。目にすれば心和む餅花だ。(高橋正子)

成人式羽織袴のリハーサル★★★
枯れ葎光るものあり寒の入り★★★

●桑本栄太郎
<三日夕方山口から京都へ>
孫を抱きうから確かむ三日かな★★★★
汽笛鳴り別れ哀しき三日かな★★★
冬茜うしろに残す車窓かな★★★

●小西 宏
釣り人の石投げ池の氷割る★★★
冬ざれの小山の円し青空に★★★★
葉を削ぎて棘(いばら)に重し冬の薔薇★★★

●佃 康水
空曇るかに旋回す鴨千羽★★★
人日や眼科受診にお墨付き★★★
 
松過ぎや漆器を布に包み入れ★★★★
松も過ぎ、正月に使った雑煮の椀や、お節の重箱などをしまう仕事がある。漆器を傷めないように、布に包んで箱にしまう。正月を無事終えた安堵に加え、「松」「布」の言葉から、漆器の柔らかな艶がことさら印象に残る。(高橋正子)

●デイリー句会投句箱/1月1日~7日●

◆新年の投句を再開してください。入賞作品は、すでに4日、5日、7日投句分を発表いたしておりますので、ご覧ください。

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/1月1日~7日

[1月7日]

<秋吉台、秋芳洞へ>
★赤瓦屋根の光るやしずり雪/桑本栄太郎
秋吉台あたりは、赤褐色の石州瓦で葺かれている屋根が多い。石州瓦は焼かれる温度が高く、凍害に強く、雪国の瓦によいということだ。その赤い瓦屋根に雪が斑に残って白と赤の対比も美しいが、雪がしずり落ちる家々の様子にも情緒がある。(高橋正子)

★図書館に絵本を返し松納/小西 宏
正月の幼い来客のために絵本を図書館で借りて用意していた。お孫さんたちであろうが、帰られたあと、絵本を図書館に返し正月も一段落、松納となった。すてきな図書館の利用に感心した。(高橋正子)

★冬耕す背に夕風の届くまで/古田敬二
正月も開けて野に出て耕すこと始めた。畑仕事に勤しんで、楽しさもあって夕風が背を吹くころになって鍬を置いた。いい一日。(高橋正子)

★寒雀木立の枝を上り下り/河野啓一
寒雀の様子を見ていると、枝を上ったり、下りたり。その愛らしい仕草は見て飽きない。(高橋正子)

[1月5日]
★雪の間に日向ありけり福寿草/小口泰與
雲間に日差しが見えて、その日差しが福寿草に届く。福寿草の咲き方と言えば、そんな光景が私にはふさわしいように思える。(高橋正子)

[1月4日]
★天辺を揃えて尖る冬木立/古田敬二
冬木立の凛とした様子が、「天辺を揃えて尖る」にきっぱりと表現されている。読むものにも緊張感を与えている。(高橋正子)

★賑わいを離れて桜冬木立/小西 宏
初詣で寺社にゆくと、冬芽を付けた桜の木立が、初詣の賑わいをよそに、別世界のように立っている。世の賑わいをよそに、自然はたしかな歩みを続けている。(高橋正子)

[1月3日]
★床の間に早や一輪の梅ひらく/佃 康水
床の間に活けた梅の固い蕾が、部屋のぬくもりで、一輪開いた。早も開いた驚きと、その清らかさに魅了された。(高橋正子)

★新年の手水の青筒真新し/祝 恵子
初詣の手を清めようと手水に寄れば、真新しい青竹の筒から水があふれている。清々しさに、新年の淑気があふれている。(高橋正子)

[1月2日]
★故郷は狭き空なり冬北斗/古田敬二
狭き空は、山国の空だ。その深く澄んだ夜空に北斗星がつぶらな星を並べている。それが敬二さんの故郷なのだ。(高橋正子)

 祖母葬儀
★冬ばらの手に軽きこと別れ花/川名ますみ
優しかった祖母とのこの世の別れに白いばらを棺に入れる。まるで空気のように軽く、魂のような白い薔薇に悲しみが象徴される。ご冥福をお祈りいたします。(高橋正子)

[1月1日]
客船の汽笛が横浜(はま)の除夜の鐘/小西 宏
横浜の港に停泊する客船が汽笛を除夜の鐘のように鳴らし年を送る。異国へと開かれている港町の除夜だ。(高橋正子)

2015年1月1日-7日

1月7日(4名)

●桑本栄太郎
<秋吉台、秋芳洞へ>
赤瓦屋根の光るやしずり雪★★★★
秋吉台あたりは、赤褐色の石州瓦で葺かれている屋根が多い。石州瓦は焼かれる温度が高く、凍害に強く雪国の瓦によいということだ。その赤い瓦屋根に雪が斑に残って白と赤の対比も美しいが、雪がしずり落ちる家々の様子にも情緒がある。(高橋正子)

冬夜空ありと見えしは鍾乳石★★★
淑気満つ時の折り為す黄金柱★★★

●小西 宏
孫らみな帰り二人のおせち重★★★

図書館に絵本を返し松納★★★★
正月の幼い来客のために絵本を図書館で借りて用意していた。お孫さんたちであろうが、帰られたあと、絵本を図書館に返し正月も一段落、松納となった。すてきな図書館の利用に感心した。(高橋正子)

枯芝に影長きかな球拾い★★★

●古田敬二
冬耕す背に夕風の届くまで★★★★
正月も開けて野に出て耕すこと始めた。畑仕事に勤しんで、楽しさもあって夕風が背を吹くころになって鍬を置いた。いい一日。(高橋正子)

それぞれの願いや長蛇の初詣★★★
我が街を静かに包んで雪積もる★★★

●河野啓一
寒雀木立の枝を上り下り★★★★
寒雀の様子を見ていると、枝を上ったり、下りたり。その愛らしい仕草は見て飽きない。(高橋正子)

実南天夕陽の中の宝珠かな★★★
二人して七草粥の湯気の中★★★

1月5・6日(2名)

●小口泰與
パソコンを始動させけり初仕事★★★
雪の間に日向あり福寿草★★★★
遠山に棚引く雲や霜畳★★★

●下地鉄
冬空の暮れいくままの月明かり★★★★
冬空に水脈引く雲の流れかな★★★
届けし賀状に止める齢かな★★★

1月4日(6名)

●小口泰與
往復のプールの中の御慶かな★★★
楪や白き浅間へ鳶一羽★★★
山風に裏白反りし寺の庭★★★★

●古田敬二
恙無しどかと年賀を投函す★★★
門松の竹の切り口鮮やかに★★★
天辺を揃えて尖る冬木立★★★★

●内山富佐子
経唱へ終へれば吹雪収まりぬ★★★★
去年今年一病持ちて歩み行く★★★
昨晩の馳走浮かべて雑煮かな★★★

●多田有花
端はまだくるりと巻いて初暦★★★
三ヶ日あけて日差しの明るさ増す★★★
新春の絵馬を求めて山下りる★★★★

●桑本栄太郎
<防府天満宮へ初詣>
風雪の野原に舞いぬ佐波川★★★
幼児の顔雪にかたまり初詣★★★
初詣終えて休憩梅が枝餅★★★★

●小西 宏
賑わいを離れて桜冬木立★★★★
正月の白き夕日に山連なる★★★
空冷えて街にも星の澄みわたる★★★

1月3日(4名)

●小口泰與
二日はや洗い晒しの紺暖簾★★★★
真っ白な浅間山(あさま)定かや三が日★★★
初雪や部屋に真紅のばらを活け★★★

●佃 康水
床の間に早や一輪の梅ひらく★★★★
床の間に活けた梅の固い蕾が、部屋のぬくもりで、一輪開いた。早も開いた驚きと、その清らかさに魅了された。(高橋正子)

子ら発つ日ひたぶるに雪降り込めり★★★
子ら発ちし後や静かに風邪籠り★★★

●小西 宏
枯芝に凧揚げの声賑わえる★★★★
風なくて陽に家族ある三日かな★★★
箱根より駅伝帰る日本橋★★★

●祝恵子
注連縄と日の丸立てている玄関★★★
巫女に受く破魔矢とお札とおみくじと★★★

新年の手水の青筒真新し★★★★
初詣の手を清めようと手水に寄れば、真新しい青竹の筒から水があふれている。清々しさに、新年の淑気があふれている。(高橋正子)

1月2日(6名)

●小口泰與
正月や谷川岳に朝日差す★★★★
今日の利根川(とね)流れ新たの今年かな★★★
初暦シルクロードの郁夫の絵★★★

●古田敬二
冬の川向こう山裾高山線★★★
故郷は狭き空なり冬北斗★★★★
狭き空は、山国の空だ。その深く澄んだ夜空に北斗星がつぶらな星を並べている。それが敬二さんの故郷なのだ。(高橋正子)

山眠る父母ありし頃の形★★★

●多田有花
元朝の風の強きに向かい立つ★★★
初春や白浪のたつ播磨灘★★★
雪を置く屋根にさしけり二日の陽★★★★

●河野啓一
孫ら来て四方山話初日記★★★
二上山二日の朝日峰々に★★★★
冬の月東の空に顔を出し★★★

●高橋秀之
夢や目覚めとともに忘れさり★★★
夕暮れに俄かに吹雪く奈良の路★★★★
じんわりと金粉入りの屠蘇の味★★★

●川名ますみ
 祖母葬儀
冬ばらの手に軽きこと別れ花★★★★
優しかった祖母とのこの世の別れに白いばらを棺に入れる。まるで空気のように軽く、魂のような白い薔薇に悲しみが象徴される。ご冥福をお祈りいたします。(高橋正子)

冬薔薇の白き空気を手のひらに★★★
重さなき冬の白ばら棺へ入る★★★

1月1日(4名)

●小口泰與
丑三つの井戸水汲みし年新た★★★
元旦の高層ビルに朝日かな★★★★
朝日差す日の出に礼し年始★★★

●小西 宏
団欒の炬燵しずかに鐘の音★★★
客船の汽笛が横浜(はま)の除夜の鐘★★★★
横浜の港に停泊する客船が汽笛を除夜の鐘のように鳴らし年を送る。異国へと開かれている港町らしい除夜だ。(高橋正子)

行く年の保存コピーしパソコン閉ず★★★

●下地鉄
ガタがきてストーブのうなり遠くまで★★★
独り身に行く年さりて水脈を曳き★★★★
冬の月流れる雲のうす明かり★★★

●高橋秀之
陽の光厚き冬の雲からこぼれだす★★★★
冬紅葉見つつわが家へ急ぎ足★★★
新年と同時に携帯鳴り続く★★★

●デイリー句会投句箱/12月21日~31日●

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/12月21日~31日

[12月31日]
山茶花へ朝陽明るし今日が来る/古田敬二
山茶花の花へ朝日が射すと、今日が明るく、溌剌とやって来たと思う。山茶花の花の明るさがよい。(高橋正子)

[12月30日]
注連かざる江戸よりつづく太柱/小口泰與
代々続く家の太柱に注連が飾られ、風格のある注連飾りとなった。新年のめでたさも一層である。(高橋正子)

[12月29日]
寒柝や高き子の声まぎれ居り/祝 恵子
凍てつく寒い夜に打ち鳴らされる寒柝の音は、もの寂しさを感じさせる。その拍子木の音に、子どもの高い声で「火の用心」と元気に叫んでいるのがまぎれている。微笑ましく、ほっと心和むのだ。(高橋正子)

[12月28日]
★松積んで軽トラがゆく年の暮/多田有花
歳晩の風景としてめでたい。軽トラックに乗るほどの松の枝。常盤の緑がいきいきとして弾んでいるようだ。(高橋正子)

[12月27日]
★雪山を間近く仰ぐ頂に/多田有花
山に登り頂に立つと、雪山は、頂よりもさらに高く聳え間近に見える。山に登りさらなる雪山が身近に迫り、すばらしい。(高橋正子)

[12月26日]
★冬山の襞ひと所へ夕日差す/小口泰與
凛とした冬山の襞のひと所を浮かびあがらせ、今日の日を終える夕日が力強い。(高橋正子)

[12月25日]
★菜を刻むその音すらも歳の暮/河野啓一
冬至を過ぎ、ほんのわずかに日は長くなってきているが、暮れ方はやはり歳晩の感じが強まる。夕餉の仕度の菜を刻む音にも「年の暮」が感じ取れる。(高橋正子)

[12月24日]
★今着きしカードも飾るクリスマス/川名ますみ
クリスマスの楽しさは、クリスマスに纏わるいろいろなものを飾る楽しみにもある。クリスマスに合わせて届いたカードも早速飾ると、楽しさがまた加わる。(高橋正子)

[12月23日]
★木枯らしや友の訃報のメール鳴る/古田敬二
木枯らしが吹き、寒さが募る日、携帯電話のメール着信音が鳴る。予期せぬ着信音に何か予感を感じてメールを開けたのでは。着信音は、自然の深くから鳴って来たように思われる。(高橋正子)

★括られし白菜畑の畝真直ぐ/小川和子
白菜がしっかりと玉を巻いた畝がまっすぐに続く。冬の清潔さを思わせる風景だ。(高橋正子)

[12月22日]
★冬至真昼海の輝きの極む/多田有花
一年で一番昼が短い冬至だが、真昼に海を見れば、海は力強く輝いている。太陽はその力を真昼に集中させている。冬至を詠んだ句では珍しい。(高橋正子)

★花八手食器の触れあう厨窓/桑本栄太郎
八手は、厨の窓の下あたりによく植えられている。厨の窓からは、食器の触れ合う音が聞こえる。食器の音から湧くイメージは白い磁器だが、花八つ手の白い花と静かに響きあっている。(高橋正子)

[12月21日]
★乗り換えの国ざかい駅雪深し/福田ひろし
乗り換えで立ち降りた駅は国ざかい。思わぬ雪の深さに、国を境に、こんなにも雪の降りようが違うものかと感慨も深む。(高橋正子)

★コンクリの坂に冬樹の影を踏む/小西 宏
コンクリートの坂道は冬の日にからりとして、木の影がくっきりと映っている。ありありとした木の影を踏み上る坂道がなにか面白い。(高橋正子)

12月21日-31日

12月31日(3名)

●古田敬二
土深く根伸ばす冬草引き抜けり★★★
山茶花へ朝陽明るし今日が来る★★★★
山茶花の花へ朝日が射すと、今日が明るく、溌剌とやって来たと思う。山茶花の花の明るさがよい。(高橋正子)

長靴の底から冷える鍬を振る★★★

●小口泰與
行く年や星を小出しに赤城山★★★★
晦日蕎麦犬の遠吠え聞こえける★★★
校庭に雀群れおり年の暮★★★

●高橋秀之
大晦日は妻に連れられ商店街★★★
年越しのそばを食べつつ裏番組★★★
仏前の供花を新たに大晦日★★★★

12月30日(3名)

●小口泰與
注連かざる江戸よりつづく太柱★★★★
代々続く家の太柱に注連が飾られ、風格のある注連飾りとなった。新年のめでたさも一層である。(高橋正子)

冬休み鴨居隠しをこゆる孫★★★
初暦公民館の正面に★★★

●桑本栄太郎
た耕や白き稲株見え隠れ★★★★
ワイパーのとき折り振るるしぐれバス★★★
玄関戸磨き拭き上げ注連飾る★★★

●小西 宏
晩歳の届かぬ汚れそのままに★★★
年の瀬の空あたたかや親子凧★★★★
若き二人アルミのドアの松飾★★★

12月29日(7名)

●小口泰與
鍋割山(なべわり)も榛名山(はるな)も雪を賜りし★★★★
よみがえる空の蒼さやよべの雪★★★
手袋の指じんじんと暁の道★★★

●福田ひろし
冬麗の光纏いて書を開く★★★★
数え日をあえて数えず一人旅★★★
ヒタヒタと老犬歩む冬の夜★★★

●内山富佐子
年の瀬や仏具を磨く母の背★★★★
雪晴れやシャキッと白き雲一つ★★★
手袋は主の指の形かな★★★

●祝 恵子
寒柝や高き子の声まぎれ居り★★★★
凍てつく寒い夜に打ち鳴らされる寒柝の音は、もの寂しさを感じさせる。その拍子木の音に、子どもの高い声で「火の用心」と元気に叫んでいるのがまぎれている。微笑ましく、ほっと心和むのだ。(高橋正子)

聞けばバイト大きくなりて冬休み★★★
大根の青菜生きいきしだれたる★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~建仁寺>
鴨川の風に平らやゆりかもめ★★★
冬椿松にかこまれ建仁寺★★★
せせらぎにさくら冬芽や高瀬川★★★★

●小西 宏
冬日透く雑木の丘に遠い船★★★★
冬の芽にきらめき残し雨あがる★★★
とりたてて残すものなし年の暮★★★

●川名ますみ
 祖母葬儀
冬灯ろうそくの火の直立す★★★★
手をふりて笑うて別れ冬の雨★★★
いろ紙を折る子と隣り年の暮★★★

12月28日(5名)

●小口泰與
あかあかと朝日昇るや畑は霜★★★★
冬の月父の齢を越えにけり★★★
酔うことを知らぬや今宵虎落笛★★★

●多田有花
松積んで軽トラがゆく年の暮★★★★
歳晩の風景としてめでたい。軽トラックに乗るほどの松の枝。常盤の緑がいきいきとして弾んでいるようだ。(高橋正子)

降り積もる落葉踏み分け下りけり★★★
上る道下る道あり年惜しむ★★★

●桑本栄太郎
理髪終え寒風に出す頬と耳★★★
木枯や家路の空の青きこと★★★★
何処より吹かれ積もるや落葉松散る★★★

●小西 宏
固く暗く尖る冬芽の空青し★★★★
野良猫の餌待つ崖に青木の実★★★
ジムの窓に歳末の灯を見て息す★★★

●高橋秀之
山茶花が咲く庭を見て立ち止まる★★★
会館に歳末警戒の提灯並ぶ★★★
ネクタイのごとくマフラーを強く締め★★★★

12月27日(4名)

●小口泰與
貝独楽の揺らぎや夕日あかあかと★★★★
屋根を葺く木槌の音や冬木の芽★★★
生きるとは史記をよすがや虎落笛★★★

●桑本栄太郎
借換えの図書館行きも年用意★★★★
数へ日の分担残る掃除かな★★★
年の瀬や段取り考えひと眠り★★★

●多田有花
クリスマス赤き三日月山の端に★★★
数え日の朝日が山を照らしおり★★★

雪山を間近く仰ぐ頂に★★★★
山に登り頂に立つと、雪山は、頂よりもさらに高く聳え間近に見える。山に登りさらなる雪山が身近に迫り、すばらしい。(高橋正子)

●小西 宏
年の瀬の空青々と窓磨く★★★★
青空に部屋開け放つ煤払い★★★
園庭に子供背丈の冬もみじ★★★

12月26日(4名)

●小口泰與
冬山の襞ひと所へ夕日差す★★★★
凛とした冬山の襞のひと所を浮かびあがらせ、今日の日を終える夕日が力強い。(高橋正子)

水仙のほのと夕影ふくみける★★★
夕影の梢にふくら雀かな★★★

●桑本栄太郎
もくれんの曰くありそな冬芽かな★★★
一言のお詫びも添えて賀状書く★★★
煤逃げや図書館人のあふれ居り★★★★

●小西 宏
オーバーのポケットに手をつなぐ岸辺★★★★
木の葉少し残れる欅大通り★★★
犬抱いて寄せ鍋つつく妻の酔い★★★

●高橋正子
牡蠣洗う水のついには凍ててきし★★★★
牡蠣焼けば火の色赤く目に刺さる★★★
洗わられて地御前牡蠣のミルク色★★★

12月25日(7名)

●小口泰與
露天湯へ枯葉舞い込む刹那かな★★★★
山風の行く手や岸辺枯柳★★★
ゆくりなく時雨や畦の猫車★★★

●迫田和代
山に向き末枯れた野菊道端に★★★★
枯草のそれでも芽吹く力見る★★★
橋近く牡蠣舟いずれか去るらしい★★★

●小川和子
  キャンドルサービス
戦禍にある子等へと祈る降誕祭★★★★
はらからと燭火に讃美する聖夜★★★
聖誕の星空想うクリスマス★★★

●多田有花
母と墓参り万両の実の紅し★★★★
真っ赤な夕陽のクリスマスイブ★★★
リフォームのベスト仕上がるクリスマス★★★

●桑本栄太郎
落葉松の散り積もりたるベンチかな★★★
山茱萸の朱き実空へ冬ざるる★★★
一人づつキャンドル胸に降誕祭★★★★

●河野啓一
菜を刻むその音すらも歳の暮★★★★
冬至を過ぎ、ほんのわずかに日は長くなってきているが、暮れ方はやはり歳晩の感じが強まる。夕餉の仕度の菜を刻む音にも「年の暮」が感じ取れる。(高橋正子)

白菜の巨きを割りて塩で漬け★★★
空暗く遠き山の辺雪模様★★★

●小西 宏
園児らの畑駆けゆくクリスマス★★★
枝に明るき蜜柑をカラス咥え去る★★★
冬の陽に赤く丘の家照り昏れる★★★★

12月24日(7名)

●福田ひろし
掘りたての人参や陽を集めおり★★★★
長期予報裏切る今日の寒さかな★★★
寒波来る川面の鳥の高き声★★★

●古田敬二
さんざめく冬のオリオン家路行く★★★★
しっかりと歩く家路へ冬の大三角形★★★
大股に家路を冬の大三角形★★★

●小口泰與
青空や目路に溢れし雪浅間山(あさま)★★★★
利根の水行く末定か室の花★★★
行きずりの山あいの宿枯尾花★★★

●河野啓一
クリスマスイブとて子ら笑顔★★★
枯落葉集めて妻の思案顔★★★
蔓バラのアーチきらきら冬至の朝★★★★

●桑本栄太郎
極月の忙中閑や遊歩道★★★
立枯れのようなまんさく冬の葉に★★★
枯蘆の穂絮なびくや吾を迎え★★★★

●小西 宏
木の葉閉じ池に氷の大広間★★★
泥靴の深さも楽し霜柱★★★★
葉牡丹を植えて公園完成す★★★

●川名ますみ
今着きしカードも飾るクリスマス★★★★
クリスマスの楽しさは、クリスマスに纏わるいろいろなものを飾る楽しみにもある。クリスマスに合わせて届いたカードも早速飾ると、楽しさがまた加わる。(高橋正子)

りんごジャム炊き純白のヨーグルト★★★
窓際に置いた林檎の朝匂う★★★

12月23日(8名)

●古田敬二
木枯らしにあいつもこいつも先に逝き★★★
木枯らしや友の訃報のメール鳴る★★★★
木枯らしが吹き、寒さが募る日、携帯電話のメール着信音が鳴る。予期せぬ着信音に何か予感を感じてメールを開けたのでは。着信音は、自然の深くから鳴って来たように思われる。(高橋正子)

ミシミシと冬の園舎を象歩く★★★

●小口泰與
冬ばらの開かんとして朝日受く★★★★
冬の湖電飾映す波の上★★★
短冊の文字ととのわず師走かな★★★

●小川和子
括られし白菜畑の畝真直ぐ★★★★
白菜がしっかりと玉を巻いた畝がまっすぐに続く。冬の清潔さを思わせる風景だ。(高橋正子)

下校児らに冬至の日差し実にやさし★★★
母の炊く冬至南瓜よ遠き日よ★★★

●下地鉄
行く歳の水脈引く如く過ぎ去りて★★★
ポインセチア神父の愛に染められて★★★
吹かれれば八つ手の花のこぼれ散り★★★★

●佃 康水
今日冬至根菜入れて南瓜汁★★★
風花や子ら帰る日の近付きて★★★★
曲がりゆく列車の煽る枯尾花★★★

●桑本栄太郎
括られてなお凜と起つ冬の菊★★★★
橡の木の冬芽ぬめりの尖りけり★★★
天皇誕生日大御心の天地に★★★

●小西 宏
枯芝に犬と睦みて胡坐かく★★★
二つ三つ昏々と星冬の街★★★
冬至の夜静かに止まる山手線★★★★

●高橋秀之
富士山と青き冬空だけがある★★★★
冬の夜の寒さはどこへ初ライブ★★★
冬林檎居間からシャリシャリ齧る音★★★

12月22日(6名)

●小口泰與
木の葉雨高層ビルヘ朝日かな★★★
一色の銀杏落葉や子等の顔★★★
ひと筋の枯木の影の移りけり★★★★

●河野啓一
旬日を残すのみかな年用意★★★
鳥声も一陽来復快晴に★★★★
水草の掃除や湖の年の暮れ★★★

●多田有花
トンネルを抜ければ雪の積む町に★★★
おだやかによく晴れ今朝の冬至かな★★★

冬至真昼海の輝きの極む★★★★
一年で一番昼が短い冬至だが、真昼に海を見れば、海は力強く輝いている。太陽はその力を真昼に集中させている。冬至を詠んだ句では珍しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
花八手食器の触れあう厨窓★★★★
八手は、厨の窓の下あたりによく植えられている。厨の窓からは、食器の触れ合う音が聞こえる。食器の音から湧くイメージは白い磁器だが、花八つ手の白い花と静かに響きあっている。(高橋正子)

いつまでも冬至の入日見て居りぬ★★★
掻き分けて湯舟に浸かる柚子湯かな★★★

●小西 宏
学び舎の遠き空なる冬木立★★★★

冬ざれの小楢の山や空の澄む★★★
冬薔薇のハート膨らむ蕾かな★★★

●下地鉄
障子貼る夕陽の映える仏間かな★★★
里山の灯し暮れいく年の暮れ★★★
孫育ち背丈の同じ冬至かな★★★★

12月21日(5名)

●小口泰與
暮れ方の山ふところの霜畳★★★★
冬の虹やおら流るる利根支流★★★
霜畳青菜に朝日差しにける★★★

●福田ひろし
乗り換えの国ざかい駅雪深し★★★★
乗り換えで立ち降りた駅は国ざかい。思わぬ雪の深さに、国を境に、こんなにも雪の降りようが違うものかと感慨も深む。(高橋正子)

山茶花や雅さ漂う京の道★★★
鈍色の近江の冬野北へ行く★★★

●河野啓一
冬帝や柿の実ついに全て落ち★★★
実万両今年も鳥の恵みにて★★★★
餌なくて地面ついばむ冬鴉★★★

●桑本栄太郎
部活子の寒風ついてランニング★★★
初雪の三日経つても嶺に筋★★★
雨に起つ辛夷冬芽の光りけり★★★★

●小西 宏
きりきりと雪輝かせ朝の富士★★★

コンクリの坂に冬樹の影を踏む★★★★
コンクリートの坂道は冬の日にからりとして、木の影がくっきりと映っている。ありありとした木の影を踏み上る坂道がなにか面白い。(高橋正子)

鳩集い日向の落葉突いており★★★

今日の秀句/12月14日~20日

[12月20日]
★球を打ちおりなば夜空から粉雪/多田有花
今年は寒波の来襲で、普段の雪の降らない地方にも雪が積もったりしている。夜のテニスコートだろう。球を打っていると粉雪が舞い降りる。急に冷え込んだ夜の思いがけない幻想的なプレゼント。(高橋正子)

[12月19日]
★忌中告ぐ白木の札や雪激し/内山富佐子
雪が激しく降る日に、忌中の札を見ると、冥福を祈りながらも、人の死の悲しみが、悲痛なまで深くなる。
(高橋正子)

★日輪のいろ水鳥の羽根にあり/川名ますみ
水鳥の羽が日輪の色を置いている。朝の水鳥、あるいは夕べの水鳥か。詩的な水鳥の情景。(高橋正子)

[12月18日]
★湯気のたつ銭湯(ゆや)入口の石路の花/下地 鉄
銭湯の湯気と石蕗の花の取り合わせが、いい。石蕗の明るい黄色、湯気のやわらかな白さに気持ちがなごむ。(高橋正子)

★味噌の香や朝の厨の根深汁/桑本栄太郎
寒い朝の味噌汁の香りはいいものだ。旬の根深の旨さに身がしゃんとする。(高橋正子)

★窓明りに急ぎ起床や今朝の雪/佃 康水
あまりに明るい窓の明かりに寝過ごしたのではと、急いで起床。ところが、窓の明かりは一夜にして降り積もった雪であった。雪が降り思わぬ詩的な世界を得た。(高橋正子)

[12月17日]
北風に掃かれて街の清きかな/下地鉄
元の句は、「や」「かな」と切字が併用されていたが、これは避ける。
北風が吹き、街の塵を一掃し、街は青空も、街並みも清らかになった。北風の吹いた後「清き」と感じるのは、沖縄の暖かさがあってのことだろう。(高橋正子)

[12月16日]
★冬山の鋼の襞の迫りけり/小口泰與
鉄壁のように迫る冬山の厳しさ、力強さに対峙し、冬山を同じような心境に立った作者の姿が見える。(高橋正子)

★ビル街を突き抜けてくる冬日かな/河野啓一
「突き抜けてくる冬日」を得てビル街の風景が改まった。静かでありながら、緊張感と温かさがある。「突き抜けてくる」の率直な実感がよい。(高橋正子)

[12月15日]
★癒えし眼に白山茶花や青み帯び/佃 康水
白内障の手術を終えられて、周囲が新たな景色のように目に映るのではと思う。山茶花の白い花も白が青みを帯びて鋭く目に映る。感覚が冴え冴えしている。(高橋正子)

★翔ぶよりも羽ばたくことよ冬の雁/小西 宏
秋渡って来た雁は、冬の今は地上に落ち着いて、空を翔ぶことよりも、羽ばたいて見せることが多い。雁の美しくはかなげな印象を覆して、現実のリアルな姿が詠まれた。(高橋正子)

[12月14日]
★青色の灯し飾りてクリスマス/河野啓一
青色の灯は、北欧の幻想的な夜を思い起こさせる。また多色の灯りよりも、より現代的、宇宙的なイメージが湧く。 今年はノーベル賞で青色ダイオードが有名になったことも青色の灯りを増やす一つの理由にせよだ。(高橋正子)

★月冴えて地上に流れる賛美歌や/迫田和代
清らかで美しい賛美歌がさらに身に沁みて感じられるのは、月光がさえざえと届くときであろう。地上も聖なるものに満たされる。(高橋正子)