今日の秀句/1月22日~31日

[1月31日]
★板を踏む音繰り返し寒稽古/上島祥子
厳しい寒さの中で行われる寒稽古。吐く息も白く、剣道場などの床板を素足が踏む音に勢いと力がある。それを繰り返し、精神も技も肉体も鍛えられる。「板を踏む音」と「寒稽古」が結びついたのがよい。(高橋正子)

[1月30日]
★延々と貨車通り過ぐ枯野かな/桑本栄太郎
荒涼とした枯野を延々と通り過ぎる貨車。「延々」は、また「果てしない」とも思われ、作者の心象風景となっている。(高橋正子)

★海見える斜面にほころび寒紅梅/多田有花
海の見える傾斜地は、日当たりがよくて暖かいのだろう。寒中というのに、紅梅がほころんでいる。「海」と「寒紅梅」の取り合わせが晴れやかだ。(高橋正子)

[1月29日]
★冬薔薇や今朝も家族を送り出す/福田ひろし
まだまだ寒さの厳しいとき。冬薔薇があり、家族がいるさりげない幸せ。今朝もそうだが、先に家族を送り出して、それからご自分の出勤か。あるいは在宅。その家のスタイルの日々の暮らしがうかがえる。(高橋正子)

[1月28日]
★寒晴れや始業チャイムの伸びやかに/桑本栄太郎
寒晴れの空の下に、始業のチャイムの音が伸びやかに広がる。風は冷たいものの、寒晴れの明るさに春の兆しが感じられる。(高橋正子)

[1月27日]
★寒雁や単線の貨車過ぎ行ける/小口泰與
早朝餌を獲りに空を飛ぶ雁の下を、単線の線路を貨車がことこと過ぎて行く。荒涼とした風景のなかにも、命の通う雁、貨物を載せて過ぎゆく貨車に少しの温かさがある。(高橋正子)

★蝋梅や明石海峡はるばると/多田有花
明石海峡がはるばると見えるところに咲いている蝋梅。海と蝋梅の取り合わせで、蝋梅の花の透明感と鮮やかさがよく表現された。(高橋正子)

[1月26日]
黒焦げの餅の美味しさどんど焼き/内山富佐子
どんどの火で焼く餅は、黒焦げになった部分もあるが、妙に美味しいと私も思う。気持ちのせいだけではなく、実際火の加減によるものだろう。句意が素直に読み取れる。(高橋正子)

[1月25日]
★北風や明らかなりし榛名山/小口泰與
凍てつくような北風が吹き、塵を吹き飛ばし、榛名山の姿が明らかになった。日々見え方の変わる榛名山の今日の姿だ。(高橋正子)

★冬萌や土手の南面青々と/桑本栄太郎
土手を歩くと、暖かい南面の傾斜には、草が青々と萌え始めている。枯のなかに緑を見るのは春が近づいていると思えて嬉しいものだ。直さが句意にふさわしい。(高橋正子)

[1月24日]
★朝早く歩いて来る人の白い息/迫田和代
早朝に向こうから歩いて来る人がいる。その人が命ある人である証拠のように、「白い息」が見える。白い息が鮮やかだ。(高橋正子)

★校庭の歓声寒林抜けて来る/古田敬二
寒林のこちら側と向こう側とに違う世界が、寒林を歩く作者の心を通してつながっている妙味。(高橋正子)

[1月23日]
★寒晴の雲を讃えつ通院路/川名ますみ
寒晴の青空に浮かぶ雲の美しさは、通院とは言え、久しぶりの外出の身に、「讃える」ほどの美しさだった。そんな雲を見た嬉しさ、心のはずみが伝わってくる。(高橋正子)

[1月22日]
★雪吊りの縄一本も緩まずに/古田敬二
雪催いの日であろうか。雪吊りの縄が一本たりとも緩むことがない。すで見事な職人技だ。見るものの目に凛々しく映る。(高橋正子)

1月22-31日

1月31日(5名)

●小西 宏
北風に揺れる小さな水溜り★★★
空の鳥仰いで一人炬燵にいる★★★
冬薔薇の棘照り映える隣り垣★★★★

●小口泰與
岸洗う波のささらや春隣★★★
鮮やかな雪の浅間山(あさま)の朝かな★★★★
朝夕の浅間山(あさま)よろしき冠雪★★★

●桑本栄太郎
高層の谷に乱舞や雪しまき★★★
明暗の障子明かりのひと日かな★★★★
みずいろの一月果つや空の色★★★

●河野啓一
春隣ブロッコリーの青い森★★★
二羽三羽ふくら雀の庭先に★★★
入念に寒肥は柿の根元へと★★★★

●上島祥子
千両の食べ尽くされて禽されり★★★
板を踏む音繰り返し寒稽古★★★★
厳しい寒さの中で行われる寒稽古。吐く息も白く、剣道場などの床板を素足が踏む音に勢いと力がある。それを繰り返し、精神も技も肉体も鍛えられる。「板を踏む音」と「寒稽古」が結びついたのがよい。(高橋正子)

師の声の一際高く寒稽古★★★

1月30日(4名)

●小口泰與
朝月夜目路に入りたる雪赤城山(あかぎ)★★★
朝戸出の我を襲いし北颪★★★★
手をかざす火鉢の女将紺のれん★★★

●桑本栄太郎
延々と貨車通り過ぐ枯野かな★★★★
荒涼とした枯野を延々と通り過ぎる貨車。「延々」は、また「果てしない」とも思われ、作者の心象風景となっている。(高橋正子)

あおぞらの宙のたよりや風花す★★★
雨上がり風の荒ぶる寒暮かな★★★

●多田有花
海見える斜面にほころび寒紅梅★★★★
海の見える傾斜地は、日当たりがよくて暖かいのだろう。寒中というのに、紅梅がほころんでいる。「海」と「寒紅梅」の取り合わせが晴れやかだ。(高橋正子)

春近き島の浮かびし播磨灘★★★
パリパリとうまきは大根一夜漬け★★★

●高橋信之
梅林を一望ふところ深き谷★★★★
良きこと多し一月の日曜の梅★★★
公園の手洗い梅の満開に★★★

1月29日(4名)

●小口泰與
裾野までふぶく赤城や寒鴉★★★★
茜さす雪の浅間山(あさま)の明けにける★★★
覚めたるや土曜の宿の虎落笛★★★

●福田ひろし
冬枯れの野に一軒の農家あり★★★
路地裏に野性味満つる猫の恋★★★

冬薔薇や今朝も家族を送り出す★★★★
まだまだ寒さの厳しいとき。冬薔薇があり、家族がいるさりげない幸せ。今朝もそうだが、先に家族を送り出して、それからご自分の出勤か。あるいは在宅。その家のスタイルの日々の暮らしがうかがえる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
息白く登校児童の列つづく★★★★
あおぞらを見上げ空見や風花す★★★
高階の真夜のおらびや虎落笛★★★

●高橋信之
万作咲く公園の森の奥に来る★★★★
公園の森の奥では、ひそかに春を告げる万作が咲いている。「森の奥」がいい。(高橋正子)

梅の白咲かせる森の今日がある★★★
ミモザ咲けば確かな春がすぐそこに★★★

1月28日(5名)

●小口泰與
早梅や日の昇りたる風の中★★★★
茜さす白き浅間山(あさま)や寒紅梅★★★
ひらひらと光奏でる冬の利根川(とね)★★★

●河野啓一
ぬり絵塗る人の笑顔や春近し★★★★
枯木立聳えて高く青い空★★★
胡蝶蘭友を思うや昼下がり★★★

●桑本栄太郎
寒晴れや始業チャイムの伸びやかに★★★★
寒晴れの空の下に、始業のチャイムの音が伸びやかに広がる。風は冷たいものの、寒晴れの明るさに春の兆しが感じられる。(高橋正子)

釣り人の湾処(わんど)に黙の枯野かな★★★
松籟の冴ゆるばかりや建仁寺★★★

●小西 宏
風荒び寒き日なりき鴉除け★★★
鼻風邪に部屋で籠球(ろうきゅう)練習す★★★
骨怠く金柑の皮噛んで寝る★★★★

●古田敬二
寒鴉薄暮の森にシルエット★★★
幹揺らし鳥零し去る実万両★★★★
葉ボタンに夜来の雨や渦光る★★★

1月27日(5名)

●河野啓一
寒晴れて朝の地平の茜色★★★★
古池に寒の水少し足してやり★★★
ラケットの球音軽き寒稽古★★★

●小口泰與
水仙の影揺れにけり夕まぐれ★★★

寒雁や単線の貨車過ぎ行ける★★★★
早朝餌を獲りに空を飛ぶ雁の下を、単線の線路を貨車がことこと過ぎて行く。荒涼とした風景のなかにも、命の通う雁、貨物を載せて過ぎゆく貨車に少しの温かさがある。(高橋正子)

寒梅やじんじん響く靴の指★★★

●多田有花
寒霞はるかに望む須磨明石★★★

蝋梅や明石海峡はるばると★★★★
明石海峡がはるばると見えるところに咲いている蝋梅。海と蝋梅の取り合わせで、蝋梅の花の透明感と鮮やかさがよく表現された。(高橋正子)

寒港にポートタワーを探しけり★★★

●桑本栄太郎
交叉せし飛行機雲や霜の朝★★★
水仙の車窓の土手につづきけり★★★
あおぞらの冬田の畝に水光る★★★★

●福田ひろし
亡き人の風を集めて春近し★★★★
恋猫やあたりを乳白色にする★★★
面影を呼び起こしたり猫の恋★★★

1月26日(4名)

●小口泰與
水柱立てて翔ちけり大白鳥★★★★
着水の一花へ夕日大白鳥★★★
白鳥の声高だかと夕まぐれ★★★

●内山富佐子
賽の神書初めの文字空高く★★★

黒焦げの餅の美味しさどんど焼き★★★★
どんどの火で焼く餅は、黒焦げになった部分もあるが、妙に美味しいと私も思う。気持ちのせいだけではなく、実際火の加減によるものだろう。句意が素直に読み取れる。(高橋正子)

目を押さへ火守りする子らどんど焼き★★★

●桑本栄太郎
採り跡の千々の乱れや冬菜畑★★★
着ぶくれて居眠りふける家路かな★★★
信号に集う尾灯や寒夕焼け★★★

●高橋信之
寒梅の白あり紅あり空の青★★★★
梅の谷鳥啼き風の吹き抜ける★★★
梅の谷その半分に陽が当たる★★★

1月25日(5名)

●小口泰與
北風や明らかなりし榛名山★★★★
凍てつくような北風が吹き、塵を吹き飛ばし、榛名山の姿が明らかになった。日々見え方の変わる榛名山の今日の姿だ。(高橋正子)

冬木の芽ふぶく赤城の裾野かな★★★
寒鯉のあぎとう中や夢うつつ★★★

●河野啓一
池の端の石も凍てつく寒の朝★★★
庭隅に春待つ心草揺れて★★★
烏鷺競う碁石音(いしおと)響く春近し★★★★

●桑本栄太郎
冬萌や土手の南面青々と★★★★
土手を歩くと、暖かい南面の傾斜には、草が青々と萌え始めている。枯のなかに緑を見るのは春が近づいていると思えて嬉しいものだ。直さが句意にふさわしい。(高橋正子)

菜の花の早やも一列黄明かりに★★★
冬日さす支柱に低き豆の蔓★★★

●小西 宏
雲垂れて手袋の手のなお痛し★★★
冬薔薇の乾いた庭にひとり立つ★★★★
風寒く群れる鴉に餌を撒く★★★

●高橋秀之
北風に向かって走る女子マラソン★★★
日が昇り窓を開ければ冬の風★★★
冬の日がベランダの布団に降り注ぐ★★★★

●高橋信之
梅林の斜面の白と紅の花★★★
梅林を一望ふところ深き谷★★★
寒梅の大きな一樹に対面す★★★★

●高橋正子
寒梅に水の流れのきらめき落つ★★★★
「寒梅」に「水の流れ」の取り合わせがいい。寒の最中のみずみずしい風景だ。

寒梅に谷間の草の萌えはじむ★★★
寒梅の紅白ひらく谷日和★★★

1月24日(7名)

●迫田和代
朝早く歩いて来る人の白い息★★★★
早朝に向こうから歩いて来る人がいる。その人が命ある人である証拠のように、「白い息」が見える。白い息が鮮やかだ。(高橋正子)

陽の光邪魔になりそう雪だるま★★★
窓の外ちらちら雪の庭の花★★★

●小口泰與
寒鰤や折から合格通知来る★★★★
小女子も駆ける夕日やみかん山★★★
赤城山(あかぎ)晴荒れる浅間山(あさま)や空っ風★★★

●古田敬二
菜花入れる夕餉の鍋に色豊か★★★
校庭の歓声寒林抜けて来る★★★★
寒林のこちら側と向こう側とに違う世界が、寒林を歩く作者の心を通してつながっている妙味。(高橋正子)

寒梅の蕾にぎやか青空へ★★★

●多田有花
少年の声はつらつと寒の朝★★★
よく晴れて春遠からじと思いけり★★★
寒林の枝の彼方に飛行機飛ぶ★★★★

●祝恵子
下車すれば古都の歩きの寒の街★★★★
朱の塗りの柱に破魔矢藁の亀★★★
水仙の吹かれしままに咲いており★★★

●内山富佐子
雪晴れ間ふんわり浮かぶ白き雲★★★
托鉢の僧の読経や冬夕焼け★★★★
雪消えし街を大股で闊歩す★★★

●桑本栄太郎
音も無く真夜の目覚めや寒の雨★★★★
ぷつくりと飯に黄身乗せ寒卵★★★
煙り立つ峰の間(あわい)や春隣★★★

1月23日(5名)

●小口泰與
冬霧の消ゆる所や隠れ沼★★★★
着ぶくれてかつて女(おみな)の起ち居かな★★★
山裾のちょこっと見える冬赤城★★★

●桑本栄太郎
椿葉の光りかがやき冬日燦★★★
泰然と剪られ並木の枯銀杏★★★★
冬日さす雲と日射しの交々に★★★

●福田ひろし
捨てきれぬ冬シャツのまた洗われし★★★
雪降りて昭和思わす赤き�茲★★★
古きほど着心地の増す冬シャツや★★★★

●川名ますみ
寒晴の雲を讃えつ通院路★★★★
寒晴の青空に浮かぶ雲の美しさは、通院とは言え、久しぶりの外出の身に、「讃える」ほどの美しさだった。そんな雲を見た嬉しさ、心のはずみが伝わってくる。(高橋正子)

冬びより角に黄色の三輪車★★★
冬夕焼廊下の壁のつと染まり★★★

●古田敬二
蕾と言う命の準備寒林に★★★★
ひなたぼこうつらうつらと句が浮かぶ★★★
大寒や尾根に出るとき風強し★★★

1月22日(3名)

●古田敬二
寒の雲なき空の下に立つ★★★

雪吊りの縄一本も緩まずに★★★★
雪催いの日であろうか。雪吊りの縄が一本たりとも緩むことがない。すで見事な職人技だ。見るものの目に凛々しく映る。(高橋正子)

天辺を揃えて剪定寒梅林★★★

●小口泰與
隼や利根の瀬頭波おどる★★★★
冬雲の尾の上(え)の木々を離れけり★★★
おやみなき雨や河原のラガーマン★★★

●桑本栄太郎
風花や天女の吐息かと思う★★★
冬麗のバス降り来たる老人会★★★
大寒と云えど小枝のみどり初む★★★★

●デイリー句会投句箱/1月15日~21日●


※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/1月15日~21日

[1月21日]
★出づる日を拝みて冬耕始めけり/小口泰與
「出づる日」は、輝きも強く、有難さも一層だ。自然と拝む気持ちにさせられる。この太陽あればこそと耕し始める。謹直な日本の農夫の姿だ。(高橋正子)

★蝋梅の水滴こぼるる膨らみに/祝 恵子
蝋梅についた水滴が、こぼれそうに膨らんでいる様子。蝋梅の色を透かせた水滴が大きく膨らんで、手にしたいほど美しい。(高橋正子)

[1月20日]
★笹鳴や今朝の赤城山(アカギ)は靄の中/小口泰與
笹鳴が聞こえ、赤城山は靄の中にある。雄々しい山容の赤城山も靄の包まれやわらかに見える。春の足音が聞こえる。(高橋正子)

★革靴で砂丘に上る冬怒濤/福田ひろし
旅の途中か、砂丘に上る用意もなく思い立ってのことか。砂丘があるから革靴のまま上ると、怒涛が荒々しい音で寄せている。冬の怒涛に向かい、内なる力が湧く思いだろう。(高橋正子)

[1月19日]
★寒のバスひとりの客を吐き出しぬ/多田有花
寒の寒々とした空気のなかに、バスから一人の客が降りた。しかし、それは、降りたのではなく、バスが客一人を吐き出したかのようなのだ。着膨れで膨らんだようなバスとあたりの寒々とした景色が思われる。(高橋正子)

★水色の空の高さに枯柳/桑本栄太郎
水色の空に、刷かれたように立つ枯柳の枝。もううっすらと緑がかっても見えるこの頃だ。真冬の最中ながら、水色の空に春への期待が忍ばれる。(高橋正子)

[1月18日]
 銚子
★沖合いに風車の廻る寒の入り/小川和子
太平洋を背景に立つ風力発電の風車は、近代的な風景を作っている。沖合いを吹く風の寒さもいよいよ寒そうで、寒の入りを印象付ける。新しい印象の寒の入りの句だ。(高橋正子)

★叢に跳び来て笹子ふと声す/小西 宏
叢を通りすがると笹子が跳んで入り込み、チャチャ、チャチャと鶯らしからぬ声をあげる。笹鳴きを聞くと「春遠からじ」と思う。(高橋正子)

★新幹線の車窓一面冬の富士/高橋秀之
新幹線で上京するとき、真っ白い冠雪の富士が窓を占める。雪を頂いた冬の富士は自然の力強さをもって圧倒する。(高橋正子)

[1月17日]
★朝風が枝を揺らせり日脚伸ぶ/多田有花
朝の風が枝を揺らしその間に青空見える。冷たいながらも心身が引き締まる爽快感がある。こんな日には、「日脚伸ぶ」うれしさがある。(高橋正子)

★十日戎太鼓のバチは子がならす/祝恵子
商都大阪ならではの十日戎の賑わいはうれしいものだ。子供もその賑わいに参加して、太鼓のバチをもって、鳴らす。八方縁起がよい。(高橋正子)

[1月16日]
★裸木の林に透ける街灯/小西 宏
裸木の林に透ける街の灯に、枯れの美しさ、また逆に灯の美しさが思われる。(高橋正子)

[1月15日]
★今朝ついに向こうが透け見え冬木立/古田敬二
すっかり木の葉が散ってしまい、向こうが透けて見えるようになった。さっぱりとして潔い冬景色だ。(高橋正子)

★明け方の霰に元気貰いけり/内山富佐子
明け方、霰の音で目を覚ましたのであろう。霰が撥ね、弾ける音の勇ましさに、寒さを思うのではなく、元気を貰った若さ。(高橋正子)

★球を蹴る冷たき風を朗らかに/小西 宏
球を蹴るときは、冷たい風もなんのその。球を蹴るのが楽しければ、冷たい風だって朗らかにしてしまう。楽しい熱気が伝わる。(高橋正子)

1月15-21日

1月21日(6名)

●小口泰與
朝霜や風の治まる利根河原★★★
己が影巨人となりて冬田越ゆ★★★

出づる日を拝みて冬耕始めけり★★★★
冬の「出づる日」は、輝きも強く、有難さも一層だ。自然と拝む気持ちにさせられる。この太陽あればこそと耕し始める。謹直な日本の農夫の姿だ。(高橋正子)

●河野啓一
鈍色の冬空悲し人の業(ごう)★★★
枯木立眺めつつ行く丘の道★★★★
軒裏に柿ひとつ揺れ風の中★★★

●佃 康水
柏手の揃う親子へ春近し★★★
焼牡蠣や香の漂える裏参道★★★
寒風を切って走者の眼の真直ぐ★★★★

●祝恵子
炎へと注連縄飛ばす自らに★★★
小豆粥鍋よりよそう小皿へと★★★

【原句】蝋梅の水滴こぼるる膨らみ
蝋梅の水滴こぼるる膨らみに★★★★(正子添削)
蝋梅についた水滴が、こぼれそうに膨らんでいる様子。蝋梅の色を透かせた水滴が大きく膨らんで、手にしたいほど美しい。(高橋正子)

●古田敬二
大寒の気流を滑る鳥高し★★★
大寒の風にからから鳴る竹林★★★★
冬の陽がまぶしい鍬を高く振る★★★

●桑本栄太郎
山崎の峰に十字架春待たる★★★★
サントリー大山崎の冬の峰★★★
ジョギングの老女追い抜く春隣★★★

1月20日(5名)

●小口泰與
笹鳴や今朝の赤城山(アカギ)は靄の中★★★★
笹鳴が聞こえ、赤城山は靄の中にある。雄々しい山容の赤城山も靄の包まれやわらかに見える。春の足音が聞こえる。(高橋正子)

白鳥や湖面は紅に染まりける★★★
ひんぷんと雪や利根川滔々と★★★

●河野啓一
冬野行く青きも見えて鳥の声★★★
浮き寝鳥川面の波の静かなる★★★
蜜柑撒くすぐに来れる目白かな★★★★

●多田有花
大阪のビル群望む寒の山★★★
大寒や日ごと光は明るさを★★★
大寒の頂に正午の鐘を聞く★★★★

●桑本栄太郎
<大阪高槻平野>
冬耕の畝の間や水の空★★★
柔らかにうねる生駒や春隣★★★★
風雲の嶺に至るや冬日影★★★

●福田ひろし
革靴で砂丘に上る冬怒濤★★★★
旅の途中か、砂丘に上る用意もなく思い立ってのことか。砂丘があるから革靴のまま上ると、怒涛が荒々しい音で寄せている。冬の怒涛に向かい、内なる力が湧く思いだろう。(高橋正子)

万両を売りし年寄り鼻高く★★★
電線の寒鴉みな西を向く★★★

1月19日(7名)

●河野啓一
耀かな冬の朝日よ受験生★★★★
青き頃想い出すかな歌かるた★★★
恋歌を聞きて久しく歌加留多★★★

●小口泰與
山風の崖を刳るや霜柱★★★
寒暁の白き浅間に朝日かな★★★★
山肌の動かぬ影や落葉焚★★★

●小川和子
凪ぐ沖を照らして昇る冬満月★★★★
灯台の燈の滲み見ゆ五日かな★★★
潮騒の限りなきかな冬の海★★★

●多田有花
寒のバスひとりの客を吐き出しぬ★★★★
寒の寒々とした空気のなかに、バスから一人の客が降りた。しかし、それは、降りたのではなく、バスが客一人を吐き出したかのようなのだ。着膨れで膨らんだようなバスとあたりの寒々とした景色が思われる。(高橋正子)

ユニフォーム溢れて寒の河川敷★★★
深草の里を辿れば蝋梅香る★★★

●桑本栄太郎
カーテンを開けるや白き雪の嶺★★★
風雪やフラッグポールのカラカラと★★★

水色の空の高さに枯柳★★★★
水色の空に、刷かれたように立つ枯柳の枝。もううっすらと緑がかっても見えるこの頃だ。真冬の最中ながら、水色の空に春への期待が忍ばれる。(高橋正子)

●小西 宏
冬枯れに今は動かぬ水車小屋★★★★
霜解けの泥濘(ぬかるみ)道に日の眩し★★★
幼子の食欲盛ん初句会★★★

●下地鉄
大寒の海の彼方の日照りかな★★★★
暖かい沖縄の「大寒」は想像するばかりであるが、生活者にとっては、彼方の海の「日照り」に独特な感じをもつのだろう。大寒の太陽の強さを思う。(高橋正子)

暖房器の重きうねりの青さかな★★★
うす寒の止めたき煙草又一つ★★★

1月18日(8名)

●小口泰與
山風を育む嶺々や霜畳★★★
まっすぐに昇る煙や冬木の芽★★★
手袋の五指じんじんと畷かな★★★★

●小川和子
 銚子
沖合いに風車の廻る寒の入り★★★★
太平洋を背景に立つ風力発電の風車は、近代的な風景を作っている。沖合いを吹く風の寒さもいよいよ寒そうで、寒の入りを印象付ける。新しい印象の寒の入りの句だ。(高橋正子)

年明くる利根の河口の藍深し★★★
煌めきて漁船に集る冬かもめ★★★

●桑本栄太郎
天へ向く桜冬芽の序曲かな★★★
寒風のさざ波寄せる池の縁★★★
宵空の嶺の茜や日脚伸ぶ★★★★

●小西 宏
叢に跳び来て笹子ふと声す★★★★
叢を通りすがると笹子が跳んで入り込み、チャチャ、チャチャと鶯らしからぬ声をあげる。笹鳴きを聞くと「春遠からじ」と思う。(高橋正子)

万作の冬芽膨らむ風の丘★★★
蝋梅の蕩(とろ)けるような空の青★★★

●高橋秀之
新幹線の車窓一面冬の富士★★★★
新幹線で上京するとき、真っ白い冠雪の富士が窓を占める。雪を頂いた冬の富士は自然の力強さをもって圧倒する。(高橋正子)

冬ばれの日差しに明るい東京駅★★★
冬りんご大きな口のひとかじり★★★

●高橋信之
水仙に寺の障子がよく似合う★★★
ろうばいの黄が嬉し今日の空の青★★★
一月の朝の日差しに書を開く★★★★

●高橋正子
若き日に求めし菓子器に桜餅★★★★
(自句自解)朱塗りのシンプルな菓子器を若い頃買ったが、朱色が少し明るすぎると思った。それから40年近く経つだろうか、朱色が落ち着いてきた。それに季節にはまだ早いが桜餅を盛った。

ヒアシンス窓辺に清き香を満たし★★★
冬苺ひとつが熟れて授賞式★★★

1月17日(7名)

●小口泰與
単線の貨物の尾灯冬の雨★★★
山風の空を掃きけり霜たたみ★★★
一本の太き藁しべ寒鴉★★★★

●迫田和代
寒の水流れた後の旨さかな★★★
遠い日の凍傷の手忘られぬ★★★
静かなる雪降る夜の淋しさや★★★★

●桑本栄太郎
ひとつずつ空慕い居る冬芽かな★★★
剪定の枝の拳や寒の暮れ★★★
山茶花の垣根や樹下の緋の色に★★★★

●小西 宏
しばし霰走らせ黒きアスファルト★★★
雲低き冬ざれの里人なき街★★★
風の行く木の葉隠れの寒椿★★★★

●古田敬二
寒椿蕾の奥まで陽を受けて★★★
蝋梅やピント会う時香りけり★★★★
満ちて来る運河の潮に都鳥★★★

●多田有花
朝風が枝を揺らせり日脚伸ぶ★★★★
朝の風が枝を揺らしその間に青空見える。冷たいながらも心身が引き締まる爽快感がある。こんな日には、「日脚伸ぶ」うれしさがある。(高橋正子)

走るタイヤの音で時雨に気付く★★★
松過の雑木林に差し入る陽★★★

●祝恵子
十日戎太鼓のバチは子がならす★★★★
商都大阪ならではの十日戎の賑わいはうれしいものだ。子供もその賑わいに参加して、太鼓のバチをもって、鳴らす。八方縁起がよい。(高橋正子)

鳴き声を求めて枯葉の森に入る★★★
女の子男の子居て回す独楽★★★

1月16日(5名)

●小口泰與
さもなくば赤城颪を浴びに来よ★★★
冬の星水の流転を眼間に★★★
枯芒夕日賜わり凛々しかり★★★★

●河野啓一
木漏れ日に僅かばかりの暖をとり★★★
【原句】宿に入る窓に一鉢福寿草
宿に入れば窓に一鉢福寿草★★★★(正子添削)
垣根沿いひっそり咲ける石蕗の花★★★

●桑本栄太郎
【原句】水鳥の着水長き飛沫(しぶき)かな
水鳥の着水長き飛沫あげ★★★★(正子添削)
寒風のさざ波寄せる池の縁★★★
一画の風に残され蘆枯るる★★★

●小西 宏
短日の丘の広場にナイスシュート★★★
午後五時の冬深くあり枝の影★★★

裸木の林に透ける街灯★★★★
裸木の林に透ける街の灯に、枯れの美しさ、また逆に灯の美しさが思われる。(高橋正子)

●古田敬二
小春日や水琴窟の三拍子★★★
【原句】蝋梅の香りにピント会いにけり
蝋梅の香りのなかにピント会う★★★★(正子添削)
小春日や池に映るもの柔らかし★★★

1月15日(7名)

●古田敬二
今朝ついに向こうが透け見え冬木立★★★★
すっかり木の葉が散ってしまい、向こうが透けて見えるようになった。さっぱりとして潔い冬景色だ。(高橋正子)

はらからのそれぞれ小恙初電話★★★
お互いの息災喜ぶ初電話★★★

●小口泰與
荒れ狂う赤城や我は日向ぼこ★★★
黒雲の狼藉なるや冬の虹★★★
埒もなき風や湖鳰の笛★★★★

●内山富佐子
 スキー発祥の地金谷山でのレルヒ少佐の顕彰会
袴着け一本杖の滑りかな★★★
九十の母健やかに小正月★★★

明け方の霰に元気貰いけり★★★★
明け方、霰の音で目を覚ましたのであろう。霰が撥ね、弾ける音の勇ましさに、寒さを思うのではなく、元気を貰った若さ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
冬雲の切れ間に淡き日射しかな★★★
くだら野や畦に煙りの昇り居り★★★★
嵐去り宵のあおぞら日脚伸ぶ★★★

●多田有花
ショー終わり寒中の回転寿司を食ぶ★★★
ぬくぬくと寒の風雨を聞き目覚む★★★★
三角も丸も四角もおでん種★★★

●河野啓一
冬野にも古都の歴史や石畳★★★
切り株にひこばえ見えて霜の朝★★★
初場所の熱気テレビの画面にも★★★★

●小西 宏
球を蹴る冷たき風を朗らかに★★★★
球を蹴るときは、冷たい風もなんのその。球を蹴るのが楽しければ、冷たい風だって朗らかにしてしまう。楽しい熱気が伝わる。(高橋正子)

窓ガラス打つ雨粒の昼の冷え★★★
裸木の影丘に立つ夕を背に★★★

今日の秀句/1月8日~14日

[1月14日]
★青天に銀杏裸木枝払われ/川名ますみ
真っ青な空にそそり立つ銀杏の裸木。この季節に枝が打ち払われ、すっきりと樹形が整えられる。芽吹く季節が楽しみだ。(高橋正子)

★枯芝に青きを探し小道ゆく/河野啓一
小道を辿り、枯芝の根本を覗きこんだりすると、柔らかな緑の芝が目につき、驚く。表面の枯れ色からは、想像もできないけれど、着実に春への準備がされている。小道を辿る楽しさとなる。(高橋正子)

<鴨川・四条大橋>
★曇り来る遙か鞍馬や雪もよい/桑本栄太郎
四条大橋からの眺め。空が掻き曇る思えば遥か鞍馬は雪催いのようだ。鞍馬へと思いが馳せ、動きのある句となった。(高橋正子)

[1月13日]
★夕映えの湖へ着水大白鳥/小口泰與
夕映えの湖に大白鳥が羽を広げて、シルエットのように着水する。着水の水しぶきがきらめく。大白鳥の存在感に固唾を呑むような素晴らしい光景だ。(高橋正子)

★冬日さす車内まぶしき家路かな/桑本栄太郎
晴れた日には、日脚が伸びた印象がもてるこの頃。所用で出かけた車内にも冬日がまぶしく差し込んで、家路もうららかな気持ちになる。(高橋正子)

★寒晴れに山城の山連なりぬ/多田有花
「山城の山」に連なる山々が見渡せ、寒晴れの空のもとに、気持ちが壮大になる。(高橋正子)

[1月12日]
★水流し七草の葉を選りわける/祝恵子
七草のパックが売られているが、ひとまとめになった七草を、名を確かめながら水を流して洗い選り分ける。七草が揃っているのも新春らしくてうれしいものだ。「水を流して」に七草に清冽さが加わった。(高橋正子)

★餅の花菓子舗の梁に幹這わし/佃 康水
正月の餅花を個人の家で飾ることは少なくなったが、菓子舗などでは華やかに飾っていることがある。この菓子舗は老舗なのだろう。梁も立派で、その梁に添わせて幹の堂々とした餅花が大ぶりで新春の明るさを振りまいている。(高橋正子)

[1月11日]
★雁木下町内のどんど焼き告ぐ/内山富佐子
雁木のある雪国にも、正月のお飾りなどを集めて焼く「どんど焼き」の日が来た。雁木を通って町内に「どんど焼き」を知せて歩く雪国の暮らしがしのべる。(高橋正子)

★雪道と朝焼けの色混じり合う/迫田和代
雪道を朝日が染めて、雪に朝焼けのバラ色が見える。雪道に絵画的な明るい美しさを見た。(高橋正子)

 追悼
★友召され岩木の山に雪降り積む/小川和子
岩木山は津軽富士と呼ばれているが、富士山よりも優しい山容。岩木山を友と眺めたことであろうが、その友が天に召されて、ただ今は、静かに雪が降り積もる。悲しみがあまりにも静かである。(高橋正子)

[1月10日]
★戎講青笹どっと奉じられ/河野啓一
この句は100万人の人出で賑わうという今宮神社の十日戎の様子だろう。福笹の青笹に千両万両の小判を付けて捧げる。青笹は目に爽やかで、芳しく縁起がよい。それが「どっと」というほどの量で思わず笑みがこぼれる。(高橋正子)

[1月9日]
★五日には天神宮へペダルこぐ/祝 恵子
松の内も過ぎ、五日となった今日は、日常に戻りはしたもののどこか正月気分がまだ残っている。馴染みの天満宮まで自転車を漕いで初詣がてらに出かけたのであろうか。うきうきした気分楽しい。(高橋正子)

[1月8日]
★群雀四方に居りし枯野かな/小口泰與
蕭条とした枯野にも、四方に雀の群れが居て草の穂からこぼれた種などを啄んでいる。枯野と言えど生き生きと暮らす雀を育んでいる。(高橋正子)

★餅花の明るき朝やデイの窓/河野啓一
正月明けデイサービスに通うと、窓には餅花が明るく、柔らかな色合いで垂れ下がっている。目にすれば心和む餅花だ。(高橋正子)

★松過ぎや漆器を布に包み入れ/佃 康水
松も過ぎ、正月に使った雑煮の椀や、お節の重箱などをしまう仕事がある。漆器を傷めないように、布に包んで箱にしまう。正月を無事終えた安堵に加え、「松」「布」の言葉から、漆器の柔らかな艶がことさら印象に残る。(高橋正子)

1月8日-14日

1月14日(6名)

●川名ますみ
【原句】青天に裸の銀杏枝払う
青天に銀杏裸木枝払われ★★★★(正子添削)
真っ青な空にそそり立つ銀杏の裸木。この季節に枝が打ち払われ、すっきりと樹形が整えられる。芽吹く季節が楽しみだ。(高橋正子)

胸もとのスワロフスキー冬の灯に★★★
冬の夜にスワロフスキー揺れており★★★

●小口泰與
葉牡丹の葉虫の穴のまた増ゆる★★★
青空や裾野も雪の浅間山★★★
からからに乾びし大地虎落笛★★★★

●河野啓一
冬温し夕日に映ゆるちぬの海★★★

枯芝に青きを探し小道ゆく★★★★
小道を辿り、枯芝の根本を覗きこんだりすると、柔らかな緑の芝が目につき、驚く。表面の枯れ色からは、想像もできないけれど、着実に春への準備がされている。小道を辿る楽しさとなる。(高橋正子)

寒中に旧友(とも)の訃報を知らされて★★★

●多田有花
青空へおのおの枝を寒の木々★★★★
寒晴れの浪花の街のアイスショー★★★
アイスショーリンクの上の成人式★★★

●桑本栄太郎
<鴨川・四条大橋>
曇り来る遙か鞍馬や雪もよい★★★★
四条大橋からの眺め。空が掻き曇る思えば遥か鞍馬は雪催いのようだ。鞍馬へと思いが馳せ、動きのある句となった。(高橋正子)

【原句】川中に突つ込み餌の百合かもめ
川中に突っ込み餌獲る百合かもめ★★★(正子添削)

冬萌えや土手に日射しの留まりぬ★★★

●小西 宏
発電の煙の高く太く冬★★★
満天星(どうだん)の冬芽の紅し空青し★★★★
枯芝を駆けて嘴餌(え)を咥う★★★

1月13日(5名)

●古田敬二
夢に見る
頬に皹指に皸少年期★★★
皹の頬皸の手で風呂を焚く★★★★
皸の手で風呂釜に火吹き竹★★★

●小口泰與
夕影の湖の一点大白鳥★★★
夕映えの湖へ着水大白鳥★★★★
夕映えの湖に大白鳥が羽を広げて、シルエットのように着水する。着水の水しぶきがきらめく。大白鳥の存在感に固唾を呑むような素晴らしい光景だ。(高橋正子)

老いてなお着飾る我や日脚伸ぶ★★★

●河野啓一
冬枯れて野に万葉の遺跡かな★★★★
初場所や神も宿るや熱気満ち★★★
山眠る箕面の山も六甲も★★★

●桑本栄太郎
冬日さす車内まぶしき家路かな★★★★
晴れた日には、日脚が伸びた印象がもてるこの頃。所用で出かけた車内にも冬日がまぶしく差し込んで、家路もうららかな気持ちになる。(高橋正子)

剪り口の白き並木や冬ざるる★★★
漱ぎもの干すや山よりしまき風★★★

●多田有花
リフォームのレッグウォーマー寒四郎★★★
城跡の残りし山へ初登山★★★

寒晴れに山城の山連なりぬ★★★★
「山城の山」に連なる山々が見渡せ、寒晴れの空のもとに、気持ちが壮大になる。(高橋正子)

1月12日(8名)

●多田有花
寒の光照り返してや照葉樹★★★
寒の雲陸より海へ流るる昼★★★★
初打ちのコートを出ればしぐれかな★★★

●小口泰與
上州へ風花おろす赤城山(あかぎ)かな★★★★
また一人寒鮒釣りに現れし★★★
ぼつぼつと終活準備日脚伸ぶ★★★

●内山富佐子
冬ざるる通りにポストひとつ立つ★★★★
大き口開けて雪呑む流雪溝★★★
街角に小さき地蔵埋もれをり★★★

●祝恵子
水流し七草の葉を選りわける★★★★
七草のパックが売られているが、ひとまとめになった七草を、名を確かめながら水を流して洗い選り分ける。七草が揃っているのも新春らしくてうれしいものだ。「水を流して」に七草に清冽さが加わった。(高橋正子)

阿吽の像めざめし蕾冬の梅★★★
句帳出しメモして急ぐ冬の街★★★

●桑本栄太郎
<京都ゑびす神社>
青空を掃かんとしたり枯柳★★★
福笹の京の町家に露店かな★★★
ちらほらと笹の路地ゆく残り福★★★★

●河野啓一
若者に意見難し寒の水★★★
誇り高く咲いて散りしも枇杷の花★★★
子らの乗る車の行く手冬夕焼け★★★★

●佃 康水
青竹に並ぶ柄杓や初詣★★★
回廊に薦樽積まれ淑気満つ★★★

餅の花菓子舗の梁に幹這わし★★★★(正子添削)
正月の餅花を個人の家で飾ることは少なくなったが、菓子舗などでは華やかに飾っていることがある。この菓子舗は老舗なのだろう。梁も立派で、その梁に添わせて幹の堂々とした餅花が大ぶりで新春の明るさを振りまいている。(高橋正子)

●小西 宏
餌(え)を撒けば池の氷を駆ける鳩★★★
声掛け合い松持って今日どんど焼き★★★★
枯山の朱のやわらかに夕映える★★★

1月11日(7名)

●小口泰與
水仙を朝の冷気と剪りにけり★★★★
ごうごうと風吹く里や水仙花★★★
鳶を追う二羽の鴉や雪浅間★★★

●内山富佐子
雁木下町内のどんど焼き告ぐ★★★★
雁木のある雪国にも、正月のお飾りなどを集めて焼く「どんど焼き」の日が来た。雁木を通って町内に「どんど焼き」を知せて歩く雪国の暮らしがしのべる。(高橋正子)

引越しの荷物並ぶや蔵開き★★★
背の丈の万両のある店の景★★★

●迫田和代
春近く原爆ドームや空高く★★★
ごうごうと白波狂う冬の海★★★

雪道と朝焼けの色混じり合う★★★★
雪道を朝日が染めて、雪に朝焼けのバラ色が見える。雪道に絵画的な明るい美しさを見た。(高橋正子)

●小川和子
 佐倉
正月の枯木影なす城址かな★★★
竹林に日差しゆたかや藪椿★★★

 追悼
友召され岩木の山に雪降り積む★★★★
岩木山は津軽富士と呼ばれているが、富士山よりも優しい山容。岩木山を友と眺めたことであろうが、その友が天に召されて、ただ今は、静かに雪が降り積もる。悲しみがあまりにも静かである。(高橋正子)

●桑本栄太郎
(鴨川、四条大橋)
橋上の人集まりぬ都鳥★★★
外つ人の橋にあまたや初写真★★★
寒釣りや底のきらめく竿の先★★★★

●河野啓一
七福神めぐり終わりしご朱印帳★★★★
正月のテレビを孫子とともに見る★★★
初凪や鳥声さえも澄みわたり★★★

●古田敬二
風邪癒えて山茶花朝に透き通る★★★
風邪癒えて庭の山茶花いよよ紅★★★
湯たんぽを抱きて山本周五郎★★★★

1月10日(5名)

●小口泰與
蝋梅や妙義山(みょうぎ)の風のやわらかし★★★★
轆轤のこけしの音や寒椿★★★
侘助に雨の校庭子犬かな★★★

●河野啓一
戎講青笹どっと奉じられ★★★★
この句は100万人の人出で賑わうという今宮神社の十日戎の様子だろう。福笹の青笹に千両万両の小判を付けて捧げる。青笹は目に爽やかで、芳しく縁起がよい。それが「どっと」というほどの量で思わず笑みがこぼれる。(高橋正子)

お偉方揃いの法被で戎講★★★
天下茶屋戻れば今宮戎かな★★★

●桑本栄太郎
<雪の四条大橋界隈>
雪積みの祇園小路や弁柄壁★★★★
寒釣りの魚籠(びく)下がり居り鴨川に★★★
せせらぎの小枝雪乗せ高瀬川★★★

●小西 宏
泥にまみれ素手赤くして氷遊び★★★★
遊ぶ野に冬暖かな日の恵み★★★
藪低く冬鶯の跳ぶ忙しさ★★★

●古田敬二
庭のものまん丸くして雪積もる★★★★
暁暗に仕事はじめの子を送る★★★
薄暮なる街路樹枝までくっきりと★★★

1月9日(6名)

●小口泰與
我が影の冬田越えける朝ぼらけ★★★
寒梅や湯宿の柱黒光★★★★
寒鴉声高らかや家庭ごみ★★★

●河野啓一
千両を鳥運び来て木の根元★★★★
ほのかなる食パン焼ける香りして★★★
正月も歯を大切に医者初め★★★

●祝恵子
スノータイヤ履かせ犬連れ皆でくる★★★
穂を散らす注連縄つつく雀いて★★★

五日には天神宮へペダルこぐ★★★★
松の内も過ぎ、五日となった今日は、日常に戻りはしたもののどこか正月気分がまだ残っている。馴染みの天満宮まで自転車を漕いで初詣がてらに出かけたのであろうか。うきうきした気分楽しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<雪の桂川>
蕭条と白き中洲や枯尾花★★★
<雪の四条大橋>
見渡せば遙か鞍馬や雪の嶺★★★
南座の大屋根雪の初化粧★★★★

●小西 宏
ユニクロで身を固め行く冬の月★★★
動かざる人あり寒の松手入★★★★
枯れ蔦にまだ住む人の在りや無しや★★★

●高橋秀之
松過ぎて神社の本殿幕を替え★★★★
八日の町名残りは門松だけとなり★★★
尾道へ在来線の旅初め★★★

1月8日(6名)

●古田敬二
夕食は鍋よと菜を抜く鍬初め★★★
子へ持たす最後の一株冬野菜★★★★
銀色に光りて遊ぶ冬花芽★★★

●小口泰與
山風のビル駆け抜けし達磨市★★★
群雀四方に居りし枯野かな★★★★
蕭条とした枯野にも、四方に雀の群れが居て草の穂からこぼれた種などを啄んでいる。枯野と言えど生き生きと暮らす雀を育んでいる。(高橋正子)

あけぼのの霜を鎧ひし車かな★★★

●河野啓一
餅花の明るき朝やデイの窓★★★★
正月明けデイサービスに通うと、窓には餅花が明るく、柔らかな色合いで垂れ下がっている。目にすれば心和む餅花だ。(高橋正子)

成人式羽織袴のリハーサル★★★
枯れ葎光るものあり寒の入り★★★

●桑本栄太郎
<三日夕方山口から京都へ>
孫を抱きうから確かむ三日かな★★★★
汽笛鳴り別れ哀しき三日かな★★★
冬茜うしろに残す車窓かな★★★

●小西 宏
釣り人の石投げ池の氷割る★★★
冬ざれの小山の円し青空に★★★★
葉を削ぎて棘(いばら)に重し冬の薔薇★★★

●佃 康水
空曇るかに旋回す鴨千羽★★★
人日や眼科受診にお墨付き★★★
 
松過ぎや漆器を布に包み入れ★★★★
松も過ぎ、正月に使った雑煮の椀や、お節の重箱などをしまう仕事がある。漆器を傷めないように、布に包んで箱にしまう。正月を無事終えた安堵に加え、「松」「布」の言葉から、漆器の柔らかな艶がことさら印象に残る。(高橋正子)