●自由な投句箱/10月21日~31日●


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今日の秀句/10月21日~31日


[10月31日]

★干し物の向こう流るる秋の雲/川名ますみ
清潔に洗われて洗濯物に干されている。その空の向こうを白い秋の雲が流れている。生活のなかにも、こんなに、きれいで、清潔な景色が、とても幸せに思える。(高橋正子)

[10月30日]

★坂道の風になぶられ萩は実に/桑本栄太郎
雅やかに咲いていた萩も葉はすっかり黄葉し、実をつけるようになった。坂道を吹き上る風に枝がなぶられ、哀しい姿であるが、それに却って心動かされる。(高橋正子)

[10月29日]

★ひつじ田や羽音鋭き群雀/小口泰與
刈田にひつじが青々と伸びるころ。田に群れる雀が一斉に飛び立つと、空気を切る羽音が鋭く響く。冬の気配が忍び寄る。(高橋正子)

[10月28日]

★間引き菜を漬けて妻行く美容院/桑本栄太郎
間引き菜のやわらかな美味しさは、この季節を待って味わえるもの。その美味しさを漬物にする。美容院にゆく日も、厨事には怠りない主婦のしたたかさが読める。(高橋正子)

[10月27日]

★下野に苅田続けり空の青/廣田洋一
下野はちょうど、関東平野のど真ん中の栃木県南部になろうか。すっかり取入れが終わり刈田となった田が広々と広がり、刈田の上の空は澄み切って原初のような空として広がる。下野の刈田の風景に見る深み。(高橋正子)

[10月26日]

★初鴨を待ちて野の池空映す/古田敬二
今年も鴨が来る季節になった。いつも鴨が来る池は秋空を映して、そこに鴨を浮かばせたいと、鴨の飛来を心待ちにしている。待っているのは実は作者でもあるのだ。美しい季節を感じさせる。(高橋正子)

[10月25日]

★街の田も苅田となりて静寂に/河野啓一
野の苅田は、照り曇りに静かなたたずまいで広がる。街中に残された田も街の音をよそに、「静寂」であるという発見。どこにあろうと、苅田そのもが静かなのだ。(高橋正子)

[10月24日]

★滝道を行き交う人も秋深し/河野啓一
「人も秋深し」は、鋭い。滝への道は、夏は涼を求めて行き交ったであろうが、その滝への道も今は木々が紅葉し、落葉もそろそろ始まる。行き交う人も深まる秋の一景となっている。(高橋正子)

[10月23日]

★嬉々として青空裂きぬ朝の鵯/桑本栄太郎
鵯は秋、木の実を啄んだり、花の蜜を吸うのに元気いっぱい。嬉々としている。鳴く声も鵙に劣らず、朝の青空を裂くような声。それも嬉々としているからよろしかろう。(高橋正子)

[10月22日]

★秋の空鈴懸の実の歌を聴く/谷口博望(満天星)
空を見上げると、鈴懸の丸い実がいくつも枝に垂れた入るのが目に入る。秋空を吹く風に、鈴懸の実は歌を歌っているような可愛さだ。しばらく鈴懸の実の歌に耳を澄まそう。(高橋正子)

[10月21日]

★秋潮の河口に寄する波頭かな/桑本栄太郎
秋潮が河口に寄せる波頭を見ていると、それは、永遠に続く動きに思われる。「秋潮」の色はすなわち空の色でもあって、秋思につながる景色と思える。(高橋正子)

10月21日~31日


10月31日(7名)

●満天星
烏瓜命尽くまで山河越え★★★
烏瓜書斎に吊るす生魚★★★
卵持つ魚吊る如く烏瓜★★★★

●小口泰與
山風の突然強く蒲の絮★★★
秋深き今朝の赤城の彫深し★★★
要を得て短き祝辞秋祭★★★★

●廣田洋一
荒縄の傘をめぐらし冬構★★★
旅先のどこも同じや冬構★★★
ビニールの鉢を覆いて冬構★★★★

●多田有花
秋晴れの丹波六甲小豆島★★★
正月までもつよと梨を売りに来る★★★
紅葉の大岩壁を攀じる人★★★★

●桑本栄太郎
天辺の楓紅葉や空を透き★★★★
桐一葉落ちて黄色の半ばかな★★★
茜なる入日の空のいわし雲★★★

●河野啓一
紅葉狩りどこへ行こうか地図出せど★★★
ふと寮歌聞きたる胸に秋愁充つ★★★★
秋のデイ日がな一日賑やかに★★★

●川名ますみ
通るたび明るくなりぬ薄紅葉★★★
秋風にそがれて来たる雲一枚★★★

秋雲の流るる手前に干し物(原句)
干し物の向こう流るる秋の雲★★★★(正子添削)
清潔に洗われて洗濯物に干されている。その空の向こうを白い秋の雲が流れている。生活のなかにも、こんなに、きれいで、清潔な景色が、とても幸せに思える。(高橋正子)

10月30日(4名)

●小口泰與
紅葉や雲駆け抜ける湖の面★★★
山に見て湖畔に見しや七竈(原句)
山に見し湖畔にも見し七竈★★★★(正子添削)
柿の木のどんと控えし大庇★★★

●廣田洋一
鷹の子や首に縄つけ小屋の中★★★
若鷹や鷹匠の手に羽搏けり★★★
鷹一羽海を見つめて動かざり★★★★

●谷口博望 (満天星)
七五三カメラ目線の晴れ姿★★★
オバマ来て菊人形は千羽鶴★★★
尉鶲広島城の赤い実へ★★★★

●桑本栄太郎
淡き色香りに乗せて藤袴★★★
坂道の風になぶられ萩は実に★★★★
雅やかに咲いていた萩も葉はすっかり黄葉し、実をつけるようになった。坂道を吹き上る風に枝がなぶられ、哀しい姿であるが、それに却って心動かされる。(高橋正子)

逝く秋や何と哀しき空の青★★★

10月29日(4名)

●谷口博望(満天星)
芙蓉の実次々種の御開帳★★★
芙蓉の実飛行機雲のくづれゆく★★★★
早々と日陰を照らす石蕗の花★★★

●小口泰與
ひつじ田や羽音鋭き群雀★★★★
刈田にひつじが青々と伸びるころ。田に群れる雀が一斉に飛び立つと、空気を切る羽音が鋭く響く。冬の気配が忍び寄る。(高橋正子)

逆光を浴びし尾花や夕浅間★★★
三ヶ月家の灯付かず花木槿★★★

●廣田洋一
楓の木半分程の紅葉なり★★★
手に取りし紅葉の名前尋ねけり★★★
桜の木紅葉途中の葉を散らす★★★★

●桑本栄太郎
あはあはと嗤う鴉や秋寒し★★★
冷まじくありて集えり消防車★★★★
家居の身に色なき風の穿ちゆく★★★

10月28日(4名)

●谷口博望(満天星)
枯れ果てて水に帰りぬ破蓮★★★★
敗蓮や色即是空見る如し★★★
敗蓮や平和の鐘の異邦人★★★

●小口泰與
晩菊や田居へ山風吹き注ぎ★★★
新米や茶碗も箸も真新し★★★★
松手入れ終り鴉の鋭声かな★★★

●廣田洋一
銀杏を拾う手袋匂いけり★★★★
銀杏の実手で割る音の高きかな★★★
銀杏の拾うに任せ大学内★★★

●桑本栄太郎
秋暁の遠きむかしの夢に哭く★★★
間引き菜を漬けて妻行く美容院★★★★
間引き菜のやわらかな美味しさは、この季節を待って味わえるもの。その美味しさを漬物にする。美容院にゆく日も、厨事には怠りない主婦のしたたかさが読める。(高橋正子)

枕頭に戦記上下の夜長かな★★★

10月27日(5名)

●谷口博望(満天星)
剛直に枝に食い付く花梨の実★★★★
花梨の実片意地通す天邪鬼★★★
まん丸になれぬ人生花梨の実★★★

●小口泰與
山襞を雲影駆けるななかまど★★★
山霧の仁王立ちなる疾風かな★★★
白雲のすいすい駆ける草紅葉★★★★

●河野啓一
丘一つ埋めて桜のうす紅葉★★★
箕面山望めば青しうろこ雲★★★
木の実落つ音聞こえ来る山路かな★★★★

●廣田洋一
爽涼や日光街道杉並木★★★
黄葉せる葉の透ける先青き空★★★

下野の刈田続けり空青し(原句)
下野に苅田続けり空の青★★★★(正子添削)
下野はちょうど、関東平野のど真ん中の栃木県南部になろうか。すっかり取入れが終わり刈田となった田が広々と広がり、刈田の上の空は澄み切って原初のような空として広がる。下野の刈田の風景に見る深み。(高橋正子)

●桑本栄太郎
回廊の二階通路の紅葉かな★★★★
見上げれば十字架峰に秋の山★★★
青空に照葉となりぬ庭の木々★★★

10月26日(5名)

●谷口博望(満天星)
行く秋やアサギマダラが手のひらへ★★★
ざわざわとアメリカ楓の枯葉散る★★★★
まだ青き黄烏瓜や藪の中★★★

●小口泰與
渋峠霧茫茫と奔りけり★★★★
山霧の非天の如くバスを飲む★★★
吹き募る峠の濃霧仁王立ち★★★

●古田敬二
家中の窓開け入れる秋の風★★★
新芋で鬼饅頭や忌を修す★★★

初鴨を待ちて野の池空映す★★★★
今年も鴨が来る季節になった。いつも鴨が来る池は秋空を映して、そこに鴨を浮かばせたいと、鴨の飛来を心待ちにしている。待っているのは実は作者でもあるのだ。美しい季節を感じさせる。(高橋正子)

●河野啓一
レーの越し秋深みゆく朝日かな
列島の天気図高く澄み渡りゆく★★★
庭隅のサフラン淡く風に揺れ★★★

●桑本栄太郎
青空の視界まつたき金木犀★★★
コスモスの彩となりけり休耕田★★★★
中州なる風の尾花や桂川★★★

10月25日(6名)

●谷口博望(満天星)
次々と潮引く方へ鯔の跳ぶ★★★
ねぐらへと烏の帰る秋の暮★★★
いち早く紅葉かつ散る花水木★★★★

●多田有花
秋深し忠臣蔵の駅に立つ★★★★
爽やかに再び描かんと思う★★★
ひいやりとしてフリースを出しぬ★★★

●小口泰與
睡蓮の葉のもみずるや風の沼★★★
山霧へ車もろとも吸い込まれ★★★★
仁王立ち霧のた走る渋峠★★★

●廣田洋一
日の暮れてことこと煮込む鰤大根★★★
友来たる酒を酌まんと鰤大根★★★
鰤刺身わさびの青く光りおり★★★★

●河野啓一
街の田も苅田となりて静寂に★★★★
野の苅田は、照り曇りに静かなたたずまいで広がる。街中に残された田も街の音をよそに、「静寂」であるという発見。どこにあろうと、苅田そのもが静かなのだ。(高橋正子)

秋深し千里丘陵並木道★★★
通販のバラ苗植うる場所もなし★★★

●桑本栄太郎
青々と穭田風になびきけり★★★★
コスモスの風に彩なす休耕田★★★
ふんぷんと路地の舞妓や金木犀★★★

10月24日(5名)

●小口泰與
黒雲の下を濃霧の奔りけり★★★★
白線に沿わす車や霧襖★★★
松茸も管の通過や我が髪膚★★★

●廣田洋一
水鳥や撒かれたる餌に飛びつきぬ★★★
水鳥の水脈に押される落葉かな★★★★
水鳥や二羽進み行く日のたまり★★★

●満天星
都鳥昔男の恋心★★★
都鳥恋しき人の紅の色★★★
恋しきや紅美しき都鳥★★★★

●桑本栄太郎
淀川のさざ波風に秋の声★★★
ビル群の大阪駅や秋日さす★★★
黒々と焼かれ田面の刈田かな★★★★

●河野啓一
百日紅散り初めてなお空に映え★★★
草摘んだ跡に止まり来アカトンボ★★★

滝道を行き交う人も秋深し★★★★
「人も秋深し」は、鋭い。滝への道は、夏は涼を求めて行き交ったであろうが、その滝への道も今は木々が紅葉し、落葉もそろそろ始まる。行き交う人も深まる秋の一景となっている。(高橋正子)

10月23日(4名)

●小口泰與
コスモスや風に抗う鳶一羽★★★
白樺の一段と映ゆ秋の湖★★★

高原の雲脚迅きななかまど(原句)
高原の雲脚迅しななかまど★★★★(正子添削)

●河野啓一
杜鵑草が咲いていたよと妻の声★★★
色薄き庭のいろどり杜鵑草★★★★
賑やかにまた寂しくて杜鵑草★★★

●廣田洋一
蜂一匹渡りて行きし杜鵑草★★★

白菊の並び咲きたる秀明菊(原句)
白き花並び咲きたる貴船菊★★★(正子添削)
※下五を五音にしました。

十月桜小さき灯り点すごと(原句)
十月桜小さき灯り点しけり★★★★(正子添削)

●桑本栄太郎
山崎の山粧いてサントリー★★★
赤き実の枝の揺れ居り色鳥来★★★
嬉々として青空裂きぬ朝の鵯★★★★
鵯は秋、木の実を啄んだり、花の蜜を吸うのに元気いっぱい。嬉々としている。鳴く声も鵙に劣らず、朝の青空を裂くような声。それも嬉々としているからよろしかろう。(高橋正子)

10月22日(5名)

●廣田洋一
朝寒しシャワーの温度一度上ぐ★★★★
朝寒し熱きトースト急ぎ取る★★★
朝寒やリュック背負いて温かし★★★

●小口泰與
蔦紅葉雨脚早くなりにける★★★★
ななかまど急ぎし雲の峠越ゆ★★★
上野(こうずけ)の風荒荒しきや牧閉ざす★★★

●谷口博望(満天星)
秋の空鈴懸の実に風が吹く★★★
秋の空鈴懸の実は歌となる★★★

秋の空鈴懸の実の歌を聴く★★★★
空を見上げると、鈴懸の丸い実がいくつも枝に垂れた入るのが目に入る。秋空を吹く風に、鈴懸の実は歌を歌っているような可愛さだ。しばらく鈴懸の実の歌に耳を澄まそう。(高橋正子)

●桑本栄太郎
山崎の山粧えりサントリー★★★
交叉せる鉄路光りて泡立草★★★★
ふるさとの地震の報らせ秋愁う★★★

●古田敬二
ゆったりと秋旅薄暮の露天風呂★★★
陸奥の紅葉の早き旅にいる★★★★
くねくねと磐梯山道薄紅葉★★★

10月21日(4名)

●小口泰與
啄木鳥や山のホテルの芝の径★★★★
木犀や川風を浴む露天の湯★★★
コスモスの背丈定まり天が下★★★

●廣田洋一
守衛さん落葉掃き寄す庭箒★★★
並木道重なる落葉両側に★★★★
木間よりひらりこぼれる落葉かな★★★

●桑本栄太郎
モノレールの遥か眼下や泡立草★★★
秋潮の河口に寄する波頭かな★★★★
秋潮が河口に寄せる波頭を見ていると、それは、永遠に続く動きに思われる。「秋潮」の色はすなわち空の色でもあって、秋思につながる景色と思える。(高橋正子)

淀川の橋の数多や秋の江★★★

●満天星
どの家も金木犀の匂う町★★★
オリーブの実を啄める鳩の群れ★★★
渡鴨初お目見えの被爆川★★★★

●自由な投句箱/10月11日~20日●


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今週の秀句/10月11日~20日


[10月20日]

★日の温み残る冬瓜胸に受く/佃 康水
畑から採ってきたばかりであろう。大きな冬瓜をいただいた。その大きさに、胸で抱くように受け取ると、生ぬるい日の温みが残っている。「胸に受く」に、季節がより強く、また作者の人柄の暖かさが感じられる。(高橋正子)

[10月19日]

★秋耕を終えし畑や静まれり/廣田洋一
歳時記では、「秋耕」は、稲を刈ったあと鋤き起こしたり、裏作の麦や菜種を播くために耕すことをいう。澄んだ大気のもとに、耕された畑は、土の色も息遣いもしずかである。次の農作業を待って「静まれり」である。(高橋正子)

[10月18日]

★露寒し陸奥の旅寝の目覚めかな/古田敬二
ご自宅のある名古屋から陸奥への旅。旅に目覚めて、朝露に寒さを覚える。みちのくの秋は冬へと足早に進む。その実感。(高橋正子)

[10月17日]

★水鳥や狭き川辺に巣を構え/廣田洋一
偶然に、水鳥が狭い川辺に巣を構えているのを見つけた驚きと水鳥への愛おしさ。思いもかけないところで、命あるものは次の命を育て、命をつないでいる。(高橋正子)

[10月16日]

★水切りの敢無く没し水澄めり/小口泰與
水切り(みずきり)は水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる 遊び。昔は、水切りも上手だったであろうが、体がぎこちなくなっているのだろう、投げた石が敢え無く沈み、そのあとは澄んだ水面が広がる。その心境。(高橋正子)

[10月15日]

★赤き実のぱらぱら降りて小鳥来る/桑本栄太郎
赤い実がばぱらぱら降ってくるのは、小鳥のせい。大陸から渡って来た小鳥が木の実を啄む。赤い木の実がこぼれる。「小鳥」と「赤き実」はかわいらしい。(高橋正子)

[10月14日]

★川風をしきりに誘い萩は実に/桑本栄太郎
いい風景だ。「川風」に揺れ、「萩は実に」なるのだ。中七の「しきりに誘い」は作者の主情だが、それがいい。(高橋信之)

[10月13日]

★いろいろの木の実を拾う山散歩/谷口博望(満天星)
トレッキングとまではゆかなくても、秋の小山を散歩するのも楽しいことだ。荷物ももたない手持無沙汰に、落ちているいろんな木の実を拾ってみたくなる。遊び心。(高橋正子)

[10月12日]

★撮り溜むる写真の数や秋の星/小口泰與
撮り溜めた写真は、写真愛好家の泰與さんならば、かなりの量になっていると想像できる。夜長の灯の下にそれらを取り出して眺めたり、吟味したりする。灯の下で一枚一枚の写真の光沢が、秋の綺羅星と重なって思える。(高橋正子)

[10月11日]

★浄土へと釣瓶落としや当麻寺/河野啓一
当麻寺の向こうに釣瓶落としの日が沈む。その光景の静かな美しさは向こうの浄土の存在を思わせる。当麻寺の現在信仰の中心となっているのは、西方極楽浄土の様子を表した「当麻曼荼羅」。そのことを思えば、浄土へと日が沈むと強く実感されたのであろう。(高橋正子)

10月11日~20日


10月20日(8名)

●満天星
二の丸の松手入して凛凛と(信之添削)★★★★
先陣の金黒羽白広島城★★★
番なる金黒羽白一番乗り★★★

●小口泰與
印伝の鼻緒の草履秋祭★★★
秋風や鴉寝に行く里の寺★★★
手を上げて歩道渡るや赤のまま★★★★

●廣田洋一
銀杏黄葉高々伸びて空青し★★★★
草の実やまあるく赤く光りをり★★★
草の実や招き寄せたる小鳥かな★★★

●古田敬二
真四角に白が揺れてるそばの花★★★
新月や子を訪ね来て酒を酌む★★★
一人ずつ客減り終着十三夜★★★★

●佃 康水
金木犀香を褒めてゆく宅急便★★★
日の温み残る冬瓜胸に受く★★★★
畑から採ってきたばかりであろう。大きな冬瓜をいただいた。その大きさに、胸で抱くように受け取ると、生ぬるい日の温みが残っている。「胸に受く」に、季節がより強く、また作者の人柄の暖かさが感じられる。(高橋正子)

谷深く流れのひびく櫨紅葉★★★

●上島祥子
木曽川を上る小舟や秋光★★★
秋小寒社は遠き森の中★★★
あさぎまだら呼べば空へと遠ざかり★★★★

●河野啓一
朝日浴び今日も元気な百日草★★★
赤と黄となお咲き続く百日草★★★
すべりひゆ淡き日のなか蔓伸ばし★★★★

●桑本栄太郎
青空を切り裂くように朝の鵙★★★
石榴熟れ今にも零れそうとなり★★★
秋蝶の黄なるが縺れ坂の風★★★★

10月19日(6名)

●小口泰與
稲刈や浅間山(あさま)の形(なり)の定かなる★★★★
あけぼのの背丈定まる秋桜★★★
秋暁の噴煙起つや鳶の声★★★

●谷口博望(満天星)
原生林抜ければ秋の潮匂う★★★★
鶺鴒のちよこちよこ前を浜の道★★★
雨模様秋の大鷭堀の中★★★

●廣田洋一
秋耕を終えし畑や静まれり★★★★
歳時記では、「秋耕」は、稲を刈ったあと鋤き起こしたり、裏作の麦や菜種を播くために耕すことをいう。澄んだ大気のもとに、耕された畑は、土の色も息遣いもしずかである。次の農作業を待って「静まれり」である。(高橋正子)

体力を測るごと飛ぶ秋の蝶★★★
並木道落葉ひらひら川に入る★★★

●桑本栄太郎
青空のはるか鞍馬や秋の声★★★
祇園抜け建仁寺へと秋の色★★★★
鴨川の堰の耀き秋澄める★★★

●川名ますみ
文庫本めくれぬほどの秋の風★★★
山茶花のつぼみ尖りて青々と★★★★
秋風に削がれし雲の青天に★★★

●古田敬二
坪庭に鈴虫啼けり旅の宿★★★
湯桶から湯を溢れさせ秋の旅★★★★
萩咲けり独り占めしている露天風呂★★★

10月18日(7名)

●小口泰與
川沿いの鄙の湯宿や花芙蓉★★★★
上野(こうずけ)の砦の名残秋桜★★★
荒れ畑の三年過ぎしうすら寒★★★

●廣田洋一
生簀にて鰤に出世すハマチかな★★★
黄の線を一本残し鰤光る★★★★
この鰤は養殖なりと鮨屋の言ひ★★★

●河野啓一
秋の野を染めて検査値良かりけり★★★
病院へ往復感謝の秋の午後★★★
柿の実を低く照らして大西日★★★★

●多田有花
新米をとりにおいでと電話あり★★★★
敗荷にぽつりぽつりと午後の雨★★★
獅子舞にのぼりが揺れる秋祭り★★★

●谷口博望(満天星)
舞妓はんの如上臈ほととぎす★★★
海岸に打ち上げられぬ秋の烏賊★★★
ころころと木通の硬き嘴の痕★★★★

●桑本栄太郎
入日落つ秋の野山や摂津峡★★★
ハイウェイに明かり点るや秋しぐれ★★★
夕闇の灯かりとなりぬ泡立草★★★★」

●古田敬二
秋の雨蹴立てて離陸旅空へ★★★
露寒し陸奥旅の目覚めかな(原句)
露寒し陸奥の旅寝の目覚めかな★★★★(正子添削)
ご自宅のある名古屋から陸奥への旅。旅に目覚めて、朝露に寒さを覚える。みちのくの秋は冬へと足早に進む。その実感。(高橋正子)

名刹のひさし落ちる秋の雨(原句)
名刹のひさしを落ちる秋の雨★★★(正子添削)

10月17日(4名)

●谷口博望 (満天星)
ジンの香の微かに匂う辛夷の実★★★★
辛夷の実真っ赤に熟れて露わなる★★★
池の鯉並んで来たり杜鵑草★★★

●小口泰與
天霧らう赤城の嶺嶺や木守柿★★★
金木犀散りくる香り浴みにける(原句)
金木犀の散りくる香り浴みにける★★★(正子添削)
枡酒の木の香を含み新走★★★

●廣田洋一
鴨の群二羽連れ立ちてこぼれ行く★★★
水鳥の水尾の立たせる小さき波★★★

水鳥や狭き川辺に巣を構え★★★★
偶然に、水鳥が狭い川辺に巣を構えているのを見つけた驚きと水鳥への愛おしさ。思いもかけないところで、命あるものは次の命を育て、命をつないでいる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
稲株の白く列為し刈田晴れ★★★★
カップルの鴨川べりや秋の色★★★
大橋のはるか鞍馬や秋澄める★★★

10月16日(4名)

●谷口博望 (満天星)
藤の実の垂るるベンチで一句かな★★★
瀬戸遥か金銀揺るる花薄★★★★
わが半生清濁飲めず秋薊★★★

●小口泰與
コスモスのあふるる丘や鳥の声★★★
水切りの敢無く没し水澄めり★★★★
水切り(みずきり)は水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる 遊び。昔は、水切りも上手だったであろうが、体がぎこちなくなっているのだろう、投げた石が敢え無く沈み、そのあとは澄んだ水面が広がる。その心境。(高橋正子)

赤城山より風の煽つや金木犀★★★

●廣田洋一
声揃え論語の素読秋の風★★★

小屋の前薪を積み上げ冬支度(原句)
小屋の前薪積み上げ冬支度★★★★(正子添削)

鯉ほどに大きくなりし鮒の秋★★★

●桑本栄太郎
川風の土手に灯かりや泡立草★★★
錦木の緋色哀しき入日かな★★★
祇園抜け建仁寺へと新松子★★★★

10月15日(5名)

●小口泰與
見晴るかす山野錦や赤蜻蛉★★★
曼殊沙華茎のみ残るあわれさよ★★★
金木犀逢魔が時の温泉街★★★★

●廣田洋一
庭の土篩に掛けて冬支度★★★★
街路樹に電球飾る冬支度★★★
新居の建築急ぐ冬支度★★★

●谷口博望 (満天星)
恨みごと忘るるべしや貴船菊★★★
筧打つ栗の実落ちて沼の中★★★
朝刊を取れば鵯鳴き騒々し★★★★

●多田有花
いくすじも煙があがる秋の野に★★★
晩秋やこんがりバナナホットケーキ★★★
ストレッチして心地よき秋晴れに★★★★

●桑本栄太郎
朝鵙の高き梢や里の森★★★
赤き実のぱらぱら降りて小鳥来る★★★★
赤い実がばぱらぱら降ってくるのは、小鳥のせい。大陸から渡って来た小鳥が木の実を啄む。赤い木の実がこぼれる。「小鳥」と「赤き実」はかわいらしい。(高橋正子)

金色の穂風となりぬ猫じやらし★★★

10月14日(4名)

●満天星
薄雲のベールにほのと後の月★★★
晴れ晴れと赤ヘル通り十三夜★★★
天心へ消え入りそうな後の月★★★★

●河野啓一
朝寒やセーター出して重ね着し★★★
山裾に真っ赤な桜紅葉かな★★★★
小道行く娘温そうなストールを★★★

●小口泰與
これはこれは志賀の紅葉賑わしき★★★
糠雨や道のべの木は金木犀★★★★
爺ばばの勇みて山へ五倍子採取★★★

●桑本栄太郎
竹林の節に途切れし蔦紅葉★★★
お転婆の証や一人いのこずち★★★
川風をしきりに誘い萩は実に★★★★
いい風景だ。「川風」に揺れ、「萩は実に」なるのだ。中七の「しきりに誘い」は作者の主情だが、それがいい。(高橋信之)

10月13日(5名)

●河野啓一
友の呉れし菊苗挿せし頃のこと★★★
背の高き小菊の苗を購いぬ★★★
菊の香に葦簀囲いの公民館★★★★

●谷口博望(満天星)
蘭草のアサギマダラと遊びけり★★★
いろいろの木の実を拾う山散歩★★★★
トレッキングとまではゆかなくても、秋の小山を散歩するのも楽しいことだ。荷物ももたない手持無沙汰に、落ちているいろんな木の実を拾ってみたくなる。遊び心。(高橋正子)

早々とスズランの木の紅葉す★★★

●小口泰與
雨後の朝逆光浴びる稲田かな★★★
今朝の秋水面の蒼の深きこと★★★★
牧とじて山のあわひに夕日かな★★★

●廣田洋一
烏瓜垂れし垣根の無くなりぬ★★★
烏瓜緑の中に一つ浮く★★★★
青き実の立て縞消えて烏瓜★★★

●桑本栄太郎
淀川の向こうは槇島秋澄める★★★★
裏返る芋の葉白き日差しかな★★★
雲つどい何処にあらん後の月★★★

10月12日(6名)

●谷口博望(満天星)
森のカフェ屋根に立ちたる泡立ち草★★★
帚木の色づき初めぬカスケード★★★★
藤袴蝶の如くに鼻つけて★★★

●小口泰與
撮り溜むる写真の数や秋の星★★★★
撮り溜めた写真は、写真愛好家の泰與さんならば、かなりの量になっていると想像できる。夜長の灯の下にそれらを取り出して眺めたり、吟味したりする。灯の下で一枚一枚の写真の光沢が、秋の綺羅星と重なって思える。(高橋正子)

赤城山(あかぎ)の風を孕みたる稲穂かな★★★
山巓の一寸見ゆるや木守柿★★★

●廣田洋一
朝焼けや初冠雪の富士染める★★★★
秋朝焼け雲の隙間を染め出せり★★★
雨上がり薄き朝焼け秋の空★★★

●桑本栄太郎
秋天の土塀高きや建仁寺★★★★
駅前のビルの間や稲穂垂る★★★
暗くとも己が光や泡立草★★★

●河野啓一
友の呉れし菊苗挿せし頃のこと★★★
背の高き小菊の苗を購いぬ★★★
菊の香に葦簀囲いの公民館★★★★

10月11日(6名)

●上島祥子
半月の夜待ちきれずあらわるる★★★
バケツ稲小さな実りに期待大★★★
朝霧の晴れる気配や鳥の声★★★★

●河野啓一
デイの帰途釣瓶落としの日暮かな★★★
庭帽子脱ぐ間もなくて釣瓶落つ★★★

浄土へと釣瓶落としや当麻寺★★★★
当麻寺の向こうに釣瓶落としの日が沈む。その光景の静かな美しさは向こうの浄土の存在を思わせる。当麻寺の現在信仰の中心となっているのは、西方極楽浄土の様子を表した「当麻曼荼羅」。そのことを思えば、浄土へと日が沈むと強く実感されたのであろう。(高橋正子)

●小口泰與
コスモスの茎に雨粒琳瑯と★★★★
虫の音や小犬は我に歩を合わせ★★★
あなにやし今朝の利根川水澄めり★★★

●廣田洋一
丹波の友黒枝豆を送り来る★★★★
引っこ抜く子らの喚声落花生★★★
子育ては地中でなせり落花生★★★

●多田有花
<国立西洋美術館>
ヘラクレス像に秋陽のあたりおり★★★★
<上野東照宮>
十月の光燦燦金色殿★★★
西郷像より秋のスカイツリーを望む★★★

●桑本栄太郎
秋驟雨夜半の音に目覚めけり★★★
せせらぎの怒涛となりぬ野分川★★★★
友垣の訃報のありぬ秋の暮れ★★★

●自由な投句箱/10月1日~10日●


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今日の秀句/10月1日~10日


[10月10日]

★バスを待つ間にも流るる秋の雲/桑本栄太郎
秋の雲は移ろいやすい。その形、その動き。バスを待って、なんとなく見上げる空に、雲は流れていく。縹渺と湧き、軽やかに流れる秋の雲に人は似たような思いをもつ。(高橋正子)

[10月9日]

★いつまでも帰燕の空や広島城/谷口博望 (満天星)
広島城の空にこれから南へ帰ろうとする燕が集まり飛んでいる。仲間が集まるまでは、広島城の空にいるのだろうか。燕を見送るというのはなにか寂しい。「いつまでも」に燕への愛着が感じられる。(高橋正子)

[10月8日]

★ゆりの木の黄葉し初めりバス通り/桑本栄太郎
黄葉し初めたゆりの木の並木があるバス通り。高木のゆりの木が黄葉のトンネルのようになって、絵画の中の風景のようだ。それを楽しむ作者。(高橋正子)

[10月7日]

★月見終え刈り取られたる尾花かな/廣田洋一
月を風情ゆたかにする尾花は、月見には欠かせない。月見までは尾花を刈り取らないでおく心意気。月見が終われば、きれいに刈り取って、さっぱりとさせる。月見の余韻のなかに刈り取られた草原が、清潔だ。(高橋正子)

[10月6日]

★D51の鉄橋駆ける秋高し/小口泰與
デゴイチの愛称で親しまれる蒸気機関車もすでに懐かしい存在になっているが、一部では今も観光などで活躍している。鉄橋を渡る蒸気機関車に、秋空はあくまでも高く、その雄姿を輝かせている。(高橋正子)

[10月5日]

★秋物をスーツケースへ旅支度/多田有花
季節の変わり目、違う土地への旅は着る物を考える。少し北への旅かもしれないが、秋物の洋服をスーツケースに詰めて、「秋の旅」に心が弾む。旅の楽しみは、準備や支度をするときから始まっている。(高橋正子)

[10月4日]

★柿の秋小さき実なれど育てよと/河野啓一
我々は柿の木にずっと親しんできた。小さい実だからこそ育ち熟れるのを応援したくなる。柿の木と啓一さんの対話が聞こえそうだ。熟れた柿の甘さは、日本の秋の、ふるさとを思わす捨てがたい味覚。(高橋正子)

[10月3日]

★朝赤城山(あかぎ)よく見え畦の赤蜻蛉/小口泰與
日々見ている赤城山が、今朝は空気が澄んでとくに「よく見える」。畦には赤蜻蛉が飛び、澄明な季節が詠まれて、読む者に、すがすがしさをくれる。(高橋正子)

[10月2日]

★秋蝶の羽ばたき明るし寺の庭/上島祥子
寺の静かな庭、地味になりがちな寺の庭に秋蝶が羽ばたいている。黄蝶であろうか。その愛らしい姿が寺の庭を明るくしている。静かななかの明るさがうれしい。(高橋正子)

[10月1日]

★金木犀香り放ちて風を染め/河野啓一
金木犀の香りが、風にのって漂ってくる。金木犀の香りを吸えば、条件反射のように、小さい黄色いの十字の花がすぐに思い浮かぶ。香りが風を染めている。(高橋正子)

10月1日~10日

10月10日(5名)

●満天星
磯鴫の葦の川辺を遠眼鏡★★★★
黐の実に群れたる鳥の喧しき★★★
いろいろに鵯の鳴く声園の中★★★

●小口泰與
溢れ出づ蜻蛉の羽に朝日かな★★★★
湿原の足のあとさき赤蜻蛉★★★
松茸の案内墨痕淋漓なり★★★

●廣田洋一
体育の日一発勝負の句会かな★★★
踏板の埃を払う体育の日★★★
菊膾彩り愛でつ酒を酌む★★★★

●河野啓一
朝空を埋め尽くしてや鱗雲★★★★
うろこ雲綿菓子のごと掻き寄せたい★★★
鱗雲透かし差し込む日の温み★★★

●桑本栄太郎
野の花や畦に埋もり路線バス★★★

バスを待つ間にも流れし秋の雲(原句)
バスを待つ間にも流るる秋の雲★★★★(正子添削)秋の雲は移ろいやすい。その形、その動き。バスを待って、なんとなく見上げる空に、雲は流れていく。縹渺と湧き、軽やかに流れる秋の雲に人は似たような思いをもつ。(高橋正子)

雲の端の嶺に黄金や秋入日★★★

10月9日(4名)

●小口泰與
芋の露榛名山は靄に隠れけり★★★
榛名富士見上げる大地蕎麦の花★★★
見上げたる榛名山は定か蕎麦の花★★★★

●廣田洋一
旧友の開店祝い温め酒★★★★
温め酒友の苦労を労りつ★★★
初七日の夜をひとりの温め酒★★★

●谷口博望 (満天星)
いつまでも帰燕の空や広島城★★★★
広島城の空にこれから南へ帰ろうとする燕が集まり飛んでいる。仲間が集まるまでは、広島城の空にいるのだろうか。燕を見送るというのはなにか寂しい。「いつまでも」に燕への愛着が感じられる。(高橋正子)

団栗を拾わば上で川鵜鳴く★★★
異な臭い銀杏落ちて朽ちにけり★★★

●桑本栄太郎
朴の葉の白き葉裏や天高し★★★
白壁の土塀のありぬ柿の里★★★
夕鵙の雑木林に入日かな★★★★

10月8日(2名)

●小口泰與
濁酒や地声の太き老猊下★★★
新妻の姉さん被り秋祭★★★
ひと雨をしおに連合い障子貼る(原句)
ひと雨をしおに妻が障子貼る★★★★(正子添削)

●桑本栄太郎
ともがらの訃報のありぬ辛夷の実★★★

ゆりの木の黄葉初め居りバス通り(原句)
ゆりの木の黄葉し初めりバス通り★★★★(正子添削)
黄葉し初めたゆりの木の並木があるバス通り。高木のゆりの木が黄葉のトンネルのようになって、絵画の中の風景のようだ。それを楽しむ作者。(高橋正子)

コスモスの彼方に白き民家かな★★★

10月7日(5名)

●小口泰與
青空の赤城山榛名山や鉦叩★★★★
コスモスやリボンの舞の新体操★★★
零れたる新酒を顔へ妻の笑み★★★

●多田有花
真っ白な茸が森に点々と★★★★
秋天の青さへ伸びる東京タワー★★★
都庁より秋の東京大展望★★★

●河野啓一
秋耕やあやめ大株掘り上げる★★★★
秋蝶の日々草に憩いいて★★★
秋の日の温み木々の葉透かし来て★★★

●廣田洋一
月見終え刈り取られたる尾花かな★★★★
月を風情ゆたかにする尾花は、月見には欠かせない。月見までは尾花を刈り取らないでおく心意気。月見が終われば、きれいに刈り取って、さっぱりとさせる。月見の余韻のなかに刈り取られた草原が、清潔だ。(高橋正子)

道の端一際高き尾花かな★★★
風に揺れ銀波となりし尾花かな★★★

●桑本栄太郎
大根蒔く腰の屈みや頬被り★★★
青き香の泥のなかより牛蒡引く★★★★
定家碑の小倉山荘秋入日★★★

10月6日(5名)

●小口泰與
D51の鉄橋駆ける秋高し★★★★
デゴイチの愛称で親しまれる蒸気機関車もすでに懐かしい存在になっているが、一部では今も観光などで活躍している。鉄橋を渡る蒸気機関車に、秋空はあくまでも高く、その雄姿を輝かせている。(高橋正子)

干柿や常に鴉の電線に★★★
山道を単車疾走花薄★★★

●河野啓一
秋茄子の長く細きを届けられ★★★★
パンを焼くイースト菌も秋日和★★★
野分去る白雲ふわとちぎれいて★★★

●廣田洋一
野分過ぎ空に群れおる鰯雲★★★★
道端に蜜柑転がる野分後★★★
金木犀過ぎれば聞こゆ黄の匂い★★★

●桑本栄太郎
山城のような鹿垣里の峰★★★
少しひげありて鄙めく衣被★★★★
徒食なる閑居といえど秋渇き★★★

●谷口博望(満天星)
ぽつかりと色づく雲の秋の暮★★★
野分あと三日月高く上りけり★★★★
ヴィオロンを奏でるごとく虫の声★★★

10月5日(6名)

●小口泰與
まのあたり天降(あも)りし畦の曼珠沙華★★★
老いてこそ恃むは妻ぞ秋の空★★★
歌舞伎座を出でて銀座の夜長かな★★★★

●廣田洋一
石焼芋黄金の湯気のほかほかと★★★★
焼芋や禁じられたる落葉焚き★★★
焼芋や電子レンジで焼く時代★★★

●河野啓一
髪刈って風呂に入って秋風に★★★★
百日紅愛らしきかな咲き続け★★★
雨上がる野分は去りぬ日本海★★★

●多田有花
秋物をスーツケースへ旅支度★★★★
季節の変わり目、違う土地への旅は着る物を考える。少し北への旅かもしれないが、秋物の洋服をスーツケースに詰めて、「秋の旅」に心が弾む。旅の楽しみは、準備や支度をするときから始まっている。(高橋正子)

秋の汗日課の山をひとめぐり★★★
言葉を交わす萩の咲く頂で★★★

●桑本栄太郎
洛北の里にいろづく柿の村★★★
落柿舎に蓑笠ありぬ捨案山子★★★
添水鳴る庭巡りおり天竜寺★★★★

●谷口博望 (満天星)
園児行く動物園の黄鶺鴒★★★
台風過宵の明星雲間より★★★★
台風過川面に揺るるビル明かり★★★

10月4日(4名)

●小口泰與
見晴るかす紅葉の森和みたり★★★★
二千キロ翔る秋蝶居りにける★★★
鬼灯や落暉の雲の帰り道★★★

●河野啓一
柿の秋田舎暮らしをふと思い★★★
柿の秋小さき実なれど育てよと★★★★
我々は柿の木にずっと親しんできた。小さい実だからこそ育ち熟れるのを応援したくなる。柿の木と啓一さんの対話が聞こえそうだ。熟れた柿の甘さは、日本の秋の、ふるさとを思わす捨てがたい味覚。(高橋正子)

法隆寺近きにありて柿の村★★★

●谷口博望 (満天星)
晩秋やアフリカを聞く象の耳★★★
晩秋の犀悠々と長寿なり★★★★
タラの実や黒犀長寿世界一★★★

●桑本栄太郎
鴨川の堰水怒涛や秋の声★★★★
実椿の脇につぼみも控えけり★★★
一しきり畦に残さる彼岸花★★★

10月3日(5名)

●小口泰與
杉の実や幼きときは餓鬼大将★★★
朝赤城山(あかぎ)よく見え畦の赤蜻蛉★★★★
日々見ている赤城山が、今朝は空気が澄んでとくに「よく見える」。畦には赤蜻蛉が飛び、澄明な季節が詠まれて、読む者に、すがすがしさをくれる。(高橋正子)

秋蝉や山を越え来し風と雲★★★

●谷口博望(満天星)
河口より南へ渡る鵯の群★★★★
遠眼鏡初鵙かわい葦の原★★★
大干潟渚を歩く鴫一羽★★★

●廣田洋一
小判鮫身を尽くしてぞ共に生く★★★
ハイジャンプ海豚の鳴らす鐘の音や★★★★
イルカガールイルカと共に芸磨く★★★

●河野啓一
秋暑し朝の挨拶変わらずに★★★★
ちらほらと鄙の棚田の稲架の影★★★
車止め路傍の薄手折り来ぬ★★★

●桑本栄太郎
戸袋に転がるように虫の声★★★
鵯のちょんちょん跳ねて飛びゆけり★★★
外つ人の祇園にあふれ秋暑し★★★★

10月2日(5名)

●谷口博望(満天星)
曼珠沙華サダコの鶴が天空へ★★★
原爆で歪む九輪や曼珠沙華★★★★
若人を見れば身にしむわが白髪★★★

●小口泰與
山影を映す榛名湖初紅葉★★★★
醜草へ露ならびける鳥の声★★★
露天湯や雨にこぼるる葛の花★★★

●河野啓一
十月や月遅れたる墓参かな★★★
秋色の山懐の祖霊かな★★★★
ゆらゆらと実も葉も揺れて柿の秋★★★

●桑本栄太郎
秋草を壺に投げ入れ野の風を★★★★
さお竹の軒端にありぬ柿の村★★★
手網(たも)を持つ親子田道や赤とんぼ★★★

●上島祥子
秋蝶の羽ばたき明るし寺の庭★★★★
寺の静かな庭、地味になりがちな寺の庭に秋蝶が羽ばたいている。黄蝶であろうか。その愛らしい姿が寺の庭を明るくしている。静かななかの明るさがうれしい。(高橋正子)

振る舞いの萩茶やかんになみなみと★★★
白萩の僅かに残る萩の寺★★★

10月1日(4名)

●小口泰與
新走柾目の通る桧枡★★★★
群椋のいっせい翔つ一羽漏れ★★★
赤城山(あかぎ)より朝の冷気や赤蜻蛉★★★

●河野啓一
金木犀香り放ちて風を染め★★★★
金木犀の香りが、風にのって漂ってくる。金木犀の香りを吸えば、条件反射のように、小さい黄色いの十字の花がすぐに思い浮かぶ。香りが風を染めている。(高橋正子)

老爺にもほのかな思い金木犀★★★
蜂の巣のかってありたる金木犀★★★

●多田有花
降りだした雨に金木犀匂う★★★★
打ち込みのピアノの音色秋の夕★★★
秋雨を集め濁り川となる★★★

●桑本栄太郎
テレビつけ秋の朝餉の孤食かな★★★
雨音のどこか微かにつづれさせ★★★★
十月の一日に三たび空模様★★★