8月11日~8月19日

8月19日(5名)
小口泰與
夕さりの湖渺渺と花芒★★★
好日のひと日や利根の下り簗★★★
石を積む一ノ倉沢秋の声★★★
廣田洋一
口角に汁溢れ出る水蜜桃★★★
雨上がり風さわさわと今朝の秋★★★
栗ご飯黄色く光る夕べかな★★★★
多田有花
ジャズピアノ静かに流れ風は秋★★★
朝の月飛行機雲の上に出て★★★
秋めきて路傍の草の刈られけり★★★★
桑本栄太郎
新涼の風の入り来る朝の窓★★★
嵐去り歩道埋め居り蝉の殻★★★
秋雲のつぎつぎ生まる嶺の奥★★★★
秋の雲が生まれ、流れ出て来る。生まれ出るところは、嶺の奥。誰もよく知らない、嶺の奥から。ただそれだけのことが、爽やかに思える。(髙橋正子)
弓削和人
とんぼうは車窓に寄りて競うかな★★★
終電の人みな黙す秋の顔★★★★
人間の顔に季節があるかと言う問題に直面するが、秋を表す雰囲気の顔と言えば、目を開いているが、思索にふけるような、頬がやや冷たい顔となるのではないだろうか。仕事で疲れた人たちの乗る終電では、誰も話さない。疲れ切っていても眠りはしない。なにか思うような印象的な顔が並ぶ車内。(髙橋正子)
花びらのなきやコリウス秋さやか★★★
 
8月18日(4名)
小口泰與
徐に利根を眺めし下り簗★★★
利根の瀞渦白きかや赤蜻蛉★★★
茫茫の長き裾野や花木槿★★★
廣田洋一
密やかに窓打つ音や秋の雨★★★
古稀祝ふ集ひを終えて秋の雨★★★
秋雨や人影見えぬ街の角★★★
桑本栄太郎
つぎつぎと名乗り出でたる法師蝉★★★
一木を被う盛りや葛の花★★★★
合歓の実のあまた垂れ居り川の上★★★
弓削和人
飼い犬のスキップちらと秋来る★★★★
散歩に連れ出された犬か。爽やかな秋の空気が嬉しくて、スキップのような軽快な走り方ちらとする。すれ違った作者の心にもに秋が来たうれしさが読み取れる。軽い句の良さがある。(髙橋正子)
蟋蟀や家屋建てつつ雨上がり★★★
終着の駅へ向かうや秋の傘★★★
8月17日(5名)
小口泰與
啄木鳥や小沼の水面うす緑★★★
飛び鳴きの鳥や木の実へまっしぐら★★★★
群なして草地へ下りし小椋鳥★★★
廣田洋一
送り火や上る炎に合掌す★★★
送り火やしんがりに就く息子なり★★★★
桃の皮手で剝くほどに柔らかき★★★
桑本栄太郎
新涼のオールディーズやバーバーに★★★★
「新涼」が効いている。静かに流れるオールディーズに髪を刈ってもらう客も
店の主人も古き良き時代を楽しんでいる。理髪店のひと時がいい時間となっている。(髙橋正子)
白き腹みせて落蝉仰のけに★★★
大屋根の甍まぶしき残暑かな★★★
多田有花
唐突に鳴きだす夜の法師蝉★★★
盆過ぎの雨心地よく聞いている★★★★
朝の驟雨残る暑さを吹き払う★★★
弓削和人
夜食とる暮るるを忘れ読み耽り★★★
秋橋の行き交う車ゆるゆると★★★
停車いま線路の際のすすき揺れ★★★★
 
8月16日(5名)
小口泰與
渓流の波百態や秋の雲★★★
奥利根の城跡狭し鵙の贄★★★
菩提寺の点鬼簿読むや秋の声★★★
廣田洋一
星一つ窓を斜めに流れけり★★★★
日比谷公園あめりか芙蓉咲かせをり★★★
用水路細々流れ白芙蓉★★★
多田有花
なつかしき人と語らう秋の昼★★★
交差点残暑の城を見て帰る★★★
河岸段丘色づき初めし田もありぬ★★★★
「 河岸段丘 ( かがんだんきゅう ) 」とは川の流れに 沿 ( そ ) ってつくられた 階段状 ( かいだんじょう ) の地形のこと。景観は棚田のような眺めといってよいだろう。そういう特異な地形の田も稲の穂の熟れ始めた色合いが見える。(髙橋正子)
桑本栄太郎
背の高く鉄砲百合の白さかな★★★
新涼のオールディズとやバーバーに★★★
新涼の嶺の端確と定まりぬ★★★
弓削和人
枯薄落書きのこる駅を過ぎ★★★
浮洲より見渡す残暑空に溶け★★★
花束を手向けられしや秋の橋★★★
8月15日(5名)
小口泰與
とんぼうの止まりて離る舫い綱★★★★
「舫い綱」は、船を繋ぎとめておく綱のこと。その綱にとんぼが止まっていたのが、離れていった。綱は当然水の上を渡されているので、とんぼ綱に止まりながらも水の上にいて、姿が映っているかもしれない。とてもきれいな秋の情景が詠まれている。
色鳥や大売出しののぼり旗★★★
聞えきし汽笛にまざるきりぎりす(原句)
聞こえきし汽笛に混ざるぎすの声★★★★(正子添削)
多田有花
カンカンと踏切の鳴りカンナ咲く★★★
路地入れば板壁の前に秋の薔薇★★★
明け方はほっと息つく残暑かな★★★
廣田洋一
終戦日玉音聞きて空青き★★★
虜囚記録見直す父の終戦忌★★★
盆休み子供の姿少なかり★★★
桑本栄太郎
母親の田草引き居り終戦日★★★
正午には黙祷したる敗戦忌★★★
ふるさとの送り火想う盆三日★★★★
弓削和人
終戦の戒め守るひといかな★★★
竹伐って貯金箱とす星祭★★★★
星祭りの竹を伐りに行った。笹は七夕飾りに、竹幹は、貯金箱になった。子どものころの思い出か。竹の一節を貯金箱として台所の柱に掛けてあったのをどこかで見た記憶がある。昭和の暮らしが今更に思い出される句。(髙橋正子)
線香や昼下がりの盆の寺★★★
8月14日(5名)
小口泰與
八方に虫の音を聞く星の夜★★★
朝顔や日の盛んなる午後の庭★★★
秋灯下古文書辿る我が家系★★★
多田有花
散華する天女は裸足盆の寺★★★★
残暑の雲山の彼方に湧き上がる★★★
棚経にあわせて着きぬ遠路の客★★★★
廣田洋一
台風の後を追ふかに雲流れ★★★
首掛け銀杏高々伸びて空高し★★★
鶴の首水吹き上げて秋澄めり★★★★
鶴の形をしたおそらく陶器の噴水だろうが、首を上向けて水を吹き上げている。吹き上げた水が落ちて鶴の首から体を濡らしているだろう。「秋澄めり」を実感する景色だ。(髙橋正子)
桑本栄太郎
手に供花の盆供養なるバスの客★★★★
盆のバスに乗ると供花をもった客がいる。バスの中にも今日が盆であることが
示されて、はからずも乗り合わせて人たちも祖先を思う日となったのではなかろうか。(髙橋正子)
想い出づ夕映え光る盆の海★★★
いさり火の闇にきらめく盆の海★★★
弓削和人
一片のたもあみ流れ秋の川★★★
縄張りの争いなしと蜻蛉舞う★★★
ほおずきの色めくほどに軽く舞い★★★
8月13日(5名)
廣田洋一
仏前に牡丹餅供へ盂蘭盆会★★★
新盆を迎へし姪に花送る★★★★
台風の進路を見つつ予定立て★★★
小口泰與
青空へ長き裾野や秋うらら★★★★
縄文の土器の紋様秋の声★★★
朝顔や午後も開かぬ裏鬼門★★★
多田有花
残暑また始まる今日の朝日かな★★★
格子戸に秋の風鈴吊るされて★★★★
明け方の空に残りぬ盆の月★★★
桑本栄太郎
盆波や白兎海岸潮の香に★★★
迎え火の無くて夕餉を摂りにけり★★★★
故郷を離れて住んでいる家族には、祀る仏のいない家族もある。故郷にいれば迎え火を焚いたであろうに、その迎え火もなく、いつものように夕食を摂った。なにか淋しい、取り残されたような思いがある。(髙橋正子)
我らとて生御霊なり盆の夜★★★
弓削和人
通学の夕べの路や白粉花★★★★
珊瑚樹の実り塀より路へ垂れり(原句)
下の句5音でいいと思います。
珊瑚樹の実り塀より路へ垂れ★★★(正子添削)
駅通う人にかくれし白木槿★★★
8月12日(5名)
小口泰與
奥利根の秋色はやし川の風★★★
爽やかや清流渓を流れ行く★★★★
隣家よりピアノの音や秋澄みぬ★★★
廣田洋一
水引の花一直線に空へ伸び★★★★
詰まりたる白き粒見世玉蜀黍★★★
水不足隙間だらけの玉蜀黍★★★
多田有花
境内に緋メダカ泳ぐ盆の寺★★★★
盆の寺の生きとし生けるものはみんな大切にされる感じだ。緋メダカがすいすい泳いで涼を呼んでいて、明るい雰囲気がいい。(髙橋正子)
阿弥陀像のステンドグラス盂蘭盆会★★★
冷房の納骨堂へ墓参り★★★
桑本栄太郎
律儀なる初鳴き聞きぬ法師蝉★★★
初盆と云えど叶はぬ帰省かな★★★
ふるさとを異郷に想う盆供養★★★
弓削和人
秋蜂の巣跡をのこす空き家かな★★★
とんぼうは草のきっさき浮きゐたる★★★★
真鰯を焼くや潮の香想うらむ(原句)
「らむ」は推量の意味なので、「(自分が)想うのだろうか」となって、意味が不自然です。(髙橋正子)
真鰯を焼くや潮の香想いつつ★★★(正子添削)
8月11日(5名)
小口泰與
小鳥來る販売店の早き朝★★★
清流の石洗い行く渡鳥(原句)
「行く」と「渡鳥」とが切れすぎです。
渡鳥清流は石洗い行き★★★★(正子添削)
土産屋の我が名刻みし椿の実★★★
廣田洋一
山崩れのニュース流れる山の日かな★★★
白蓮に赤蓮混じる神の池★★★
手のひらの踊りしなやか風の盆★★★
多田有花
山の日の山に向かいて風が吹く★★★★
山の日は、7月20日の海の日に対して2016年から施行された新しい祝日。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する 」日とされている。何かかを祝うということではないが、山に向かって吹く風があれば、山もいきいきとしてくるように思える。(髙橋正子)
百日紅の赤いきいきと残暑かな★★★
夜もなお厳しき残暑続きおり★★★
桑本栄太郎
暁闇の寝床に聞きぬ威し銃★★★
秋暑し轍の跡のアスファルト★★★
日当たりと日影の確と残暑かな★★★
 
弓削和人
いびつなる唐辛子あり丘の園★★★
橋二つを見下す土手やカンナ咲く★★★
にぎやかな無人販売芙蓉咲く★★★

コメント

  1. 小口泰與
    2022年8月14日 9:23

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    5月11日の投句「渡鳥」の句を添削して頂き、リズムよい句にして頂き有難う御座います。
    今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 小口泰與
    2022年8月17日 19:36

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    8月15日の投句「きりぎりす」の句を添削して頂きリズム良いすっきりとした句にして頂き有難う御座います。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。