7月31日(4名)
小口泰與
水漬く田の一枚ありて夏の鴨★★★
百日紅林泉(しま)の池へと水絶えず★★★★
鍋割山(なべわり)と高さを競う夏ひばり★★★
廣田洋一
知らぬ間にタオルを首に熱帯夜★★★
飲み水に塩味つける酷暑かな★★★
髪切りて溌剌と見ゆ夏女(原句)
髪切りて溌剌として夏の女★★★★(正子添削)
髪を短く切ると女性も、活発に、生き生きとした様子に見える。特に、夏は短い髪は涼しげもあって、逆に女性を印象付けることもある。「夏の女」はまさにそれだろう。原句の「夏女」は、そんな女がいるのかということになる。(高橋正子)
多田有花
夏の朝ホームを抜ける風涼し★★★
大橋や夏霧に端隠されて(原句)
上五の大橋のイメージが湧いてきにくいので、添削しました。
夏霧に端を隠され大橋は★★★★(正子添削)
熱帯夜電車遅延のアナウンス★★★
桑本栄太郎
天翔る名馬の死すや七月尽★★★
日盛りの舗道となりぬ蝉の殻★★★★
炎熱の舗道に乾ぶみみずかな★★★
7月30日(4名)
小口泰與
林泉の鳥声さやか百日紅★★★
滝落ちて水分石の思うまま★★★★
水分石は、滝石に組まれ水を分けるもの、水位を知るためのものなどあって、策定者の美的、思想的な要素があって、配置される。そういったことはともかく。滝の水がたっぷりと落ちて、水分石は思うままに水を分けている。涼しい景色だ。(高橋正子)
大沼の森茫茫と木葉木菟★★★
多田有花
仲良しのひまわり顔を寄せ合って★★★
振り向けば白鷺城あり夏の川★★★
花終わり首うなだれしひまわりよ★★★
廣田洋一
銭湯に一つ置かれし行水桶★★★
ガレージの行水桶に子ら跳ねる★★★★
新築の硝子戸光る晩夏かな★★★
桑本栄太郎
じょわじょわと今朝の序曲や蝉の声★★★
四婆の船場言葉や谷崎忌★★★
日の落つや風の死したる窓の外★★★
7月29日(4名)
小口泰與
夜の蝦蟇の一歩も引かぬ面構え★★★
郭公や朝のワインとハムエッグ★★★★
雲の峰渓流釣り師遡上せり★★★
多田有花
<水陸両用バス スカイダック台場 豊洲・東京Viewコース三句>
五輪競技場建設中の夏★★★
夏の潮洗い流してバスに戻る(原句)
現代俳句では、主語が示されなければ、作者が主語となります。作者がバスに戻った意味になります。
夏の潮洗い流してバスとなる★★★★(正子添削)
水陸両用バスという珍しいものに乗られた。海を走るときは、船。陸にあがればバス。陸にあがると、夏潮を洗い流す。夏潮を洗い流して身代わりする様子が、潔い。(高橋正子)
梅雨空を回るよ回る大観覧車★★★
廣田洋一
一文字に夏帯結び凛と立つ★★★★
司会役夏帯ぽんと叩きけり★★★
夏帯や役目を終えて横座り★★★
桑本栄太郎
きりぎりす風の音色を伝え居り★★★★
くさむらのなかで、きりぎりすが鳴いている。姿が見えないので、風と運ばれて来るきりぎりすの声は、さながら、風の音色を伝えているようだ。その発見が新しい。(高橋正子)
炎天の日がそのままに入日とも★★★★
仰のけに白き腹見せ蝉の落つ★★★
7月28日(3名)
多田有花
<水陸両用バス スカイダック台場 豊洲・東京Viewコース三句>
ピカチュウのバスで向かいし夏の海★★★
バスは舟に変わりて入りぬ夏の海★★★
遊船と手を振りあってスカイダック★★★
小口泰與
飯笊の箍のはずれていたりけり★★★
夜の光蝦蟇と対面したりけり★★★
はんざぎの三代の御代知りたるか★★★
廣田洋一
屋形船屋根より見上ぐ花火かな★★★
花開く花火の音のパチパチと★★★
消えぬ間に大輪揚がる花火かな(原句)
揚花火消えぬ間次の大花火★★★★(正子添削①)
花火が揚がり、揚がった花火は落ちかかると、次にはさらに大きな花火が揚がり、観客をどよめかせる。一つの花火と、次に打ち上げられた花火の関係の微妙さに面白みがある。(高橋正子)
大輪の花を重ねて揚げ花火(正子添削②)
7月27日(4名)
多田有花
<白洲次郎・正子旧宅~武相荘三句>
茅葺から野萱草咲く庭に出る(原句)
茅葺は、茅葺屋根のこと。家を指すときは、茅葺の家、茅葺の宿などと使う。
茅葺の家から野萱草咲く庭へ★★★(正子添削)
竹林と山百合があり武相荘★★★★
バーを持つ土蔵に小さき扇風機★★★
小口泰與
裸子のひょいと顔出す大広間★★★★
肌脱に山風たまう二階かな★★★
ひとすじの流るる汗や恐怖症★★★
桑本栄太郎
二番子の巣は入口の軒の下★★★
昼寝子の夢のうつつや窓の風★★★★
嵐止み忽ち夕の蝉しぐれ★★★
廣田洋一
晴れ上がり浴衣姿の親子連れ★★★
一斉に拍手の湧きし花火かな★★★
大輪の花火重なる隅田川★★★★
7月26日(4名)
小口泰與
扇子持ち古式泳法蒼き空★★★
遠き日や手花火ぷっと消えにける★★★★
彼の人を見ずや草矢の的とせり★★★
多田有花
<白洲次郎・正子旧宅~武相荘>
夏の庭少年次郎の愛車あり★★★
武相荘の庭を引き締め夏木立★★★★
武相荘に限らないと思うが、夏木立が凛と立つと庭が引き締められる。白洲次郎・白洲正子の生活の仕方がわかるような旧宅である。(高橋正子)
入口に竹靴べらと蚊取線香★★★
廣田用入り
雨上がり苺の草の生き返り★★★
四季なりの苺もぎたる朝かな★★★
あちこちの産地の名前苺択る★★★
桑本栄太郎
怨讐の花とは惜しき木槿かな★★★
炎天の青空乱す白き雲★★★
棲み分けの夕にしきりや油蝉★★★
7月25日(4名)
小口泰與
スカールの利根の荒波越え行けり★★★
見上げたる一ノ倉沢登山靴
「登山靴」がどうだとというのでしょうか。
仰ぎ見る一ノ倉沢ケルン積む★★★★
多田有花
<逗子開成中学遭難碑>
梅雨の海見つめて立てり遭難碑★★★
<東京ドームホテル>
とりどりのユニフォーム着て夏の夜に★★★
鎌倉の話などして夏の朝★★★
廣田洋一
海辺にて黄色弾ける花蘇鉄★★★★
海の色と蘇鉄の花の黄色のコントラスト南国的な夏らしいイメージを醸している。蘇鉄は恐竜時代からの生き残りの植物で、やはり、そういった時代を彷彿させる。(高橋正子)
モスクのごと丸きドームの雌花蘇鉄★★★
強き日のようやく戻り晩夏かな★★★
桑本栄太郎
朝よりのうねり螺旋に蝉しぐれ★★★
梅雨明けや黒く見え居りものの影★★★
嶺の端の夕焼け雲と雨雲と★★★
7月24日(4名)
小口泰與
舟よりの狙い定かな投網かな★★★
青空へ鮎の長竿伸びにける(原句)
青空へ鮎釣る長竿のびにけり★★★★(正子添削)
鮎釣りの醍醐味は鮎を釣り上げることは、もちろんだが、川や渓流の風景を楽しむことにもある。鮎を釣る長い竿が青空にグーンとのびる。そのしなやかさがいい。(高橋正子)
伽羅蕗や孫たちとんと来たがらず★★★
廣田洋一
雨空を紅く照らせり凌霄の花(原句)
雨空を紅く照らせり凌霄花★★★★(正子添削)
陰鬱な雨空が続くころ、凌霄花が、咲くとあたりを紅く照らしてくれる。雨の憂さも吹っ切りそうなあかるい凌霄の花だ。(高橋正子)
子ら遊ぶ砂場にぽとり凌霄花★★★
凌霄花燃え上がりたる丸太小屋★★★★
多田有花
梅雨明けの声未だ無し今日大暑★★★
クマゼミの声に囲まれ目覚めおり★★★
ひまわりの後ろ姿もひまわりで★★★★
桑本栄太郎
熱籠り京の町家の梅雨明くる★★★★
すずめ等のねぐら姦し宵涼し★★★
雨上がり窓より風の涼夜かな★★★
7月23日(4名)
小口泰與
一徹に粉は霧下夏のれん★★★
風鈴はかんかん石や昼も夜も★★★★
かんかん石は、讃岐石(サヌカイト)。緻密な石でたたくとかんかんと高い澄んだ音色がする。風があれば、昼も夜もいい音色を響かせてくれる。風のある涼しい住まいに、なお風鈴が涼しそうな音色で鳴っているのだ。(高橋正子)
芝の中生き物も出づ草むしり★★★
多田有花
<江ノ島三句>
エスカーで登る薔薇咲く山上へ★★★
シーキャンドル望む背後は梅雨の雲★★★
見渡せば湘南の海梅雨の海★★★★
廣田洋一
立葵登頂せしも雨続く(原句)
立葵登り尽きても雨続く★★★★(正子添削)
雨にも負けず登り競へる葵かな★★★
頂を窮めて咲きし葵かな★★★
桑本栄太郎
目覚むれば暁の鴉や明早し★★★
川の字の工となりぬや熱帯夜★★★
雷雨過ぎ忽ち夕の蝉しぐれ★★★★
7月22日(4名)
小口泰與
白鷺の植田の中を動かざる★★★
湯の街の川辺の店の麻のれん★★★
なみなみと注がれし猪口は切子かな★★★
この句の「切子」は、薩摩切子、江戸切子などのカットグラスのことであろうが、季語としては未成熟。季語として定着しているのは、「切子灯籠」のことである。
多田有花
<鎌倉長谷寺>
のうぜん花和み地蔵のうえに咲く★★★★
<鎌倉まめや>
七月の豆はマンゴーミルク味★★★
<江ノ島弁天>
梅雨雲に富士は隠れて江ノ島弁天★★★
廣田洋一
月見草薄暮の庭にゆらゆらと★★★
駐車場明るくしたる月見草★★★★
道の端人を呼ぶ声月見草★★★
桑本栄太郎
梅雨晴間とは云え雨の雲峰に★★★
雨あがり午後の日差しや油蝉★★★
跳び移り手足もじもじ雨蛙★★★
7月21日(4名)
小口泰與
凌霄花や散らかっておるおもちゃ箱★★★
通り雨いまだ温もる日除かな★★★★
通り雨が過ぎ、あたりはひんやりと涼しくなったが、日除に触れてみると、太陽の熱を持ってまだ温かい。通り雨くらいでは、日除の熱は冷めなかった。(高橋正子)
白鷺や瑠璃色淡き山上湖★★★
廣田洋一
邂逅の円柱立ちぬ蘇鉄の花★★★
白き玉赤く割れけり蘇鉄の花★★★
雨空に赤く咲きけり松葉牡丹★★★
多田有花
<鎌倉大仏>
万緑に座す大仏を見上げおり★★★
<鎌倉長谷寺>
長谷寺の赤き提灯梅雨晴間★★★
入ればまず緋鯉の群れし池に会う★★★
桑本栄太郎
梅雨晴間選挙に出掛くるベビーカー★★★
見はるかす遥か鞍馬の青嶺かな★★★
せせらぎの早瀬となりぬ梅雨晴間★★★
コメント
御礼
高橋信之先生、正子先生
7月24日の投句「鮎」の句を添削していただきありがとうございました。
今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導頂き深謝申し上げます。
7月23日の「立葵登頂せしも雨続く」を 「立葵登り尽きても雨続く」と添削頂き有難う御座います。わかりやすくなりました。
また、7月24日の「雨空を紅く照らせり凌霄の花」を
「 雨空を紅く照らせり凌霄花」と添削して頂き有難う御座います。すっきりしました。
今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
7月28日の投句「消えぬ間に大輪揚がる花火かな」を
「揚花火消えぬ間次の大花火」と添削して頂き有難うございます。景がより良く見えてきました。②案も頂きましたが、こちらの方が良いと思います。
また、7月31日の「髪切りて溌剌と見ゆ夏女」を「髪切りて溌剌として夏の女」と添削して頂き有難うございます。夏の女が良く見えます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。