自由な投句箱/2月21日~29日●


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※投句は、一日1回3句に限ります。
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今日の秀句/2月21日-29日


[2月29日]

★大輪の椿堂々冴え返る/河野啓一
大輪の椿は花を咲かせたけれど、また寒い日に戻る。けれど、いったん花を咲かせた椿は、寒さにひるむことなく、堂々と咲いている。その見事さ。厳しい寒さあっての堂々ぶりといえる。(高橋正子)

[2月28日]

★震災の地すべり跡に芝桜/多田有花
震災のときの地滑りは、非常に無残な様相であったが、今では、その地滑りの傷跡を覆い尽くして芝桜が何事もなかったように咲いている。芝桜は、地滑りした地も、それを見る人の気持ちも癒してくれているようである。句意がはっきりしているのがよい。(高橋正子)

[2月27日]

★敷き紙を替えてスケート靴納め/上島祥子
一冬活躍したスケート靴も納める季節となった。楽しく滑った思い出とともに、靴箱に敷く紙をあたらしく替えて、またの出番に備えて納める。(高橋正子)

[2月26日]

★沖待ちの船が点灯冴え返る/高橋秀之
沖待ちの船に灯がともされ、「冴え返る」を身に染みて感じさせられる。港ではなく、沖待ちの船の「遠い灯」が冷たい空気にくっきりと灯っている。(高橋正子)

★陽を透かし虎杖紅く土手に萌ゆ/佃 康水
なんでも、生き生きとしているものは、見ているものの気持を励ましてくれる。虎杖の新芽の紅色が土手の陽を透かしている。見ていて、春が来た。暖かい季節ももうすぐだと思わせてくれる。(高橋正子)

[2月25日]

★水鉢に椿数多を浮かばせる/祝 恵子
鉢に水を張って、玄関先などに椿の花を浮かせているのを、ときどき見かける。数輪の椿の場合もあるし、この句のように、たくさんの椿を浮かせている場合もある。生活のなかに風雅を楽しんでいるのがいい。(高橋正子)

[2月24日]

★節々に硬き蕾を白木蓮/河野啓一
もう少し経てば、白木蓮が一斉に咲きだすが、それまでは、枝の節々にうぶ毛に包まれた銀色の蕾が寒さに耐え、日に輝きながら咲く日を待っている。「節々」「硬き蕾」に、花の生命力が象徴され、開花した時の美しさをも想像させている。写生が効いている。(高橋正子)

[2月23日]

★風光る藍染のれん真あたらし/小口泰與
真あたらしい藍染のれんに風が光る。真あたらしい藍染のれんの清潔さが風光る季節に特に鮮明目に入る。(高橋正子)

[2月22日]

★二ン月や小川の水の躍り居り/桑本栄太郎
まだまだ寒さが厳しい二月。けれども小川を流れる水は、水量も増えて、小躍りしているかのように、光りながら流れている。こんな様子を見るとたしかに春が来ている。(高橋正子)

[2月21日]

★ひな人形今日始まれる壇飾り/河野啓一
ひな人形を飾るのは、節分を過ぎてから、その家庭でまちまちであるが、啓一さんの家には、「今日」から飾られた。壇飾りのゆかしい雛が飾られると、一度に華やかな雛の間となる。「今日始まれる」が新鮮。(高橋正子)

★春の風梢の高みを通るらし/古田敬二
春の風がそよそよと高い梢を揺らして通り過ぎる。春の風は一番に梢を吹くようである。詩情のある句だ。(高橋正子)

2月21日~29日


2月29日(4名)

●小口泰與
白梅や犬のじゃれ付く撞木綱★★★
廃線となりし枕木冴返る★★★★
花林糖かりっと噛むや風光る★★★

●河野啓一
大輪の椿堂々冴え返る★★★★
大輪の椿は花を咲かせたけれど、また寒い日に戻る。けれど、いったん花を咲かせた椿は、寒さにひるむことなく、堂々と咲いている。その見事さ。厳しい寒さあっての堂々ぶりといえる。(高橋正子)

春寒の青空白き千切れ雲★★★
伊予絣父祖の地思う二月尽★★★

●桑本栄太郎
まんさくの川べり歩む地道かな★★★★
部活子のテニスコートや風光る★★★
春眠の目覚む入日や朝日とも★★★

●多田有花
春霞む大阪望む神呪寺(かんのうじ)★★★
桜すでに咲かせて甲山大師★★★★
春の山下りて生チョコシフォンケーキ★★★

2月28日(6名)

●河野啓一
蕗の薹草おし分けて青い空★★★
雑草のいじめに耐えて蕗の薹★★★
色のままからりと揚がる蕗の薹★★★★

●小口泰與
長閑さや親指の爪弧を描く★★★
かげろうや幼き頃の道の幅★★★
書肆出でて遅日の空を見上げたり★★★★(正子添削)

●多田有花
ミモザ咲く川べりの道を歩く朝★★★
震災の地すべり跡に芝桜★★★★
春空へ丸き稜線甲山(かぶとやま)★★★

●迫田和代
朝東風や遠くの山の茜色★★★(正子添削)
誰一人いない桜よもう咲くよ★★★★(正子添削)
力ない病躯で絞る春の水★★★

●谷口博望 (満天星)
肩に触る匂い優しき枝垂梅★★★
枝垂梅ふわりと宙に浮くごとし★★★★(正子添削)
松雪草あなたを待つわいつまでも★★★

●桑本栄太郎
さえずりや高き梢の空の青★★★★(正子添削)
歩みゆく嶺の彼方や霾ぐもり★★★
七段の堰水光り春淡し★★★

2月27日(7名)

●川名ますみ
緋寒桜つぼみも土を正面に★★★
富士の背に滲み眩しき冬茜★★★★
うたた寝へ早春の陽の眩げに★★★

●多田有花
島々を隠す霞や播磨灘★★★
頂に春の日差しの溢れ初む★★★
軽やかな水音を聞く春の山★★★★(正子添削)

●小口泰與
へら浮子や咫尺に居りし春の鳥★★★
公魚のかろき魚信(あたり)よ風の中★★★★
かげろうや鶏の産毛の舞う如し★★★

●谷口博望(満天星)
節分草恥ずかしそうに顔を上げ★★★
 ※「はずかしそうに」のところを、「写生」してください。
水琴や加賀の白梅人だかり★★★★
榛の雄花と雌花咲きいたり★★★

●河野啓一
そよ風に揺れて黄色いクロッカス★★★
池の端に今年も低くクロッカス★★★
春なれや箕面の山の滝の音★★★★

●桑本栄太郎
芽木かざす街路樹天の青空に★★★
川風の水面煌めき木の芽張る★★★★
信号灯のカタコト揺るる春の風★★★

●上島祥子
春玉子マヨネーズとなり昼食へ★★★
スカーフの衣摺れの音春の夜★★★
敷き紙を替えてスケート靴納め★★★★(正子添削)
一冬活躍したスケート靴も納める季節となった。楽しく滑った思い出とともに、靴箱に敷く紙をあたらしく替えて、またの出番に備えて納める。(高橋正子)

2月26日(7名)

●河野啓一
古池に溢れるばかり春の水★★★★
レース越し春光部屋に差してくる★★★
紅椿摘んで供えし亡き人に★★★

●小口泰與
薄氷の暁のかたちや風の中★★★
夕映えの木の芽さかんよ乾杯す★★★★
参道を踏むや道哭き冴返る★★★

●多田有花
球を打つコートに早春の満月★★★★
春寒の沖に横たう淡路島★★★
午後からは曇りがちなり枝垂梅★★★

●谷口博望(満天星)
帰る日や愛しき鴨にグッドバイ★★★
引揚げて七十年や鴨帰る★★★★
ひたすらに草萌を食むヌートリア★★★

●桑本栄太郎
音乾くテニスコートや春寒し★★★
青空の楽譜となりぬ銀杏の芽★★★★
田面抜く風に途切れる揚ひばり★★★

●高橋秀之
沖待ちの船が点灯冴え返る★★★★
沖待ちの船に灯がともされ、「冴え返る」を身に染みて感じさせられる。港ではなく、沖待ちの船の「遠い灯」が冷たい空気にくっきりと灯っている。(高橋正子)

春浅し夕陽の沈む三河湾★★★
公園の梅が一気に開く朝★★★

●佃 康水
陽を透かし虎杖紅く土手に萌ゆ★★★★
なんでも、生き生きとしているものは、見ているものの気持を励ましてくれる。虎杖の新芽の紅色が土手の陽を透かしている。見ていて、春が来た。暖かい季節ももうすぐだと思わせてくれる。(高橋正子)

丸めては樽に打ち込む味噌作り★★★
牛舎のみ残りし牧や冴え返る★★★

2月25日(4名)

●小口泰與
大利根の風に煽らる紙鳶★★★★
紙鳶担ぐ男の顔数多★★★
佐保姫や山川朝日響きける★★★

●祝恵子
水鉢に椿数多を浮かばせる★★★★(正子添削)
鉢に水を張って、玄関先などに椿の花を浮かせているのを、ときどき見かける。数輪の椿の場合もあるし、この句のように、たくさんの椿を浮かせている場合もある。生活のなかに風雅を楽しんでいるのがいい。(高橋正子)

探梅や能勢街道を通りゆく★★★
吾が影の伸びて春田の葉の上へ★★★

●谷口博望(満天星)
枝ぶりの金剛力や梅の花★★★★
梅の花可憐な雄蕊散らぬ間に★★★
梅の花乙女の睫毛輝きぬ★★★

●桑本栄太郎
紅梅の鉢にあまたの枝垂れ居り★★★
山茱萸のつぼみ希望の狭庭かな★★★
カタカタとポールの鳴りぬ春嵐★★★★

2月24日(4名)

●谷口博望 (満天星)
一望の大東京や春きざす★★★★
春めくや隅田川ゆく屋形船★★★
春寒の仲見世にぎわう浅草寺★★★

●小口泰與
鳥帰る幼き時の通学路★★★★
下萌や靴新しき乗馬服★★★
れんげ田や幼にもどるセーラ服★★★

●河野啓一
節々に硬き蕾を白木蓮★★★★
もう少し経てば、白木蓮が一斉に咲きだすが、それまでは、枝の節々にうぶ毛に包まれた銀色の蕾が寒さに耐え、日に輝きながら咲く日を待っている。「節々」「硬き蕾」に、花の生命力が象徴され、開花した時の美しさをも想像させている。写生が効いている。(高橋正子)

木蓮のつぼみ産毛に包まれて★★★
冴えかえる池の面滑る鴨の列★★★

●桑本栄太郎
田道行く春は名のみと言う風に★★★(正子添削)
揚ひばり風に逆らう声ばかり★★★★
白きもの混じる野風や春寒し★★★

2月23(4名)

●小口泰與
風光る藍染のれん真あたらし★★★★
真あたらしい藍染のれんに風が光る。真あたらしい藍染のれんの清潔さが風光る季節に特に鮮明目に入る。(高橋正子)

穴釣りの公魚朝日受けにける★★★
春光や朱の橋渡るメード服★★★

●河野啓一
梅蕾膨らみかけてまた閉じて★★★
冴えかえる予報を恨む翁かな★★★
春耕の庭土固くごつごつと★★★★

●谷口博望(満天星)
ヒヤシンス結婚式の顔と顔★★★
朧月半円状の夜景かな★★★★
遙かなる冠雪富士やオフィス街★★★

●桑本栄太郎
駒返る草の目ざとき日差しかな★★★
烏舞う天の茜や春夕焼け★★★
夕刊を取りに階下へ冴えかえる★★★★

2月22日(3名)

●小口泰與
猫柳猫の肉球やわきかな★★★
梅咲くを水面の雲へ告げしかな★★★★
しののめの雨の末黒の薄かな★★★

●河野啓一
山焼きの煙流れて春の野辺★★★
雀には雀の春よ虫咥え★★★★
いっぱいのコーヒー干して春の午後★★★

●桑本栄太郎
二ン月や小川の水の躍り居り★★★★
まだまだ寒さが厳しい二月。けれども小川を流れる水は、水量も増えて、小躍りしているかのように、光りながら流れている。こんな様子を見るとたしかに春が来ている。(高橋正子)

春きざす部活の声の運動場★★★
風落つや嶺の茜の春嵐★★★

2月21日(6名)

●多田有花
春の霜滑り台に鉄棒に★★★
梅が香に包まれ午後の陽の中を★★★★
久々に歩けば満開の梅林★★★

●河野啓一
ひな人形今日始まれる壇飾り★★★★
ひな人形を飾るのは、節分を過ぎてから、その家庭でまちまちであるが、啓一さんの家には、「今日」から飾られた。壇飾りのゆかしい雛が飾られると、一度に華やかな雛の間となる。「今日始まれる」が新鮮。(高橋正子)

麦青む街道沿いの車列かな★★★
消え残る峰の白雪惜しむ朝★★★

●小口泰與
寺に咲く梅一輪の余寒かな★★★
夕さりの尾長の声の余寒かな★★★★
枝笹の先の朽ちたる余寒かな★★★

●桑本栄太郎
夢の覚め夢に又落つ風邪寝かな★★★
山影と見れば雲影春の嶺★★★★
まんさくの枯葉の中に風生忌★★★

●古田敬二
春の風梢の高みを通るらし★★★★
春の風がそよそよと高い梢を揺らして通り過ぎる。春の風は一番に梢を吹くようである。詩情のある句だ。(高橋正子)

春の陽のぬくもり森のベンチにも★★★
春の陽の森の蕾を温める★★★

●迫田和代
向こう岸いぬのふぐりや寂しげに★★★
岩叩く音ものんびり春の海★★★★
もうすこしたてば桜の淡い色★★★

●自由な投句箱/2月11日~20日●


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※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
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今日の秀句/2月11日-20日


[2月20日]

★ほっこりと野の香の立ちて蓬餅/佃 康水
「ほっこりと」に、なごまされる。蓬餅の蓬の香りは、春の野の香りといってよい。蓬餅もまるまるとして、手作りの良さが見えておいしそう。(高橋正子)

[2月19日]

★沈みゆく日を見送りて春の橋/祝恵子
「沈みゆく日」には人はどこか感傷的な気持ちを持つが、この句はもっと自然体で、沈む日を心に収めつつ見送っているのがいい。日が永くなった春の橋は、沈む日の始終をよく見せてくれる。(高橋正子)

★さまざまの花芽蕾に春の朝/川名ますみ
さまざまな花芽が気づくと蕾になって、膨らんでいる。朝なので、「一夜にして蕾になった」ような気持もするのだろう。うれしいことだ。(高橋正子)

[2月18日]

※該当作品なし

[2月17日]

★日脚伸ぶ鳥は枯木の懐に/河野啓一
枯木には日が暖かそうに差し込んで、その中に鳥が遊んでいるのがよく見える。枯木のふところに居て、鳥は自由だ。(高橋正子)

[2月16日]

★飛び発ちて何処へ消えし春の鳥/河野啓一
枝移りする春の鳥を眺めていたら、飛び発ってしまった。何処へ消えてしまったのだろう。春の鳥へ慈しみ。(高橋正子)

★ごつごつと触れ合う船や春の潮/古田敬二
ゆったりと流れる春の潮もあるけれど、春一番などの風が吹くと潮が荒れる。繋いである船が船体と船体をぶつけて「ごつごつ」という音を立てる。それがリアルに詠まれている。(高橋正子)

[2月15日]

★青麦や光り弾くる鳩の胸/小口泰與
鳩の胸は丸く出っ張って、光りを虹色に弾いていることがある。麦はあおあおと光りを反射させ、風は寒くとも、光りは強く春本番へと近づいている。(高橋正子)

[2月14日]

★神護寺へ長き石段春淡し/多田有花
「神護寺」に私は参ったことはないが、その奥の方には栂尾「高山寺」があって、一度は行ってみたい寺である。京都高雄山の中腹にある紅葉の名所と知られ、日本寺院の中でもの重要な寺とされる。長い石段に覆いかぶさるような紅葉の写真からみると、古びた長い石段を上りつつ「春淡し」が身に感じられてくる。(高橋正子)

[2月13日]

★広い野に膨らみかけた蕗の薹/迫田和代
蕗の薹は山水のしみ出るところ、庭の片隅、野原にも蕗の薹がある。広い野に膨らみかけた蕗の薹は、空に憧れて花を咲かせようとしている風にも見える。心が広々となる句。(高橋正子)

★春泥をき踏み散らし来る孫二人/河野啓一
男のお孫さんの、中学生か、高校生を想像する。二人が元気よく、春泥も厭わず、春泥を踏み散らしてやってくる。飾り気がなくて、溌剌とした行動が頼もしい。(高橋正子)

[2月12日]

★テレビには雪山窓に梅蕾/河野啓一
テレビには凛とした雪山が映し出され春は遠いと見えるが、私の傍近くの窓には、梅の蕾が膨らんで、咲きそうである。日本列島、こうも季節が違うものか。(高橋正子)

[2月11日]

★茎立や菜園それぞれ仕切らるる/桑本栄太郎
菜園のに蕪やあぶら菜の薹が立って、あちこちにすっくと茎が伸びている。その茎立った様子を見れば、一目瞭然菜園が仕切られているのが分かる。早春の景色。(橋正子)

2月11日~20日


2月20日(6名)

●小口泰與
たらの芽や淵に佇むてんから師★★★
釣人の魚籠あふれけり蕗の薹★★★★
安曇野の畦の雪間に蕗の薹★★★

●小川和子
日当たれば幹温かき欅かな★★★★
日の少し差し込む藪の紅椿★★★
長閑さに莟ほのぼの枝だれ梅★★★

●多田有花
小綬鶏に呼ばれて窓を開けにけり★★★★
春眠をたっぷりとって風邪癒す★★★
春の雨更地となりし河川敷★★★

●古田敬二
ランナーの足音梅の咲き初むる★★★
豊かなり地にイヌフグリ枝に梅花★★★
蜜を吸うメジロとしばし遊びけり★★★★

●佃 康水
河原鶸零れて葦に啼きたつる★★★
ほっこりと野の香の立ちて蓬餅★★★★
「ほっこりと」に、なごまされる。蓬餅の蓬の香りは、春の野の香りといってよい。蓬餅もまるまるとして、手作りの良さが見えておいしそう。(高橋正子)

車窓より火事丸見へに冴え返る★★★

●上島祥子
梅枝の二心無く青空へ★★★
雪残る天満宮への路静か★★★
御嶽に向き合い座る春テラス★★★★

2月19日(4名)

●小口泰與
耕やダックスフント駆け抜けし★★★
犬ふぐりプラネタリウム出づる吾子★★★
鳥交る芝にあまねく日の差しぬ★★★★

●祝恵子
薄氷やバケツのヒシャク持てば割れ★★★
沈みゆく日を見送りて春の橋★★★★
「沈みゆく日」には人はどこか感傷的な気持ちを持つが、この句はもっと自然体で、沈む日を心に収めつつ見送っているのがいい。日が永くなった春の橋は、沈む日の始終をよく見せてくれる。(高橋正子)

春の鳥尾をひくひくと切り株に★★★

●古田敬二
春野行く故郷の夢見し朝★★★
春風の音せぬほどに梢揺れ★★★★
春の海三角波に風遊ぶ★★★

●川名ますみ
さまざまの花芽蕾に春の朝★★★★(正子添削)
さまざまな花芽が気づくと蕾になって、膨らんでいる。朝なので、「一夜にして蕾になった」ような気持もするのだろう。うれしいことだ。(高橋正子)

川縁の小さき梅苑白満つる★★★
しだれ梅萼の裏にも蕾あり★★★

2月18日(2名)

●小口泰與
川風のいまだ硬しや牡丹の芽★★★★
産土の砂利懐かしき蜆汁★★★
噴煙の先の細きや冴返る★★★

●多田有花
快晴の明石海峡春早し★★★
春の野を朝日に向かい新幹線★★★
春朝日白鷺城を薔薇色に★★★★

2月17日(4名)

●河野啓一
日脚伸ぶ鳥は枯木の懐に★★★★
枯木には日が暖かそうに差し込んで、その中に鳥が遊んでいるのがよく見える。枯木のふところに居て、鳥は自由だ。(高橋正子)

春昼の枯れ木に遊ぶ鳥の影★★★
梅が香や南部(みなべ)紀の国海青し★★★

●小口泰與
産土の鍋割山(なべわり)雪消鳥の声★★★
畑打や猫の足跡点点と★★★
下萌や里は寒風なお残り★★★★

●多田有花
廃屋の取り壊されて春寒し★★★★
春あられ年金引き出す人の列★★★
春の風邪鼻炎カプセル服用す★★★

●谷口博望 (満天星)
肩に触れ被爆柳や千羽鶴
肩に触る被爆の柳千羽鶴★★★★(正子添削)
ピーヒャラと鳶舞いたる日永かな★★★
手をつけば鯉の旋回水温む★★★

2月16日(4名)

●小口泰與
噴煙の見ゆる溶岩道すみれ咲く★★★★(正子添削)
朝晩の御勤めの如蜆汁★★★
摘草や子のスカートの揺れかすか★★★

●河野啓一
飛び発ちて何処へ消えし春の鳥★★★★
枝移りする春の鳥を眺めていたら、飛び発ってしまった。何処へ消えてしまったのだろう。春の鳥へ慈しみ。(高橋正子)

冴えかえる朝の生駒のあざやかに★★★
チューリップ伸び来る若葉やわらかに★★★

●桑本栄太郎
春眠の目覚め夢追い又ゆめに★★★
雲奔り雲影走る春の嶺★★★
目刺焼きひとり夕餉や妻の留守★★★★

●古田敬二
ごつごつと触れ合う船や春の潮★★★★
ゆったりと流れる春の潮もあるけれど、春一番などの風が吹くと潮が荒れる。繋いである船が船体と船体をぶつけて「ごつごつ」という音を立てる。それがリアルに詠まれている。(高橋正子)

立春や過る小鳥の羽透ける★★★
枝渡る鳥影多し春立つ日★★★

2月15日(3名)

●小口泰與
青麦や光り弾くる鳩の胸★★★★
鳩の胸は丸く出っ張って、光りを虹色に弾いていることがある。麦はあおあおと光りを反射させ、風は寒くとも、光りは強く春本番へと近づいている。(高橋正子)

前向ける尾長の嘴や春の土★★★
春の日や会釈なき子へ手を振りぬ★★★

●河野啓一
青年の合格を喜びて
大和なる明日香の里の初音かな★★★★
薄日さす二月はもはや半ば過ぎ★★★
冴えかえる池の氷の鈍き色★★★

●桑本栄太郎
姦しき田面の天(そら)や揚ひばり★★★★
屈みこみ一頻り愛づ犬ふぐり★★★
止まりて春の楽聞く小川かな★★★

2月14日(5名)

●古田敬二
反芻の黒牛の背に春陽濃し★★★
青き踏み放牧牛ののしのしと★★★
木蓮の蕾の向こうの空広し★★★★

●小口泰與
梢より落ち来るものよ牡丹雪★★★★
春の暮採餌に尾長来りける★★★
噴煙の先や真鳥の春の山★★★

●多田有花
神護寺へ長き石段春淡し★★★★
「神護寺」に私は参ったことはないが、その奥の方には栂尾「高山寺」があって、一度は行ってみたい寺である。京都高雄山の中腹にある紅葉の名所と知られ、日本寺院の中でもの重要な寺とされる。長い石段に覆いかぶさるような紅葉の写真からみると、古びた長い石段を上りつつ「春淡し」が身に感じられてくる。(高橋正子)

春の空錦雲渓の底に光る★★★
バレンタインデー終日風の音高し★★★

●桑本栄太郎
山裾の里のけぶりて揚ひばり★★★★
あるが儘咲いて競える野梅かな★★★
バレンタインデー愛は誤解と知りつつも★★★

●谷口博望(満天星)
梅見茶屋水琴窟の音を聴き★★★
梅咲いて久々に聞く孫の声★★★★
春一番からす毅然と橋の上★★★

2月13日(4名)

●小口泰與
春の鳥句会仲間と居るごとし★★★★
眠ぶさたの昼や畦道揚ひばり★★★
のったりと横たわりたる春の昼★★★

●迫田和代
広い野に膨らみかけた蕗の薹★★★★
蕗の薹は山水のしみ出るところ、庭の片隅、野原にも蕗の薹がある。広い野に膨らみかけた蕗の薹は、空に憧れて花を咲かせようとしている風にも見える。心が広々となる句。(高橋正子)

雨の中負けるものかと鶯や★★★
梅の花香りしらじら花も白★★★

●河野啓一
春泥をき踏み散らし来る孫二人★★★★
男のお孫さんの、中学生か、高校生を想像する。二人が元気よく、春泥も厭わず、春泥を踏み散らしてやってくる。飾り気がなくて、溌剌とした行動が頼もしい。(高橋正子)

春衣着せてマネキン若くなり★★★
春昼やどら焼きを手に舟を漕ぐ★★★

●桑本栄太郎
さみどりも赤きもありぬ新芽立つ★★★
野梅咲き遠きふるさと想い見る★★★★
野に立つや高き天なる揚ひばり★★★

2月12日(5名)

●河野啓一
テレビには雪山窓に梅蕾★★★★(正子添削)
テレビには凛とした雪山が映し出され春は遠いと見えるが、私の傍近くの窓には、梅の蕾が膨らんで、咲きそうである。日本列島、こうも季節が違うものか。(高橋正子)

杯を挙ぐ建国日なり青山河★★★
樹の洞に小鳥連れ立ち水を飲む★★★

●谷口博望 (満天星)
下萌や落ちて朽ちたる金鈴子★★★
春の風朽ちて破れし朴落葉★★★★
朽ちつつも二月の空の茨の実★★★

●小口泰與
払いてもとび来る虻ぞ浮子沈む★★★
小座布団ならぶ茶店や梅の花★★★
紅梅やほっと茶柱立ちにける★★★★

●多田有花
早春の人影まばらな高山寺★★★
お抹茶をいただく余寒の高山寺★★★
トレイルを歩き二月の池に出る★★★★

●桑本栄太郎
芽柳の青き枝垂れや小畑川★★★★
まんさくの青き空へと見上げ居り★★★
うらうらと歩む街道菜の花忌★★★

2月11日(5名)

●小口泰與
境内の一隅照らす梅の花★★★
隠れ沼へ一目散の雉子かな★★★
亀鳴くや非通知電話かかり来る★★★

●谷口博望(満天星)
春きざす猿の手温め確かなり★★★
春淡しさざ波光る被爆川★★★
川面照り顔ぶれ変る今日の鴨★★★★

●河野啓一
春温し縄文土偶のほほえみて★★★★
杯を挙げて談笑春の午後★★★
せせらぎは春を流れて水車へと★★★

●祝恵子
広き空求めて凧は高くあり★★★★
婆の木という椿の札に苦笑する★★★
降雪機子らにそそぎて春広場★★★

●桑本栄太郎
茎立や菜園それぞれ仕切らるる★★★★
菜園のに蕪やあぶら菜の薹が立って、あちこちにすっくと茎が伸びている。その茎立った様子を見れば、一目瞭然菜園が仕切られているのが分かる。早春の景色。(橋正子)

春禽の見えざる枝を探しけり★★★
紅梅のいつも青空丘の梅★★★

●自由な投句箱/2月1日~10日●


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今日の秀句/2月1日-10日


[2月10日]

★日差し背に初の蓬を摘み飽かず/佃 康水
暖かい日差しを背なにして、今年初めての蓬摘み。やわらかい蓬を摘み始めると、摘むことがうれしくてどんどん摘んでします。草餅になる蓬だろうか。(高橋正子)

★耕せば黒き光の畑となる/古田敬二
「耕す」が春の季語。元の句は切れが二つあるので添削した。耕すと、掘り返された黒々とした土が現れる。次第に強くなってきた春の光に塗れて、「黒き光の畑」となった。これからの種まきや植え付けが楽しみ。(高橋正子)

[2月9日]

★枕辺のひかりは借りし黄水仙/川名ますみ
早春のひかりはことにうれしいものだ。暖かい春を待ちわびながら、早春に咲きだす黄水仙に心躍らせる人も多いだろう。枕辺に明るいひかりを撒く黄水仙に気持ちは外へ、ひかりへと向く(高橋正子)

[2月8日]

★水温むえびや目高を掬う子ら/河野啓一
水が温んだのをいち早く知るのは、えびや目高だろう。次に知るのは子どもたちであろう。少し暖かくなると、子どもたちは、水辺でえびや目高を掬ってあそぶ。水温むよい季節が来た。(高橋正子)

[2月7日]

★栴檀の天つつぬけて余寒かな/満天星
高木となった栴檀は冬は葉をすっかり落とし、花火のように散らばる実も大方落ちている。高々と聳える天は、筒抜けに晴れている。それだけに余寒が身に沁みる。(高橋正子)

★薪を割る音響きおり春の山/多田有花★★★★
早春の肌寒さに、暖房もまだまだ必要。薪ストーブや、竈や風呂に使われる薪かもしれないが、春の山に薪を割る音が響く。人の生活が生活が感じられる春の山は、生き生きとしている。(高橋正子)

[2月6日]

★野火走り黒い野に待つ春色を/迫田和代
野焼きの火が走り、野が黒々と焼き尽くされると、やがて、そこから草草のみどりの芽が伸びる。一面春の野となる。それを今から楽しみに待っている。いい時間を過ごされている。(高橋正子)

★池多き東播磨や春はじめ/多田有花
雨が少ない瀬戸内、なかでも讃岐平野や向いの東播磨もため池が多い。その池が陽光を跳ね返すと、春が来たと思う。(高橋正子)

[2月5日]

★立春のひかり眩しきかもめかな/谷口博望(満天星)
風はまだまだ冷たくても、立春となれが、太陽の光はずいぶん強くなっている。白い鴎に光が当たり眩しいほど。やはり、春だ。(高橋正子)

[2月4日]

★花桃のま直ぐに挿され凛として/河野啓一
花桃は花を観賞するために作られたもので、庭木に植えられるようだが、新暦の雛祭りに飾られる桃の花は、真直ぐな茎に丸く濃い桃色の花蕾が付く。かわいいというより、寒さの中では凛とした感じを受けるのだろう。(高橋正子)

[2月3日]

★嶺の端の群青色や寒の果/桑本栄太郎
嶺の端は、山の稜線あたり。見るものの気持ちによるもであろうが、寒が果てたと思うと、嶺の稜線が群青色にくっきりとしてくる。(高橋正子)

[2月2日]

★黒檜嶺も鍋割山も雪催い/小口泰與
「黒檜嶺」と「鍋割山」も民話を思い起こさせる山の名前。「雪催い」の今日は、民話の世界に紛れ込んだ気持ちになる。(高橋正子)

[2月1日]

★白腹に会う春近き森の道/多田有花
春近い森の道で、小鳥に出会うと何か楽しい気持ちになる。冬鳥の白腹が落葉を散らして餌をあさっていたのだろうか。(高橋正子)

2月1日~2月10日


2月10日(7名)

●小口泰與
春荒や遊技場より出づる顔★★★
鐘鳴りてぽとりと落ちし椿かな★★★
囀りや同胞の卓はや灯る★★★★

●谷口博望(満天星)
息こらし日を浴びながら福寿草★★★
烏瓜蝋梅の木に朽ちにけり★★★
春の風被爆柳を吹き抜けて★★★★

●多田有花
春浅き海辺の町へ蟹食べに★★★
残雪の峠を越えて但馬へと★★★
春寒の万年筆が吸うインク★★★★

●河野啓一
すみれ咲く門辺の鉢の小さくて★★★★
むらさきと黄の取り合わせかな菫草★★★
残雪を惜しむやひとは高みへと★★★

●桑本栄太郎
嶺を越え里から街へ春しぐれ★★★
むらさきの小枝潤めり春の雨★★★★
花落ちて乙女椿と知りにけり★★★

●佃 康水
日差し背に初の蓬を摘み飽かず★★★★
暖かい日差しを背なにして、今年初めての蓬摘み。やわらかい蓬を摘み始めると、摘むことがうれしくてどんどん摘んでします。草餅になる蓬だろうか。(高橋正子)

受験子の微妙と小さく言うて去り★★★
牧場へと顔上げ上る梅見坂★★★

●古田敬二
耕せば黒き光の畑となる★★★★(正子添削)
「耕す」が春の季語。元の句は切れが二つあるので添削した。耕すと、掘り返された黒々とした土が現れる。次第に強くなってきた春の光に塗れて、「黒き光の畑」となった。これからの種まきや植え付けが楽しみ。(高橋正子)

大根抜く地球の恵みの太さかな★★★
陽の温み溜めて芽吹きの気配あり★★★

2月9日(5名)

●小口泰與
淡雪や村に残りし芝居小屋★★★★
風光る鳥を宿せし岨の松★★★
くわえたるうぐいす餅よ高気圧★★★

●小川和子
森の樹の芽吹く音なす気配かな★★★
子等遊ぶ声の天へと日脚伸ぶ★★★★
玻璃ごしの立春の陽の眩しさよ★★★

●河野啓一
エキスポの跡地静かな春の雨★★★★
枯木立潤い得たる春の雨★★★
受験子の合格電話涙声★★★

●桑本栄太郎
春きざすサッカー遊びの父子かな★★★
真つ直ぐに満天星躑躅の新芽立つ★★★★
早春の若枝むらさき青空へ★★★

●川名ますみ
枕辺のひかりは借りし黄水仙★★★★
早春のひかりはことにうれしいものだ。暖かい春を待ちわびながら、早春に咲きだす黄水仙に心躍らせる人も多いだろう。枕辺に明るいひかりを撒く黄水仙に気持ちは外へ、ひかりへと向く(高橋正子)

梅の蘂花びらを越え空に在り★★★
待ちし日の長くて楽し梅咲く朝★★★

8日(5名)

●古田敬二
鉛筆を削り吟行へ春立つ日★★★
難問に挑戦の孫よ明日は春ぞ★★★
春立つ日子の書き込みの独和辞書★★★★

●小口泰與
春昼の野を駆け来る犬の顔★★★
単線や霞隠れの城の跡★★★
どどどどと大庇より雪消かな★★★★

●満天星
二月早ビル谷間より日の光★★★
遊園地光と風と金縷梅(まんさく)と★★★★
水無くて鴨の見えない潮干川★★★

●河野啓一
水温むえびや目高を掬う子ら★★★★
水が温んだのをいち早く知るのは、えびや目高だろう。次に知るのは子どもたちであろう。少し暖かくなると、子どもたちは、水辺でえびや目高を掬ってあそぶ。水温むよい季節が来た。(高橋正子)

梅が香に丘の辺よぎる風さやか★★★
花咲いて乙女椿と知れにけり★★★

●桑本栄太郎
触れ歩むうす紅色や丘の梅★★★★
木々の枝の静脈天(そら)へ春淡し★★★
雲晴れて遙かはだれや鞍馬山★★★

2月7日(7名)

●小口泰與
春の夜や和紙に墨痕黒黒と★★★★
露天湯の遅日の風や鳶の笛★★★
春の日や和菓子の店の淡淡し★★★

●古田敬二
池全面陽光返す春立つ日★★★★
わが畑の一番乗りはいぬふぐり★★★
空青く板黒塀超え咲く蝋梅★★★

●満天星
栴檀の天つつぬけて余寒かな★★★★
高木となった栴檀は冬は葉をすっかり落とし、花火のように散らばる実も大方落ちている。高々と聳える天は、筒抜けに晴れている。それだけに余寒が身に沁みる。(高橋正子)

土手の風低唱しつつ早春賦★★★
春浅し川辺を歩くかもめかな★★★

●多田有花
播磨灘沖に早春の光★★★

薪を割る音響きおり春の山★★★★
早春の肌寒さに、暖房もまだまだ必要。薪ストーブや、竈や風呂に使われる薪かもしれないが、春の山に薪を割る音が響く。人の生活が生活が感じられる春の山は、生き生きとしている。(高橋正子)

春の雪降りしきる中子ら遊ぶ★★★

●佃 康水
風硬き牧場跡の梅探る★★★
春霜の解けて遠出の靴濡らす★★★★
 早朝岩国基地より
瀬戸海を軍機飛ぶ音冴え返る★★★

●桑本栄太郎
はらりほろ祇園小路の春の雪★★★
淡雪のほほに帽子に京町家★★★
木々の枝の水色天(そら)に春浅し★★★★

●河野啓一
春浅き梅見ドライブ大阪城★★★
大試験結果待つのみあと二日★★★
早春の里山二羽のこうのとり★★★★

2月6日(4名)

●小口泰與
長閑さや里の社へ杖つきて★★★★
下萌や榛名十峰朝日浴び★★★
薄氷や光の破片身の内へ★★★

●迫田和代
痛み萎え胸に広がる春の色★★★
野火走り黒い野に待つ春色を★★★★
野焼きの火が走り、野が黒々と焼き尽くされると、やがて、そこから草草のみどりの芽が伸びる。一面春の野となる。それを今から楽しみに待っている。いい時間を過ごされている。(高橋正子)

川流れ戦い終えた白魚や★★★

●桑本栄太郎
春寒の雲の奔るや嶺の上★★★★
梅が香や老人たちのフリスビー★★★
老梅や幹のしろきに凛と紅★★★

●多田有花
池多き東播磨や春はじめ★★★★
雨が少ない瀬戸内、なかでも讃岐平野や向いの東播磨もため池が多い。その池が陽光を跳ね返すと、春が来たと思う。(高橋正子)

春めきて瀬戸の夕暮れ桃色に★★★
梅が香の間に夕刻の気配★★★

2月5日(3名)

●小口泰與
昇る日に照らされいたり孕鹿★★★★
猫の恋画廊に長居して居りぬ★★★
春なれや野菜作らず魚飼わず★★★

●谷口博望(満天星)
立春のひかり眩しきかもめかな★★★★
風はまだまだ冷たくても、立春となれが、太陽の光はずいぶん強くなっている。白い鴎に光が当たり眩しいほど。やはり、春だ。(高橋正子)

立春の海を見たくて宇品港★★★
引揚げて七十年や梅ふふむ★★★

●桑本栄太郎
あおぞらを背に写しけり梅二月★★★
碧空にくれない放ち丘の梅★★★★(正子添削)
かさぶたのような古木や梅ひらく★★★

2月4日(4名)

●小口泰與
春近し窓を横切る鳥の影★★★★
雲雀の巣我のみ知りて他に告げず★★★
追悼句
春の鳥まてど朝日を見ずにして★★★

●谷口博望 (満天星)
尉鶲犬枇杷の実に集いきたり★★★
キラキラと照葉樹林冬うらら★★★★
冬麗の光芒差して瀬戸遙か★★★

●河野啓一
あたたかき光差し来て春立ちぬ★★★
花桃のま直ぐに挿され凛として★★★★
花桃は花を観賞するために作られたもので、庭木に植えられるようだが、新暦の雛祭りに飾られる桃の花は、真直ぐな茎に丸く濃い桃色の花蕾が付く。かわいいというより、寒さの中では凛とした感じを受けるのだろう。(高橋正子)

出水より鶴とび発つや春立つ日★★★

●高橋正子
買い物の袋に花菜一把あり★★★
立春の梢は高き空を持ち★★★★
とびとびの雪割一華の花あわし★★★

2月3日(4名)

●谷口博望 (満天星)
餌貰う鴨を見ている鴉かな★★★
冬天の皁莢の木に烏かな★★★
樟匂う原生林のひこばゆる★★★★

●小口泰與
水仙や徒渉かなわぬ岨の雨★★★★
虎落笛妻の機嫌はそっちのけ★★★
凍空や杉の切杭凹凸ぞ★★★

●桑本栄太郎
嶺の端の群青色や寒の果★★★★
嶺の端は、山の稜線あたり。見るものの気持ちによるもであろうが、寒が果てたと思うと、嶺の稜線が群青色にくっきりとしてくる。(高橋正子)

恵方向き黙の夕餉や節分に★★★
節分や鬼より怖き山の神★★★

●高橋正子
あかあかと灯ともし恵方巻売られ★★★
巻きずしの五彩めでたし節分会★★★
うす淡き花をかしげて節分草★★★★

2月2日(3名)

●小口泰與
湯豆腐や街灯けぶる雨ななめ★★★
木の卓にパソコン開き寒見舞い★★★

黒檜嶺も鍋割山も雪催い★★★★
「黒檜嶺」と「鍋割山」も民話を思い起こさせる山の名前。「雪催い」の今日は、民話の世界に紛れ込んだ気持ちになる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
カタコトと線路交叉や日脚伸ぶ★★★
蝋梅の日射しを透きし垣根かな★★★
暮れ残る枝の影濃く日脚伸ぶ★★★★

●高橋正子
寒蜆採られし場所の水思い★★★★
まるまると太る鰯を塩焼きに★★★
菜の花を茹でてみどりの明るさよ★★★

2月1日(4名)

●小口泰與
夕映えや男が捌く寒の鯉★★★★
日を支う朝の浅間や霜の花★★★
冬ばらの風の中なる一花かな★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋>
寒鯉の影や動かず鴨川に★★★
鴨川の堰水光り寒の晴★★★★
見はるかす遙か鞍馬のはだれかな★★★

●多田有花
白腹に会う春近き森の道★★★★
春近い森の道で、小鳥に出会うと何か楽しい気持ちになる。冬鳥の白腹が落葉を散らして餌をあさっていたのだろうか。(高橋正子)

エルゴノミクスマウスが届く春隣★★★
春近し夜具を一枚取り除く★★★

●高橋正子
春隣蔦より新芽噴き出せる★★★★
春隣る玻璃戸眩しく朝日受け★★★
春近しドアを開け閉めする音も★★★