●デイリー句会投句箱/6月1日~10日●


※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/6月1日-10日


[6月10日]
★アメンボの作る波紋の重なりあい/高橋秀之
「波紋の重なりあい」の情景が目に涼しい。湿り気のある空気も、アメンボの愛嬌ある動きに日本の夏の良さとなる。(高橋正子)

[6月9日]
★棹足して玉葱吊るす通し土間/佃 康水
通し土間は、表から裏まで通っている土間で、この句では、農家の通し土間であろう。風が通り抜けるので、保存のために玉葱を吊るすのには、格好の場所だ。沢山収穫できたのだろう。棹を足して、吊るしている。その様子は、絵になる。(高橋正子)

[6月8日]
★夏つばめ改札口をついと出る/祝恵子
夏つばめの動きを表す「ついと」が潔い。人が通り抜ける改札口をつばめは「ついと」通り抜けた。人とつばめの共存もうれしい。(高橋正子)

[6月7日]
★洗鯉日は千曲川(ちくま)へと落ちにける/小口泰與
洗鯉は、盛り付けられる器などもガラス器で、身は氷水で引き締められ、見た目にも涼やかで、淡泊な料理だ。千曲川に日が入るころ、洗鯉を味わい、旅情にひたられたことだろう。(高橋正子)

[6月6日]
★そよ風や木馬漕ぐ児の夏帽子/小川和子
そよ風も、木馬も、児も、やさしい世界のもの。木馬を漕ぐ児の夏帽子に焦点が当てられ、一枚の絵のような印象だ。(高橋正子)

★一番花咲いて浜木綿純白に/河野啓一
「純白」に、実感がこもっている。一番花の浜木綿の開花に夏が実感される。おおらかな浜木綿の花に似合う空が広がっていることだろう。(高橋正子)

[6月5日]
★法事客去って植田の大きさよ/佃 康水
法事の客が去ると、滞りなく法事が済んだ安堵に、周囲に広がる植田が目に入る。その広々とした大きさと美しさに癒される。(高橋正子)

★芒種早や風に湿りのありにけり/桑本栄太郎
風に湿りを感じて、思えば、早や芒種。六月六日である。梅雨入りが近いことを納得させる、風の具合だ。(高橋正子)

★青葉して銀杏並木の深々と/川名ますみ
銀杏並木が道を狭めるように青葉となっている。「深々と」は、並木の奥行き、葉の青色の深さを言っている。その深さが、しんと心にしみいる。(高橋正子)

[6月4日]
★紫陽花のまず一色を今朝見せる/古田敬二
梅雨入り前から、紫陽花が咲き始める。今年は雨が少なく、雨の似合う紫陽花も開花が少し遅れているのかも。それでも今朝、初めの色を見せてくれた。これからの色が楽しみだ。(高橋正子)

★泰山木がっしり開き高く咲く/祝恵子
泰山木の花は、大ぶりな艶のある葉に載るように、白い大きな花を開く。高い木の、高いところに咲くので、間近では見れないものの、見上げてその堂々と、また。がっしりとした花姿を楽しむ。(高橋正子)

[6月3日]
★曇り空のごとき葛餅大和土産/河野啓一
葛餅を何に例えようかと思うと、「曇り空」の印象が浮かんだ。光が通っているが、透き通るでもなく、ささ濁りのようなもの。吉野の葛粉が使われて由緒正しき葛餅が嬉しい。ひんやりとした喉越しを味わう。因みに、関東の久寿餅と関西の葛餅とは違う。(高橋正子)

[6月2日]
★清流に導かれつつ夏山へ/多田有花
きれいな流れに沿って、流れを楽しみつつ歩いてゆくと、夏山へと道が入っていった。清流の始まりは夏山の深くにある。「導かれ」行く心境も清流のようだ。(高橋正子)

[6月1日]
★露天湯を行きつ戻りつ糸蜻蛉/高橋秀之
露天風呂でのんびりしているところを糸蜻蛉が行き来して、湯煙に消えそうだ。消えそうに思えてもまた現れる。初夏のころ生まれる蜻蛉が涼しさを誘う句だ。(高橋正子)

6月1日~10日


6月10日(4名)

●河野啓一
真っ白な夾竹桃に出合いけり★★★★
枇杷食って種をうずめる庭の隅★★★
森の辺や緑陰抜けて車行く★★★

●小口泰與
夏つばめ田川の揺るる流れかな★★★★
逆光の楓や湖の時鳥★★★
花あやめ田川膨らみ流れける★★★

●桑本栄太郎
夕焼のアパート映す水田かな★★★★
じゅりじゅりと歓喜の歌や夏つばめ★★★
夕闇のせまる植田や路線バス★★★

●高橋秀之
植田には青空の色をそのままに★★★
幼き子田植えの様子をじっと見る★★★

アメンボの作る波紋の重なりあい★★★★
「波紋の重なりあい」の情景が目に涼しい。湿り気のある空気も、アメンボの愛嬌ある動きに日本の夏の良さとなる。(高橋正子)

6月9日(4名)

●小口泰與
杣山の男が焼きし岩魚かな★★★★
郭公に風のさざ波ありにけり★★★
おちこちの畑に人居り夏つばめ★★★

●桑本栄太郎
梅雨雲や傘の用意のあと戻り★★★
せせらぎの木洩れ日やどし枇杷熟るる★★★★
せせらぎの闇に涼風高瀬川★★★

●佃 康水
棹足して玉葱吊るす通し土間★★★★
通し土間は、表から裏まで通っている土間で、この句では、農家の通し土間であろう。風が通り抜けるので、保存のために玉葱を吊るすのには、格好の場所だ。沢山収穫できたのだろう。棹を足して、吊るしている。その様子は、絵になる。(高橋正子)
 
ビル街やトマト実らす木箱かな★★★
睡蓮のつぼみ水面へあと少し★★★

●古田敬二
梅の実や納戸に熟れる香り満つ★★★★
百合咲いて道行く人を見下ろせり★★★
梅雨晴れへ西空の雲動きけり★★★

6月8日(4名)

●小口泰與
桷散りて水面盛んなライズかな★★★
またしても赤城山(あかぎ)は靄や木下闇★★★
大文字の定かや初夏の妙義山★★★★

●祝恵子
夏つばめ改札口をついと出る★★★★
夏つばめの動きを表す「ついと」が潔い。人が通り抜ける改札口をつばめは「ついと」通り抜けた。人とつばめの共存もうれしい。(高橋正子)

青葉陰通り抜けゆく風と会う★★★
糸トンボ水面かすめて消えてゆく★★★

●河野啓一
ブロッコリー茹でらる香り今日も雨★★★
夏蝶のもつれもつれて昼下がり★★★
百合の花灯透かし華やげる★★★

●桑本栄太郎
幹よじれ翁の世話のさつき展★★★
短冊の水茎さやと杜鵑花かな★★★
梅雨寒や雨に濡れ居る古紙回収★★★

6月7日(4名)

●小口泰與
洗い鯉日は千曲川(ちくま)へと落ちにける★★★★
洗鯉は、盛り付けられる器などもガラス器で、身は氷水で引き締められ、見た目にも涼やかで、淡泊な料理だ。千曲川に日が入るころ、洗鯉を味わい、旅情にひたられたことだろう。(高橋正子)

榛名湖へ道真直ぐや宵涼し★★★
雷電の光立ちたる夕間暮れ★★★

●迫田和代
丘の道雨季を明るく紫陽花や★★★★
裏の庭こっそり静かにシャガを切る★★★
筍の飯を食べつつ藪思う★★★

●河野啓一
阪和道万緑分けてトンネルへ★★★
彩りを門辺に並べ透し百合★★★★
交流戦梅雨入りの空の下で勝つ★★★

●桑本栄太郎
未央柳雄蕊めざとくありにけり★★★
被いても尚空目指し葛茂る★★★
雨に濡れ色濃くなりぬ花ざくろ★★★★

6月6日(7名)

●小川和子
青時雨タクシーを待つ列に付く★★★
青葉光窓いっぱいにティータイム★★★
そよ風や木馬漕ぐ児の夏帽子★★★★
そよ風も、木馬も、児も、やさしい世界のもの。木馬を漕ぐ児の夏帽子に焦点が当てられ、一枚の絵のような印象だ。(高橋正子)

●小口泰與
大輪に雨粒ならぶ薔薇かな★★★
雨上り黄昏せまる夏野かな★★★★
山間に奏づるごとし二重虹★★★

●福田ひろし
大連の空思わせる五月晴れ★★★
老鶯や天井高き雨の駅★★★
夏の山雲の形の影落とす★★★★

●多田有花
降りだした雨に打たれし栗の花★★★
閉め切ってパソコンに向かう青葉冷★★★
次々に蝶々訪れ夏薊★★★★

●桑本栄太郎
玄関のバイク濡れ居り花南天★★★
姫女苑の荒野となりぬ丘公園★★★
パソコンを閉じて寝床へよだち来ぬ★★★★

●河野啓一
一番花咲いて浜木綿純白に★★★★
「純白」に、実感がこもっている。一番花の浜木綿の開花に夏が実感される。おおらかな浜木綿の花に似合う空が広がっていることだろう。(高橋正子)

真っ白い香を風に載せはまおもと★★★
万緑に埋もれて聞くや風の音★★★

●古田敬二
トマト苗支柱立てれば香りけり★★★
茄子苗に吹く同じ風我に吹く★★★
雨あとの茄子苗の紺鮮やかに★★★★

6月5日(5名)

●小口泰與
万緑へ車もろとも吸い込まれ★★★★
麦刈や何時もの鴉声あまゆ★★★
厨より畑へ裸足や朝餉時★★★

●河野啓一
曇り空映し早苗田広々と★★★
山法師麓に白く箕面山★★★
ざあざと揺れて耀く竹の秋★★★★

●佃 康水
ことごとく田植え終わりて里しずか★★★
法事客去って植田の大きさよ★★★★
法事の客が去ると、滞りなく法事が済んだ安堵に、周囲に広がる植田が目に入る。その広々とした大きさと美しさに癒される。(高橋正子)

背丈伸び夕べ際立つ半夏生★★★

●桑本栄太郎
芒種早や風に湿りのありにけり★★★★
風に湿りを感じて、思えば、早や芒種。六月六日である。梅雨入りが近いことを納得させる、風の具合だ。(高橋正子)

あめんぼの雲と青空走りけり★★★
すなどりの猿に指図や信長忌★★★

●川名ますみ
青葉して銀杏並木の深々と★★★★
銀杏並木が道を狭めるように青葉となっている。「深々と」は、並木の奥行き、葉の青色の深さを言っている。その深さが、しんと心にしみいる。(高橋正子)

青き野に紫陽花の色立ちのぼる★★★
紫陽花の碧おもたげに土の上★★★

6月4日(5名)

●古田敬二
鍬を振る遠くによしきり聴きながら★★★
紫陽花のまず一色を今朝見せる★★★★
梅雨入り前から、紫陽花が咲き始める。今年は雨が少なく、雨の似合う紫陽花も開花が少し遅れているのかも。それでも今朝、初めの色を見せてくれた。これからの色が楽しみだ。(高橋正子)

干天の畝の水吸う速さかな★★★

●小口泰與
薫風や水切り遊びしておりぬ★★★★
谷川を越ゆる汽罐車岩つばめ★★★
葭切に赤白黄のテントかな★★★

●祝恵子
大鉢の水に浮かべてバラ光る★★★
蓮池の奥の浮巣は静かなり★★★

泰山木がっしり開き高く咲く★★★★
泰山木の花は、大ぶりな艶のある葉に載るように、白い大きな花を開く。高い木の、高いところに咲くので、間近では見れないものの、見上げてその堂々と、また。がっしりとした花姿を楽しむ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
赤子泣く団地の宵や沙羅の花★★★
登校の傘一列の梅雨入りかな★★★
レシピ添え砂丘薤韮来たりけり★★★★

●多田有花
六月の芋粥を炊く昼餉かな★★★★
六月の快晴街の輝けり★★★
庭石菖もっとも明るき陽の下に★★★

6月3日(6名)

●小口泰與
雨粒を含むばら切る朝かな★★★
光りあうばらの梢の雫かな★★★
青桐のはや裏山を隠しける★★★★

●河野啓一
森の木々枝震わせて走り梅雨★★★
それぞれに柄の向き可笑しサクランボ★★★

曇り空のごとき葛餅大和土産★★★★(正子添削)
葛餅を何に例えようかと思うと、「曇り空」の印象が浮かんだ。光が通っているが、透き通るでもなく、ささ濁りのようなもの。吉野の葛粉が使われて由緒正しき葛餅が嬉しい。ひんやりとした喉越しを味わう。因みに、関東の久寿餅と関西の葛餅とは違う。(高橋正子)

●古田敬二
六月来るシフォン上手に焼き上がる★★★
衣替え五才で良しと若返る★★★
豆ごはん箸を零れぬ豆太し★★★★

●多田有花
鴨川に涼を求めて人数多★★★
皐月咲くセレモニーホールを取り巻いて★★★
青鷺が佇む植田の真ん中に★★★★

●内山富佐子
仙人掌の花のしたたり夕暮るる★★★
田螺らの住処となれる植田かな★★★★
中学卒業五十周年の同窓会にて
芽笹汁半世紀経し友の顔★★★

●桑本栄太郎
寝莚を敷けば尻あとへこみ居り★★★
打ち叩く朝の雨聞く走り梅雨★★★★
窓開けて視界なき世の白雨かな★★★

6月2日(5名)

●小口泰與
待ちくるる人居て庭のばらを切る★★★
ガラス瓶ゆるるや目高散りにける★★★
風かおり牧をかけ来る牧羊犬★★★★

●多田有花
清流に導かれつつ夏山へ★★★★
きれいな流れに沿って、流れを楽しみつつ歩いてゆくと、夏山へと道が入っていった。清流の始まりは夏山の深くにある。「導かれ」行く心境も清流のようだ。(高橋正子)

不如帰鳴くや比叡に続く道★★★
緑陰をケーブルカーがすれ違う★★★

●河野啓一
すべすべと青き実梅を慈しむ★★★
雨待ちて乱れ咲くかな野萱草★★★★
風薫る白雲なびく生駒山★★★

●桑本栄太郎
真夏日や踏切長き通過待ち★★★
未央柳蕊の明かりの風を待つ★★★★
青柿のいのちを繋ぐ葉蔭かな★★★

●古田敬二
紫陽花をほめて園児と保母通る★★★
葦揺れる奥でヨシキリ動くらし★★★
夏来る雲の高さと太さかな★★★★

6月1日(4名)

●小口泰與
風薫り鳥語あふるる丘の路★★★★(正子添削)
さらさらとばらの散りゆく朝かな★★★
夏ひばり鎌に掛けたる小石かな★★★

●桑本栄太郎
別室の妻のカラオケ青嵐★★★
予報見て今朝は半袖ポロシャツに★★★
のこりもの集め昼餉や五月尽★★★★

●多田有花
大文字山を見上げる街薄暑★★★★
緑陰を吹く風の中山歩く★★★
卯の花の散る道京を見下ろして★★★

●高橋秀之
露天湯を行きつ戻りつ糸蜻蛉★★★★(正子添削)
露天風呂でのんびりしているところを糸蜻蛉が行き来して、湯煙に消えそうだ。消えそうに思えてもまた現れる。初夏のころ生まれる蜻蛉が涼しさを誘う句だ。(高橋正子)

高架線から遠くの夕焼けを見る★★★
手作りの玉葱届く泥つきで★★★

●デイリー句会投句箱/5月21日~31日●


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※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/5月21日-31日

[5月31日]
★連日の日差しをはやす雨蛙/小口泰與
連日の夏日となった五月。雨がほしいのだろう。雨蛙がしきりに日差しをはやしている。(高橋正子)

[5月30日]
★薫風や思わぬとこへ来ておりぬ/小口泰與
かぐわしい風に誘われて、ついつい歩いてしまった。気づいてみれば、「思わぬところ」に来ている。「思わぬところ」は、場所のことでもあり、深く読めば、今の境遇のこととも読める。(高橋正子)

★遠出してタンポポ低くまた低く/迫田和代
「低くまた低く」と咲くタンポポに、はるか遠くまで来たという実感がある。低く、野に張り付くように咲くタンポポを足元にして、広やかな中に、また遠いところいることに、さびしさがある。(高橋正子)

★ほたるぶくろ朝の空気に膨らんで/古田敬二
ほたるぶくろのふっくらした花には、空気が満たされている。朝の空気が涼しそうで、詩ごころが湧く。(高橋正子)

[5月29日]
★擦り切れし絵筆いく本花は葉に/内山富佐子
擦り切れた絵筆から、水彩画や日本画のイメージが湧く。葉桜になったころ、水の冷たさから解き放されたころ、無性に絵が描きたくなるのではないだろうか。長年絵を描いてきた絵筆への愛着もひとしお。(高橋正子)

★卯の花のほろほろと落つ句碑の道/祝恵子
卯の花の白い花がほろほろと散っている道だからこそ、句碑が似合う。少し陰りのある道に咲く卯の花、北窓の文学と呼ばれる俳句。通じるものがある。(高橋正子)

[5月28日]
★青葉風雲の輪郭あきらかに/川名ますみ
なにもが生き生きと生命を謳歌している季節。青葉を風が吹き、雲さえも輪郭をくっきりとさせている。(高橋正子)

[5月27日]
★昇り藤見しより朝の遠まわり/小口泰與
昇り藤は、藤の花房を逆さにしたような姿をして、ルピナスとも呼ばれる。丈のある花で昇り藤の咲くころは、朝の散歩も楽しみだ。つい遠まわりをしたくなる。ちなみにフランクリンもルピナスが好きで、散歩のときは、ポケットに種を入れて、歩くところに撒いたそうだ。(高橋正子)

[5月26日]
★厨房に入るべし新じゃがいもを剥く/古田敬二
「男子厨房に入らず」を固辞する人は今はいないだろうが、新じゃがいもは、特に男料理にふさわしい材料と思う。「男子大いに厨房に入るべし」とご自分で育てたじゃがいもの皮を剥く敬二さんだ。(高橋正子)

[5月25日]
★不揃いの玉ねぎ土のまま吊るす/古田敬二
畑で収穫した作物は、不揃いが自然。また、自然とはそういうものだろうと思うが、畑から抜いて土のついたままの玉葱を吊るして保存する。それが、生き生きとしてありのままだ。(高橋正子)

★パンジーの残花摘みたりガラス器に/河野啓一
五月も末に。長く花を楽しませてくれたパンジーも茎が伸び、花の力も弱ってくる。しかし、健気にもまだ咲いている花があって、それを摘み取ってガラス器に飾ってみるとブーケのようにかわいい。花の最後の最後までを慈しみ楽しむ作者。(高橋正子)

[5月24日]
★学生の手話の車内や風薫る/桑本栄太郎
風薫るなか、学生の手話も弾んでいるのだろう。活発な手の動きが輝いて見える。風薫るよい季節なればこそ。(高橋正子)

[5月23日]
★草笛や心をこめた響きあり/迫田和代
草笛で吹く歌は、自分の心に大切にしている歌なのであろうから、鋭い音色のなかにも哀愁の響きがある。「心をこめた響き」となる。(高橋正子)

[5月22日]
★鳥取より来て甘夏を売りにけり/多田有花
甘夏は、産地の農家でなくても、栽培されているのだろう。見目が悪い方が甘いといわれる甘夏だ。関西に近い鳥取であるが山陰、鳥取の農家の作ともなれば、正直においしいと思われる。(高橋正子)

[5月21日]
★登校の子等の声透く若葉風/小口泰與
若葉を揺らす風の中を登校する子供たちの声は、「透く」という感覚がぴったり。明るく、無邪気な声が透明感をもって聞こえてくる。(高橋正子)

★筋肉のひかり夏服から伸びる/川名ますみ
夏服の袖から出た腕が目に眩しく映る。それが「筋肉のひかり」だ。「夏服から伸びる」の表現から、むしろ女性のしなやかな腕を想像する。(高橋正子)

5月21日~31日


5月31日(2名)

●小口泰與
柿若葉笑顔えがおの登校児★★★
連日の日差しをはやす雨蛙★★★★
連日の夏日となった五月。雨がほしいのだろう。雨蛙がしきりに日差しをはやしている。(高橋正子)

園児らの笑顔や丘の薫る風★★★

●桑本栄太郎
別室の妻のカラオケ青嵐★★★
隅植えの媼ひとりの植田かな★★★
風入れて祈る会堂五月尽★★★★

5月30日(5名)

●小口泰與
蜘蛛の囲へ連なる雨の滴かな★★★
今年竹浅間噴煙素直なり★★★

薫風や思わぬとこへ来ておりぬ★★★★
かぐわしい風に誘われて、ついつい歩いてしまった。気づいてみれば、「思わぬところ」に来ている。「思わぬところ」は、場所のことでもあり、深く読めば、今の境遇のこととも読める。(高橋正子)

●迫田和代
素晴らしい新緑の色空に映え★★★
夏めいて淡い服から白い足★★★

遠出してタンポポ低くまた低く★★★★
「低くまた低く」と咲くタンポポに、はるか遠くまで来たという実感がある。低く、野に張り付くように咲くタンポポを足元にして、広やかな中に、また遠いところいることに、さびしさがある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
カーテンのレースみどりや五月尽★★★
首筋の汗にじみ居り長電話★★★
坂道に沿うて通るや青葉風★★★★

●古田敬二
紫陽花のまず一色を今朝見せて★★★
畝作る遠くにヨシキリ鳴くを聞き★★★

ほたるぶくろ朝の空気に膨らんで★★★★
ほたるぶくろのふっくらした花には、空気が満たされている。朝の空気が涼しそうで、詩ごころが湧く。(高橋正子)

●川名ますみ
青時雨お壕の隅に鷺一羽★★★
鉢植の葉桜に挿す細き支柱★★★
命日も百合そちこちに白よ黄よ★★★★

5月29日(6名)

●内山富佐子
青葉風背中を反らす応援団★★★
めまとひの帯や祖国の進む道★★★

擦り切れし絵筆いく本花は葉に★★★★
擦り切れた絵筆から、水彩画や日本画のイメージが湧く。葉桜になったころ、水の冷たさから解き放されたころ、無性に絵が描きたくなるのではないだろうか。長年絵を描いた絵筆への愛着もひとしお。(高橋正子)

●小口泰與
ほかほかの筍飯や長電話★★★
若嫁の三和土に干せり夏蕨★★★★
花茄子や日を育める浅間山★★★

●古田敬二
桑の実を食めば懐かし少年期★★★★
指先を染めて桑の実もぎにけり★★★
助手席に桑の実妻への手土産に★★★

●桑本栄太郎
朱の葉色ありて垣根や車輪梅★★★★
月見草風の木蔭の路地裏に★★★
ひるがえる白き葉裏や青嵐★★★

●祝恵子
卯の花や芭蕉もいたかこの道に★★★
羽ばたいて川鵜こちらを向く水辺★★★

卯の花のほろほろと落つ句碑の道★★★★
卯の花の白い花がほろほろと散っている道だからこそ、句碑が似合う。少し陰りのある道に咲く卯の花、北窓の文学と呼ばれる俳句。通じるものがある。(高橋正子)

●高橋信之
はこねうつぎの楽しく咲いている午後よ★★★
つんと空突き上げている茅花★★★★
やまぼうしの花の十字が宙に浮く★★★

5月28日(4名)

●小口泰與
山里の捨て田に緋鯉生きていし★★★
雲の峰湖刻々と色を変え★★★★
また一人音も立てずに山女釣★★★

●桑本栄太郎
カミモール揺れて風ゆく夏日かな★★★
節々の白く粉噴き今年竹★★★★
ダイアナもミチコもありぬ薔薇の園★★★

●川名ますみ
青葉風雲の輪郭あきらかに★★★★
なにもが生き生きと生命を謳歌している季節。青葉を風が吹き、雲さえも輪郭をくっきりとさせている。(高橋正子)

アマリリス古き鉢より花茎伸ぶ★★★
午過ぎて自転車ばかり青葉闇★★★

●高橋信之
せせらぎ隔て燕子花の紫濃し★★★★
森にいて二人静と語り合う★★★
高きより高き所の朴の花見る★★★

5月27日(5名)

●小口泰與
青芦や雨の河原を行く子犬★★★

昇り藤見しより朝の遠まわり★★★★
昇り藤は、藤の花房を逆さにしたような姿をして、ルピナスとも呼ばれる。丈のある花で昇り藤の咲くころは、朝の散歩も楽しみだ。つい遠まわりをしたくなる。ちなみにフランクリンもルピナスが好きで、散歩のときは、ポケットに種を入れて、歩くところに撒いたそうだ。(高橋正子)

花山葵水に水押す朝ぼらけ★★★

●河野啓一
さわやかな厨の香り実山椒★★★★
朝日受け深紅に燃えるさつきかな★★★
家系図を辿る連綿蜘蛛の糸★★★

●多田有花
初夏の陽が諭吉生まれし地に溢れ★★★
夏の宵高層ビルに灯が点る★★★
揚羽蝶の影が横切る森の道★★★★

●祝恵子
夏雨に抜くラデッシュの色の濃く★★★★
紫陽花よ早く色出せ雨に出せ★★★
夏鉢の冬瓜の苗一つ増え★★★

●桑本栄太郎
はるかまで重なりいたる青嶺かな★★★★
陸橋を歩めば軋む夏日かな★★★
ドラゴンの雲の育つや夏の嶺★★★

5月26日(4名)

●古田敬二
厨房に入るべし新じゃがいもを剥く★★★★
「男子厨房に入らず」を固辞する人は今はいないだろうが、新じゃがいもは、特に男料理にふさわしい材料と思う。「男子大いに厨房に入るべし」とご自分で育てたじゃがいもの皮を剥く敬二さんだ。(高橋正子)

行々子昨日と同じ葦の奥★★★
畝見えず茂りて咲けり薯の花★★★

●小口泰與
糠漬のまわって来たり夏の句座★★★
芍薬の名残の花を花器へ挿し★★★
白ばらへ声を上げたる女学生★★★★

●河野啓一
咲き乱るやんちゃ坊主のアマリリス★★★★
緑陰を辿れば白きカモミール★★★
風薫るグランド今日から交流戦★★★

●桑本栄太郎
万緑や山ふところの十字架に★★★★
山法師挙兵の時はまだ早く★★★
風薫る木蔭にすわりアコーデオン★★★

5月25日(5名)

●小口泰與
夕さりの長き裾野や雲の峰★★★
老鶯や水を被りし丸太橋★★★
丹精のばらにきれいと声かかる★★★★

●迫田和代
漬物の茗荷の香り夏の朝★★★★
なんとなく心が躍る夏の海★★★
夕風や頭「かしら」を下げる白いバラ★★★

●古田敬二
ドクダミの香り流して庭に干す★★★
不揃いの玉ねぎ土のまま吊るす★★★★
畑で収穫した作物は、不揃いが自然。また、自然とはそういうものだろうと思うが、畑から抜いて土のついたままの玉葱を吊るして保存する。それが、生き生きとしてありのままだ。(高橋正子)

畑いっぱい広がる緑と薯の花★★★

●桑本栄太郎
草矢打つ丈にほど良きすすきかな★★★★
濃く淡く山の遙かへ夏の嶺★★★
見入る吾ありて青梅頬を染む★★★

●河野啓一
薔薇と吾並びまぶしき朝日かな★★★
パンジーの残花摘みたりガラス器に★★★★
五月も末に。長く花を楽しませてくれたパンジーも茎が伸び、花の力も弱ってくる。しかし、健気にもまだ咲いている花があって、それを摘み取ってガラス器に飾ってみるとブーケのようにかわいい。花の最後の最後までを慈しみ楽しむ作者。(高橋正子)

緑陰に白く可憐なカモミール★★★

5月24日(4名)

●小口泰與
大渕の渦や炎帝呑まんとす★★★
渓流に打ち交じりたる鹿の子鳥★★★
ピッケルを打ち込む崖や岩雲雀★★★★

●古田敬二
茎切れば新玉ねぎの露こぼす★★★
トランクに新玉ねぎの香の満てり★★★★
男料理新玉ねぎは甘きもの★★★

●佃 康水
任引きし夫花束の薔薇真っ赤★★★
山水を曳きし堂裏苔茂る★★★
張りし囲を蜘蛛の揺すりて輝ける★★★★

●桑本栄太郎
学生の手話の車内や風薫る★★★★
風薫るなか、学生の手話も弾んでいるのだろう。活発な手の動きが輝いて見える。風薫るよい季節なればこそ。(高橋正子)

さざ波の螺旋に光り夏の潮★★★
風薫るクレーン屋上にて動く★★★

5月23日(6名)

●小口泰與
老鶯や白樺の丘蒼き空★★★★
郭公や水面に響く木木の影★★★
郭公や水面を流る雲一朶★★★

●迫田和代
草笛や心をこめた響きあり★★★★
草笛で吹く歌は、自分の心に大切にしている歌なのであろうから、鋭い音色のなかにも哀愁の響きがある。「心をこめた響き」となる。(高橋正子)

壇ノ浦平家の終わりの先帝祭★★★
川土手の新緑の道萌える道★★★

●祝恵子
乳母車バラのアーチをくぐりゆく★★★★
それぞれに用具持ちゆく溝浚★★★
胡瓜の花付けて胡瓜の実の一つ★★★

●古田敬二
遠くにも白見ゆ朴の花なれば★★★★
十薬の一片光る夜半の雨★★★
呈上す新玉ねぎのレシピ添え★★★

●桑本栄太郎
半ズボンの茶髪もありぬ芸大生★★★
快速を乗り換え鈍行青葉闇★★★★
万緑の山肌削るユンボかな★★★

●多田有花
河骨の下ゆっくりと錦鯉★★★
山寺の庫裏で新茶をいただきぬ★★★★
人寄れば夏鴨すーっと離れゆく★★★

5月22日(4名)

●小口泰與
万緑や碓氷峠に雲一朶★★★★
見晴るかす佐久の植田や鳶の笛★★★
そよ風や青葉若葉の駒出池★★★

●多田有花
鳥取より来て甘夏を売りにけり★★★★
甘夏は、産地の農家でなくても、栽培されているのだろう。見目が悪い方が甘いといわれる甘夏だ。関西に近い鳥取であるが山陰、鳥取の農家の作ともなれば、正直においしいと思われる。(高橋正子)

天清和沖青く澄む播磨灘★★★
卯の花や午前十時の風の中★★★

●桑本栄太郎
<神戸六甲アイランド埠頭>
夏潮のゆらぎ螺旋に光りけり★★★
ケーソンの遙か遠くや夏かすみ★★★
夏潮の空へと滑るモノレール★★★★

●古田敬二
夏木立どの木も天へ尖がりて★★★
ヒマラヤスギの高き尖りの若葉光★★★
ハルニレの若葉明るく透き通る★★★★

5月21日(4名)

●多田有花
竹皮を脱いで城址へ続く道★★★★
快晴の城址にありし楢若葉★★★
挨拶を交わす新緑の山道★★★

●小口泰與
登校の子等の声透く若葉風★★★★
若葉を揺らす風の中を登校する子供たちの声は、「透く」という感覚がぴったり。明るく、無邪気な声が透明感をもって聞こえてくる。(高橋正子)

新緑の色めく淵の朝かな★★★
打ち返す波や岸辺は夏の色★★★

●桑本栄太郎
鴨川の川床(ゆか)に唐傘整いぬ★★★
蓮池の蓮の葉分けてつがいかな★★★★
つる薔薇のアーチ真紅の門扉かな★★★

●川名ますみ
筋肉のひかり夏服から伸びる★★★★
夏服の袖から出た腕が目に眩しく映る。それが「筋肉のひかり」だ。「夏服から伸びる」の表現から、むしろ女性のしなやかな腕を想像する。(高橋正子)

ミントチョコ舌にとかして夏初め★★★
つややかな筋肉動く夏服に★★★

●デイリー句会投句箱/5月11日~20日●


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※投句は、一日1回3句に限ります。
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今日の秀句/5月11日-20日

[5月20日]
★パレードを若葉の下で待ちうける/祝恵子
快活なパレードを見物するのに一番いい季節は、若葉の季節と思う。汗ばむような明るい日差しを浴びたパレードの一団と、若葉陰でパレードを見る人との対比がくっきりとしている。(高橋正子)

[5月19日]
★葉桜を今朝一番の登校児/古田敬二
葉桜の下を今朝一番に学校へ向かう児童たちがくぐって行く。「今朝一番」からは、学校が楽しく、元気の良い子供たちが思い浮かぶ。初夏の生き生きとすがすがしい光景だ。(高橋正子)

[5月18日]
★水の入る田の中二両の電車ゆく/多田有花
水の張られた田が連なる中を、二両電車がカタコトと走ってゆく。田植え前の穏やかで明るい平野の風景に癒される。(高橋正子)

★青空と雲の水田へ風薫る/桑本栄太郎
青空と雲の映っている水田へ、かぐわしい風が吹いてくる。その風に田水にさざ波が走り、青空や雲をゆらしている。日本の美しい風景のひとつだ。(高橋正子)

[5月17日]
★天窓の取り替え工事夏きざす/内山富佐子
明り採りの天窓、生家の台所に、ただガラスが嵌めてあるだけの天窓があったので思い出したが、今は、工夫され、開閉のできるようなよいものがあるのだろう。夏に向けて明るい光が差し込むのは、気持ちもさわやかになってうれしいものだ。(高橋正子)

[5月16日]
★麦秋の風を友とし散歩する/迫田和代
散歩の友とするのが、人でも、犬でもなく、「麦秋の風」であるのがいい。心持がひろやかで、気持ちもさわやかだ。(高橋正子)

★若葉陰将棋指す人囲む人/祝恵子
若葉のころは、家より外が心地よい。若葉陰に縁台など持ち出して、将棋を指すと、それを見物する外野の人たちも集まってくる。若葉陰の対局に人の輪ができる。庶民の暮らしの楽しい一場面だ。(高橋正子)

[5月15日]
★夏ひばり牧草ロール整然と/小口泰與
牧草ロールが散らばり、空に雲雀が鳴いて、高原の心地よさが伝わる。「整然と」が「心地よさ」となっている。(高橋正子)

[5月14日]
★抜きん出て空にまみえし今年竹/佃 康水
筍からみるみる生長して、ほかの竹の背丈を凌ぐようになった。今年竹にしてみれば、多くの竹幹のなかからやっと抜き出て空を見ることができたのだ。晴れ晴れとした今年だけの気持ちが自分のことのように詠まれている。(高橋正子)

[5月13日]
★ひなげしや煙りすなおに立ちにける/小口泰與
ひなげしの薄い花びら、しなやかな茎の曲線は、すなおな印象を受ける。立ちのぼる煙もうすうすとして、
あるかないかの風に「すなお」だ。(高橋正子)

★夏きざす京の老舗や手拭い店/桑本栄太郎
手拭いの柄には、伝統的な柄や四季折々の絵柄があって、見ても楽しいものだ。特に白地に藍で染め抜いたものは涼しそうで、「夏きざす」の季節にぴったり。(高橋正子)

[5月12日]
★母の日や花種添えて荷の届く/佃 康水
離れて住む子から母の日の贈り物の荷が届いた。その荷のなかに、花の種があった。花好きの母を思う子のやさしさが偲ばれる。それをあっさりと詠んだのがさわやか。(高橋正子)

★苗を待つ信濃の代田のまっ平ら/古田敬二
田植えを待つばかりの代田が水を湛え、「まっ平ら」である。「まっ平ら」にある水の張りのやわらかな緊張感がよい。(高橋正子)

★噴水を待つ子ら水に触れながら/祝恵子
噴水が上がるのを待つ間、子どもたちは噴水池の水に手を入れ、水の感触を楽しんでいる。水が恋しい季節になった。(高橋正子)

[5月11日]
★山下りて植田の並びの中帰る/多田有花
新緑が目にあふれる山を下りてきて、今度は植田の並ぶひろびろとした視界の中にいる。どちらもがよい。二つは根底で繋がっていて、現れるその変化がよい。(高橋正子)

★五月晴れ眼下を新幹線の過ぐ/福田ひろし
超速力で一直線に走り抜ける新幹線は、五月晴れの爽快な気分そのものだ。鉄でできた新幹線がそのデザインとスピードでしなやかに思える。(高橋正子)

5月11日~20日

5月20日(4名)

●小口泰與
産土の山峻烈や蝮酒★★★
白鷺の来るため空けし中州かな★★★
落し文見つけ園児の駆け行けり★★★★

●河野啓一
空青く木々新緑に送迎車★★★
まっすぐに咲き上るルピナス朝の風★★★
鯵うまし海の香思う一夜干し★★★★

●祝恵子
夏めくや木陰の下で音合わせ★★★
パレードを若葉の下で待ちうける★★★★
快活なパレードを見物するのに一番いい季節は、若葉の季節と思う。汗ばむような明るい日差しを浴びたパレードの一団と、若葉陰でパレードを見る人との対比がくっきりとしている。(高橋正子)

カーブする夏の行進足ぶみし★★★

●桑本栄太郎
鴨川の川床(ゆか)に唐傘整いぬ★★★
緑蔭となりし隘路や天王山★★★
色変えし田植え花とや谷うつぎ★★★★

5月19日(4名)

●小口泰與
夏ひばり畑は宅地となりにける★★★
朝の日の差すやルピナス神神し★★★
松籟のとどく洋館聖五月★★★★

●河野啓一
大和路を行けば青空風薫る★★★★
もくもくと緑は空へ楠若葉★★★
バラ花壇香りの中の苗売り場★★★

●古田敬二
葉桜を今朝一番の登校児★★★★
葉桜の下を今朝一番に学校へ向かう児童たちがくぐって行く。「今朝一番」からは、学校が楽しく、元気の良い子供たちが思い浮かぶ。初夏の生き生きとすがすがしい光景だ。(高橋正子)

菜園で太りし丸さ豆ご飯★★★
喫茶店欅若葉の大硝子★★★

●桑本栄太郎
眼に青葉山の上なる送電塔★★★★
二の腕の白くまぶしく夏日さす★★★
縄跳びをしつつ家路や麦の秋★★★

5月18日(5名)

●小口泰與
ぬか雨や蕗の広葉に隠れける★★★
陶物の狸や朝の寺清水★★★
ルピナスの南へ傾ぎそれっきり★★★★

●多田有花
大橋をすっぽり隠し初夏の雨★★★
夏山の頂の木でブランコを★★★

水の入る田の中二両の電車ゆく★★★★
水の張られた田が連なる中を、二両電車がカタコトと走ってゆく。田植え前の穏やかで明るい平野の風景に癒される。(高橋正子)

●桑本栄太郎
木々の枝の葉裏くすぐり風薫る★★★
青空と雲の水田へ風薫る★★★★
青空と雲の映っている水田へ、かぐわしい風が吹いてくる。その風に田水にさざ波が走り、青空や雲をゆらしている。日本の美しい風景のひとつだ。(高橋正子)

部屋干しの竿の用意や走り梅雨★★★

●河野啓一
青葉潮港に帰る小舟かな★★★★
嵩高き葉桜並木となりにけり★★★
大阪市歴史続くや青葉雨★★★

●古田敬二
紫に煙るや夕べの花楝★★★
子に会いに行く夕暮れの花楝★★★★
今私一番きれいと芍薬咲く★★★

5月17日(4名)

●小口泰與
花菖蒲声を降ろせし渡し舟★★★
初夏や青きジーパン蒼き靴★★★
花桐や浅間山(あさま)へ向う鳥の群★★★★

●内山富佐子
天窓の取り替え工事夏きざす★★★★
明り採りの天窓、生家の台所に、ただガラスが嵌めてあるだけの天窓があったので思い出したが、今は、工夫され、開閉のできるようなよいものがあるのだろう。夏に向けて明るい光が差し込むのは、気持ちもさわやかになってうれしいものだ。(高橋正子)

若葉照るやりたき事を見つけたり★★★
恥じらいつつ茎高くする浮き葉かな★★★

●桑本栄太郎
くもり来て紫蘭いろ濃き雨催い★★★
身をよせて生きる覚悟や余り苗★★★★
みどり濃き都大路や賀茂祭★★★

●高橋信之
はこねうつぎの楽しく咲いている午後よ★★★★
高きより高き所の朴の花見る★★★
花びらを重ねて咲ける八重どくだみ★★★

5月16日(7名)

●小口泰與
風かおり親の影追う仔馬かな★★★★
朝日差す湖畔の鳥や若楓★★★
ルピナスややわき風吹く妙義山★★★

●迫田和代
麦秋の風を友とし散歩する★★★★
散歩の友とするのが、人でも、犬でもなく、「麦秋の風」であるのがいい。心持がひろやかで、気持ちもさわやかだ。(高橋正子)

新生の広島に似合う草萌える★★★
とうあさの海の近くに夏の花★★★

●祝恵子
若葉陰将棋指す人囲む人★★★★
若葉のころは、家より外が心地よい。若葉陰に縁台など持ち出して、将棋を指すと、それを見物する外野の人たちも集まってくる。若葉陰の対局に人の輪ができる。庶民の暮らしの楽しい一場面だ。(高橋正子)

麦わら帽母より先に子は走る★★★★
車椅子香り覆おいてバラの園★★★

●古田敬二
鍬の柄へ天道虫の来て滑る★★★★
ナナハンの隊列若葉の信濃路を★★★
去年より高き梢の若葉光★★★

●河野啓一
下萌えの緑を透かしポピー咲く★★★★
蔦生うるパビリオンあり時想う★★★
薔薇の園空には白い雲流れ★★★

●桑本栄太郎
窓開けて山河したたる在所かな★★★★
教会の峰ふろころや五月山★★★
わらわらと葉のなびき居り青嵐★★★

●高橋秀之
目の前をすっと飛びゆく初燕★★★
初燕飛び行く先は青き空★★★★
ビル並ぶ都会の街並み初燕★★★

5月15日(4名)

●小口泰與
夏ひばり牧草ロール整然と★★★★
牧草ロールが散らばり、空に雲雀が鳴いて、高原の心地よさが伝わる。「整然と」が「心地よさ」となっている。(高橋正子)

高原の馬の雄叫び聖五月★★★
奥利根の渓流はやし閑古鳥★★★

●桑本栄太郎
くもり来る雨の催いや谷うつぎ★★★
木斛の花に朱の葉のありにけり★★★★
それぞれの店にそれぞれ川床座敷★★★

●河野啓一
ー千里万博自然園ー
楠若葉みどりの雲の湧くごとく★★★
新緑の森を透かして箕面山★★★★
生徒たち校外学習新緑のなか★★★

●古田敬二
トラクター代田に逆さま昼餉時★★★
夏蓬海抜千によく香る★★★★
間隔を測りて植えるトマト苗★★★

4月14日(5名)

●小口泰與
ぼうたんの崩るる朝や鶏の声★★★
ぼうたんの崩るや朝の山蒼し★★★★
青空や牡丹崩るる事忙し★★★

●古田敬二
苗植える触れればトマトの香りせり★★★
源流の水澄む初夏の矢作川★★★
てんぷらは信濃に豊かな山菜を★★★★

●多田有花
桜の実落ちる木陰に車を停める★★★★
和服の人日傘でゆける正午かな★★★
桐の花ドライブウェイに散り敷けり★★★

●桑本栄太郎
白鷺のさざれの石や桂川★★★
花街のカメラ放射や夏の日に★★★
南座の大屋根光る夏日かな★★★★

●佃 康水
町内の会議虚ろや雷激し★★★ 
雷鳴にビルの玻璃戸の震えかな★★★

抜きん出て空にまみえし今年竹★★★★
筍からみるみる生長して、ほかの竹の背丈を凌ぐようになった。今年竹にしてみれば、多くの竹幹のなかからやっと抜き出て空を見ることができたのだ。晴れ晴れとした今年だけの気持ちが自分のことのように詠まれている。(高橋正子)

5月13日(6名)

●古田敬二
なんじゃもんじゃの白は夕陽に染まりけり★★★
芍薬の風にゆるるほどに薄く咲く★★★★
街路樹の若葉高々広小路★★★

●小川和子
道標の先は渓流谷若葉★★★
実桜を降らせ大樹の枝を張る★★★★
人知れず野を潤せる姫女苑★★★

●河野啓一
風に乗りみかんの花が咲きはじめ★★★
木イチゴの実が成ったよと妻が来る★★★★
酸っぱくて甘い木苺小さすぎ★★★

●小口泰與
ひなげしや煙りすなおに立ちにける★★★★
ひなげしの薄い花びら、しなやかな茎の曲線は、すなおな印象を受ける。立ちのぼる煙もうすうすとして、
あるかないかの風に「すなお」だ。(高橋正子)

板の間に寝そべる仔犬雲の嶺★★★
赤城山(あかぎ)にも利根川(とね)にも飽かず若楓★★★

●多田有花
桐の花近く寄りなば甘く匂う★★★
台風が南海進む浅き夏★★★★
朝の森新緑揺らす風の音★★★

●桑本栄太郎
推敲に倦むや眼放つ窓若葉★★★
緑蔭となりし車内や天王山★★★

夏きざす京の老舗や手拭い店★★★★
手拭いの柄には、伝統的な柄や四季折々の絵柄があって、見ても楽しいものだ。特に白地に藍で染め抜いたものは涼しそうで、「夏きざす」の季節にぴったり。(高橋正子)

5月12日(6名)

●小口泰與
新緑や川虫探す石の底★★★
大瑠璃のひよこひょこ歩む庭の芝★★★
ぼうたんや絵本を開く吾子の顔★★★★

●佃 康水
四ツ目垣組まれし茶屋や花あやめ★★★
母の日や花種添えて荷の届く★★★★
離れて住む子から母の日の贈り物の荷が届いた。その荷のなかに、花の種があった。花好きの母を思う子のやさしさが偲ばれる。それをあっさりと詠んだのがさわやか。(高橋正子)

魚影に遅れ流るる夏落葉★★★

●小川和子
栃の花すじ雲淡き空に添う★★★
山路ゆく我に声澄む夏うぐいす★★★
幾千のひなげし山の風を恋う★★★★

●古田敬二
苗を待つ信濃の代田のまっ平ら★★★★
田植えを待つばかりの代田が水を湛え、「まっ平ら」である。「まっ平ら」にある水の張りのやわらかな緊張感がよい。(高橋正子)

薄紅の芍薬花弁風に揺れ★★★
若葉道暗し信玄塚へ登る道★★★

●祝恵子
根の張りし布袋草をば選びおり★★★
噴水を待つ子ら水に触れながら★★★★
噴水が上がるのを待つ間、子どもたちは噴水池の水に手を入れ、水の感触を楽しんでいる。水が恋しい季節になった。(高橋正子)

モッコウバラしっかり空に盛り上がり★★★

●桑本栄太郎
特急の隘路通過や青葉闇★★★
訪う人のためらうほどや紅の薔薇★★★
クレーンの夏日に伸びて真直ぐなる★★★★

5月11日(6名)

●小口泰與
新緑や谷間をはやす鳥の声★★★★
柿若葉カーテンの色変えにける★★★
山風に抗す柱や家白蟻★★★

●古田敬二
若葉映ゆ信濃の山の田鎮まれり★★★
とんがりてヒマラヤスギの夏木立★★★
ハイウェイ信濃の若葉山丸し★★★★

●多田有花
山下りて植田の並びの中帰る★★★★
新緑が目にあふれる山を下りてきて、今度は植田の並ぶひろびろとした視界の中にいる。どちらもがよい。二つは根底で繋がっていて、現れるその変化がよい。(高橋正子)

頂にとりどり集う夏の蝶★★★
木漏れ日がきらきら揺れる森の道★★★

●桑本栄太郎
上手(かみて)より薫風来たり鴨川に★★★★
堰堤の怒涛きらめき風薫る★★★
弁柄の祇園小路や夏日さす★★★

●小川和子
晴天に照る葉陰る葉桐の花★★★
薫風やメタセコイアの葉擦れ音★★★★
幾重にも水輪生まるる蝌蚪の群れ★★★

●福田ひろし
夏来るドドドドドンと太鼓鳴る★★★
なるようになるとつぶやき初鰹★★★

五月晴れ眼下を新幹線の過ぐ★★★★
超速力で一直線に走り抜ける新幹線は、五月晴れの爽快な気分そのものだ。鉄でできた新幹線がそのデザインとスピードでしなやかに思える。(高橋正子)

●デイリー句会投句箱/5月1日~10日●


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