6月1日-3日

6月3日

●小口泰與
たたなわる山より大気初夏の朝★★★
郭公のいよよ鳴きけり明けの宿★★★
たたなわる山や新樹の匂いけり★★★★

●祝恵子
トクトクと水入る田のそば花菖蒲★★★
田植する苗の一部は水の中★★★★
祭り旗掲げ曲がりくチンドン屋★★★

●多田有花
あのころの歌が流れる新樹光★★★★
六月の光に白し屋根瓦★★★
午後の雨梅雨の気配を連れて来る★★★

●桑本栄太郎
<高槻平野>
トンネルを抜けて青葉の天王山★★★
枇杷の実のどこか鄙びて熟しけり★★★
もんぺ穿き植田の隅の補植かな★★★★

●小西 宏
十薬の崖深きより水の音★★★★
初夏の塩辛蜻蛉水を行く★★★
銀杏樹の高き緑や梅雨近し★★★

●黒谷光子
かたまって咲けば華やぐ姫女苑★★★
生花にも供花にも遠く姫女苑★★★
新緑の色もさまざま森歩く★★★★

6月2日

●小口泰與
D五一の蒸気たくまし夏木立★★★★
日本でもっとも量産され、主に貨物列車として活躍した蒸気機関車のD五一。力強く貨車をひく姿は多くの日本人の目に焼き付いている。蒸気機関車の時代は終わったが、観光用に残された区間があるのだろう。夏木立に蒸気を吐いて進むD五一を目にして、新たにその勇姿に目を奪われた。(高橋正子)

新緑や絵画たしなむ友の居て★★★
桐咲くや奇岩妙義の佇まい★★★

●河野啓一
風薫る母娘連れ立ち買い物に★★★★
新緑の山路小さき瀬音して★★★
バラの花はや木漏れ日の下となり★★★

●桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
葉柳や川端通りという風に★★★
彫りふかき僧のひとりや夏の橋★★★★
老犬の舌の長さや夏日さす★★★

●小西 宏
醜草の地に蟻動く朝の道★★★
刻々と暑の積もりくる昼の靄★★★
丘越えて辿り来る音初花火★★★★

6月1日

●小口泰與
茄子苗や雨をたくわう里の畑★★★
桷咲くや八千穂の里の駒出池★★★
桷(ずみ)の花散りて魚のライズかな★★★★

●多田有花
夏の朝森の静けさを歩く★★★
六月の風部屋に入れ本を読む★★★
端はまだくるりと巻いて浮葉かな★★★★
蓮や睡蓮の浮葉は初めは葉の端がまだ巻いている。ものの初めの新鮮さと面白さがある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<京都市内へ>
緑蔭の車中となりぬ阪急線★★★
釣り人の湾処(わんど)をかこむ日傘かな★★★★
緑蔭のせせらぎ光る高瀬川★★★

●佃 康水
水鏡して田植機の音弾む★★★★
畦川に足掛け洗う早苗箱★★★
早苗田に母屋どっしり映さるる★★★★
母屋の傍から田が広がる。田植えが済んだ田には、早苗の影ばかりではなく、母屋のどっしりと建物が映っている。田植えの後の安堵と、秋の実りが約束されている明るさがある。(高橋正子)


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