自由な投句箱/4月21日~30日

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今日の秀句/4月21日~30日

4月30日(1句)
★にぎはひの消えたる街や夏近し/廣田洋一
新型コロナウィルスの感染拡大を避けて、非常事態宣言がされているため、街はにぎわいとは遠い。しかし、にぎわいの消えた街は、日差しが輝いて夏が近いことは間違いない。(高橋正子)
4月29日(2句)
★おだまきや洗い立てたる割烹着/小口泰與
おだまきの紫と洗い立てた真っ白な割烹着の取り合わせに清潔感が漂う。もちろん、割烹着を付けた人あって成り立つ句。(高橋正子)
★春昼や母送りたる手術室/多田有花
手術に向かう母を送り出すいささかの不安と、大丈夫という安心の気持ちとが微妙に交差している。春昼とはそんな微妙な気持ちを包んでくれる時であるように思える。(高橋正子)
4月28日(2句)
★剪定や風無き空の晴上り/廣田洋一
風のない空は真っ青に晴れ上がり、剪定の鋏音も軽るく響いて、剪定された木々はもちろん、空もさっぱりとなる。とてもいい気持だ。(高橋正子)
★花房の少し日蔭や虻の昼/桑本栄太郎
虻が活発に翅を振るわせている世界。それは花房の少し日蔭となっている昼。春昼ののどかさが窺える。(高橋正子)
4月27日(2句)
★水鳥の水脈光りける藤の花/廣田洋一
藤の花房が風に揺れ、光をさざめかしている様子と、水鳥の引く水脈の光を同じ舞台にあげて楽しませてくれる句。美しい。(高橋正子)
★べんがらの塀のつづくや躑躅燃ゆ/桑本栄太郎
べんがらの色は独特で、べんがら塀が続く街並みは異国情緒さえ感じる。そんな街に躑躅が燃えて古き街も活力が湧いてくるようだ。(高橋正子)
4月26日(2句)
★てんでんに伸びを競ひて松の芯/廣田洋一
松の芯の伸び方は、長短取り混ぜて、方向もさまざま。伸びる勢いが目に見えるよう。松の形ある風格を崩すかのようなてんでんな元気いっぱいの伸び方に拍手を送りたい。(高橋正子)
★夜明けまず磯鵯の囀りに/多田有花
夜明けに美しいものに出会うと、その日一日がいい日になる気持ちが湧く。磯鵯は、鵯と名前が付くが、ヒタキ科の鳥。羽根の色から青い鳥とも呼ばれ、今では市街地でも見られるそうだ。句に技巧はないが、耳に目に楽しさを覚える句だ。(高橋正子)
4月25日(2句)
★葉桜となりて大きく風を受け/多田有花
葉桜となると、桜の木が一気に膨らみ、重量感を持つようになる。そうなれば、受ける風も大きい。たっぷりと風を受ける。葉桜と一体化した作者の気持ちが読んで快い。(高橋正子)

★葉桜を風だけが過ぐつややかに/川名ますみ

葉桜を過ぎるものは今は風だけ。葉桜をつやつやとさせ、風もまたつややかに光っている。(高橋正子)
4月24日(2句)
すみずみを路面へ映す朝桜/川名ますみ
朝桜がさわやかに、かろやかに詠まれている。自分の影を路にすみずみまで映しているのだ。(高橋正子)
★葉桜やマンションの灯ともりだす/古田けいじ
葉桜の向こうだろうか、マンションに暮らす人たちの灯りがともりだす。夕暮れ時の抒情的な風景があたたかい。(高橋正子)
4月23日(2句)
★水替えの魚を盥へ花すみれ/小口泰與
魚の水を替えてやるのに盥に移すと、傍には、すみれの花が咲いている。魚は金魚や目高のように小さい魚か。盥に移された魚もすみれもこのうららかさの中で、いきいきと可愛いのだ。(高橋雅子)
★街並みを白一色に花水木/廣田洋一
街路樹や庭園樹として植えられる花水木は、すっかり日本の風景に定着した。白い花水木が咲くと、街並みを白っぽく、白一色にしてくれる。街を瀟洒にしてくれる。思い切って「白一色」といったのが詩情があってよい。(高橋正子)
4月22日(1句)
★山桜返る木魂のたのもしき/小口泰與
山桜は、山のあちこちに咲いていて、今山を美しく飾っていることと思う。その山に返る木魂は、全山の響きを返すように「たのもしい」。山桜や山の精がいるようだ。(高橋正子)
4月21日(1句)
★三山のどの春雲も動きけり/小口泰與
名だたる山々。どの山も春雲を生んで、そこに生まれた春の雲は、少しずつ動きを変えて、どれもいきいきと動いている。雲の動きは見て飽きない。(高橋正子)

4月21日~30日

4月30日(4名)
小口泰與
たんぽぽや日は中天をつかさどる★★★★
束の間に桜蕊降る鯉の池★★★
一病に仕う八十路や勿忘草★★★
廣田洋一
ひっそりと暮らすも良きや紫木蓮★★★
公園でテニスの親子夏近し★★★
にぎはひの消えたる街や夏近し★★★★
新型コロナウィルスの感染拡大を避けて、非常事態宣言がされているため、街はにぎわいとは遠い。しかし、にぎわいの消えた街は、日差しが輝いて夏が近いことは間違いない。(高橋正子)
多田有花
頂から播磨灘は大霞して★★★
山路ゆくいずこも囀り絶え間なし★★★★
老い易きものは少年羊歯萌ゆる★★★

桑本栄太郎

姫女苑のうすき紅さす入日かな★★★★
コロナ禍の明けて暮れたり四月尽★★★
荷風忌の灯点もす頃や宵の闇★★★
4月29日(5名)
小口泰與
むくむくの小犬の手ざわり雪柳★★★
おだまきや洗い立てたる割烹着★★★★
おだまきの紫と洗い立てた真っ白な割烹着の取り合わせに清潔感が漂う。もちろん、割烹着を付けた人あって成り立つ句。(高橋正子)
春雷や今朝の赤城の佇まい★★★
廣田洋一
ドロップ缶一つ出て来し昭和の日★★★
忘れ得ぬ引揚船や昭和の日★★★★
先見えず閉じこもりたる昭和の日★★★
多田有花
静かなる黄金週間始まりぬ★★★
春昼や母送りたる手術室★★★★
手術に向かう母を送り出すいささかの不安と、大丈夫という安心の気持ちとが微妙に交差している。春昼とはそんな微妙な気持ちを包んでくれる時であるように思える。(高橋正子)
よき日和霞桜の咲くころは★★★

古田けいじ

青空へ透き通らせてコシアブラ★★★
初蛙鳴く山の田の老夫婦★★★★
人語消え鳥語聞こえる森静か★★★
桑本栄太郎
想い出の写真セピアに昭和の日★★★★
ガキ大将の偲び泣きをり昭和の日★★★
黄金週間自粛の家に家事手伝い★★★
4月28日(4名)
小口泰與
忘れ霜犬の定命如何にせん★★★
榛名湖へ日をちりばむや落椿★★★
水源を司る里木の芽時★★★★
廣田洋一
労ひの声をかけつつ剪定す★★★
剪定や風無き空の晴上り★★★★
風のない空は真っ青に晴れ上がり、剪定の鋏音も軽るく響いて、剪定された木々はもちろん、空もさっぱりとなる。とてもいい気持だ。(高橋正子)
積もりたる花の塵掃く媼かな★★★
多田有花
ほのぼのと霞桜の花見かな★★★
野遊びの父はベンチに寝転びぬ★★★
青き踏む老いも幼もうきうきと★★★★

桑本栄太郎

太き枝の縁側這いぬ花うばら★★★
花房の少し日蔭や虻の昼★★★★
虻が活発に翅を振るわせている世界。それは花房の少し日蔭となっている昼。春昼ののどかさが窺える。(高橋正子)
柿畑の柿の若葉に夕日かな★★★
4月27日(3名)
小口泰與
遊ぶ場も集う事も無し葱坊主★★★
利根の波千千に榛名の春の雲★★★
宴前にちと空酒や春祭★★★★
廣田洋一
水鳥の水脈光りける藤の花★★★★
藤の花房が風に揺れ、光をさざめかしている様子と、水鳥の引く水脈の光を同じ舞台にあげて楽しませてくれる句。美しい。(高橋正子)
藤棚や餌待つ鳩の群がれり★★★
増築の堤防高し落松葉★★★
桑本栄太郎
廃屋の母屋に添ひぬ花みづき★★★
べんがらの塀のつづくや躑躅燃ゆ★★★★
べんがらの色は独特で、べんがら塀が続く街並みは異国情緒さえ感じる。そんな街に躑躅が燃えて古き街も活力が湧いてくるようだ。(高橋正子)
ひな芥子の手弱女なりき風の畑★★★
4月26日(5名)
小口泰與
ほおじろや絵はがきに書く祝い文★★★
帯締めて踊りの稽古紫木蓮★★★
若柴や三匹の小犬生まれける★★★★
廣田洋一
流鶯の澄み渡る声響きけり★★★
庭の隅こんもり紅く桜草★★★
松の芯てんでに伸びを競ひをり(原句)
てんでんに伸びを競ひて松の芯★★★★(正子添削)
松の芯の伸び方は、長短取り混ぜて、方向もさまざま。伸びる勢いが目に見えるよう。松の形ある風格を崩すかのようなてんでんな元気いっぱいの伸び方に拍手を送りたい。(高橋正子)
多田有花
春しぐれ空半分は青きまま★★★
<姫路城ブルーライトアップ—医療従事者への感謝>
城青く染まりて立てり春の宵★★★
夜明けまず磯鵯の囀りに★★★★
夜明けに美しいものに出会うと、その日一日がいい日になる気持ちが湧く。磯鵯は、鵯と名前が付くが、ヒタキ科の鳥。羽根の色から青い鳥とも呼ばれ、今では市街地でも見られるそうだ。句に技巧はないが、耳に目に楽しさを覚える句だ。(高橋正子)

古田けいじ

木漏れ日の光さし来る春蘭へ★★★★
母さん今年も春蘭咲きました★★★
苧環の女子中学生へ立ち揺れり★★★
桑本栄太郎
玉房の散りて頻りや八重ざくら★★★
たんぽぽの傍に白髪の母も居て★★★
からし菜の中州占めたる河畔かな★★★
4月25日(5名)
小口泰與
山吹や千五百の稚魚の遡上せる★★★
目借時直には見えぬ深淵よ★★★
残照の篁そめて鳥交る★★★
廣田洋一
八重落花一つグラスに浮かべけり(原句)
八重落花が言葉として不自然ですので、添削しました。
落花八重グラスに一つ浮かべけり★★★★(正子添削)
蜘蛛糸や桜蕊捉へ吊るしたり★★★
日を浴びつゆっくり散歩落花浴び(原句)
日を浴びつ落花を浴びつ散歩かな★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
こども等の銀輪部隊や風光る★★★
新築のメゾン完成花みづき★★★
子すずめの地に落つような巣立ちかな★★★★
多田有花
山躑躅ここではそっと咲きにけり★★★
きりしまや真青な空に燃えたちぬ★★★
葉桜となりて大きく風を受け★★★★
葉桜となると、桜の木が一気に膨らみ、重量感を持つようになる。そうなれば、受ける風も大きい。たっぷりと風を受ける。葉桜と一体化した作者の気持ちが読んで快い。(高橋正子)

川名ますみ

並木路隣の花は伐られけり★★★
石楠花のめいっぱいなる花よ芽よ★★★★
葉桜を風だけが過ぐつややかに★★★★
葉桜を過ぎるものは今は風だけ。葉桜をつやつやとさせ、風もまたつややかに光っている。(高橋正子)
4月24日(6名)
川名ますみ
花の影人なき道にひろく伸ぶ★★★
すみずみを路面へ映す朝桜★★★★
朝桜がさわやかに、かろやかに詠まれている。自分の影を路にすみずみまで映しているのだ。(高橋正子)
石楠花を一枝隣の子にどうぞ★★★
多田有花
見上げれば白壁の家に躑躅燃ゆ★★★
春の山輝く山となりにけり★★★★
ザックには春筍のご飯入れ★★★

廣田洋一

葱坊主蜂に頭を撫でられし★★★
一列だけ取り残されし葱坊主★★★
休校の校舎静まり葱坊主★★★★
小口泰與
桃咲くや心たる日の古机★★★
青柳の風たおやかや厨ごと★★★★
若緑太柱背に端座せり★★★

桑本栄太郎

柿畑のみどり煌めく若葉光★★★
白壁の民家に添うや花水木★★★★
ぽつぽつと春のしぐれや丘を行く★★★
古田けいじ
芍薬の蕾に朝の雨が降る★★★
牡丹の咲いて一年つつがなし★★★★
葉桜やマンションの灯ともりだす★★★★
葉桜の向こうだろうか、マンションに暮らす人たちの灯りがともりだす。夕暮れ時の抒情的な風景があたたかい。(高橋正子)
4月23(4名)
多田有花
小綬鶏の呼びかけ盛んなる真昼★★★★
白がまず大きく咲いて花水木★★★
やもり手に乗せて遊びし春の午後★★★

小口泰與

源流の雪代山女賜りぬ★★★
たまゆらの日差しに映ゆる落椿★★★
水替えの魚を盥へ花すみれ★★★★
魚の水を替えてやるのに盥に移すと、傍には、すみれの花が咲いている。魚は金魚や目高のように小さい魚か。盥に移された魚もすみれもこのうららかさの中で、いきいきと可愛いのだ。(高橋雅子)
廣田洋一
白き花波打つ如く花水木★★★
古きビル瀟洒に見せ花水木★★★
街並みを白一色に花水木★★★★
街路樹や庭園樹として植えられる花水木は、すっかり日本の風景に定着した。白い花水木が咲くと、街並みを白っぽく、白一色にしてくれる。街を瀟洒にしてくれる。思い切って「白一色」といったのが詩情があってよい。(高橋正子)
桑本栄太郎
歩み行くほどに雨降る若葉寒む★★★★
コンクリの塀を被いぬ連翹黄★★★
蚕豆の天を向きたる小雨かな★★★

4月22日(4名)
小口泰與
山桜返る木魂のたのもしき★★★★
山桜は、山のあちこちに咲いていて、今山を美しく飾っていることと思う。その山に返る木魂は、全山の響きを返すように「たのもしい」。山桜や山の精がいるようだ。(高橋正子)
老猫のたばかりそこね朧月★★★
春雷のた走りそこね静まりぬ★★★
多田有花
粗大ごみ収集の音暮の春★★★
外に出るスプリングコートはおるべく★★★
窓開けて見上げしは春の山なりき★★★★

廣田洋一

紫の羽を遊ばせ花豌豆★★★
遠富士に負けじと白き花豌豆★★★★
木を囲み咲き乱れたる落椿★★★
桑本栄太郎
新樹めく光りの中やバス通り★★★★
藤垂るる棚に憩いぬ散歩かな★★★
ぱきぱきと竹林鳴らす春疾風★★★
4月21日(3名)
廣田洋一
庭の隅ぽつと明るく蒲公英かな★★★
蒲公英の一茎丸々絮となり★★★★
蒲公英の絮川を越えよと吹きにけり★★★
小口泰與
春雨や隠り沼より禽羽音★★★
三山のどの春雲も動きけり★★★★
名だたる山々。どの山も春雲を生んで、そこに生まれた春の雲は、少しずつ動きを変えて、どれもいきいきと動いている。雲の動きは見て飽きない。(高橋正子)
逞しき噴煙起つや山すみれ★★★
桑は本栄太郎
さくらしべ降るや歩道を赤く染め★★★
山吹の八重と云うなり風捉う★★★
筍のもう手に負えぬ雨後なりき★★★

自由な投句箱/4月11日~20日

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※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆花冠発行所◆
◆月例ネット句会
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/4月11日~20日

4月20日(句)
★静けさや雨の団地に松の芯/桑本栄太郎
雨が降る団地の静けさ。人は家に籠り、人声も、物音もない世界に、松の芯は、ぐんぐん伸びている。驚くほどの勢いに、松の生命力を見る。(高橋正子)
4月19日(1句)
★囀りのいろいろ部屋に届きけり/多田有花
外出自粛を要請される日々。家に居ることも多いが、部屋にいて聞こえてくるものは、いろんな鳥の囀り。その声の主の姿を思って見たり、家居も楽しい。(高橋正子)
4月18日(1句)
★日差しはや強し咲き初む八重桜/多田有花
そめいよしのが終わると八重桜が咲く。そのころには、日差しは初夏を思わせるような日もあって、日差しの強さを実感する。ぼってりと思い八重桜と、日差しが相重なる。(高橋正子)
4月17日(1句)
谷あいに入り行く貨車や初燕/小口泰與
貨物列車が通りすぎてゆき、谷あいに入って小さくなった。そこへ初燕がかろやかに過っていった。貨車も燕もみんな通り過ぎてゆくもの。(高橋正子)
4月16日(1句)
★蝶を追う幼ふたりや休園中/桑本栄太郎
幼稚園や保育園が休みになっても、幼子たちは、遊びに困らない。姉妹か、兄弟か、外で蝶を追いかけて遊んでいる。その無邪気さ、それ自体が絵になっている。(高橋正子)
4月15日(2句)
★家々の裏を流れて花筏/多田有花
家々の裏を川が流れている。近くに桜の木があるかもしれないが、花筏は遠くから流れ来たかもしれない。「裏を流れて」が味わい深い。(高橋正子)
★花大根はるか故郷の凪の海/桑本栄太郎
花大根は薄紫の花で固まって咲くことが多い。栄太郎さんの故郷は鳥取。日本海の凪いだ海と、花大根の色は似あう。以前城ヶ島に行ったとき、海辺近くに花大根が群れ咲いていた。そんな景色が急に思い出された。(高橋正子)
4月14日(1句)
★快晴に深呼吸して木の芽山/多田有花
深呼吸するのは、木の芽山。晴れ晴れとした青空に、木の芽山は、伸びあがって深呼吸しただろう。もちろん、作者も思わず深呼吸したくなっただろう。(高橋正子)
4月13日(1句)
全身を花粉まみれや熊ん蜂/小口泰與
やんちゃ坊主ような熊ん蜂。花に体を突っ込んで、花粉まみれになって蜜を吸ったらしい。(髙橋正子)
4月12日(2句)
★園児らの声に燃え立つ躑躅かな/廣田洋一
躑躅の色は、鮮烈。「燃え立つ」と言って過言ではない。園児らがあげる無邪気な声に、呼応するかのように花色を強める躑躅だ。(高橋正子)
★午後よりは桜を散らす風の音/多田有花
午後になって風が出てきた音がする。その音は、桜を散らす風だった。「散らす風の音」というからには、風は見えないけれど、桜の散る様に風の姿が見て取れる。(高橋正子)
4月11日(1句)
★花楓光と影が交差する/多田有花
楓の若葉、その中に暗紅色の種をなした小さい花が見られる。楓の若葉に降り注ぐ光、光が作る影が交差して、また若緑と暗紅色が光と影のように対比されて、桜が終わるころの明媚な景色となっている。(高橋正子)

4月11日~20日

4月20日(4名)
小口泰與
聞え来る謡の声や蝶の昼★★★
春光や白衣観音青空へ★★★
和紙に書く友への文や桃の花★★★
廣田洋一
今を盛りの桜を揺らす地震の朝★★★★
休業の店の並びて落花舞ふ★★★
川底に鯉の二匹や花筏★★★
多田有花
残る花一掃夜の雨と風★★★
くぐり入り枝垂桜を見上げおり★★★★
境内に絵を描く人や糸桜★★★

桑本栄太郎

夢に在り惰眠むさぼる穀雨かな★★★
静けさや雨の団地に松の芯★★★★
雨が降る団地の静けさ。人は家に籠り、人声も、物音もない世界に、松の芯は、ぐんぐん伸びている。驚くほどの勢いに、松の生命力を見る。(高橋正子)
玉房の濡れて垂れ居り八重ざくら★★★
4月19日(4名)
廣田洋一
農小屋に人影見ゆる穀雨かな★★★★
ビニールの覆ひし畝に穀雨かな★★★
雲去りて日のさんさんと穀雨かな★★★
小口泰與
写真家の望遠レンズ山笑う★★★
海棠の雨のしずくの刹那かな★★★
菜の花や千曲の流れ平らかに★★★★
多田有花
日永かなもういいかいの声がする★★★
囀りのいろいろ部屋に届きけり★★★★
外出自粛を要請される日々。家に居ることも多いが、部屋にいて聞こえてくるものは、いろんな鳥の囀り。その声の主の姿を思って見たり、家居も楽しい。(高橋正子)
濃き影を宿して咲きぬ八重桜★★★

桑は本栄太郎

春風や坂道くだる一輪車★★★
山里の甍きらめく揚ひばり★★★★
春雨のスカイプ通話の家居なりぬ★★★
4月18日(4名)
小口泰與
春ゆうべ漁を終えたる夫婦船★★★
隠り沼の公魚尾びれぴちぴちと★★★
上野毛の空均しけり春の鳶★★★★
廣田洋一
ひるがへり橋をくぐりし燕かな★★★★
あの屋根かこちらの屋根か百千鳥★★★★
やはらかき朝の日差しや百千鳥★★★
多田有花
しばし座す蝶の集いし頂に★★★
日差しはや強し咲き初む八重桜★★★★
そめいよしのが終わると八重桜が咲く。そのころには、日差しは初夏を思わせるような日もあって、日差しの強さを実感する。ぼってりと思い八重桜と、日差しが相重なる。(高橋正子)
大腿骨頚部骨折春疾風★★★

桑本栄太郎

山吹の一重と云うは風まかせ★★★★
著莪の花咲いて曇りや明日は雨★★★
遠目にも赤き垣根や新芽吹く★★★
4月17日(4名)
廣田洋一
山吹や道灌濠に咲き誇る(原句)
山吹や道灌濠に黄を尽くし★★★★(正子添削例)
「咲き誇る」で問題はないですが、添削例のようにもできます。
山吹や寿司屋の前に黄金吹く★★★
遠き日の友の面影濃山吹★★★
小口泰與
谷あいに入り行く貨車や初燕★★★★
貨物列車が通りすぎてゆき、谷あいに入って小さくなった。そこへ初燕がかろやかに過っていった。貨車も燕もみんな通り過ぎてゆくもの。(高橋正子)
つばくらや白衣観音朝日差す★★★
天平の箜篌の調べや春の雨★★★
多田有花
伽藍仰ぐ枝垂桜のその向こう★★★★
見上げれば視界いっぱい糸桜★★★
新幹線霞の彼方へ去りゆけり★★★

桑本栄太郎

川に沿い地道下りぬ春柳★★★★
揚ひばり甍きらめく里の屋根★★★
丘うえの早瀬聞き居り芝さくら★★★
4月16日(4名)
小口泰與
散る花の境内に満ち躓けり★★★
夕日染む利根の白波揚雲雀(原句)
夕日染む利根の波の上揚雲雀★★★★(正子)添削
もとの句、言いたいことを一つ(揚雲雀)に絞るのがよいと思います。白波が強すぎます。
辰之の地ゆうるり流る春の川★★★
廣田洋一
早々と頭揺らせる雛罌粟かな(原句)
雛罌粟の開けば早も風に揺れ★★★★(正子添削)
「頭」は雛罌粟の花冠のことですが、 花びらのひらひらしたイメージに少しそぐわない感じです。
名を知らぬ草花あまた春惜しむ★★★
八重桜枝垂れる先に緋鯉かな★★★
多田有花
花びらを風吹くたびに放ちけり★★★★
小綬鶏に呼ばれて開ける昼の窓★★★
一山に影を落として春の雲★★★

桑本栄太郎

蝶を追う幼ふたりや休園中★★★★
幼稚園や保育園が休みになっても、幼子たちは、遊びに困らない。姉妹か、兄弟か、外で蝶を追いかけて遊んでいる。その無邪気さ、それ自体が絵になっている。(高橋正子)
白き腹見せて反転つばくらめ★★★
げんげ田の鋤き込まれゆく日差しかな★★★
4月15日(4名)
小口泰與
満ち満ちて一花だに放下せず★★★
鳥だにも来ぬ隠り沼のはこべかな★★★★
頼もしき凪の湖なり残る鴨★★★
廣田洋一
野良として箱に捨てられ子猫かな★★★
天辺の赤く光れる残花かな★★★★
町の川挟みて散りし残花かな★★★
多田有花
花筏家々の裏を流れゆく(原句)
家々の裏を流れて花筏★★★★(正子添削)
家々の裏を川が流れている。近くに桜の木があるかもしれないが、花筏は遠くから流れ来たかもしれない。「裏を流れて」が味わい深い。(高橋正子)
麗かな頂でコロナ禍を語る★★★
日永かな明るさの中で夕食を★★★

桑本栄太郎

青ざむる御衣黄桜や里の辻★★★
花大根はるか故郷の凪の海★★★★
花大根は薄紫の花で固まって咲くことが多い。栄太郎さんの故郷は鳥取。日本海の凪いだ海と、花大根の色は似あう。以前城ヶ島に行ったとき、海辺近くに花大根が群れ咲いていた。そんな景色が急に思い出された。(高橋正子)
コロナ禍と云えど樹上の百千鳥★★★
4月14日(4名)
小口泰與
渓流を讃え雪代山女かな★★★
つくしんぼ立ち居定かに新入生★★★★
公魚のかすかな魚信たなごころ★★★
廣田洋一
出で来る芽にせかされし春落葉★★★★
已む無くも休業したり春落葉★★★
春落葉吹き寄せられしフェンス際★★★
多田有花
我もまた家に籠りぬ花の冷え★★★
災難はいつも突然春嵐★★★
快晴に深呼吸して木の芽山★★★★
深呼吸するのは、木の芽山。晴れ晴れとした青空に、木の芽山は、伸びあがって深呼吸しただろう。もちろん、作者も思わず深呼吸したくなっただろう。(高橋正子)

桑本栄太郎

夜もすがら闇の雄叫ぶ春疾風★★★
残花早や散るべくあらん夜半の風★★★
枝先のすでに若葉の日差しかな★★★★
4月13日(3名)
小口泰與
全身を花粉まみれや熊ん蜂★★★★
やんちゃ坊主ような熊ん蜂。花に体を突っ込んで、花粉まみれになって蜜を吸ったらしい。(髙橋正子)
ヒヤシンス深閑とせる小料理屋★★★
青柳や風の岸辺の只ならず★★★
廣田洋一
子の声に応へるごとし椿落つ★★★★
緑の葉押し分け咲ける八重椿★★★
門前に笑顔見せたる白椿★★★
桑本栄太郎
ひたひたと音に目覚めり菜種梅雨★★★
花屑の水面に集い浮かびけり★★★
雨雲の晴れて現わる花の雲★★★★
4月12日(4名)
小口泰與
隠り沼の春たけなわや鳥の声★★★★
定かなる日差しの音色チューリップ★★★
夕闇や乙女椿のたたずまい★★★
廣田洋一
見開きて海の夢見る桜鯛★★★
園児らの声の燃え立つ躑躅かな(原句)
園児らの声に燃え立つ躑躅かな★★★★(正子添削)
「燃え立つ」のは、「園児の声」か「躑躅」かということになりますが、「躑躅」のほうが、自然ではないでしょうか。
躑躅の色は、鮮烈。「燃え立つ」と言って過言ではない。園児らがあげる無邪気な声に、呼応するかのように花色を強める躑躅だ。(高橋正子)
道はさみ色とりどりのつつじ咲く★★★
多田有花
日曜の朝の静かな春の雨★★★
午後よりは桜を散らす風の音★★★★
午後になって風が出てきた音がする。その音は、桜を散らす風だった。「散らす風の音」というからには、風は見えないけれど、桜の散る様に風の姿が見て取れる。(高橋正子)
点々と高き所に芽吹く木々★★★

桑本栄太郎

窓辺より見やる空へと木の芽雨★★★
残花早や蘂の赤きが目立ちけり★★★★
満天星の花の滴やうつむいて★★★
4月11日(4名)
小口泰與
また二人車より降る田芹かな★★★
海棠や小犬親子は夢の中★★★
囀りや浅間南面青々と★★★★
多田有花
大霞なり淡路家島六甲も★★★
楠落葉はらはら続く交差点★★★
花楓光と影が交差する★★★★
楓の若葉、その中に暗紅色の種をなした小さい花が見られる。楓の若葉に降り注ぐ光、光が作る影が交差して、また若緑と暗紅色が光と影のように対比されて、桜が終わるころの明媚な景色となっている。(高橋正子)

廣田洋一

大取りの色鮮やかに八重桜★★★
散り敷きし花に降りたる桜蘂★★★
かくれんぼの子に降りかかる桜蘂★★★★
桑本栄太郎
ねぎ畑に狂い舞うかに蝶の昼★★★
日を透きし赤き垣根や新芽噴く★★★
川べりの坂を下りぬ花吹雪★★★★

自由な投句箱/4月1日~10日

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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/4月1日~10日

4月10日(1句)
★魚棚に背鰭びしりと桜鯛/廣田洋一
鯛はなんといっても桜鯛。鱗のかがやきはもちろんのこと、背鰭がびしりとしていることが要。活きの良さと大きさは、「びしり」が表す。(高橋正子)
4月9日(2句)
★逞しき利根の流れや春耕す/小口泰與
農耕に水は欠かせない。肥沃な土地もまた川がもたらしたもの。耕しの季節が来ると、利根の流れは雪解け水に勢いづいて、「逞しき流れ」となる。逞しき流れに、農作業も勢いを得るのだ。(高橋正子)
★山路いまつつじ回廊となりぬ/多田有花
低山に上ると、山つつじが咲き誇るのに出会う。つつじ回廊と言うほどに咲いている。燃えるようなつつじの色に、元気が湧く。はやも初夏の気配が見える。(高橋正子)
4月8日(3句)
★幼子も母と茶をかけ花祭/廣田洋一
花御堂の小さな誕生仏に甘茶をかけて祝う花祭り。誕生仏のような幼子と母が甘茶をかけている姿は、「柔和」そのもので、花祭りにふさわしい。(高橋正子)
★満開の桜兵士の墓に触れ/多田有花
明らかに兵士の墓とわかるのは、墓石の尖塔のようにとがっているからだ。潔くお国のために散った兵士と称えられるが、本情はどうであったが。今、桜が兵士の墓に触れ、慰霊の意味を新たにしている気がする。(高橋正子)
★上り行く花の寺へと花の雲/桑本栄太郎
桜が咲き誇る寺へ上ってゆく。道々にも花が雲のように咲つづいている。花浄土といいたい眺めだ。(高橋正子)
4月7日(2句)
★花散るや嶺より絶えず根無し雲/小口泰與
花が散り急ぎ、嶺からは、根無し雲が流れ去る。その景色を見ていると、時の移る速さがあきらかに目に見える。(高橋正子)
★堂々の桜が囲む広場かな/多田有花
広場を桜大樹が囲んでいる。どっしりとした桜に囲まれた広場は、また大いに安心の場である。(高橋正子)
4月6日(2句)
★清明や流れ始めし用水路/廣田洋一
清明は、4月5日にあたる。雁が北に帰り、燕がやって来、季節は一気に明るくなる。用水路には、田へ流れ込む水が流れ始める。明快な句。(高橋正子)
★菜の花の漬物青き朝餉かな/桑本栄太郎
菜の花がよく漬かり、ぐっと引き締まった葉の青さ。朝餉の漬物の色どりは、目を覚ましてくれる。すっきりと爽やかなのがよい。(高橋正子)
4月5日(2句)
★造り酒屋桜一枝のその向こう/多田有花
満開の桜の一枝が、造り酒屋の古い甍を支えるように、また目立たせて咲いている。
日本の大切な風景に思える。(高橋正子)
★投げ釣りの糸の光れる春の川/廣田洋一
投げ釣りの糸が一瞬きらっと光る。それは春の川なのだ。春の川の光あふれる、のどかさがうれしい。(高橋正子)
4月4日(1句)
★榛名湖にほどけ初めたる楓の芽/小口泰與
標高の高い榛名湖にも、楓の芽がほどけ始めた。湖水の色とほどけ始めた楓の芽の色とがよくなじんで、ただそれだけで、美しい。(高橋正子)
4月3日(2句)
★遍路笠脱ぎて仰ぎぬ大師像/廣田洋一
霊山寺は四国遍路の一番札所。鳴門にある。遍路笠を脱いで、弘法大師の像を仰いだには、ここから遍路が始まる思う決意のような気持ち。(高橋正子)
★西山の峰の鐘鳴る花の雲/桑本栄太郎
京都西山の峰の寺から鐘の音が花の雲を伝わって響いてい来る。西山の峰寺からの眺望も自然に思い浮かぶ。上野寛永寺の鐘の音も花の雲と句に詠まれたが、京には、また別の趣がある。(高橋正子)
4月2日(2句)
★渓流も春たけなわの流れかな/小口泰與
渓流に親しんでいると、折々の流れの変化に時や季節の移ろいに気づく。今日の流れは、春たけなわと思える水量と速さがある。心弾む渓流の流れだ。(高橋正子)
★窓に花魔笛を歌うカーラジオ/川名ますみ
車で外出すると、桜が窓いっぱいに入り、カーラジオは、モーツァルトの「魔笛」を歌う。思いがけなく贅沢なひと時をいただいた。(高橋正子)
4月1日(1句)
★山桜大樹は日輪を隠し/多田有花
咲き満ちた山桜が日輪を隠し、自然のままに、堂々と咲き満ちる姿が想像される。(高橋正子)

4月1日~10日

4月10日(4名)
廣田洋一
魚棚に背鰭びしりと桜鯛★★★★
鯛はなんといっても桜鯛。鱗のかがやきはもちろんのこと、背鰭がびしりとしていることが要。活きの良さと大きさは、「びしり」が表す。(高橋正子)
秘帖求め海を渡れり桜鯛★★★
鳥の声聞きつつ歩む花見かな★★★
小口泰與
激つ瀬に蝶飲み込まれ如何とも★★★★
峡の里一本桜爛漫と★★★
また二人車より降る田芹かな★★★
多田有花
鬼瓦に寄り添い桜咲きにけり★★★★
尺八や花盛りなる境内に★★★
ひとり座す花びら舞い続く中に★★★

桑本栄太郎

花の雲見下ろす天に放れ雲★★★★
おもかげの母を慕いき花だいこん★★★
満天星の花に夕日やつまみ見る★★★
4月9日(4名)
小口泰與
隠り沼や落花盛んな鳥の声★★★
たぐいなき千本桜雨の中★★★
逞しき利根の流れや春耕す★★★★
農耕に水は欠かせない。肥沃な土地もまた川がもたらしたもの。耕しの季節が来ると、利根の流れは雪解け水に勢いづいて、「逞しき流れ」となる。逞しき流れに、農作業も勢いを得るのだ。(高橋正子)
廣田洋一
朝寝覚め夢見し名句消えにけり★★★
朝寝して朝湯に浸かる湯治かな★★★★
今日よりは在宅勤務朝寝せむ★★★
多田有花
散り敷ける花びらを踏む山路かな★★★
銀色に芽吹き初めにし小楢かな★★★
山路いまつつじ回廊となりぬ★★★★
低山に上ると、山つつじが咲き誇るのに出会う。つつじ回廊と言うほどに咲いている。燃えるようなつつじの色に、元気が湧く。はやも初夏の気配が見える。(高橋正子)

桑本栄太郎

みほとけの横顔憂う仏生会★★★
ぽつぽつと緑吹き居り銀杏の芽★★★★
一陣の風に地獄や花ふぶき★★★
4月8日(4名)
小口泰與
噴煙の北へ流るる落花かな★★★
裏庭と景違えてや八重桜★★★
囀りや新車納入されにける★★★★
廣田洋一
ちらほらと花の散りたる虚子忌かな★★★★
幼子も母と茶をかけ花祭★★★★
花御堂の小さな誕生仏に甘茶をかけて祝う花祭り。誕生仏のような幼子と母が甘茶をかけている姿は、「柔和」そのもので、花祭りにふさわしい。(高橋正子)
丸ビルに釈迦のおはせし花祭★★★
多田有花
絢爛たる一本桜墓の前★★★
戦死者の墓標並びし桜かな★★★
満開の桜兵士の墓に触れ★★★★
明らかに兵士の墓とわかるのは、墓石の尖塔のようにとがっているからだ。潔くお国のために散った兵士と称えられるが、本情はどうであったが。今、桜が兵士の墓に触れ、慰霊の意味を新たにしている気がする。(高橋正子)
桑本栄太郎
しべ赤く散るべき時か花あはれ★★★
上り行く花の寺へと花の雲★★★★
桜が咲き誇る寺へ上ってゆく。道々にも花が雲のように咲つづいている。花浄土といいたい眺めだ。(高橋正子)
虚子の忌や花咲き鳥の歌い居り★★★
4月7日(4名)
小口泰與
太白や庭おぼろなる竹林★★★
花散るや嶺より絶えず根無し雲★★★★
花が散り急ぎ、嶺からは、根無し雲が流れ去る。その景色を見ていると、時の移る速さがあきらかに目に見える。(高橋正子)
君子欄一朶の雲の動かざる★★★
廣田洋一
芝生にて弁当広げ暖かし★★★
公園の古りしベンチや暖かし★★★
春の暮赤き火の玉沈み行く★★★
多田有花
眼前に花びら放ち初む桜★★★
小さくもしゃんと咲きたりチューリップ★★★
堂々の桜が囲む広場かな★★★★
広場を桜大樹が囲んでいる。どっしりとした桜に囲まれた広場は、また大いに安心の場である。(高橋正子)

桑本栄太郎

余寒なほドゥィンドゥィンとMRI★★★
ソーシャルの間隔如何に春愁ふ★★★
幼子のスキップ走りや春たのし★★★
4月6日(4名)
小口泰與
はくれんや風通りける裏鬼門★★★
太古より川の流れや松の花★★★★
鳥声を足して桜のそろい咲く★★★
廣田洋一
大根の花咲き誇る畑かな★★★★
花大根薄紫の柔らかし★★★
清明や流れ始めし用水路★★★★
清明は、4月5日にあたる。雁が北に帰り、燕がやって来、季節は一気に明るくなる。用水路には、田へ流れ込む水が流れ始める。明快な句。(高橋正子)
桑本栄太郎
菜の花の漬物青き朝餉かな★★★★
菜の花がよく漬かり、ぐっと引き締まった葉の青さ。朝餉の漬物の色どりは、目を覚ましてくれる。すっきりと爽やかなのがよい。(高橋正子)
咲くものは咲き満ち居たる花吹雪★★★
大根の花に夕日や大原野★★★

多田有花

山裾も頂もみな花盛り★★★★
峠から流れと花を眺めおり★★★
頂を占めて咲きおり遠ざくら★★★
4月5日(4名)
小口泰與
榛名山より風神に乗る春の雲★★★
この時間鳥の来ている遅日かな★★★★
うららかや十方へ陽の差しにける★★★
多田有花
ため池にソーラーパネル桜咲く★★★
造り酒屋桜一枝のその向こう★★★★
満開の桜の一枝が、造り酒屋の古い甍を支えるように、また目立たせて咲いている。
日本の大切な風景に思える。(高橋正子)
咲き満ちて人の気配は無き桜(原句)
咲き満ちて人の気配の無き桜★★★★(正子添削)

廣田洋一

春光や投げ合へる球山なりに★★★
投げ釣りの糸の光れる春の川★★★★
投げ釣りの糸が一瞬きらっと光る。それは春の川なのだ。春の川の光あふれる、のどかさがうれしい。(高橋正子)
ここまでと句切る行列マスク買ふ★★★
桑本栄太郎
校門の生徒待ち居り花盛り★★★
春風のマルチ波打つ大原野★★★★
遠目には少し青ざめ辛夷咲く★★★
4月4日(4名)
小口泰與
高高と白衣観音春の空★★★★
榛名湖にほどけ初めたる楓の芽★★★★
標高の高い榛名湖にも、楓の芽がほどけ始めた。湖水の色とほどけ始めた楓の芽の色とがよくなじんで、ただそれだけで、美しい。(高橋正子)
命ある限り枝はる桜かな★★★
廣田洋一
軒の下忘れず来る燕かな★★★
目の前で燕返しを見せられし★★★
土咥えひらり潜れる燕の巣★★★★
桑本栄太郎
遠き日の母想いをり紫木蓮★★★★
山あいの日々に色付く花の雲★★★
殊更にことしは惜しき花の屑★★★
多田有花
川に沿い道に沿いたり桜咲く★★★
廃屋となりしはいつか花楓★★★★
一本の桜が守る社かな★★★
4月3日(4名)
廣田洋一
青き眼の遍路も居たる霊山寺★★★
遍路笠脱ぎて仰ぎぬ大師像★★★★
霊山寺は四国遍路の一番札所。鳴門にある。遍路笠を脱いで、弘法大師の像を仰いだには、ここから遍路が始まる思う決意のような気持ち。(高橋正子)
波の音囁くごとし春の海★★★
小口泰與
はくれんや黙の水面の流れける★★★★
花の雲乗りて休みて眠りたし★★★
田の上をなぞえに翔ける燕かな★★★
桑本栄太郎
から梨の花の昼なり村の辻★★★
まくなぎの遮り居たる明日は雨★★★
西山の峰の鐘鳴る花の雲★★★★
京都西山の峰の寺から鐘の音が花の雲を伝わって響いてい来る。西山の峰寺からの眺望も自然に思い浮かぶ。上野寛永寺の鐘の音も花の雲と句に詠まれたが、京には、また別の趣がある。(高橋正子)
多田有花
頭をあげよいずこも桜満開に★★★★
更紗木蓮高く銀の馬車道に★★★
さくら咲く捨てられにゆく古畳★★★
4月2日(4名)
小口泰與
古傷のいつもの事よ木の芽時★★★
渓流も春たけなわの流れかな★★★★
渓流に親しんでいると、折々の流れの変化に時や季節の移ろいに気づく。今日の流れは、春たけなわと思える水量と速さがある。心弾む渓流の流れだ。(高橋正子)
咲き満し花の上にて眠りたし★★★
多田有花
広くなる川面に静か残る鴨★★★
春の雨窓辺に来る鳥の影★★★
目覚めけり磯鵯の囀りに★★★★

川名ますみ

窓に花魔笛を歌うカーラジオ★★★★
車で外出すると、桜が窓いっぱいに入り、カーラジオは、モーツァルトの「魔笛」を歌う。思いがけなく贅沢なひと時をいただいた。(高橋正子)
花満ちし帰路のカーラジオに魔笛★★★
春嵐波の音以て窓たたく★★★
桑本栄太郎
めぐり行く路線バス見え菜種梅雨★★★★
花冷えの在所となりぬ日暮れかな★★★
篝火の焚かれ人無き花しぐれ★★★
4月1日(5名)
小口泰與
花冷や医師の言葉は血の検査★★★
のどけしや鳶滑空ととびの笛★★★
うららかやきらきら光る潦★★★
多田有花
染井吉野開山堂に開き初め★★★
山桜大樹は日輪を隠し★★★★
咲き満ちた山桜が日輪を隠し、自然のままに、堂々と咲き満ちる姿が想像される。(高橋正子)
青鷺の静かなる狩春の池★★★

廣田洋一

咲き満ちし花に生気や朝の雨(原句)
「生気」と「いきいき」は意味は同じです。「花に生気(がある)」と「花のいきいき(としている)」の違いがおわかりでしょうか。
咲き満ちて花のいきいき朝の雨★★★★
友達とレッスン予約花の雨★★★
接待の茶席案内遍路道★★★
桑本栄太郎
三鬼忌のボヘミアンとて春帽子★★★★
議員らの今日よりマスク四月馬鹿★★★
歩みゆく土手の川辺や柳絮降る★★★

古田敬二

人を待つ高瀬川面と夜桜と★★★
高瀬川石の橋げた夜の桜★★★
夜桜の映る川面や高瀬川★★★