3月31日(4名)
小口泰與
長閑さや噴煙の垂直に立つ浅間山★★★
繋がれて日永の犬の遠吠えよ★★★
湯の街の石段街や花の冷え★★★★
繋がれて日永の犬の遠吠えよ★★★
湯の街の石段街や花の冷え★★★★
廣田洋一
白き花若葉と共に光りをり★★★
散歩道花散る道となりにけり★★★★
道端にひょいと咲きたる木瓜の花★★★
散歩道花散る道となりにけり★★★★
道端にひょいと咲きたる木瓜の花★★★
桑本栄太郎
うす紅の房に雨降り馬酔木咲く★★★
すかんぽの茎の赤きが並びけり★★★★
すかんぽの茎の赤きが並びけり★★★★
すかんぽの茎の赤さは野の明るさを象徴すするような自然の赤。そんな赤い茎が並ぶとなつかしい故郷へいざなわれるような気持ちになる。(高橋正子)
ひこばえの花をつけたる根方かな★★★
多田有花
燕飛ぶ雲切れ初めし空の中★★★★
花冷えを東へ向かう新幹線★★★
山路にはどっとつつじの咲きそろう★★★
花冷えを東へ向かう新幹線★★★
山路にはどっとつつじの咲きそろう★★★
3月30日(4名)
小口泰與
のどかさや手漕ぎボートの櫂の水★★★★
うららかさに誘われて、ボートを漕ぐ。漕ぐと櫂から水がしたたり、うららかな日差しに櫂の水が光る。櫂の水がのどかさをよく表している。(高橋正子)
うららなる小流れに射す入日かな★★★
妻と居て庭仕事せる遅日かな★★★★
妻と居て庭仕事せる遅日かな★★★★
多田有花
一握りの蕨たずさえ山下りる★★★★
一握りの蕨。それだけで山遊びの楽しさが伝わる。蕨の深いみどりの色、そのころの木々のみどりの色、それらが自然に思い起こされる。(高橋正子)
山路ゆくわが足元につつじ落つ★★★
談笑す桜の見える頂で★★★
談笑す桜の見える頂で★★★
廣田洋一
花冷えに耐えし桜のつやつやと★★★★
29日の日曜日には、花に雪という風雅な景色も見られた。そのあとの花冷えに耐えた桜は、陽気に誘われて咲いた桜とは違って、つやつやとして命を研ぎ澄ましたかに見える。(高橋正子)
遠き日々夢に現る朝桜★★★
雨上がり滴点々朝桜★★★
桑本栄太郎
生徒待つ校門ありぬ花盛り★★★★
遠目にはほんのり青く辛夷咲く★★★
”陽菜人”とや無人店舗の春野菜★★★
遠目にはほんのり青く辛夷咲く★★★
”陽菜人”とや無人店舗の春野菜★★★
3月29日(4名)
小口泰與
母屋まで百歩以上や春の雪★★★
暖かや墨する指の力瘤★★★★
ツインクルチョコより菓子やあたたかし★★★
暖かや墨する指の力瘤★★★★
ツインクルチョコより菓子やあたたかし★★★
廣田洋一
花冷や子らの声なき丸太小屋★★★
花冷や雪降りしきる日曜日★★★★
風も無くひたすら降れる春の雪★★★
花冷や雪降りしきる日曜日★★★★
風も無くひたすら降れる春の雪★★★
多田有花
すみれ地に小さき影を成して咲く★★★★
すみれの可憐さは、その影にもある。小さな影を見つけた作者のやさしさが、すみれをいっそう愛おしにものにしている。(高橋正子)
裏山を双眼鏡で花見する★★★
風の辛夷誰に別れの袖を降る★★★
風の辛夷誰に別れの袖を降る★★★
古田敬二
夜桜や高瀬の川面に映りけり★★★
鯉動かず山から静かな春の水★★★
蹲にあふれて静かな春の水★★★★
鯉動かず山から静かな春の水★★★
蹲にあふれて静かな春の水★★★★
蹲に水が流れて、あふれている。けれども、あふれながら静かな水である。春の水、つややかさが感じられる。(高橋正子)
3月28日(5名)
小口泰與
花の日や太古の山河永久に無し★★★
尻尾下げ畦行く犬や春の暮★★★
好きな子に悪戯の過去や春の夜★★★
尻尾下げ畦行く犬や春の暮★★★
好きな子に悪戯の過去や春の夜★★★
廣田洋一
雨上がり色鮮やかにチューリップ★★★
流れ行く水に手を伸べ初桜★★★★
車椅子乳母車行く初桜★★★
流れ行く水に手を伸べ初桜★★★★
車椅子乳母車行く初桜★★★
多田有花
青空にいまさんしゅゆの花黄色★★★
山桜その花びらの真白さよ★★★★
山桜その花びらの真白さよ★★★★
桜は淡いピンクと思いがちだが、山桜は白い。桜の白さである。山の静謐な白さである。(高橋正子)
いつかまた降りだしている花の雨★★★★
桑本栄太郎
余寒なほ団地の庭に子等を見ず★★★
大振りの蘂上向きに椿落つ★★★
うす紅の房となりたる馬酔木咲く★★★
大振りの蘂上向きに椿落つ★★★
うす紅の房となりたる馬酔木咲く★★★
古田敬二
夕暮れの池に飛翔す初燕★★★
山からの水清くして芹を摘む★★★★
沈丁花夕暮れ雨戸を閉ずるとき★★★
山からの水清くして芹を摘む★★★★
沈丁花夕暮れ雨戸を閉ずるとき★★★
3月27日(3名)
廣田洋一
春風や朝日を浴びて深呼吸★★★★
あの人のほほえみ見たし春の風★★★
御開帳縁なき衆生行列す★★★★
あの人のほほえみ見たし春の風★★★
御開帳縁なき衆生行列す★★★★
小口泰與
そも若き日を振り返り薄霞★★★
尺ものの雪代山女褒めそやす★★★
麗らかや今を大事に生きたきよ★★★★
尺ものの雪代山女褒めそやす★★★
麗らかや今を大事に生きたきよ★★★★
桑本栄太郎
コロナ禍も洗い流せよ春の雨★★★
一画の尚も明るき菜種梅雨★★★★
一画の尚も明るき菜種梅雨★★★★
菜種梅雨は、本来は春の東南の大風のこと。それから菜種が咲くころは雨が多いのでこのように使われるようになった。雨が降りながら、どこか明るさがある。あたりを見ても、一画は、なおも明るい。菜の花のイメージがどこかにある。(高橋正子)
人はみな褒められ育つ花の雨★★★
3月26日(3名)
小口泰與
そぞろなる風に散りたる梅の花★★★
夜桜やホテルロビーの漫ろ神★★★
眼間の今朝の浅間は雪解かな★★★★
夜桜やホテルロビーの漫ろ神★★★
眼間の今朝の浅間は雪解かな★★★★
廣田洋一
雉子神社由緒学べど雉啼かず★★★
やつとできた逆上がりの子風光る★★★★
五重塔見下ろす鳶や風光る★★★
やつとできた逆上がりの子風光る★★★★
五重塔見下ろす鳶や風光る★★★
桑本栄太郎
大振りの蘂の上向き椿落つ★★★
散るすべを知らず咲き初む花あはれ★★★
散るすべを知らず咲き初む花あはれ★★★
誓子忌の山風海に凪ぎとなる★★★★
誓子の忌日は3月26日。誓子は1901年(明治34年)11月3日 京都府生まれ、 1994年(平成6年)3月26日死去。「山風海に」の件りまで読むと、「海で出て木枯帰るところなし(誓子)」の句が浮かんで来る。急に吹いた強い山風は海に出て凪となったのだ。風と共にあった誓子である気がする。(高橋正子)
3月25日(5名)
小口泰與
海棠の蕊の底ひや小ぬか雨★★★
風に乗り忽と春雪舞いにけり★★★
紺碧の暁の榛名山(はるな)や雪柳★★★
風に乗り忽と春雪舞いにけり★★★
紺碧の暁の榛名山(はるな)や雪柳★★★
廣田洋一
捨畑の土黒々と草若葉★★★★
捨畑だけれど、土は黒々として草若葉が萌え出ている。食する野菜でなく、草若葉であっても、みずみずしく生い出でたものは、すばらしい。(高橋正子)
囀りや保育園児の昼寝中★★★★
多田有花
日差し背に座せば囀り絶え間なく★★★★
川蛇行しつつ流れる花の下★★★★
川蛇行しつつ流れる花の下★★★★
悠久の時をかけて流れる蛇行する川と今年の花の刹那の出会いが人知では測りしれないものを感じさせてくれる。(高橋正子)
鎮魂の陽光桜満開に★★★
桑本栄太郎
”陽菜人”(ひなと)とや無人店舗の春野菜★★★
土壁の塀の中なり紫木蓮★★★
土手ごとに高くなりたるたんぽぽ黄★★★★
土壁の塀の中なり紫木蓮★★★
土手ごとに高くなりたるたんぽぽ黄★★★★
川名ますみ
膨らめる花芽の影の若芝に★★★★
小さく丸き蕾に映ゆる春夕焼(原句)
「小さく丸き蕾」のイメージが湧きにくいので、仮に桜の蕾としました。
小さく丸き桜蕾に夕焼す★★★★(正子添削)
「夕焼」の季語は夏ですが、事実として桜蕾があるので、季節は春と解釈します。
窓を指す明日の花見の並木道★★★
3月24日(4名)
小口泰與
湖へ道一直線やつくつくし★★★★
公魚や湖を背向に鳶の声★★★
辛夷咲く獣の臭う杣の道★★★★
公魚や湖を背向に鳶の声★★★
辛夷咲く獣の臭う杣の道★★★★
山に自生する辛夷。清楚で可憐な辛夷の花の下も獣が臭いをさせて通う道となる。野性が残る杣の道と、辛夷の花の対比が自然の景をよく映し出している。(高橋正子)
廣田洋一
庭先に赤き一輪チューリップ★★★
チューリップ花は大きく背低し★★★
チューリップ花は大きく背低し★★★
年ごとに房の小さき風信子(原句)
「年ごとに」が少し説明的ですので、今現在のことを述べるよう工夫しました。
今年いよよ房の小さき風信子★★★★
毎年咲く風信子を楽しみにしているが、球根も年ごと弱って花の房が小さくなるばかりだ。力を絞って咲いた今年の風信子をいとおしむ気持ち。(高橋正子)
多田有花
山桜咲き集い山の彼方まで★★★
次々と笑みの山から車出(原句)
「笑みの山」より、「笑う山」の季語を使う方がわかりやすいと思います。
次々と笑う山から車出る★★★★(正子添削)
初蝶や日差しあふれる頂に★★★★
桑本栄太郎
ぽつぽつと花の三分や桜咲く★★★
無残なや傷つき散りぬ白木蓮★★★
無残なや傷つき散りぬ白木蓮★★★
白雲の水面にありぬ蘆の角★★★★
蘆の角の真みどりが水面から出るとき、すがすがしいものを感じるが、その水面に白い雲が映っている。青空も平らかに映っているだろう。(高橋正子)
3月23日(5名)
小口泰與
ものの芽や鳥の来ている背戸の池★★★★
里山の春の校庭草の丈★★★
里山の春の校庭草の丈★★★
昨日今日地雨の庭や沈丁花★★★
古田敬二
山容は変わらず故郷山笑う★★★
山笑う裾裳を洗う飛騨の川★★★
山笑う父母の墓へ上りけり★★★★
山笑う裾裳を洗う飛騨の川★★★
山笑う父母の墓へ上りけり★★★★
廣田洋一
犬ふぐり玄関前に座りをり★★★
そこだけが赤く燃えたる桃の花★★★
新築の家の華やぐ桃の花★★★★
そこだけが赤く燃えたる桃の花★★★
新築の家の華やぐ桃の花★★★★
多田有花
芽柳に宇治川の風やわらかく★★★
朝毎に山の桜の開きおり★★★★
朝毎に山の桜の開きおり★★★★
毎朝山を眺めている、毎朝山へ散策に出かける。こんなとき昨日の朝はここ、今朝はここと山桜が思わぬところで開く。山桜のつつましく、におやかな美しさが見られる一期一会のすばらしさがある。(高橋正子)
そちこちに鶯の声山路ゆく★★★
桑本栄太郎
つんつんんと赤き垣根や新芽立つ★★★★
歩みゆく吾が影見えず霾ぐもり★★★
瀬の落つるよどみに番う残り鴨★★★★
歩みゆく吾が影見えず霾ぐもり★★★
瀬の落つるよどみに番う残り鴨★★★★
春も進んだというのに、まだ北に帰らない番の鴨。瀬が落ちるよどみに何か思うような鴨である。(高橋正子)
3月22日(4名)
小口泰與
春朝や噴煙定か垂直に★★★
春昼や金魚掬いのポイ破れ★★★★
春昼や金魚掬いのポイ破れ★★★★
春の昼の気だるさ、物憂い気分が金魚掬いのポイが破れたことで意識された。
泥咥えせちに燕のひるがえる★★★
廣田洋一
黄蝶二つ絡み合ひつつ飛び去りぬ★★★
霊園の供花かぐわし蝶来たる★★★★
神棚を祀りし湯宿朧月★★★★
霊園の供花かぐわし蝶来たる★★★★
神棚を祀りし湯宿朧月★★★★
桑本栄太郎
うつむけど花の明るき連翹黄★★★
白壁の里の民家や桃の花★★★★
ぼつてりと紅をふふめり桜の芽★★★
白壁の里の民家や桃の花★★★★
ぼつてりと紅をふふめり桜の芽★★★
古田敬二
山笑う裾野を縫って高山線★★★
ジーゼルカー走るよ春の高山へ★★★
汽笛鳴る上り列車や山笑う★★★★
ジーゼルカー走るよ春の高山へ★★★
汽笛鳴る上り列車や山笑う★★★★
上り列車は、大きな町へ都市へ向かう列車がほとんだ、それに人はさまざまな思いをのせる。汽笛を鳴らして走る上り列車に春の山ものどかで、旅ごころを誘う。(高橋正子)
3月21日(4名)
小口泰與
逃水や俳句投稿急かれしや★★★
エプロンや釣たる鱒へ化粧塩★★★
エプロンや釣たる鱒へ化粧塩★★★
「エプロン」が取って付けたようです。「わが妻」とされたらどうでしょう。
わが妻や釣りたる鱒へ化粧塩★★★★(正子添削)
夕映えの光り返して春の水★★★
多田有花
<宇治三句>
平等院へ八重のこぶしの咲く道を★★★★
鳳凰堂の阿弥陀の顔を見る彼岸★★★
一服の宇治茶いただく彼岸かな★★★
平等院へ八重のこぶしの咲く道を★★★★
鳳凰堂の阿弥陀の顔を見る彼岸★★★
一服の宇治茶いただく彼岸かな★★★
廣田洋一
連山の稜線ぼやけ春の雲★★★
雨止みて三陸の野に春の虹★★★★
雨止みて三陸の野に春の虹★★★★
津波や地震の被害を受けた三陸も震災後9年が経った。いまその野の春の虹が弧を描き、希望の景色を見せてくれた。(高橋正子)
春の雪ちと積もりては風に舞ふ★★★
桑本栄太郎
春耕の土の香風にトラクター★★★★
「春耕の土の香風に」に「トラクター」がただ取って付けられただけとなっています。その関係を丁寧に表現してください。
トラクターの耕す土の香風に乗り (添削)
春水の早瀬となりぬ丘の道★★★
花ゑんどう支柱の丈の足らずなり★★★
花ゑんどう支柱の丈の足らずなり★★★
コメント
御礼
高橋正子先生
3月23日の投句「里山の春の校庭草の丈」です。変換ミスをしてしまいました。ご指摘頂き有難う御座います。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
お礼
正子先生
「次々と笑みの山から車出る」を「次々と笑う山から車出る」に添削いただきありがとうございます。
こうして添削いただいた句を見ると、先生のおっしゃることが確かにそうだなあと納得します。
お礼
信之先生、正子先生、いつもあたたかいご指導をありがとうございます。
拙句「小さく丸き~」に、ご丁寧な添削とご講評を賜りまして、お礼申し上げます。
ベランダのにわざくらが、かわいらしい蕾をつけ、夕映えに照っていました。心に遺る景色でしたのに、言葉を入れ替える内、自分でも何が良いのかわからないまま、投句してしまいました。お導き頂き、落ち着きました。ありがとうございました。