2月10日(7名)
●小口泰與
春荒や遊技場より出づる顔★★★
鐘鳴りてぽとりと落ちし椿かな★★★
囀りや同胞の卓はや灯る★★★★
●谷口博望(満天星)
息こらし日を浴びながら福寿草★★★
烏瓜蝋梅の木に朽ちにけり★★★
春の風被爆柳を吹き抜けて★★★★
●多田有花
春浅き海辺の町へ蟹食べに★★★
残雪の峠を越えて但馬へと★★★
春寒の万年筆が吸うインク★★★★
●河野啓一
すみれ咲く門辺の鉢の小さくて★★★★
むらさきと黄の取り合わせかな菫草★★★
残雪を惜しむやひとは高みへと★★★
●桑本栄太郎
嶺を越え里から街へ春しぐれ★★★
むらさきの小枝潤めり春の雨★★★★
花落ちて乙女椿と知りにけり★★★
●佃 康水
日差し背に初の蓬を摘み飽かず★★★★
暖かい日差しを背なにして、今年初めての蓬摘み。やわらかい蓬を摘み始めると、摘むことがうれしくてどんどん摘んでします。草餅になる蓬だろうか。(高橋正子)
受験子の微妙と小さく言うて去り★★★
牧場へと顔上げ上る梅見坂★★★
●古田敬二
耕せば黒き光の畑となる★★★★(正子添削)
「耕す」が春の季語。元の句は切れが二つあるので添削した。耕すと、掘り返された黒々とした土が現れる。次第に強くなってきた春の光に塗れて、「黒き光の畑」となった。これからの種まきや植え付けが楽しみ。(高橋正子)
大根抜く地球の恵みの太さかな★★★
陽の温み溜めて芽吹きの気配あり★★★
2月9日(5名)
●小口泰與
淡雪や村に残りし芝居小屋★★★★
風光る鳥を宿せし岨の松★★★
くわえたるうぐいす餅よ高気圧★★★
●小川和子
森の樹の芽吹く音なす気配かな★★★
子等遊ぶ声の天へと日脚伸ぶ★★★★
玻璃ごしの立春の陽の眩しさよ★★★
●河野啓一
エキスポの跡地静かな春の雨★★★★
枯木立潤い得たる春の雨★★★
受験子の合格電話涙声★★★
●桑本栄太郎
春きざすサッカー遊びの父子かな★★★
真つ直ぐに満天星躑躅の新芽立つ★★★★
早春の若枝むらさき青空へ★★★
●川名ますみ
枕辺のひかりは借りし黄水仙★★★★
早春のひかりはことにうれしいものだ。暖かい春を待ちわびながら、早春に咲きだす黄水仙に心躍らせる人も多いだろう。枕辺に明るいひかりを撒く黄水仙に気持ちは外へ、ひかりへと向く(高橋正子)
梅の蘂花びらを越え空に在り★★★
待ちし日の長くて楽し梅咲く朝★★★
8日(5名)
●古田敬二
鉛筆を削り吟行へ春立つ日★★★
難問に挑戦の孫よ明日は春ぞ★★★
春立つ日子の書き込みの独和辞書★★★★
●小口泰與
春昼の野を駆け来る犬の顔★★★
単線や霞隠れの城の跡★★★
どどどどと大庇より雪消かな★★★★
●満天星
二月早ビル谷間より日の光★★★
遊園地光と風と金縷梅(まんさく)と★★★★
水無くて鴨の見えない潮干川★★★
●河野啓一
水温むえびや目高を掬う子ら★★★★
水が温んだのをいち早く知るのは、えびや目高だろう。次に知るのは子どもたちであろう。少し暖かくなると、子どもたちは、水辺でえびや目高を掬ってあそぶ。水温むよい季節が来た。(高橋正子)
梅が香に丘の辺よぎる風さやか★★★
花咲いて乙女椿と知れにけり★★★
●桑本栄太郎
触れ歩むうす紅色や丘の梅★★★★
木々の枝の静脈天(そら)へ春淡し★★★
雲晴れて遙かはだれや鞍馬山★★★
2月7日(7名)
●小口泰與
春の夜や和紙に墨痕黒黒と★★★★
露天湯の遅日の風や鳶の笛★★★
春の日や和菓子の店の淡淡し★★★
●古田敬二
池全面陽光返す春立つ日★★★★
わが畑の一番乗りはいぬふぐり★★★
空青く板黒塀超え咲く蝋梅★★★
●満天星
栴檀の天つつぬけて余寒かな★★★★
高木となった栴檀は冬は葉をすっかり落とし、花火のように散らばる実も大方落ちている。高々と聳える天は、筒抜けに晴れている。それだけに余寒が身に沁みる。(高橋正子)
土手の風低唱しつつ早春賦★★★
春浅し川辺を歩くかもめかな★★★
●多田有花
播磨灘沖に早春の光★★★
薪を割る音響きおり春の山★★★★
早春の肌寒さに、暖房もまだまだ必要。薪ストーブや、竈や風呂に使われる薪かもしれないが、春の山に薪を割る音が響く。人の生活が生活が感じられる春の山は、生き生きとしている。(高橋正子)
春の雪降りしきる中子ら遊ぶ★★★
●佃 康水
風硬き牧場跡の梅探る★★★
春霜の解けて遠出の靴濡らす★★★★
早朝岩国基地より
瀬戸海を軍機飛ぶ音冴え返る★★★
●桑本栄太郎
はらりほろ祇園小路の春の雪★★★
淡雪のほほに帽子に京町家★★★
木々の枝の水色天(そら)に春浅し★★★★
●河野啓一
春浅き梅見ドライブ大阪城★★★
大試験結果待つのみあと二日★★★
早春の里山二羽のこうのとり★★★★
2月6日(4名)
●小口泰與
長閑さや里の社へ杖つきて★★★★
下萌や榛名十峰朝日浴び★★★
薄氷や光の破片身の内へ★★★
●迫田和代
痛み萎え胸に広がる春の色★★★
野火走り黒い野に待つ春色を★★★★
野焼きの火が走り、野が黒々と焼き尽くされると、やがて、そこから草草のみどりの芽が伸びる。一面春の野となる。それを今から楽しみに待っている。いい時間を過ごされている。(高橋正子)
川流れ戦い終えた白魚や★★★
●桑本栄太郎
春寒の雲の奔るや嶺の上★★★★
梅が香や老人たちのフリスビー★★★
老梅や幹のしろきに凛と紅★★★
●多田有花
池多き東播磨や春はじめ★★★★
雨が少ない瀬戸内、なかでも讃岐平野や向いの東播磨もため池が多い。その池が陽光を跳ね返すと、春が来たと思う。(高橋正子)
春めきて瀬戸の夕暮れ桃色に★★★
梅が香の間に夕刻の気配★★★
2月5日(3名)
●小口泰與
昇る日に照らされいたり孕鹿★★★★
猫の恋画廊に長居して居りぬ★★★
春なれや野菜作らず魚飼わず★★★
●谷口博望(満天星)
立春のひかり眩しきかもめかな★★★★
風はまだまだ冷たくても、立春となれが、太陽の光はずいぶん強くなっている。白い鴎に光が当たり眩しいほど。やはり、春だ。(高橋正子)
立春の海を見たくて宇品港★★★
引揚げて七十年や梅ふふむ★★★
●桑本栄太郎
あおぞらを背に写しけり梅二月★★★
碧空にくれない放ち丘の梅★★★★(正子添削)
かさぶたのような古木や梅ひらく★★★
2月4日(4名)
●小口泰與
春近し窓を横切る鳥の影★★★★
雲雀の巣我のみ知りて他に告げず★★★
追悼句
春の鳥まてど朝日を見ずにして★★★
●谷口博望 (満天星)
尉鶲犬枇杷の実に集いきたり★★★
キラキラと照葉樹林冬うらら★★★★
冬麗の光芒差して瀬戸遙か★★★
●河野啓一
あたたかき光差し来て春立ちぬ★★★
花桃のま直ぐに挿され凛として★★★★
花桃は花を観賞するために作られたもので、庭木に植えられるようだが、新暦の雛祭りに飾られる桃の花は、真直ぐな茎に丸く濃い桃色の花蕾が付く。かわいいというより、寒さの中では凛とした感じを受けるのだろう。(高橋正子)
出水より鶴とび発つや春立つ日★★★
●高橋正子
買い物の袋に花菜一把あり★★★
立春の梢は高き空を持ち★★★★
とびとびの雪割一華の花あわし★★★
2月3日(4名)
●谷口博望 (満天星)
餌貰う鴨を見ている鴉かな★★★
冬天の皁莢の木に烏かな★★★
樟匂う原生林のひこばゆる★★★★
●小口泰與
水仙や徒渉かなわぬ岨の雨★★★★
虎落笛妻の機嫌はそっちのけ★★★
凍空や杉の切杭凹凸ぞ★★★
●桑本栄太郎
嶺の端の群青色や寒の果★★★★
嶺の端は、山の稜線あたり。見るものの気持ちによるもであろうが、寒が果てたと思うと、嶺の稜線が群青色にくっきりとしてくる。(高橋正子)
恵方向き黙の夕餉や節分に★★★
節分や鬼より怖き山の神★★★
●高橋正子
あかあかと灯ともし恵方巻売られ★★★
巻きずしの五彩めでたし節分会★★★
うす淡き花をかしげて節分草★★★★
2月2日(3名)
●小口泰與
湯豆腐や街灯けぶる雨ななめ★★★
木の卓にパソコン開き寒見舞い★★★
黒檜嶺も鍋割山も雪催い★★★★
「黒檜嶺」と「鍋割山」も民話を思い起こさせる山の名前。「雪催い」の今日は、民話の世界に紛れ込んだ気持ちになる。(高橋正子)
●桑本栄太郎
カタコトと線路交叉や日脚伸ぶ★★★
蝋梅の日射しを透きし垣根かな★★★
暮れ残る枝の影濃く日脚伸ぶ★★★★
●高橋正子
寒蜆採られし場所の水思い★★★★
まるまると太る鰯を塩焼きに★★★
菜の花を茹でてみどりの明るさよ★★★
2月1日(4名)
●小口泰與
夕映えや男が捌く寒の鯉★★★★
日を支う朝の浅間や霜の花★★★
冬ばらの風の中なる一花かな★★★
●桑本栄太郎
<四条大橋>
寒鯉の影や動かず鴨川に★★★
鴨川の堰水光り寒の晴★★★★
見はるかす遙か鞍馬のはだれかな★★★
●多田有花
白腹に会う春近き森の道★★★★
春近い森の道で、小鳥に出会うと何か楽しい気持ちになる。冬鳥の白腹が落葉を散らして餌をあさっていたのだろうか。(高橋正子)
エルゴノミクスマウスが届く春隣★★★
春近し夜具を一枚取り除く★★★
●高橋正子
春隣蔦より新芽噴き出せる★★★★
春隣る玻璃戸眩しく朝日受け★★★
春近しドアを開け閉めする音も★★★