今日の秀句/6月1日~6月10日

6月10日(1句)
★打水や街に活気を放ちけり/弓削和人
打水された商店街なのだろう。打水に街が生き生きとしてくる。「活気を放ち
」が新しい。作者も元気をもらったことだろう。(髙橋正子)
6月9日(1句)
★列車に乗り大緑陰を見て過ぎる/弓削和人
列車に乗れば、旅でなくても、通勤や通学などでも、思わぬ景色に出会うことがある。たまたま「大緑陰」のある涼しそうな景色を見た。大きな緑陰に入って見たい気持ちが湧いたであろう。(髙橋正子)
6月8日(1句)
★青葉山今朝青空を戴けり/多田有花
朝となれば、青々とした青葉の山とその上に広がる青空が新鮮に、またきっぱりと目に映る。深い緑と空の青の色がシンプルでいい。(髙橋正子)
6月7日(1句)
開け放つ窓に幾度もほととぎす/多田有花
ほととぎすが鳴くと夏が来たと思う。次第に暑くなったこのごろ、窓を開け放すと、窓に何度もほととぎすの声を聞くことになった。明らかに夏が来た思い。(髙橋正子)
6月6日(1句)
★身ほとりの緑に染まる芒種かな/桑本栄太郎
芒種は、「芒(のぎ)」の種、穂の出る植物を蒔く日とされ6月5日ごろに当たる。梅雨入り前の湿気が多くなるころであるが、身辺は木々や草々の美しい緑に染まる。味わいたい一日である。(髙橋正子)
6月5日(1句)
★翡翠や渓流さやに歌いける/小口泰與
翡翠のいる渓流。その渓流が「さやに歌う」。清涼感のある句。(髙橋正子)
6月4日(2句)
★郭公や暁の一声それっきり/小口泰與
暁の郭公の一声。そのあと鳴くかと声を待つが一声だけだった。郭公の一声ののちの暁の静寂。(髙橋正子)
★炎昼の路を貫く耕運機/弓削和人
暑いさかり、道路を耕運機がまっすぐに進んでいるのに出会うことがある。畑や田に向かうところであろうが、道路を移動する動きが面白い。「炎昼」が効いている。物事がさらけだされる時刻。(髙橋正子)
6月3日(1句)
★木洩れ日の影を踏みつつ朝涼し/桑本栄太郎
朝の涼しさは、木洩れ日にちらちらと動く影を踏むときに、特に感じる。「涼しさ」と言う目に見えないものを「木洩れ日の影」によって表した。(髙橋正子)
6月2日(1句)
★茄子の花うつむきひとつ咲き初めし/多田有花
葉も茎も花もむらさき色の茄子。咲きはじめた一つの花がうつむいて、いっそう愛おしく思える。そんな花が咲きはじめたのだ。(髙橋正子)
6月1日(1句)
★新しき日の始まりやアマリリス/多田有花
アマリリスは、ラッパ状の赤い花が、見るからに元気で溌剌としている。新しい日の始まりに相応しい花と言えよう。(髙橋正子)

6月1日~6月10日

6月10日(3名)
小口泰與
田水ひく小川の音の滔滔と(原句)
「滔々と」は、水の流れや、話の流れの表現に使います。
田水ひく小川の流れ滔々と★★★★(正子添削)
また雨の太くなりたり薔薇の庭★★★
浅間山良く見え今朝の桐の花★★★
桑本栄太郎
睡蓮の池を迫り出す浮葉かな★★★★
雨誘う風の窓辺や花南天★★★
降りそうで曇りの茅花流し吹く★★★
弓削和人
串鮎のしずく滴る河川敷★★★
向日葵の天を仰ぎて咲きにけり★★★
打水や街に活気を放ちけり★★★★
6月9日(4名)
小口泰與
山古志の田を悠然と錦鯉★★★
魚はみな濁り好まずキャンプ場★★★★
隣家より夕餉の匂い桐の花★★★
桑本栄太郎
姫女苑の畑を被いぬ休耕地★★★
山並をそのまま映す植田かな★★★★
地道行く川風ありぬ草いきれ★★★
多田有花
緑陰に掛けサックスを吹く人よ★★★
道隔て紫陽花の色変わりけり★★★
前山の中腹栗の花盛り★★★
弓削和人
書に触れて横たわりおり夏の夜★★★
弁当箱ひとりで食べる端居かな★★★
列車乗り大緑陰を見て過る(原句)
「列車乗り」は、日本語としては片言です。(原句)
列車に乗り大緑陰を見て過ぎる(口語)(正子添削)★★★★
列車に乗れば、旅でなくても、通勤や通学などでも、思わぬ景色に出会うことがある。たまたま「大緑陰」のある涼しそうな景色を見た。大きな緑陰に入って見たい気持ちが湧いたであろう。(髙橋正子)
6月8日(4名)
小口泰與
緑陰の空深きかな湖の風(原句)
緑陰に空深きかな湖の風★★★★(正子添削)
老鶯や赤城の裾の樹木の色★★★
枝伸びて樋を隠せる青葉かな★★★
多田有花
青鷺の翼広げてわが頭上★★★
青葉山今朝青空を戴けり★★★★
朝となれば、青々とした青葉の山とその上に広がる青空が新鮮に、またきっぱりと目に映る。深い緑と空の青の色がシンプルでいい。(髙橋正子)

色づいて小さき紫陽花雨を待つ★★★

桑本栄太郎
堰水の白き飛沫や朝涼し★★★★
川べりの地道を行けば草いきれ★★★
花合歓の川風に浮く栄華かな★★★
弓削和人
眼鏡越し仰いで空に羽蟻とぶ(原句)
眼鏡越し仰げる空に羽蟻とぶ★★★(正子添削)
老夫婦夏の停車場腰かけぬ(原句)
「老夫婦/夏の停車場/腰かけぬ」と3つに切れていますが、これは俳句では嫌います。
老夫婦夏の停車場に腰をかけ★★★(正子添削)
夕立晴大和路ゆけば轍あと★★★★
6月7日(4名)
小口泰與
白鷺や川の中州の岩あらわ ★★★
靴紐を取り換えており夏の山★★★★
虹の根を探しに行けり吾子と犬★★★
多田有花
開け放つ窓に幾度もほととぎす★★★★
ほととぎすが鳴くと夏が来たと思う。次第に暑くなったこのごろ、窓を開け放すと、窓に何度もほととぎすの声を聞くことになった。明らかに夏が来た思い。(髙橋正子)
梅雨入りの前に洗濯を済ます★★★
明け早し旭光雲を照らしおり★★★
桑本栄太郎
忽と出で翅の透き居り夏とんぼ★★★★
老鶯の頻りになげく薮の空★★★
からころと竹林歌う青あらし★★★
弓削和人
青田風投網のごとく吹きわたり★★★★
夜の雷電光石火闇覆い★★★
晩涼や猫の眼差しのみありて★★★
6月6日(4名)
小口泰與
青鷺や川原の石の顕なる★★★
若竹や川風弾く五六本★★★★
五月山布団干したる両隣★★★
多田有花
ぽつぽつと代田が宅地の中に増え★★★★
雨音に目覚めておりぬ芒種かな★★★
軒下に雀のとまり走り梅雨★★★
桑本栄太郎
身ほとりの緑に染まる芒種かな★★★★
芒種は、「芒(のぎ)」の種、穂の出る植物を蒔く日とされ6月5日ごろに当たる。梅雨入り前の湿気が多くなるころであるが、身辺は木々や草々の美しい緑に染まる。味わいたい一日である。(髙橋正子)
犬連れの辻に集いぬ朝涼し★★★
恋染めしあの娘気になり草矢打つ★★★
弓削和人
夏の蝶雨風に舞い何処ゆく★★★
淡紅の夾竹桃が咲く団地★★★
紫陽花に雨だれにじみ藍深し★★★★
6月5日(4名)
小口泰與
急流に戸惑う我やバンガロー★★★
青鷺や湖の夕映え覚めやらぬ★★★
翡翠や渓流さやに歌いける★★★★
翡翠のいる渓流。その渓流が「さやに歌う」。清涼感のある句。(髙橋正子)
桑本栄太郎
犬連れの辻に集いぬ朝涼し★★★
つる薔薇の赤き垣根や美容院★★★
ついついと白き筋見せ青すすき★★★
多田有花
河川敷一樹がなせる大緑陰★★★
川風を楽しむ日曜デイキャンプ★★★
夏の夕陽のあるうちに湯につかる★★★
弓削和人
夏果のふるさとを発ちにけり★★★
「字足らず」になっています。それで、物足りない感じがします。(鷹はh氏正子)
夕山を下る卯の花腐しかな★★★
万緑の中の透き目の民家かな★★★
 
6月4日(4名)
小口泰與
郭公や暁の一声それっきり★★★★
暁の郭公の一声。そのあと鳴くかと声を待つが一声だけだった。郭公の一声ののちの暁の静寂。(髙橋正子)
松落葉宅地造成進みける★★★
雀らの昼の芝生や捩り花★★★
多田有花
花好きの家なり八重のさつき咲く★★★
夜勤明けの男を迎え朝の薔薇★★★
赤き薔薇窓辺いっぱいに咲かせ★★★
桑本栄太郎
朝日さすつる薔薇赤き垣根かな★★★
つぶつぶの雨を待ちをり四葩咲く★★★
青すすき筋目を白く通しけり★★★★
弓削和人
炎昼の路を貫く耕運機★★★★
暑いさかり、道路を耕運機がまっすぐに進んでいるのに出会うことがある。畑や田に向かうところであろうが、道路を移動する動きが面白い。「炎昼」が効いている。物事がさらけだされる時刻。(髙橋正子)
夕暮れまで立ちにけり鷺一羽★★★
夕風が網戸を透きて吹きわたり★★★
6月3日(4名)
小口泰與
桐咲くや祖母の小紋を妻纏う★★★★
釣糸の枝より外る雲の峰★★★
白薔薇や心に響くことのあり★★★
桑本栄太郎
木洩れ日の影を踏みつつ朝涼し★★★★
朝の涼しさは、木洩れ日にちらちらと動く影を踏むときに、特に感じる。「涼しさ」と言う目に見えないものを「木洩れ日の影」によって表した。(髙橋正子)
紫陽花の色移りゆく垣根越し★★★
下校児の賑やかなりぬ青あらし★★★
多田有花
蛍袋朝のチャペルの鐘の音★★★★
このごろは青きサルビアも多し★★★
十薬が主となりし空き家かな★★★
弓削和人
姫女苑売り地にそよぐ白さかな★★★
夏浅し運河の果てを見ゆる鷺(原句)
「見ゆる(終止形は、見ゆ)」は、口語になおすと「見える」(自動詞)です。自然に目に映る意味です。「見ゆ(自動詞)」ではなく「見る(他動詞)」を使います。「見る」はマ行上一段活用なので、「鷺」につなげるには連体形の「見る」を使います。
夏浅し運河の果てを見る鷺よ★★★(添削①)
夏浅し鷺は運河の果てを見て★★★★(添削②)
猫来たり凪の植田に身を映し★★★
6月2日(4名)
小口泰與
黄帽子の子らの歓声鳰浮巣★★★
順番に飛び立つ川鵜夕間暮れ★★★
郭公や里の社の古びたる★★★★
多田有花
芋の葉は芋の葉なりき夏の朝★★★
茄子の花うつむきひとつ咲き初めし★★★★
葉も茎も花もむらさき色の茄子。咲きはじめた一つの花がうつむいて、いっそう愛おしく思える。そんな花が咲きはじめたのだ。(髙橋正子)
夏草の茂れるばかり廃屋に★★★
桑本栄太郎
治療果て家路となりぬ夏日影★★★
緑蔭の家路のつづくバス通り(原句)
緑蔭のつづく家路やバス通り★★★★(正子添削)
昼寝より目覚めつづくや五里霧中★★★
弓削和人
緋ダリア溢るる笑みの眩しさよ(原句)
「笑み」とするところを、しっかり写生するのが良いと思います。俳句は、写生が基本です。(髙橋正子)
緋ダリアの咲き溢れたる眩しさよ★★★★(正子添削)
緑さす苗の並びに雲かかり★★★
蒲の穂の新兵のごとなびくかな★★★
6月1日(4名)
小口泰與
正面に奇岩の山や昇り藤★★★
嶺雲や文机に置く三国志★★★★
今日迎う三年目の目高かな★★★
桑本栄太郎
黄金になるには早し小判草★★★
独り居の午後の眠けや六月に★★★
くもりても雨ともならず流しかな★★★
多田有花
新しき日の始まりやアマリリス★★★★
アマリリスは、ラッパ状の赤い花が、見るからに元気で溌剌としている。新しい日の始まりに相応しい花と言えよう。(髙橋正子)
ベゴニアの小さき一輪路地裏に★★★
高く咲く薔薇に朝日の差しにけり★★★
弓削和人
鮎釣りの父と向かうや長良川★★★★
夏草や宮参りたる通学児(原句)
通学の児童は、この時期なんのための宮参りでしょうか。
夏草や宮参りする通学児★★★(正子添削)
通学の鞄重しや氷菓子(原句)
「通学の鞄重し」ということと「氷菓子」の関係がわかりません。二つのことをくっつければいいと言うことではありません。(髙橋正子)
通学鞄の重きをおろし氷菓食ぶ★★★(正子添削)

自由な投句箱⓶/5月21日~5月31日(転記)

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
※転記元ブログ:自由な投句箱⓶

今日の秀句/5月21日~5月31日(転記)

5月31日(2句)
★命日の夕べざくざくきゃべつ切る/川名ますみ
ざくざくきゃべつを切っている夕べ、亡くなられた人の小さなことが、つぎつぎ心に浮かんでくる。それを打ち消すような「ざくざく」という音の感じが言い表しがたい思いを伝えてくれている。(髙橋正子)
★あじさいの石垣被い今朝の雨/桑本栄太郎
石垣に垂れ下がるように咲いたあじさい。石垣を被い尽くしている。そこに雨がかかり、みずみずしい色に輝いている。「石垣」が効いている。(髙橋正子)
5月30日(1句)
★巣作りの燕は早し夏の朝/多田有花
夏の朝のすがすがしさの中で、せっせと巣作りする燕の姿に人間的なものが見える。(髙橋正子)

5月29日(1句)

★浜寺の潮騒聞こゆ晶子の忌/桑本栄太郎
堺市生まれの情熱の歌人与謝野晶子は、浜寺で催された歌会で初めて鉄幹と出会ったと言われる。白砂青松の風光明媚な浜寺公園には晶子の次の歌碑がある。
ふるさとの和泉の山をきはやかに
             浮けし海より朝風ぞ吹く 与謝野晶子

これらの情景や事情を踏まえた忌日俳句。「潮騒聞こゆ」が効果的。(髙橋正子)

5月28日(1句)

★萍や愚かに日日を過ごしけり/小口泰與
萍が増えるころ、日々がいたずらに過ぎていくような気がする。萍が浮くようにどこか力が入りきらない感じになる。よりよく生きようとする気持ちが「愚かに」という感覚を誘いだしてしまったのだろう。(髙橋正子)

5月27日(1句)

★挨拶す薔薇香らせる家の前/多田有花
きれいに薔薇を咲かせている家の前で偶然知人に会って、挨拶を交わす。薔薇の香りの漂うところで、挨拶する人も、その挨拶も明るく華やいでかぐわしい感じがする。(髙橋正子)

5月26日(1句)

★麦秋の能登路を花嫁のれん号/多田有花
「花嫁のれん」号は、金沢と和倉温泉を走る観光列車。加賀友禅のような絵模様が描かれ、花嫁衣裳のような列車。婚礼の日に花嫁の幸せを願ってのれんが送られる風習にならっての列車名。「麦秋の能登路」がいかにもふさわしい。(髙橋正子)

5月25日(1句)

★発条の玩具の如き夏雲雀/小口泰與
発条の巻きが弾けほどけるように、小さい体が弾けるように夏空に鳴く雲雀。
さらに高みを目指す雲雀の快活さが楽しい。(髙橋正子)

5月24日(2句)

★湯の白きタイルや大夕焼/小口泰與
昭和の時代が懐かしさとともに蘇る。昭和の匂いまでしてきそう。銭湯の白いタイルと大夕焼けがいやでも昭和を感じさせてくれる。(髙橋正子)

<和倉温泉>
★温泉に小さき港夏浅し/多田有花
北陸路の旅の情緒がよく出ている。「小さき港」が手のひらにのるような
愛おしさがあって、「夏浅し」が効いている。(髙橋正子)

5月23日(1句)

★老鶯の朝の森なり風の歌/桑本栄太郎
老鶯の声が伸びやかな朝の森。涼しい風が吹いて老鶯の歌はまさに風の歌となって届いて来る。(髙橋正子)

5月22日(1句)

★野放図の柔き泳ぎの目高かな/小口泰與
飼っている目高だろう。夏になると元気になり、野放図なほど奔放で自由な動きを見せる。見ていると面白くて飽きない。(髙橋正子)

5月21日(1句)

<金沢から和倉温泉へ>
★能登かがり火植田の中を走りゆく/多田有花
「能登かがり火」というJRの列車名。植田の中を走る列車が見せてくれる風景は、日本の真髄と言える風景。「かがり火」のイメージが植田を走るのもまたいい。(髙橋正子)

5月21日~5月31日(転記)

5月31日(4名)
川名ますみ
また晴れし十三回忌青葉風★★★★
命日の夕べざくざくきゃべつ切る★★★★
ざくざくきゃべつを切っている夕べ、亡くなられた人の小さなことが、つぎつぎ心に浮かんでくる。それを打ち消すような「ざくざく」という音の感じが言い表しがたい思いを伝えてくれている。(髙橋正子)
まだ知らぬ父の話を夏の日に★★★

小口泰與
百本の薔薇や小雨に暮るる庭★★★
嬬恋の朝の冷気や桷の花★★★
落人の里の湯宿や栗の花★★★

多田有花
朝散歩皐月躑躅にあいさつを★★★
モーニングコーヒー薔薇咲く庭に座し★★★
山法師咲く新築の家の庭★★★

桑本栄太郎
あじさいの石垣被う今朝の雨(原句)
あじさいの石垣被い今朝の雨★★★★(正子添削)
石垣に垂れ下がるように咲いたあじさい。石垣を被い尽くしている。そこに雨がかかり、みずみずしい色に輝いている。「石垣」が効いている。(髙橋正子)

雨足の午後より晴れて五月尽★★★
子供等の遊び声聞く夕薄暑★★★

5月30日(3名)

小口泰與
ハンカチの花や山風吹き抜ける★★★
清流の岸辺治むる九輪草★★★
天窓を解放せしや棕櫚の花★★★★

多田有花
夏つばめ何度も翼ひるがえし★★★
巣作りの燕は早し夏の朝★★★★
夏の朝のすがすがしさの中で、せっせと巣作りする燕の姿に人間的なものが見える。(髙橋正子)

夕刻や初ほととぎす遠く鳴き★★★

桑本栄太郎
緑蔭のつづく並木やバス通り★★★
信号の影に身を寄す片かげり★★★
湯に浸かりブリキの金魚浮いて来い★★★★

5月29日(3名)

小口泰與
石楠花の蕊の長きや雨の朝★★★
青鷺の岸辺離れず川の水★★★
渓流の曲がりくねりて鮎遡上★★★★

多田有花
虚空飛ぶ巣を失いし夏つばめ★★★★
夜も未だ明けぬうちより不如帰★★★
夏つばめ軒下に三羽集いおり★★★

桑本栄太郎
浜寺の潮騒聞こゆ晶子の忌★★★★
堺市生まれの情熱の歌人与謝野晶子は、浜寺で催された歌会で初めて鉄幹と出会ったと言われる。白砂青松の風光明媚な浜寺公園には晶子の次の歌碑がある。
ふるさとの和泉の山をきはやかに
             浮けし海より朝風ぞ吹く 与謝野晶子

これらの情景や事情を踏まえた忌日俳句。「潮騒聞こゆ」が効果的。(髙橋正子)

葵咲く庭の認可の保育園★★★
あじさいの早やも咲きたる園の庭 ★★★

5月28日(2名)

小口泰與
萍や愚かに日日を過ごしけり★★★★
萍が増えるころ、日々がいたずらに過ぎていくような気がする。萍が浮くようにどこか力が入りきらない感じになる。よりよく生きようとする気持ちが「愚かに」という感覚を誘いだしてしまったのだろう。(髙橋正子)

うすばかげろう子犬逝きしは寅の刻★★★
隠り沼の日影の草に糸蜻蛉★★★

桑本栄太郎
秘めやかな箱根卯木や紅と白★★★
くつきりと罪の自覚か花柘榴★★★★
池渕の底の破れや牛蛙 ★★★

5月27日(3名)

小口泰與
青蔦や朝夕浅間を仰ぎける★★★
縄文の人の面輪や雲の峰★★★
大利根の叫ぶ白波走り梅雨★★★

多田有花
挨拶す薔薇香らせる家の前★★★★
きれいに薔薇を咲かせている家の前で偶然知人に会って、挨拶を交わす。薔薇の香りの漂うところで、挨拶する人も、その挨拶も明るく華やいでかぐわしい感じがする。(髙橋正子)

夏燕わが眼前を近く飛ぶ★★★
町はまだ眠りの中に明早し★★★

桑本栄太郎
茄子漬の紺のゆるみの朝餉かな★★★★
坂道を登り病院サングラス★★★
涼風のZOO句会や夜の窓★★★

5月26日(3名)

小口泰與
斑猫や杣道駆けるマルチーズ★★★
玉虫やかって栄華の呉服店★★★
空蝉やシルバーカーの二人連★★★

多田有花
<JR観光列車花嫁のれん三句>
天清和地に金箔の列車ゆく★★★
早苗田がやがて車窓に広がりぬ★★★★
麦秋の能登路を花嫁のれん号★★★★
「花嫁のれん」号は、金沢と和倉温泉を走る観光列車。加賀友禅のような絵模様が描かれ、花嫁衣裳のような列車。婚礼の日に花嫁の幸せを願ってのれんが送られる風習にならっての列車名。「麦秋の能登路」がいかにもふさわしい。(髙橋正子)

桑本栄太郎
あじさいのつぼみぶつぶつ呟けり★★★
花びらの青き目覚めや四葩咲く★★★★
午後よりの雨の予報の溽暑かな ★★★

5月25日(3名)

小口泰與
発条の玩具の如き夏雲雀★★★★
発条の巻きが弾けほどけるように、小さい体が弾けるように夏空に鳴く雲雀。
さらに高みを目指す雲雀の快活さが楽しい。(髙橋正子)

納戸より昭和の初期の冷蔵庫★★★
一陣の風に鼓虫水中へ★★★

多田有花
<JR観光列車花嫁のれん三句>
花嫁のれん五月のホームに藤咲けり★★★
夏きざす車体に金色惜しみなく★★★
初夏や海山の幸弁当に★★★★

桑本栄太郎
カーテンを引いて峰なる朝曇り★★★
曇れども溽暑の空となりにけり★★★
楓葉の透けて揺れ居り夕薄暑★★★★

5月24日(3名)

小口泰與
銭湯の白きタイルや大夕焼★★★★
昭和の時代が懐かしさとともに蘇る。昭和の匂いまでしてきそう。銭湯の白いタイルと大夕焼けがいやでも昭和を感じさせてくれる。(髙橋正子)

雷鳴や農婦の手足ねこ車★★★
上州の畑塗り潰す麦畑★★★

多田有花
<和倉温泉三句>
温泉に小さき港夏浅し★★★★
北陸路の旅の情緒がよく出ている。「小さき港」が手のひらにのるような
愛おしさがあって、「夏浅し」が効いている。(髙橋正子)
弁天崎源泉公園あやめ咲く★★★
足湯する人と歓談若楓★★★

桑本栄太郎
つる薔薇の赤き垣根の隘路行く★★★
影揺るる鋪道となりぬ若楓★★★★
真夏日の今日の仕舞いの茜かな★★★

5月23日(3名)

小口泰與
軽トラを逃る田道の雨蛙★★★★
手に載せる朝の薬や雲の峰★★★
榛名嶺も湖も眼間時鳥★★★

多田有花
<和倉温泉 能登海舟三句>
空間は贅沢の基夏きざす★★★
晩餐の如き朝食夏始め★★★
海静か正面に初夏の能登島を★★★★

桑本栄太郎
老鶯の朝の森なり風の歌★★★★
老鶯の声が伸びやかな朝の森。涼しい風が吹いて老鶯の歌はまさに風の歌となって届いて来る。(髙橋正子)

ベランダの二鉢咲きぬ薔薇の花★★★
風吹けば風のむらさき紫蘭かな★★★

5月22日(2名)

小口泰與
翡翠のいつもの枝や山の宿★★★
遡上せる斑の光たる山女かな★★★
野放図の柔き泳ぎの目高かな★★★★
飼っている目高だろう。夏になると元気になり、野放図なほど奔放で自由な動きを見せる。見ていると面白くて飽きない。(髙橋正子)

多田有花
<和倉温泉 能登海舟三句>
夏の夕海の色したカクテルを★★★★
夏の海正面にして晩御飯★★★
夏の朝三種の貸切露天風呂★★★

5月21日(2名)

小口泰與
鉄線や風に浮きたる飛行船★★★
早々と一枚着込む走り梅雨★★★
赤城嶺の雲の切れ間や桐の花★★★★

多田有花
<金沢21世紀美術館>
加賀友禅五月の光に揺れる椅子★★★
<金沢から和倉温泉へ>
能登かがり火植田の中を走りゆく★★★★
「能登かがり火」というJRの列車名。植田の中を走る列車が見せてくれる風景は、日本の真髄と言える風景。「かがり火」のイメージが植田を走るのもまたいい。(髙橋正子)

<和倉温泉>
大橋がかかる初夏屏風瀬戸★★★

自由な投句箱⓶/5月11日~5月20日(転記)

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今日の秀句/5月11日~5月20日(転記)

5月20日(1句)

★一陣の風や牡丹のこぼれける/小口泰與
豪華に咲いた牡丹が、一陣の風に花びらを零してしまった。たっぷりと咲いた花があっという間に散る儚さ。まるで夢のなかの出来事のように。(髙橋正子)

5月19日(1句)

<金沢21世紀美術館 スイミング・プール>
★それらしく見えども泳げぬプールかな/多田有花
「スイミング・プール」という展示物。見たとたん泳ぎたいと思うだろうが、実はそれらしく見えるが、泳げないプールなのだ。実際を見ていないが、そんな想像ができて、面白い句だ。(髙橋正子)

5月18日(1句)

★冠雪の白山見ゆる夏はじめ/多田有花
冠雪の白山が見える。見ていると日差しや風に、冠雪の白山があって、すがすがしくて、夏のはじめの季節を強く感じた。(髙橋正子)

5月17日(1句)

<金沢城公園>
★金沢の城は直線夏浅し/多田有花
金沢城は特に横の線を基調とした建築となって、防衛の要素はもちろんあるが、美的な要素も加えられている。縦の線が強調されるゴチック建築にくれべれば、平和的印象がある。それが「夏浅し」とよく合っている。(髙橋正子)

5月16日(1句)

★小流れの岸辺明るし九輪草/小口泰與
小流れの岸辺は、緑のほかに色がなければ、淋しいかもしれない。そこにピンクの九輪草が咲くと、岸辺は目覚めたように明るくなる。九輪草の可愛さが引き立つ。(髙橋正子)

5月15日(1句)

★兼六園池は新樹の影に満つ/多田有花
名園として知られる兼六園は、四季折々にの良さがある。今は新樹の影が池に満ちている。それほどに庭園の木々の盛んな様子がうかがえる。「満つ」の効果が大きい。(髙橋正子)

5月14日(1句)

★石楠花や暁の冷気を浴びにける/小口泰與
石楠花はもともと高山に自生する花なので、その姿からは山の気配が感じられる。暁の冷気がひやひやと石楠花の花を包み、朝を迎える清々しさがある。(髙橋正子)

5月13日(1句)

★みどりさす在所となりぬ大原野/桑本栄太郎
「住んでいる大原野がみどりさすところとなった」という嬉しさが読み取れる。「みどりさす」「大原野」は、現実でありながら、風雅な景色。(髙橋正子)

5月12日(1句)

★鳥声に起こさるる朝柿若葉/小口泰與
若葉が輝く朝、鳥の鳴き声に目覚めるとき、幸せを感じる。自然のやさしさに包まれた感覚がいい。(髙橋正子)

5月11日(1句)

★信号にエンジン止まり夏兆す/桑本栄太郎
信号がゴーサインである青に変わるまで車はエンジンを止めて待つことになる。エンジンが止まると音よりも車外の町の景色や日差しに目が向く。そのとき、夏の兆しを感じたのだ。(髙橋正子)

5月11日~5月20日(転記)

5月20日(2名)

小口泰與
一陣の風や牡丹のこぼれける★★★★
豪華に咲いた牡丹が、一陣の風に花びらを零してしまった。たっぷりと咲いた花があっという間に散る儚さ。まるで夢のなかの出来事のように。(髙橋正子)

薔薇咲くや居間の玻璃戸を全開に★★★
木道の天へ迂回や橡の花★★★★

多田有花
<金沢21世紀美術館 雲を測る男>
その男夏めく雲を測りおり★★★

<金沢21世紀美術館 緑の橋>
初夏の花壁に奔放なるアート★★★

<金沢21世紀美術館 ブルー・プラネット・スカイ>
人来たり座して五月の空仰ぐ★★★★

5月19日(3名)

小口泰與
山風に百本の薔薇叫びける★★★
水槽の目高三年泳ぐかな★★★
幼子の兄弟喧嘩捩り花★★★

多田有花
椎の花満開しいのき迎賓館★★★
<金沢21世紀美術館>
円形に四角の迷路夏きざす★★★
<金沢21世紀美術館 スイミング・プール>
それらしく見えども泳げぬプールかな★★★★
「スイミング・プール」という展示物。見たとたん泳ぎたいと思うだろうが、実はそれらしく見えるが、泳げないプールなのだ。実際を見ていないが、そんな想像ができて、面白い句だ。(髙橋正子)

桑本栄太郎
ハーブとうカモミール摘み風薫る★★★
すれ違う隘路を行くや若葉晴れ★★★
二鉢の薔薇のつぼみや咲き初むる★★★

5月18日(2名)

小口泰與
水際に鳥の佇む聖五月★★★
かの昔下宿に宿る守宮かな★★★
就中牡丹咲きけり雨後の庭★★★

多田有花
<金沢三句>
夏の夕近江市場で刺身食ぶ★★★
冠雪の白山を見る夏はじめ★★★
自然に、白山が目に入る、見える、ほうが詩情て出ると思います。(髙橋正子)
冠雪の白山見ゆる夏なじめ★★★★(正子添削)
冠雪の白山が見える。見ていると日差しや風に、冠雪の白山があって、すがすがしくて、夏のはじめの季節を強く感じた。(髙橋正子)

初夏や今朝快晴の鼓門★★★

5月17日(4名)

小口泰與
花蜘蛛や昨日会いたる人に似て★★★
天牛の声の高きや手の中に★★★★
ぼたん寺おちこち牡丹満尾せり★★★

多田有花
<金沢城公園三句>
五月かな修学旅行生数多★★★
若葉する石川門をくぐりけり★★★
金沢の城は直線夏浅し★★★★
金沢城は特に横の線を基調とした建築となって、防衛の要素はもちろんあるが、美的な要素も加えられている。縦の線が強調されるゴチック建築にくれべれば、平和的印象がある。それが「夏浅し」とよく合っている。(髙橋正子)

桑本栄太郎
つる薔薇の垂れゐて赤き隘路かな★★★
毛虫ゆくさても人生未だ尽きず★★★
雨上がる午後の日差しや薄暑光★★★

川名ますみ
水彩の花柄揺らすサンドレス★★★
水彩の青の刷られしサンドレス★★★★
白薔薇に手のひらほどの湿り来し★★★

5月16日(2名)

小口泰與
小流れの岸辺明るし九輪草★★★★
小流れの岸辺は、緑のほかに色がなければ、淋しいかもしれない。そこにピンクの九輪草が咲くと、岸辺は目覚めたように明るくなる。九輪草の可愛さが引き立つ。(髙橋正子)

白壁を駆け行く守宮蔵座敷★★★
引き抜かる雑草の根に蚯蚓かな★★★

多田有花
<兼六園三句>
夏浅き水面に唐崎松の枝★★★
日本武尊ここにありけり夏始め★★★
根上松緑陰をたたえおり★★★

5月15日(2名)

多田有花
<兼六園三句>
かきつばた百万石の城下町★★★
緑さす鯰兜の利家像★★★

兼六園池は新樹の影に満つ★★★★
名園として知られる兼六園は、四季折々にの良さがある。今は新樹の影が池に満ちている。それほどに庭園の木々の盛んな様子がうかがえる。「満つ」の効果が大きい。(髙橋正子)

桑本栄太郎
校門の前に散りばめ桜の実(原句)
校門の前に散らばり桜の実★★★(正子添削)

白線の玉のしずくや青すすき(原句)
「白線の玉のしずく」がわかりにくいです。
青すすき真白き線の葉にとおり★★★★(正子添削)

卯の花の散りし狭庭の垣根かな★★★

5月14日(3名)

小口泰與
鉄線の天を弾きて咲きにける★★★
隠り沼の小梨の花や雲一重★★★
石楠花や暁の冷気を浴びにける★★★★
石楠花はもともと高山に自生する花なので、その姿からは山の気配が感じられる。暁の冷気がひやひやと石楠花の花を包み、朝を迎える清々しさがある。(髙橋正子)

多田有花
<金沢・和倉温泉三句>
初夏のホームへ瑞風入線す★★★★
浅き夏彩なるお好み焼を食ぶ★★★
やかん体ひしゃげ埋もれている五月★★★

桑本栄太郎
青梅の二つ三つ落つ雨の朝★★★
万緑のフロントグラス雨しとど★★★
夕日差す窓の若葉の透きにけり ★★★★

5月13日(2名)

小口泰與
ぼうたんの萼の顕や雨後の朝★★★
夕さりの郵便受けや連理草★★★
百本の薔薇を咲かせし日照雨★★★

桑本栄太郎
との曇る空とや茅花流し吹く★★★
みどりさす在所となりぬ大原野★★★★
「住んでいる大原野がみどりさすところとなった」という嬉しさが読み取れる。「みどりさす」「大原野」は、現実でありながら、風雅な景色。(髙橋正子)

万緑やフロント窓の雨しきり★★★

5月12日(2名)

小口泰與
腹見せて急降下せる目高かな★★★

鳥声に起こさる朝や柿若葉(原句)
「起こさる」は、「朝」を修飾しています。体言(名詞)を修飾する場合、「起こさる」は、「起こさるる」にしなければいけないです。(髙橋正子)
鳥声に起こさるる朝柿若葉★★★★(正子添削)
若葉が輝く朝、鳥の鳴き声に目覚めるとき、幸せを感じる。自然のやさしさに包まれた感覚がいい。(髙橋正子)

黄牡丹の萼となりたる朝かな★★★

桑本栄太郎
木々の枝の躍り明るき若葉風★★★★
刻々と雨の予報や走り梅雨★★★
雨降れば更に明るき柿若葉★★★

5月11日(3名)

小口泰與
分校に敷き詰められし都草★★★
水槽を縦横無尽目高かな★★★
文机に手紙ありけり桐の花★★★

桑本栄太郎
雨上がりポピーの揺るる日差しかな★★★

信号にエンジン止まり夏兆す★★★★
信号がゴーサインである青に変わるまで車はエンジンを止めて待つことになる。エンジンが止まると音よりも車外の町の景色や日差しに目が向く。そのとき、夏の兆しを感じたのだ。(髙橋正子)

木洩れ日の葉蔭ゆれ居り夏は来ぬ★★★

多田有花
採られるを待ちて苺の赤くなる★★★
薔薇眺めおれば番犬に吠えられる★★★
柿若葉つややかにやわらかに★★★

自由な投句箱⓶/5月1日~5月10日(転記)

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