12月28日

●古田敬二
霜溶けてブドウ畑のきらきらと★★★★
白樺の枯木の中から鐘の音★★★
連結電車霜置く坂を登り来る★★★

●小口泰與
冬凪や荒れ田にぎわす明烏★★★
風に乗る数多の鳶や年の暮★★★★
鳶がやたら多く空に舞うときがある。それぞれが自在に風に乗って、地上の年の暮を見ているかのような景だ。(高橋正子)

烈風に馴染みし庭の枯木かな★★★

●迫田和代
願いあり土手道に咲く冬桜★★★★
晩秋から冬にかけて咲く冬桜。か細い枝に花もはかなげに咲いている。それは、作者の願いを表しているようでもある。(高橋正子)

咳三つ残して走る寒い朝★★★
どちらかと言えば寒さに力あり★★★

●祝恵子
冬菜につく青虫の温さつまむ★★★
賀状に添ゆ子らそれぞれに言葉入れ★★★

時雨るるよ短き髪となり街へ★★★★
美容室で髪を切ってもらって外へでると、時雨が降って、首筋あたりがぞっと寒くなる。さっぱりとなったが、時雨の冷たさに襲われた。一抹のわびしさ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
張替えの終えて明るき白障子★★★
そうじ終え窓の暮れゆく日短★★★

蕪村忌の水色空の暮れゆけり★★★★
蕪村忌は12月25日。蕪村は画家でもあり、句柄にも抒情があるので、年の瀬となった水色の空は、蕪村の忌日にふさわしく思える。(高橋正子)

●多田有花
雪積んで北より車の来たりけり★★★
樒入る墓前の花筒初氷★★★

数え日や祖父母の墓に水注ぐ★★★★
今年も残るところ少なくなった。正月を前に祖父母の墓をきれいに掃除し、水を注ぐ。遠い祖先ではなく、祖父母の墓なので、水を注ぐ思いに現実感がある。(高橋正子)

●黒谷光子
山々も村も隠して雪しまく★★★

靴跡にわが靴を置く雪の道★★★★
雪深い湖北にお住いの作者。雪道を歩くのに、先に歩いた人の靴跡に靴を置いて歩く。その靴跡も次に歩く人にはすでに道なのだ。雪は用心して、歩くにこしたことはない。(高橋正子)

地場野菜買う歳晩の道の駅★★★

●川名ますみ
外套を叩き芝居の雪一枚★★★★
外套を叩き軽く外出の埃を払うと、芝居のときに振りまかれた雪の一片がはらりと舞い落ちた。芝居の雪が作者のコートに降ったわけだ。
観客も芝居の中に取り込まれた格好で、さぞやよい舞台であったろう。(高橋正子)

コートから十年前の紙吹雪★★★
ブーツにも忠臣蔵の雪紛る★★★


コメント

  1. 祝恵子
    2013年12月29日 10:56

    お礼
    信之先生、正子先生、★印のご指導ありがとうございました。「時雨るるに」嬉しい句評を頂きましてありがとうございました。

  2. 小口泰與
    2013年12月29日 12:28

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    12/28の投句に★印のご指導を賜わり、「年の暮」の句に正子先生より素晴らしい句評を頂き有難う御座いました。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 迫田和代
    2013年12月29日 13:16

    お礼
    信之先生
    正子先生
    12/28の(冬桜)に★のご指導をいただき嬉しがり屋の私です。正子先生のお優しいコメントと共にお礼を言いたい気持ちです。有難う御座いました。

  4. 桑本栄太郎
    2013年12月29日 18:32

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    12月28日の「蕪村忌の水色空の暮れゆけり」の句に★印のご指導を賜り、過分なるご句評も頂戴しまして大変有難うございます。蕪村忌の当日は、風も無く穏やかな冬晴れの一日でした。冬の入日あとの宵空は真っ青であり、大変情緒を覚えました。

  5. 多田有花
    2013年12月29日 18:41

    お礼
    信之先生、正子先生、
    「数え日や祖父母の墓に水注ぐ」にご指導、ご句評をいただきありがとうございます。
    母方は新宅なので、お墓に入っているのは祖父母だけです。
    自分が実際に知っている人のお墓というのは、遠い先祖とはやはり違いますね。

  6. 川名ますみ
    2013年12月29日 22:19

    お礼
    信之先生、正子先生、いつもご指導を賜りまして感謝いたします。
    「外套を」の句に、かつての舞台を想い起こす貴重な句評を頂き、嬉しく存じます。十年ほど前、よく歌舞伎を観劇しておりました。舞台とともに浴びた紙吹雪を、記念にとポケットにしまい込んだ一片が、今、現れまして。当時の昂奮がよみがえり、句にした次第です。コートやブーツにまで芝居の雪が紛れていた、幸福な思い出です。