11月10日(4名)
●小口泰與
動かざる湖畔の馬車の冴え冴えと★★★★
校庭の凍土となりて反り返る★★★
底冷えの仏間に独り居りにける★★★
●廣田 洋一
牡蠣剥きて思い出しけり女川よ★★★★
生牡蠣と共に啜れりレモンの香★★★
二人して焼牡蠣すする海の小屋★★★
●桑本栄太郎
隘路なる冬の紅葉や天王山★★★
時雨るるやはるか生駒嶺青空に★★★★
まだ青き色や門辺の青木の実★★★
●多田有花
夜の雨あがり風吹き冬来る★★★
猪が二頭駆け去る森の道★★★★
森の道で、二頭の猪が駆け去るのを目撃。私なら驚いて肝を冷やすだろうが、山の経験豊富な作者は猪に出会うこともあったのか、ニ頭の様子を面白がっている。森の道での出来事、森の生活者との遭遇に秋深さを感じる。(高橋正子)
ひとり来て頂に聞く冬の風★★★
11月9日(4名)
●小口泰與
冬晴や浅間噴きたる垂直に★★★★
冬ざれや二羽の鴉の鋭声起つ★★★
浴室のタイル踏みたる寒さかな★★★
●廣田洋一
銀杏落葉掬つては撒く子の笑顔★★★★
散り重なった落葉を踏んだり、撒いたり。子供はこんな遊びをするのが好きだ。落葉を掬っては撒き散らす。ルールのある遊びではないが、「遊び」の心が可愛らしい。ふと思ったが、外国人の子どもはこんな遊びをするのだろうか。(高橋正子)
銀杏落葉足裏浮きて頼りなし★★★
落葉して見晴らし良きや大銀杏★★★
●桑本栄太郎
屋上の赤き鳥居やしぐれ来る★★★★
刈田雨峡より風の摂津峡★★★
<桂川・木津川・宇治川>
三川のつどう中州や枯尾花★★★
●河野啓一
<デイより千里タウン内紅葉狩りに参加>_
青空を透かし紅葉は三色に★★★★
銀杏並木陽光透かしきらめくや★★★
観覧車大きくはなし紅葉林と比べても★★★
11月8日(6名)
●多田有花
返り花薄き日差しの中に咲く★★★★
少年の放送の声冬の朝★★★
冬浅き川原に残る花の色★★★
●小口泰與
上州のだんべい言葉空っ風★★★★
上州の冬と言えば空っ風。空っ風の吹く中で、「だんべい」を語尾につけて白い息と共に話すのだろうが、上州言葉がほっこりとしている。上州人の冬の生活が偲ばれる。(高橋正子)
山茶花や道を一列ランドセル★★★
若沖の仏は何と大根かな★★★
●廣田洋一
立冬やしゃんと立ちたる赤カンナ★★★
かそけくも白きつつじの帰り花★★★
たんぽぽの返り花地に張りつけり★★★★
●桑本栄太郎
剪定の切り口白く冬に入る★★★★
石垣と見ればいつもや石蕗の花★★★
藁にほのロール転がる小雨かな★★★
●河野啓一
外ツ国のプレジデントや秋の虫★★★★
散髪し風呂に入って秋の風★★★
色鳥の飛び立つ野背の里よりきたりしか★★★
●谷口博望(満天星)
遠くなる「ヤキイモー」の良き時代★★★
亜鈴持つ手に手袋の季節来る★★★★
蒸発す真つ赤に熟れし辛夷の実★★★
11月7日(4名)
●小口泰與
斬新な構図決まりし崩れ簗★★★★
風が押す霧の勢い山の襞★★★
暮の秋吾(あ)に幾ばくの齢あるや★★★
●廣田洋一
立冬や朝の身支度抜かりなし★★★★
草花の生きいきしたる今朝の冬★★★
白壁に電飾光り冬来たる★★★
●桑本栄太郎
乳母車幌の掛けらる今朝の冬★★★★
南天の実の緋色なる門辺かな★★★
京よりのともし灯遠く神の旅★★★
●谷口博望(満天星)
飛んだかも鬼の子姿消しにけり★★★★
「鬼の子」は蓑虫のこと。枕草子の41段の『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば』に由来する。枝にぶら下がっていた蓑虫が秋風が吹くままに、いつの間にか消えている。あわれで、さびしい風情の蓑虫であるが、蓑虫を「鬼の子」と言い、鬼の子ならば、元気に「飛んだかも」と想像するのは作者の個性。蓑を着た者は、異界からの使者、つまり鬼とされていた。(高橋正子)
弾けたる南京櫨に椋一羽★★★
尾を回し野ねずみ狙ふ鵙の顔★★★
11月6日(6名)
●谷口博望(満天星)
さまざまの水鳥来たる河口かな★★★★
潮干潟小さき集り百合鴎★★★
百合鴎いつの間にやら橋灯る★★★
●小口泰與
ひぐらしや我が生涯は在所にて★★★★
秋の夜や集いし友と寝(い)を惜しむ★★★
藤の実や山風あらぶ利根川原★★★
●廣田洋一
咲き残る花に遊べる秋の蝶★★★★
白蝶の休みもせずに暮の秋★★★
立冬とは何時のことかと秋桜★★★
●多田有花
川面きらきらと晩秋の日差し★★★★
青空から朱色が下がり烏瓜★★★
シリアルを温めて食ぶ冬隣★★★
●桑本栄太郎
木陰より日向歩むや冬隣★★★★
はらはらと紅葉散りけり園の門★★★
野菊咲く田道を歩む散歩かな★★★
●佃 康水
カープ41年振りの優勝パレード
パレードや真っ赤に燃えて紅葉晴れ★★★
詩を詠むに弁慶必至菊人形★★★
ひしひしと気の伝わりぬ返り花★★★★
小春日和によく咲いている返り花。躑躅なのだろうか。季節外れに凛と咲く花に「ひしひしとした気」を感じた。作者にひしひしとした「気」があればこそ。(高橋正子)
11月5日(6名)
●小口泰與
花芒利根の川原のとびの声★★★★
燦爛と逆光の湖黄鶺鴒★★★
あるまじき犬の粗相や菊人形★★★
●谷口博望 (満天星)
都鳥昔男の恋の歌★★★
見つけたり赤き嘴百合鴎(原句)
嘴の赤さいとおし百合鴎★★★★(正子添削)
冬鳥として渡って来た百合鴎は、枯れ進む景色のなかで、嘴の赤さ、脚の赤さが印象的。都鳥の名もあるように、華やかな赤さが目立つ。白い羽に赤い嘴が可愛らしい。(高橋正子)
浜行かば木斛の実の弾けたり★★★
●廣田洋一
若き鷹小屋より眺む暮の秋★★★
万年青の実一粒赤くなりにけり★★★★
万年青の古株目立つ赤き実よ★★★
●多田有花
沈みゆく陽が照らしおる花すすき★★★★
昔からある家柿の実る家★★★
まだ朝日当たらず柚子のひっそりと★★★
●桑本栄太郎
穭穂の稔り垂れおり丘の田に★★★★
青桐の実の黒子なり青空に★★★
長き影さえも哀しき暮秋かな★★★
●古田敬二
旅を行くリュックに重し紀伊の柿★★★
秋の陽の五百羅漢の顔に揺れ★★★★
天高し金婚式へあと一年★★★
11月4日(5名)
●谷口博望(満天星)
水鳥の中のカンムリカイツブリ★★★★
野を行けば尾を回したる鵙日和★★★
埋立ての淡水池に小鴨かな★★★
●小口泰與
落鮎や岩も白波浴びにける★★★
竹の春赤城山(アカギ)を洗う通り雨★★★
まんまるの有明月や鴉鳴く★★★★
●多田有花
朝寒やまず一杯のブラックコーヒー★★★
温かき蕎麦をすすりし冬隣★★★
仰ぎ見る桜紅葉と青空と★★★★
●廣田洋一
今日から小春解禁と天気予報★★★
検査結果良好なりと小春の日★★★
大銀杏見上げる先に冬の空★★★★
●桑本栄太郎
秋天の水底と見ゆ深さかな★★★★
秋の天を見あげ、目をとどめれば、あまりの青さに、そこに水底を見ているような錯覚になる。水底の青の恐ろしさも脳裏をよぎる。(高橋正子)
秋蝶の黄なるばかりが徘徊す★★★
摂津峡秋の入日の茜かな★★★
11月3日(6名)
●谷口博望 (満天星)
爛々と野良猫出たり冬来る★★★★
冬の桐丸太ん棒に様変わり★★★
マッチョマンのポーズ冬の百日紅★★★
●多田有花
秋冷の大台ケ原に傾く陽★★★
ジューサーからぱっと柚子の香りたつ★★★★
ジューサーに柚子を入れ、ジューサーが動き出すとすぐさま柚子の香りが、ぱっと拡がる。驚くべき柚子の香りだ。(高橋正子)
、、
ポケットに手を入れ夜寒のテニスコート★★★
●廣田洋一
風呂吹や柚子を足したり母の味★★★★
鉢植えの花枯れ落ちて秋行きぬ★★★
冬近したわわな柚子の色づけり★★★
●小口泰與
爽籟や長き裾野の赤城山★★★
竹林の新たや今朝の雨の秋★★★
薄野やあらぬ所に小鳥の巣★★★★
●桑本栄太郎
括られて腰折る畑やすがれ菊★★★
風無くて悄然たりぬ尾花かな★★★
ごみ出しの夜のとばりや虫細る★★★★
●古田敬二
来年の花色秘めし種を採る★★★
口笛を吹く枳殻の実のまろし★★★★
青空に採り残されて木守柿★★★
11月2日(7名)
●谷口博望(満天星)
水を出て水に帰りぬ破蓮★★★★
川渡る番の鴨のシルエット★★★
夕干潟餌の滴る鴨の嘴★★★
●小口泰與
青空へ白雲伸ぶや草紅葉★★★★
打ち込みし長胴太鼓空澄めり★★★
影もまた風に預けて秋の湖★★★
●廣田洋一
新刊の句集拝受秋深し★★★★
秋惜しむ堰に佇む鷺一羽★★★
冬の空銀色冴えるスカイツリー★★★
●多田有花
<大台ケ原三句>
秋麗の立ち枯れの彼方熊野灘★★★
秋澄むや大峰連山を望む★★★★
天高く大蛇嵩の峡深し★★★
●河野啓一
桜紅葉車いすより滑り落ち★★★★
すべり落ち紅葉枯れれはも車いす★★★
真すぐに行けば人知る紅葉三食街道へ★★★
●桑本栄太郎
カレンダー十一月のうすきかな★★★★
青空のビルが切り取る秋日かな★★★
美しき誤解となりぬ芙蓉の実★★★
●古田敬二
鍬を振る頭上に広がる鰯雲★★★★
鍬を振り、畑を土をたがやす日は快く晴れた日が嬉しい。高い空に鰯雲が広がり、その下で鍬を振るう。力も自然に入ることだろう。働くことの爽快さ。(高橋正子)
鍬振れば小さき影来る秋の蝶★★★
枇杷の花くぐれば故郷香りけり★★★
11月1日(4名)
●廣田洋一
三笠宮逝きて昭和の秋尽きぬ★★★
鑁阿寺の伽藍めぐりて秋惜しむ★★★★
風呂吹や二人でつつく夕餉時★★★
●河野啓一
紅葉狩り何処へ行こうか地図広げ★★★
過ぎし日を偲ぶ寮歌や枯れ紅葉★★★
図らずも古き寮歌に胸熱き★★★★
●小口泰與
新蕎麦や信濃へ向かう高速路★★★
秋天へ雲垂直に起ちにけり★★★★
花芒覚満淵のささら波★★★
●桑本栄太郎
下校終え校門閉ざすピラカンサ★★★
校庭のフェンスに添うやななかまど★★★
発車待つバスの車窓や水木の実★★★★
発車を待っているいる間、バスの窓から小さな景色が楽しめる。水木の実が熟れているのもありありと見える。水木の紫紺の実を、小鳥たちが好んで食べている様子が重ねて思い浮かぶ。(高橋正子)
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