自由な投句箱/5月21日~31日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆花冠発行所◆
◆月例ネット句会
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/5月21日~31日

5月31日(2句)
★雨雲の峰肌昇る走り梅雨/桑本栄太郎
峰を添うように昇る雨雲の動きは、走り梅雨を思わせて、墨絵のような景色を見せる。心静かに眺めれば神秘的にも。(高橋正子)
★峠越え細道下る麦の秋/多田有花
この句は景色がいい。峠を越えると道は細くなり、眼下には畑や町が広がっている。麦の秋が郷愁を誘う。(高橋正子)
5月30日(2句)
★亡き息子甘党なりし柏餅/廣田洋一
子に先立たれることはよほどに悲しい。柏餅を、まさに男児の柏餅を見るにつけ、亡き子がうれしそうに食べていた顔を思い出す。そんな思いが、俳句となってよかったと思う。(高橋正子)
★風五月ふうせんかづらの種をまく/川名ますみ
風は五月。真夏には風船のような緑の実が膨らむふうせんかずら。そんな風に膨らんだようなふうせんかずらは、五月の風の中に播くのがふさわしい。(高橋正子)
5月29日(2句)
★銭湯の灯りともされ夏の雨/廣田洋一
銭湯に灯りが灯っているとうれしいものだ。夏は汗を流しにみんなが寄って来る。雨もつかの間の涼しさとも、また蒸し暑さともなる。これも日本の夏の情緒で捨てがたい。(高橋正子)
★風一夜フロントガラスにおうち散る/多田有花
おうちは栴檀の古い呼び方で、薄紫の花のかたまりも、「おうち」の音も優しい印象だ。おうちの木陰に車を止めたりすると、風や雨があると、花が落ちたり葉が散ったり、その有様にも風情がある。(高橋正子)
5月28日(2句)
★夏の川空を映して流れゆく/多田有花
夏の空をぴったりと映して流れてゆく川は、すっきりとして見た目にも夏らしい。(高橋正子)

★薫風の買物かごに子犬かな/桑本栄太郎
買い物かごに入れられた子犬は、気持ちよさそうに薫風に吹かれている。ふわふわとした子犬のかわいらしさが詠まれている。(高橋正子)
5月27日(1句)
★田の隅に肩を寄せ合う余り苗/桑本栄太郎
余り苗は田の隅に置かれて、植えた苗が、枯れたり傷んだりしたときは、補充に使われる。植えられなかった苗は、肩を寄せ合うように、田の隅で育っている。その苗に思思いを入れた句。(高橋正子)
5月26日(1句)
★石楠花や峰々雲を生みにける/小口泰與
石楠花と峰々から生まれる雲の取り合わせが柔らかくて、いい。山へ行きたくなる。(高橋正子)
5月25日(1句)
★青空の甘さ蓄へさくらんぼ/廣田洋一
青空に甘さがあるかは、主観によるが、輝くばかりのさくらんぼを見れば、青空の甘さが蓄えられたようにも思う。青空とさくらんぼのイメージが明るい。(高橋正子)
5月24日(1句)
★河川工事のクレーン高々時鳥/廣田洋一
河川工事をするクレーンが高々と伸びて、その上の方を時鳥が鳴きつつ飛んでゆく。
工事のクレーンと時鳥の取り合わせが新鮮で、広々とした空を思う。(高橋正子)
5月23日(2句)
★薔薇清し路地に遊べる子らの声/多田有花
薔薇を咲かせている住宅地の路地。車が来ない路地なのか、子供たちが楽しく遊んでいる。そこに咲く薔薇は、「美し」ではなく、「清し」。「清し」が遊ぶ子の純真さをあらわしているように思える。(高橋正子)
★畦に沿い早苗の曲がる棚田かな/桑本栄太郎
棚田に植えられた早苗は、まさにこの様子。畦なりに、畦に沿って植えられた早苗の列は曲がっている。その曲線が美しい。棚田を育てる人々の暮らしも美しいと言えようか。(高橋正子)
5月22日(2句)
整然と田の一画に早苗あり/多田有花
田の一画で稲の苗を育てている。育ってくれば田に植え付けるが、今はまだ田植前。
整然とした姿で早苗が育っているのを見るにつけ、田植の時が待たれる。(高橋正子)
★梔子にあたらしき白咲ける朝/川名ますみ
咲いたばかりの新しい梔子のは、純白で、朝の新しさを強く印象付けてくれる。甘く強い匂いが湿っぽい空気に花の存在を知らせている。(高橋正子)
5月21日(2句)
★夏の灯や小舟の櫂の音聞ゆ/小口泰與
時代劇にでもありそうな場面。夏の灯が灯る川辺に小舟を操る櫂の音が聞こえる。
(髙橋正子)
★山影の映る植田や日暮れ居り/桑本栄太郎
山影が映る植田は、山の陰の植田で、その田にも日暮れが押し寄せる。日暮れは寂しいけれど、山の植田の日暮れはなお寂しい。(高橋正子)

5月21日~31日

5月31日(日)
小口泰與
垂涎の魚拓見せらる山女かな★★★
我が影の寄れば寄りくる目高かな★★★★
風絶ゆる池にあきとう金魚かな★★★
廣田洋一
草むしり取るのが惜しき花もあり★★★
ここまでと思ひつつまた草むしる★★★
草むしる根元の虫の目覚めけり★★★★

桑本栄太郎

コロナ禍の失せよ風吹く五月尽★★★
風抜ける木蔭の径や筒あじさい★★★
雨雲の峰肌昇る走り梅雨★★★★
峰を添うように昇る雨雲の動きは、走り梅雨を思わせて、墨絵のような景色を見せる。心静かに眺めれば神秘的にも。(高橋正子)
多田有花
峠越え細道下る麦の秋★★★★
この句は景色がいい。峠を越えると道は細くなり、眼下には畑や町が広がっている。麦の秋が郷愁を誘う。(高橋正子)
森の気を深呼吸して夏の山★★★
自転車を停め大緑陰にくつろぎぬ★★★
5月30日(4名)
小口泰與
風鈴や芝の醜草数多生ゆ★★★★
次次に堰き飛ぶ鮎や雲一朶★★★
釣糸をぴんぴん鳴らす岩魚かな★★★
廣田洋一
老舗前幟はためく柏餅★★★
亡き息子甘党なりし柏餅★★★★
子に先立たれることはよほどに悲しい。柏餅を、まさに男児の柏餅を見るにつけ、亡き子がうれしそうに食べていた顔を思い出す。そんな思いが、俳句となってよかったと思う。(高橋正子)
柏餅みそ餡も良し茶を汲みぬ★★★
桑本栄太郎
泰山木の花の甘き香抓みみる★★★
心地良き風の小径や青葉闇★★★
桑の実や想い出遠き故郷へ★★★★
川名ますみ
花も葉も梅花空木の丸きこと★★★
風五月ふうせんかづらの種をまく★★★★
風は五月。真夏には風船のような緑の実が膨らむふうせんかずら。そんなふうせんかずらは、心地よい風の中に播くのがふさわしい。(高橋正子)
新緑の夢見ヶ崎の果てに富士★★★
5月29日(4名)
廣田洋一
大丈夫かと声かけられし夏の雨★★★
銭湯の灯りともされ夏の雨★★★★
銭湯に灯りが灯っているとうれしいものだ。夏は汗を流しにみんなが寄って来る。雨もつかの間の涼しさとも、また蒸し暑さともなる。これも日本の夏の情緒で捨てがたい。(高橋正子)
コーヒーを飲む間に止みし夕立かな★★★
小口泰與
上州は鶴のかたちや麦の波★★★
夏燕棚田の空を袈裟斬りに★★★★
忙しく蜜から蜜へ目白かな★★★
多田有花
駐車場の上に広がり花楝★★★
風一夜フロントガラスにおうち散る★★★★
おうちは栴檀の古い呼び方で、薄紫の花のかたまりも、「おうち」の音も優しい印象だ。おうちの木陰に車を止めたりすると、風や雨があると、花が落ちたり葉が散ったり、その有様にも風情がある。(高橋正子)
競い合い竹皮を脱ぎ空目指す★★★

桑本栄太郎

吾立てば緋鯉寄り来る朝の池★★★★
緑陰の影の揺るるや枝の風★★★
晶子忌の歌碑の堺やみだれ髪★★★
5月28日(4名)
小口泰與
つつがなく浮島に沿う浮巣かな★★★★
青鷺や利根の大岩微動だに★★★
白鷺や棚田へ夕日差しにける★★★
廣田洋一
木々の葉の重たげに揺れ梅雨兆す★★★
不惑をば一つ越えし子豆の飯★★★★
川べりの畑の匂ひ豆の飯★★★
多田有花
夏の川空を映して流れゆく★★★★
夏の空をぴったりと映して流れてゆく川は、すっきりとして見た目にも夏らしい。(高橋正子)
紋黄揚羽横断歩道を渡りおり★★★
退院のお迎え薔薇咲く病院へ★★★

桑本栄太郎

薫風の買物かごに子犬かな★★★★
買い物かごに入れられた子犬は、気持ちよさそうに薫風に吹かれている。ふわふわとした子犬のかわいらしさが詠まれている。(高橋正子)
一天の放れ雲のみ五月晴れ★★★
夕日透く窓の若葉や風に揺れ★★★
5月27日(3名)
小口泰與
老鶯や山のホテルのコック帽★★★
翡翠や釣人川を渡渉せる★★★
老鶯や清き流れの分水界★★★
廣田洋一
門前に三個百円玉葱かな★★★
サクサクと赤玉葱のサラダかな★★★★
玉葱を隠し味とすカレーかな★★★
桑本栄太郎
緑陰のつづく木蔭やバス通り★★★
田の隅に肩を寄せ合う余り苗★★★★
余り苗は田の隅に置かれて、植えた苗が、枯れたり傷んだりしたときは、補充に使われる。植えられなかった苗は、肩を寄せ合うように、田の隅で育っている。その苗に思思いを入れた句。(高橋正子)
あはあはと嗤う鴉や梅雨寒し★★★
5月26日(3名)
小口泰與
朝刊の解除の文字や閑古鳥★★★
馴染みたるテレワークとや鳥巣立つ★★★
石楠花や峰峰より雲を生みにける(原句)
石楠花や峰々雲を生みにける★★★★(正子添削)
石楠花と峰々から生まれる雲の取り合わせが柔らかくて、いい。山へ行きたくなる。(高橋正子)
廣田洋一
ガーナにて出会ひし鯖缶かな★★★
黒々と焦げ目付きたる鯖二匹★★★
竹林の荒れたるままに落葉せり★★★
桑本栄太郎
青梅の古木矜持や二つ三つ★★★
若竹の三日見ぬ間の背丈かな★★★
天に向き気勢上げたり山法師★★★
5月25日(4名)
小口泰與
蟾出づや夜の湖畔の赤提灯★★★
遊学の友の下宿に守宮かな★★★★
あけぼのの八千穂の里の時鳥★★★
廣田洋一
自粛てふ難行続く若葉寒★★★
公園の日差し陰りて若葉寒★★★
青空の甘さ蓄へさくらんぼ★★★★
青空に甘さがあるかは、主観によるが、輝くばかりのさくらんぼを見れば、青空の甘さが蓄えられたようにも思う。青空とさくらんぼのイメージが明るい。(高橋正子)

桑本栄太郎

十薬の木蔭となりぬ十字花★★★
うす日射す狐の雨や走り梅雨★★★
サンバイザー光るふたりの川辺行く★★★★
多田有花
パイナップル舌痛みしは幼き日★★★
紺青に晴れて雲なし夏夜明け★★★
夏の庭とりどりの花いっぱいに★★★★
5月24日(4名)
小口泰與
助手席に脚投げ出して昼寝かな★★★
亀の子や末は乞食か成金か★★★
奥利根の渓を震わす河鹿かな★★★★
多田有花
マーガレット農家の隅の畑にあり★★★
溝浚えの音の始まる午前九時★★★★
角曲がる風に吹かれてカラー咲く★★★

廣田洋一

夏風邪や次々なめる浅田飴★★★
杜鵑竹の奥より聞こえけり★★★
河川工事のクレーン高々時鳥★★★★
河川工事をするクレーンが高々と伸びて、その上の方を時鳥が鳴きつつ飛んでゆく。
工事のクレーンと時鳥の取り合わせが新鮮で、広々とした空を思う。(高橋正子)

桑本栄太郎

十薬の地に落つ星の木蔭かな★★★
プロペラのうす紅ありぬ若楓★★★
早苗田に水張り農夫立ちつくす★★★★
5月23日(4名)
小口泰與
鯉釣の鈴の鳴りたる夜釣かな★★★
桷の花ルアー持つ手に魚信かな★★★
土合駅尾根縦走の日焼かな★★★★
廣田洋一
きっちりと四隅固めし額の花★★★★
垣根越し真白く咲きし額の花★★★
夏めくや海軍カレー特売日★★★★
多田有花
薔薇清し路地に遊べる子らの声★★★★
薔薇を咲かせている住宅地の路地。車が来ない路地なのか、子供たちが楽しく遊んでいる。そこに咲く薔薇は、「美し」ではなく、「清し」。「清し」が遊ぶ子の純真さをあらわしているように思える。(高橋正子)
明易き空にはや鶯の声★★★
外に出てみれば良きこと石竹咲く★★★

桑本栄太郎

畦に沿い早苗の曲がる棚田かな★★★★
棚田に植えられた早苗は、まさにこの様子。畦なりに、畦に沿って植えられた早苗の列は曲がっている。その曲線が美しい。棚田を育てる人々の暮らしも美しいと言えようか。(高橋正子)
出番無き事を願えり余り苗★★★
夏蝶の数多のもつれ舞いにけり★★★
5月22日(4名)
小口泰與
頑固なる蕎麦屋の主麻のれん★★★
香水やサイドカーより湖畔へと★★★
風鈴はかんかん石の風奏で★★★★
多田有花
整然と田の一画に早苗あり★★★★
田の一画で稲の苗を育てている。育ってくれば田に植え付けるが、今はまだ田植前。
整然とした姿で早苗が育っているのを見るにつけ、田植の時が待たれる。(高橋正子)
生垣のさつき鮮やか遠目にも★★★
柿の花人声近く咲きにけり★★★★

桑本栄太郎

川風に沿いて地道や草茂る★★★
流れ来し今の在所やえごの花★★★
ででっぽと山鳩遠く夕薄暑★★★★
川名ますみ
梔子にぎゅっとしぼりし蕾立つ★★★
梔子の碧きつぼみの裂け目より★★★
梔子にあたらしき白咲ける朝★★★★
咲いたばかりの新しい梔子のは、純白で、朝の新しさを強く印象付けてくれる。甘く強い匂いが湿っぽい空気に花の存在を知らせている。(高橋正子)
5月21日(4名)
小口泰與
夕日差すレトロな窓や夏館★★★
夏の灯や小舟の櫂の音聞ゆ★★★★
時代劇にでもありそうな場面。夏の灯が灯る川辺に小舟を操る櫂の音が聞こえる。
(髙橋正子)
三山の風を賜わる夏座敷★★★
廣田洋一
十薬や読み始めたる「ペスト」かな★★★★
ちらほらと川に落ちたる桜の実★★★
鯖一匹持て余したる独り者★★★
多田有花
芍薬咲く空き家となりし庭の隅★★★
草を刈る音遠くより夏の朝★★★★
上流へ今朝も一羽の白鷺飛ぶ★★★

桑本栄太郎

紫陽花の蕾つぶつぶ控えけり★★★
雨雲の晴れて明るき若葉谷★★★★
山影の映る植田や日暮れ居り★★★★
山影が映る植田は、山の陰の植田で、その田にも日暮れが押し寄せる。日暮れは寂しいけれど、山の植田の日暮れはなお寂しい。(高橋正子)

自由な投句箱/5月11日~20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆花冠発行所◆
◆月例ネット句会
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/5月11日~20日

5月20日(2句)
★蜜豆や湖畔の帽子様ざまに/小口泰與
湖畔に集う様々な帽子を冠った女性たち。蜜豆を食べながらおしゃべりに花が咲く。
楽しげな湖畔の風景が絵画的に詠まれている。(高橋正子)
★通院を終えて食せり豆ご飯/多田有花
白いご飯に緑のえんどうを散りばめた豆ご飯は、いかにも爽やかで健康的。通院のあとの一区切りの安堵で、豆ご飯がおいしい。(高橋正子)
5月19日(2句)
★道のべの白き灯りや花いばら/廣田洋一
道のべの花いばらは、つつましやかな白い花ながら、かたまり咲くと、白い灯りのように思える。楚々とした美しさのある花を称えた。(高橋正子)
★思い出は雲の彼方や揚羽蝶/桑本栄太郎
思い出を引き出す初めの点としての揚羽蝶。揚羽蝶が飛んでゆく雲の彼方、故郷のほうかもしれないが、そこに思い出がある。思い出ははるかなもの。(高橋正子)
5月18日(1句)
★妹に亡き母の声若葉風/小口泰與
年を取ると、兄弟姉妹に父や母そっくりの声や仕草を見ることがある。この句では、妹の声を聞いて、ふと母の声と似ていることに気付く。若葉風が心地よく吹き、母似の妹の声がきれいに響く。(高橋正子)
5月17日(1句)
★青空に浮き立ちてをり牡丹かな/廣田洋一
たおやかに咲く牡丹もあれば、浮き立って咲く牡丹もある。青空があれば、牡丹もかろやかに花を浮かせたように晴れやかに咲く。「浮き立ちて」は、丁寧な観察。(高橋正子)
5月16日(1句)
★山の常陰や代田の水の濃紺よ/小口泰與
いつも山の陰になっている代田ながら、水は濃紺。こんこんと湧く水が引かれいるのだろう。濃紺の色を見せる水に驚きの感動。(高橋正子)
5月15日(1句)
★噴井にも硬貨投げいる異邦人/小口泰與
泉に硬貨を投げ入れると願いが叶うとされて有名なのは、ローマのトレヴィの泉。きれいな泉を見るとコインを投げ入れたくなる心理が働くのか、日本の噴井にも外国人がコインを投げ入れていた。ちなみにトレヴィの泉には、年間1億9千万円くらいのコインが投げ込まれるという。(高橋正子)
5月14日(1句)
★肉じゃがや新じゃが皮を剥かぬまま/多田有花
新じゃが芋が出回るようになった。小さい新じゃが芋は、皮を剥かなくて丸のまま肉じゃがなどにするとおいしい。季節感たっぷりのうれしいお菜だ。(高橋正子)
5月13日(2句)
★仰ぎ見る一ノ倉沢夏燕/小口泰與
荒々しい谷川岳を象徴する一の倉沢。仰ぎ見ると夏燕がさっそうと翻っている。潔い景色に夏山が恋われる。(高橋正子)
★田植え花咲いて故郷を想い居り/桑本栄太郎
田植え花はタニウツギのこと。この花が咲くと田植えをしてよいと目安にされた。今はさまざまな稲の品種があって、これに限らないが、故郷ではこう言われていたのだろう。タニウツギが咲いて故郷のことを思い出した。(高橋正子)
5月12日(2句)
★コンバイン道をふさぎて麦の秋/廣田洋一
麦刈りは最近めっきり見なくなったが、季節としての麦の秋には、なつかしさが漂う。コンバインがわが物顔に道を占領しているが、取り入れときは、主役のコンバインに道を譲らねばならぬだろう。(高橋正子)
★歩みゆく妻の出掛やサングラス★★★★
妻が出かけるのか、歩いてくる。見れば、サングラスをかけているせいか、いつもの妻と少しちがって、新鮮な妻である。(高橋正子)
5月11日(1句)
★さわさわと光振りまく柿若葉/廣田洋一
柿若葉に対して「さわさわ」との感覚は新しい。風がなければ、「さわさわ」とはうまれない言葉だろう。柿若葉に風が吹き、柿若葉は光を振りまくことになる。(高橋正子)

5月11日~20日

5月20日(3名)
小口泰與
甘酒や尾根くだり来た岳人と★★★
蜜豆や湖畔の帽子様ざまに★★★★
湖畔に集う様々な帽子を冠った女性たち。蜜豆を食べながらおしゃべりに花が咲く。
楽しげな湖畔の風景が絵画的に詠まれている。(高橋正子)
信濃の国は母のおはこや洗鯉★★★
多田有花
病院を丸ごと包み青嵐★★★
通院を終えて食せり豆ご飯★★★★
白いご飯に緑のえんどうを散りばめた豆ご飯は、いかにも爽やかで健康的。通院のあとの一区切りの安堵で、豆ご飯がおいしい。(高橋正子)
明易し朝日は部屋の深くまで★★★

桑本栄太郎

睡蓮の柵を越え入り池の中★★★
吾が立てば風を呼びたり蘆茂る★★★
風薫る木蔭に集い太極拳★★★★
5月19日(4名)
小口泰與
郭公や軽き風吹く軽井沢★★★★
四膳目の筍飯や都会の子★★★
夏帽や浮子を手ぐさに湖の風★★★
廣田洋一
道のべの白き灯りや花いばら★★★★
道のべの花いばらは、つつましやかな白い花ながら、かたまり咲くと、白い灯りのように思える。楚々とした美しさのある花を称えた。(高橋正子)
花茨大鯉二匹寄り添ひぬ★★★
締め鯖に負けぬ香りの赤ワイン★★★
多田有花
鮮やかや風吹くたびに薔薇の散る★★★★
検温を済ませて入る若葉風★★★
夏つばめ検査を受ける窓の外★★★

桑本栄太郎

思い出は雲の彼方や揚羽蝶★★★★
思い出を引き出す初めの点としての揚羽蝶。揚羽蝶が飛んでゆく雲の彼方、故郷のほうかもしれないが、そこに思い出がある。思い出ははるかなもの。(高橋正子)
黒雲の集い来たりぬ青嵐★★★
柿の花咲いて地に落つ溝の中★★★
5月18日(4名)
小口泰與
妹に亡き母の声若葉風★★★★
年を取ると、兄弟姉妹に父や母そっくりの声や仕草を見ることがある。この句では、妹の声を聞いて、ふと母の声と似ていることに気付く。若葉風が心地よく吹き、母似の妹の声がきれいに響く。(高橋正子)
滴りや笹生い茂る峠道★★★
秋桜子の名付けし滝や天の原★★★

廣田洋一

プリンセスてふ気品も高く薔薇の花★★★
豆の数しっかり見せて莢豌豆★★★★
花豌豆高く伸びけり鳥の声★★★
桑本栄太郎
ひな芥子や早やも坊主となり来たる★★★
甘き香のリカーショップや夕薄暑★★★★
ととととと樋のしずくや走り梅雨★★★
多田有花
収穫すスナップえんどう莢えんどう★★★
青空を向いてそら豆育ちけり★★★★
収穫の後緑陰に談笑す★★★
5月17日(3名)
廣田洋一
青空に浮き立ちてをり牡丹かな★★★★
たおやかに咲く牡丹もあれば、浮き立って咲く牡丹もある。青空があれば、牡丹もかろやかに花を浮かせたように晴れやかに咲く。「浮き立ちて」は、丁寧な観察。(高橋正子)
休校の庭を明るく薔薇の花★★★
ピンク色丸く浮き立つ薔薇の花★★★
小口泰與
牡丹の散り初めし中なお莟★★★
無人駅出づや渓谷新樹光★★★★
ばら散るやぬか雨の中艶めきぬ★★★
桑本栄太郎
歩みゆく丘の田道や谷卯木★★★
木洩れ日を伝い歩めり聖五月★★★
若竹の天まで届く青さかな★★★★
5月16日(4名)
小口泰與
木の間より日の綾なせる泉かな★★★
青空へ峰峰定かなり新樹光★★★
山の常陰や代田の水の濃紺よ★★★★
いつも山の陰になっている代田ながら、水は濃紺。こんこんと湧く水が引かれいるのだろう。濃紺の色を見せる水に驚きの感動。(高橋正子)
廣田洋一
梅の実やほんのり紅く色付けり★★★
青梅やかくれんぼする子らの声★★★★
長き脚すらりと伸びる水着かな★★★
多田有花
いただきしトマトを朝の食卓に★★★
茄子紺の深きを三つ求めけり★★★
画面越しに友と再会若葉寒★★★★

桑本栄太郎

山頂の雨や筍流しかな★★★★
溝川の流るる丘や谷卯木★★★
木斛の花の夕闇明るかり★★★
5月15日(4名)
廣田洋一
ほの白き竹林に青今年竹★★★★
登校子の声かけて行く花あやめ★★★
花あやめ並び咲きたる白あやめ★★★
小口泰與
妻と差す縁台将棋ほととぎす★★★
代掻の棚田や鳶は空均し★★★
噴井にも硬貨投げいる異邦人★★★★
泉に硬貨を投げ入れると願いが叶うとされて有名なのは、ローマのトレヴィの泉。きれいな泉を見るとコインを投げ入れたくなる心理が働くのか、日本の噴井にも外国人がコインを投げ入れていた。ちなみにトレヴィの泉には、年間1億9千万円くらいのコインが投げ込まれるという。(高橋正子)
桑本栄太郎
あまき香の道のすがらや忍冬花★★★
山際の映る水田や蛙鳴く★★★
夕刻の雨の卯の花腐しかな★★★★
多田有花
少しずつ斑点増えるバナナかな★★★
マグカップ今日より新し新樹光★★★
楠若葉囲む煉瓦の美術館★★★★
5月14日(4名)
小口泰與
二年とか目高の寿命いわれけり★★★
草を切る利鎌一閃夏燕★★★★
園庭を縦横無尽蟻の列★★★
廣田洋一
水遊び家族総出で見守れり★★★
白き塀建物囲ひ街薄暑★★★★
散歩道人と出会はぬ夕薄暑★★★
多田有花
肉じゃがや新じゃが皮を剥かぬまま★★★★
新じゃが芋が出回るようになった。小さい新じゃが芋は、皮を剥かなくて丸のまま肉じゃがなどにするとおいしい。季節感たっぷりのうれしいお菜だ。(高橋正子)
たたずんでまた走り出す蜥蜴かな★★★
沖縄の思い出アロハシャツを出す★★★

桑本栄太郎

山の端と甍を映す代田かな★★★★
じゃが芋の花の盛りや丘の畑★★★
山すその里に臨むや風五月★★★
5月13日(4句)
小口泰與
仰ぎ見る一ノ倉沢夏燕★★★★
荒々しい谷川岳を象徴する一の倉沢。仰ぎ見ると夏燕がさっそうと翻っている。潔い景色に夏山が恋われる。(高橋正子)
業績を衒う人おり夏出水★★★
磴上りくる人おらず夕牡丹★★★
廣田洋一
赤シャツに白スカートの金魚かな★★★
大甕に空けし袋の金魚かな★★★★
花の色少し控えめさつきかな★★★
多田有花
夏野菜たっぷり育つわが畑★★★
明易き窓仰ぎ見てひと眠り★★★
あの羽音に蚊取線香を出しぬ★★★

桑本栄太郎

わらわらと葉裏白きや風薫る★★★
田植え花咲いて故郷を想い居り★★★★
田植え花はタニウツギのこと。この花が咲くと田植えをしてよいと目安にされた。今はさまざまな稲の品種があって、これに限らないが、故郷ではこう言われていたのだろう。タニウツギが咲いて故郷のことを思い出した。(高橋正子)
木々の枝の大きく揺るる青嵐★★★
5月12日(4名)
小口泰與
夏霧や神の隠せし牧の馬★★★
九嶺を隠す榛名の雲の峰★★★
逞しきD51駆ける日雷★★★★
廣田洋一
麦秋の野に声上げる親子連れ★★★
コンバイン道をふさぎて麦の秋★★★★
麦刈りは最近めっきり見なくなったが、季節としての麦の秋には、なつかしさが漂う。コンバインがわが物顔に道を占領しているが、取り入れときは、主役のコンバインに道を譲らねばならぬだろう。(高橋正子)
麦秋や笠智衆に原節子★★★
多田有花
太公望並ぶ突堤夏浅し★★★★
鹿よけの柵に囲まれしゃが咲きぬ★★★
少し影ある場所が好きしゃがの花★★★

桑本栄太郎

こつ然と塀の中より揚羽蝶★★★
歩みゆく妻の出掛やサングラス★★★★
妻が出かけるのか、歩いてくる。見れば、サングラスをかけているせいか、いつもの妻と少しちがって、新鮮な妻である。(高橋正子)
母の日の母はなけれど夢に乞う★★★

5月11日(4名)
小口泰與
薫風や水の石切り子も真似て★★★★
上野(こうずけ)は赤城を楯に麦の秋★★★
古代より水の森てふ夏の雨★★★
廣田洋一
さわさわと光振りまく柿若葉★★★★
柿若葉に対して「さわさわ」との感覚は新しい。風がなければ、「さわさわ」とはうまれない言葉だろう。柿若葉に風が吹き、柿若葉は光を振りまくことになる。(高橋正子)
車椅子しばし休めり柿若葉★★★
赤目高一緒に入れる金魚鉢★★★
桑本栄太郎
老鶯と云えど確たり朝の藪★★★
若竹の早くも届く天の丈★★★
陸橋の高さにありぬ橡の花★★★★
多田有花
雨音のにわかにジャーマンアイリスへ★★★
蚕豆を初めて育て塩ゆでに★★★
晴れし午後遠くに夏の雲生まる ★★★★

自由な投句箱/5月1日~10日

※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆花冠発行所◆
◆月例ネット句会
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/5月1日~10日

5月10日(1句)
★風清しなんじゃもんじゃの花咲きぬ/桑本栄太郎
なんじゃもんじゃの花は、糸のような白い花びらが絡まるように咲く。風は花を自在に抜ける。「風清し」を思うことである。(高橋正子)
5月9日(1句)
★飛魚や翅を収めて売られけり/廣田洋一
飛魚は、胸鰭が強大で海面を滑走したり、飛び上がって飛ぶ。時には十数メートル飛ぶこともある。夏の海では、雄姿と言えよう。胸鰭である翅を収め、鎮めて売られている。強さも哀れさも。(高橋正子)
5月8日(1句)
★鍬みがく水の汚れや夏の暮/小口泰與
一日の畑仕事を終えた夏の暮れ。土で汚れた鍬を洗うと、水は泥をながして鍬をぴかぴかにしてくれる。夏の暮だからこそ水もうれしく、泥水さえもすがすがしく思える。(高橋正子)
5月7日(1句)
★糊効きし白衣身に着け夏浅し/多田有花
夏浅しころは、糊の効いた白衣に袖を通すと、日常がさっぱりと切り替わる。仕事に向かう快い緊張が生まれる。新型コロナウィスルの肺炎の感染拡大で、医療関係の方は多忙や緊張をしいられると思うが、このように明るく仕事をこなされているのだ。(高橋正子)
5月6日(2句)
★海臨む工場群に夏始まる/多田有花
臨海工場群は、いつもとかわらなくそこにあるが、夏が始まると、工場群は、直射日光を受け、光を反射させ、白くきらめく。夏が始まる強さがそこに見られる。(高橋正子)

★ひな芥子やその一画の風強し/桑本栄太郎
ひな芥子畑。ひな芥子は風を受けやすくどれもひらひら揺れているが、一画だけ風の強いところがあって、ひどく揺れている。その一画にあわれ心を動かされる。(高橋正子)

5月5日(1句)
★若草や利根の流れの艶やかに/小口泰與
利根川のほとりに盛んに燃える若草。若草の勢いに利根川の流れが、艶やかに見える。水のやわらかさ、春の日に光る波。みんな艶やかだ。(高橋正子)
5月4日(1句)
★修司忌のマッチ擦る間の風みどり/桑本栄太郎
寺山修司の「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」の本歌どりの句。実際には、作者が作句時点でマッチを擦ったわけではないだろうが、いつか、経験があったのだろう。「風みどり」が効いている。(高橋正子)
5月3日(1句)
★均したる畑に入る八十八夜かな/廣田洋一
八十八夜は立春から数えて88日目。蔬菜類の苗が育ち、この日以降は霜が降りないとされる。何か植え付けるために均された畑であろう。明るい清潔感がある。(高橋正子)
5月2日(2句)
★春耕や恙なき日の握り飯/小口泰與
田を耕し、昼飯は握り飯。健康に働いて食べる握り飯の旨さ。さっぱりとした生活が詠まれて快い。(高橋正子)
★竹皮を脱ぐや天へとまつしぐら/桑本栄太郎
筍がすくすくと伸び、竹の皮を落とす。一晩に2メートルばかりも伸びる竹の
勢いには見上げて圧倒される。「まつしぐら」が竹の気分を表していていい。
(高橋正子)
5月1日(1句)
★浮き雲の窓の彼方や五月来る/桑本栄太郎
五月という声をきくだけで、気持ちが明るくかろやかになるのは、私たちの五月の経験から。窓の彼方の浮き雲に目をやると、その軽さ自由さに明るさを五月の楽しさを思う。(高橋正子)

5月1日~10日

5月10日(4名)
小口泰與
朝涼や雨後の利根川清き水★★★
謙信の植えたる苗木雲の峰★★★
麦秋や長きすそ野の鳥の声★★★★
廣田洋一
高層の団地を包めり夏霞★★★
堰落ちる水音聞こえ夏霞★★★★
風吹けど富士は見えざる夏霞★★★
桑本栄太郎
午後からの雨の予報や紫蘭咲く★★★
風清しなんじゃもんじゃの花咲きぬ★★★★
なんじゃもんじゃの花は、糸のような白い花びらが絡まるように咲く。風は花を自在に抜ける。「風清し」を思うことである。(高橋正子)
夕餉には眠くなりたる走り梅雨★★★
多田有花
公園に母子遊びしマーガレット★★★★
朝日さす庭に群れ咲き花あやめ★★★
新緑へ吹く風もまた新しく★★★
5月9日(4名)
小口泰與
朝涼や雨後の利根川滔滔と★★★★
謙信の植えたる苗木雲の峰★★★
麦秋や長きすそ野の鳥の声★★★
廣田洋一
飛魚や翅を収めて売られけり★★★★
飛魚は、胸鰭が強大で海面を滑走したり、飛び上がって飛ぶ。時には十数メートル飛ぶこともある。夏の海では、雄姿と言えよう。胸鰭である翅を収め、鎮めて売られている。強さも哀れさも。(高橋正子)
飛魚や飛ぶ姿にて揚げられぬ★★★
駅出でて一口すする一夜酒★★★
桑本栄太郎
母が児とボール蹴り居り若葉風★★★★
花槐路線のバスの来たりけり★★★
会う人の目と目の合いぬ夏マスク★★★
多田有花
夏山の上に真青な空がある★★★★
薔薇囲む母入院せし病院★★★
近く寄り薔薇の香りに包まれる★★★
5月8日(4名)
廣田洋一
ちょんちょんと光りて揺れる桜の実★★★
新しき土手の白さや桜の実★★★
実桜や小鳥の声の絶え間なし★★★★
小口泰與
麦の秋信濃名物おやきかな★★★
鍬みがく水の汚れや夏の暮★★★★
一日の畑仕事を終えた夏の暮れ。土で汚れた鍬を洗うと、水は泥をながして鍬をぴかぴかにしてくれる。夏の暮だからこそ水もうれしく、泥水さえもすがすがしく思える。(高橋正子)
夕映えのビアガーデンも燈されず★★★
多田有花
柿若葉つややかに陽をかえしけり★★★
全天の雲吹き払い青嵐★★★★
物干しの竿の鳴りたる青嵐★★★

桑本栄太郎

実を垂らし花の残りぬ莢豌豆★★★
会う人と目と目の会いぬ夏マスク★★★
蚯蚓出で干乾び居りぬ舗道かな★★★
5月7日(4名)
小口泰與
夏めくや和紙に墨痕淋漓なる★★★
麦秋や土器の一片顔を出し★★★
夏めくや湖畔に画布を持ち出しぬ★★★★
廣田洋一
去年の実の残りしままや花蜜柑★★★
はらはらと散り急ぎたる花蜜柑★★★★
振り返り確かめたるや揚羽蝶★★★
多田有花
夕餉には彩り明るきちらし寿司★★★
糊効きし白衣身に着け夏浅し★★★★
夏浅しころは、糊の効いた白衣に袖を通すと、日常がさっぱりと切り替わる。仕事に向かう快い緊張が生まれる。新型コロナウィスルの肺炎の感染拡大で、医療関係の方は多忙や緊張をしいられると思うが、このように明るく仕事をこなされているのだ。(高橋正子)
聖五月ウェブ配信の講義終え★★★

桑本栄太郎

風薫る母が相手のボール蹴り(原句)
風薫る母を相手のボール蹴り★★★★(正子添削)
「母を相手」のほうが子どもが主役となっていきいきとするのではないでしょうか。
学校のチャイム虚ろや新樹冷ゆ★★★
5月6日(4名)
小口泰與
初夏の山一望や鳶の笛★★★
青空の浅間卯月の雲を生み★★★
あけぼのの雨後の大樹や聖五月★★★
廣田洋一
傾けし日傘を友と分け合ひし★★★★
目の前にさっと開きし白日傘★★★
日陰より出で来る人の日傘かな★★★
多田有花
夏来る沖へとボートまっしぐら★★★★
海臨む工場群に夏始まる★★★★
臨海工場群は、いつもとかわらなくそこにあるが、夏が始まると、工場群は、直射日光を受け、光を反射させ、白くきらめく。夏が始まる強さがそこに見られる。(高橋正子)
立夏なりテトラポットに釣り師立つ★★★
桑本栄太郎
こつ然と塀より出でぬ黒揚羽★★★
葉の裏のみどり透き居り花楓★★★
ひな芥子やその一画の風強し★★★★
ひな芥子畑。ひな芥子は風を受けやすくどれもひらひら揺れているが、一画だけ風の強いところがあって、ひどく揺れている。その一画にあわれ心を動かされる。(高橋正子)
5月5日(4名)
小口泰與
若草や利根の流れの艶やかに★★★★
利根川のほとりに盛んに燃える若草。若草の勢いに利根川の流れが、艶やかに見える。水のやわらかさ、春の日に光る波。みんな艶やかだ。(高橋正子)
つくづくと眺むる赤城麦の秋★★★
赤飯をお裾分けねと子供の日★★★
廣田洋一
和やかにエール交換風薫る★★★
薫風の撫でるに任せ散歩道★★★★
グランドに人気無き日々風薫る★★★
桑本栄太郎
休校の学校花壇や春の園★★★
スカイプのオンラインとや子供の日★★★
暮れかぬる団地の庭に一輪車★★★
多田有花
夏立ちぬ海への道を走りゆく★★★★
夏来るLNG船停泊中★★★
夏に入る沖をSUP(サップ)がひとりゆく★★★
5月4日(4名)
廣田洋一
雨空に草の葉そよぎ春暮るる★★★★
散歩中友と出会ひて春暮るる★★★
一言もニュースにならぬみどりの日★★★
小口泰與
眼間の大の字蝌蚪のひもに似て★★★
チューリップ一朶の雲を弾きけり★★★★
新聞に包まる鯉や子どもの日★★★
多田有花
永き日や雨天なれども明るくて★★★★
黄金週間部屋でエクササイズ★★★
夏隣る食後のプレーンヨーグルト★★★

桑本栄太郎

休校の学校花壇や春の園★★★
修司忌のマッチ擦る間の風みどり★★★★
寺山修司の「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」の本歌どりの句。実際には、作者が作句時点でマッチを擦ったわけではないだろうが、いつか、経験があったのだろう。「風みどり」が効いている。(高橋正子)
行事みな中止となりぬくらべ馬★★★
5月3日(4名)
小口泰與
水切りの飛礫とならず夏隣★★★
牡丹の芽円らとなりて小夜時雨★★★
畦の土呟いており春の雨★★★★
廣田洋一
機械にて種子を打ち込む八十八夜★★★
均したる畑に入る八十八夜かな★★★★
八十八夜は立春から数えて88日目。蔬菜類の苗が育ち、この日以降は霜が降りないとされる。何か植え付けるために均された畑であろう。明るい清潔感がある。(高橋正子)
  
休業の要請続く憲法記念日★★★
多田有花
夏隣る頂の風心地よし★★★★
ひらどつつじ街路に溢れんばかりなり★★★
はなみずき並木をジョギングウォーキング★★★

桑本栄太郎

地に落つる鴉の羽根や春暮るる★★★
水面の飛燕しきりや雨催い★★★★
著莪の花人目を忍び塀に添う★★★
5月2日(4名)
小口泰與
春耕や恙なき日の握り飯★★★★
田を耕し、昼飯は握り飯。健康に働いて食べる握り飯の旨さ。さっぱりとした生活が詠まれて快い。(高橋正子)
池の面や燕の影のつと消えし★★★
蒲公英やついにはじけし大太鼓★★★
廣田洋一
花過ぎの時に逆らい八重桜★★★★
あてもなくぶらぶら散歩春日和★★★
茶を汲みて一息入れる春日和★★★
多田有花
永き日の公園にボール蹴る少年★★★
春深しことに明るき山の色★★★★
つばめ飛ぶ車の脇をすり抜けて★★★

桑本栄太郎

竹皮を脱ぐや天へとまつしぐら★★★★
筍がすくすくと伸び、竹の皮を落とす。一晩に2メートルばかりも伸びる竹の
勢いには見上げて圧倒される。「まつしぐら」が竹の気分を表していていい。
(高橋正子)
春茱萸のすいっと枝垂れや池公園★★★
竹林の木漏れ日浴びて山つつじ★★★
5月1日(4名)
廣田洋一
高々とクレーン伸びて五月来る★★★
わけもなく明るい気分五月かな★★★
ひるがへりまたひるがへりつばめ二羽★★★★
小口泰與
次次にあぎとう鯉や落椿★★★
老鶯の飛び交う数や園ゆたか★★★★
つくづくし奇岩巨石の妙義山★★★
多田有花
隣り合い晩春の町を見下ろせり
上五に置く言葉は印象が強くなります。「隣り合い」が強いので、テーマである晩春の町が弱くなっています。
晩春の町を見下す隣り合い★★★★(正子添削)
春昼にゆっくり伸ばす大殿筋★★★
はなみずき並木明るき街路に出る★★★

桑本栄太郎

浮き雲の窓の彼方や五月来る★★★★
五月という声をきくだけで、気持ちが明るくかろやかになるのは、私たちの五月の経験から。窓の彼方の浮き雲に目をやると、その軽さ自由さに明るさを五月の楽しさを思う。(高橋正子)
すかんぽの赤き穂が伸ぶ垣根かな★★★
ひつそりと風の木蔭に山つつじ★★★