小口泰與
青空や池の小島の桷の花★★★
今日迎ふ三年過ぎし目高かな★★★
納戸より出し昭和の冷蔵庫★★★
桑本栄太郎
初ものの小玉西瓜を味見せり★★★
<保津川下りの舟を上流へ>
トラックに空舟積みぬ風薫る★★★★
保津川下りの準備が進んでいる。トラックに積む空舟が、薫風のなかで、その軽さが、さわやかに感じられる。(髙橋正子)
木洩れ日の影の揺るるや夏は来ぬ★★★
5月9日(2名)
小口泰與
夕さりの空を彩る梅若葉★★★
あけぼのの雨後の若葉や鳥の声★★★
花山葵魚すいすい石の間を★★★★
清流に育つ山葵にも花が咲いた。流れの石の間を魚がすいすい自由に泳いでいる。花山葵が地味ながらも景色に色を添えている。(髙橋正子)
桑本栄太郎
との曇る空の卯の花腐しかな★★★
わらわらと白き葉裏や若葉寒む★★★
国道の穂の揺れ茅花流しかな★★★★
5月8日(3日)
小口泰與
爺と行く登校の子や若葉風★★★
迫り来る青葉若葉や庭の朝★★★★
洗い鯉日は浅間へと近寄らず★★★
多田有花
薫風や取り壊されしビルの跡★★★
検診車に行列をして夏浅し★★★
はつ夏の幼子笑顔で一歩一歩★★★★
初夏を迎えて、歩き始めた幼子は身軽な洋服になった。歩くのがうれしくてたまらない様子で、笑顔で、一歩一歩歩む。見ていてほほえましい。(髙橋正子)
桑本栄太郎
母の日や電話の向こうに声は無く★★★
ジャスミンの白き香りや教会に★★★★
ジャスミンの香りを「白」と捉えたのは、花の色からの連想があるだろうが、教会という場所が大きく関係している。教会に咲くジャスミンの花は香りをも清らか。(髙橋正子)
若竹の天に届けともろ手揚ぐ★★★
5月7日(3名)
小口泰與
海芋咲くすそ野の長き赤城山★★★
ぼうたんの蕾の割れし雨後の朝★★★
風の香や木道続く山の裾(原句)
風薫る木道続く山の裾★★★★(正子添削)
多田有花
<宝殿山二句>
おぼろなるあの島影は淡路島★★★
ここからは霞が隠す姫路城★★★
どの家もつつじ咲かせている街よ★★★
桑本栄太郎
ジャスミンの花の白さや幼稚園★★★
木洩れ日の朝の散歩や風薫る★★★
菖蒲咲く池のベンチに昼ご飯★★★
5月6日(3名)
小口泰與
女王と呼ばれし蜜よ花アカシア★★★
アイリスや異国の恋の物語★★★
敷藁を雨に打たせて瓜の花★★★★
瓜の花が咲くころ、藁が敷かれる。敷かれた藁は、雨を弾きつつ、しっとり濡れてゆく。そんな時の瓜の黄色い花はみずみずしく輝く。生き生きした光景だ。(髙橋正子)
多田有花
春惜しむ古き郵便局の跡★★★★
<石の宝殿二句>
石浮いているかも知れず行く春に★★★
もじゃもじゃに惜春なんじゃもんじゃ咲く★★★
桑本栄太郎
塵出しの朝の静寂や月見草★★★★
朝の静寂の中の月見草がすずやかだ。ごみを出すときであっても、かえってその清らかなすずやかさが目に映る。(髙橋正子)
むらさきは憂いの色や紫蘭咲く★★★
老夫婦のベンチに弁当躑躅燃ゆ★★★
5月5日(3名)
小口泰與
大いなる利根の流れや上り鮎★★★★
おおよその春の終わりや木木の色★★★
老いたるは面映きかな月朧★★★
桑本栄太郎
白花の溢れ咲きたり風薫る★★★
木洩れ日の枝の影揺れ夏は来ぬ★★★
丈伸びし赤きすいばの歩道かな★★★★
多田有花
やや高きところに群れて綾目咲く★★★
おのおのの水滴を持ち蓮浮葉★★★★
蓮の浮葉とは、蓮の根茎から出てしばらく水面に浮いている新葉のことを言う。初夏、蓮の浮葉を見ると、涼し気で、夏が来た嬉しさそのもののように思える。その浮葉がそれぞれ水滴をのせている浮いている。それもいい景色だ。(髙橋正子)
掃除する部屋に立夏の風を入れ★★★
5月4日(3名)
小口泰與
熊蜂の花粉にまみれ飛び立ちぬ(原句)
「飛び立ちぬ」だけでは、句に面白みが欠けるので、景色が広がるように添削しました。(正子)
熊蜂の花粉にまみれ曇天へ★★★★(正子添削)
特に「曇天」でなくてもよいわけですが、春の曇り空というのもいいものだと思います。
まるまるとした熊蜂が黄色い花粉にまみれて、茫洋とした曇り空へ飛んで行った。こういう景色は良さを言葉で述べにくいが、いい印象の句と思う。(高志正子)
行く春や緑の木木と鳥の声★★★
春泥や草にて拭う靴の泥★★★
多田有花
のどけしや太き梁持つレストラン★★★★
風通るテラスに座り春深し★★★
鰆美味皮はぱりぱり身はふっくり★★★
桑本栄太郎
薫風の木蔭づたいや朝歩き★★★
風吹くやはらりはらりと春落葉★★★
橡の花咲いてつらなるバス通り★★★★
5月3日(3名)
小口泰與
掘り起こす土の中より蛙かな★★★
頬白の鋭く鳴きて媾えり★★★
夕蛙懸命に葉に掴まりぬ★★★
多田有花
道の辺に野茨咲かせ近き夏★★★
豌豆の花家並みの途切れれば★★★★
家並みを歩いてきて、その家並みが途切れるところに、家庭菜園ほどの畑があるのだろう。豌豆が植えられ、花を咲かせている。急に現れた豌豆の花に嬉しさがある。(髙橋正子)
じゃがいもはナス科なるかな夏隣★★★
桑本栄太郎
<休日治療の為病院へ>
休日の待合室や若葉寒む★★★
木々の枝の光る憲法記念の日★★★★
ゴミ出しの置場や夕の紫蘭咲く★★★
5月2日(3名)
小口泰與
野良猫や遥か彼方へ落雲雀★★★
頬白や白き胸見せ鳴きにける★★★
山鳥や浅間に夕日近づかず★★★
多田有花
八十八夜快晴が山の向こうまで★★★★
快晴の空の下にはるか向こうまで山が続いている。山の色にも八十八夜の光が降り注ぎ、近づく夏を予告している。「快晴の山が向こうまで」に、明るさが満ち満ちている。(髙橋正子)
夏隣る巌のうえに蘇鉄あり★★★
高砂の松の緑や夏近し★★★
桑本栄太郎
メーデーと云えば代々木や春の雨★★★
楓葉の影のかさなり五月来る★★★★
楓の葉の若緑も美しいが、その影が地面にかさなり、揺れたりするのも、すずやかで気持ちがよいものだ。五月が来るうれしさが読み取れる句。(髙橋正子)
黄金週間日々日曜のわれに無し★★★
5月1日(3名)
小口泰與
甲高き声を上げおり鳥交る★★★
群なして蒲公英畦へなだれ咲く★★★
雀らの塒の樋や春嵐★★★
桑本栄太郎
雨風に白き葉裏や五月来る★★★
蚯蚓出で自死かと想う鋪道かな★★★
青あらし風に逆らいすずめどち★★★
多田有花
春の鳥鳴くや夜明けの雨の中★★★★
小鳥たちは夜明け早くから鳴いている。雨がひどければ鳴かないが、小雨程度ならよく鳴いている。春の小鳥が鳴くくらいの雨の降り様と小鳥の声の重なりが春の夜明けらしい。(髙橋正子)
雨あがり平戸躑躅の鮮やかに★★★
藤房に雨滴残れり天満宮★★★
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