1月8日-14日

1月14日(6名)

●川名ますみ
【原句】青天に裸の銀杏枝払う
青天に銀杏裸木枝払われ★★★★(正子添削)
真っ青な空にそそり立つ銀杏の裸木。この季節に枝が打ち払われ、すっきりと樹形が整えられる。芽吹く季節が楽しみだ。(高橋正子)

胸もとのスワロフスキー冬の灯に★★★
冬の夜にスワロフスキー揺れており★★★

●小口泰與
葉牡丹の葉虫の穴のまた増ゆる★★★
青空や裾野も雪の浅間山★★★
からからに乾びし大地虎落笛★★★★

●河野啓一
冬温し夕日に映ゆるちぬの海★★★

枯芝に青きを探し小道ゆく★★★★
小道を辿り、枯芝の根本を覗きこんだりすると、柔らかな緑の芝が目につき、驚く。表面の枯れ色からは、想像もできないけれど、着実に春への準備がされている。小道を辿る楽しさとなる。(高橋正子)

寒中に旧友(とも)の訃報を知らされて★★★

●多田有花
青空へおのおの枝を寒の木々★★★★
寒晴れの浪花の街のアイスショー★★★
アイスショーリンクの上の成人式★★★

●桑本栄太郎
<鴨川・四条大橋>
曇り来る遙か鞍馬や雪もよい★★★★
四条大橋からの眺め。空が掻き曇る思えば遥か鞍馬は雪催いのようだ。鞍馬へと思いが馳せ、動きのある句となった。(高橋正子)

【原句】川中に突つ込み餌の百合かもめ
川中に突っ込み餌獲る百合かもめ★★★(正子添削)

冬萌えや土手に日射しの留まりぬ★★★

●小西 宏
発電の煙の高く太く冬★★★
満天星(どうだん)の冬芽の紅し空青し★★★★
枯芝を駆けて嘴餌(え)を咥う★★★

1月13日(5名)

●古田敬二
夢に見る
頬に皹指に皸少年期★★★
皹の頬皸の手で風呂を焚く★★★★
皸の手で風呂釜に火吹き竹★★★

●小口泰與
夕影の湖の一点大白鳥★★★
夕映えの湖へ着水大白鳥★★★★
夕映えの湖に大白鳥が羽を広げて、シルエットのように着水する。着水の水しぶきがきらめく。大白鳥の存在感に固唾を呑むような素晴らしい光景だ。(高橋正子)

老いてなお着飾る我や日脚伸ぶ★★★

●河野啓一
冬枯れて野に万葉の遺跡かな★★★★
初場所や神も宿るや熱気満ち★★★
山眠る箕面の山も六甲も★★★

●桑本栄太郎
冬日さす車内まぶしき家路かな★★★★
晴れた日には、日脚が伸びた印象がもてるこの頃。所用で出かけた車内にも冬日がまぶしく差し込んで、家路もうららかな気持ちになる。(高橋正子)

剪り口の白き並木や冬ざるる★★★
漱ぎもの干すや山よりしまき風★★★

●多田有花
リフォームのレッグウォーマー寒四郎★★★
城跡の残りし山へ初登山★★★

寒晴れに山城の山連なりぬ★★★★
「山城の山」に連なる山々が見渡せ、寒晴れの空のもとに、気持ちが壮大になる。(高橋正子)

1月12日(8名)

●多田有花
寒の光照り返してや照葉樹★★★
寒の雲陸より海へ流るる昼★★★★
初打ちのコートを出ればしぐれかな★★★

●小口泰與
上州へ風花おろす赤城山(あかぎ)かな★★★★
また一人寒鮒釣りに現れし★★★
ぼつぼつと終活準備日脚伸ぶ★★★

●内山富佐子
冬ざるる通りにポストひとつ立つ★★★★
大き口開けて雪呑む流雪溝★★★
街角に小さき地蔵埋もれをり★★★

●祝恵子
水流し七草の葉を選りわける★★★★
七草のパックが売られているが、ひとまとめになった七草を、名を確かめながら水を流して洗い選り分ける。七草が揃っているのも新春らしくてうれしいものだ。「水を流して」に七草に清冽さが加わった。(高橋正子)

阿吽の像めざめし蕾冬の梅★★★
句帳出しメモして急ぐ冬の街★★★

●桑本栄太郎
<京都ゑびす神社>
青空を掃かんとしたり枯柳★★★
福笹の京の町家に露店かな★★★
ちらほらと笹の路地ゆく残り福★★★★

●河野啓一
若者に意見難し寒の水★★★
誇り高く咲いて散りしも枇杷の花★★★
子らの乗る車の行く手冬夕焼け★★★★

●佃 康水
青竹に並ぶ柄杓や初詣★★★
回廊に薦樽積まれ淑気満つ★★★

餅の花菓子舗の梁に幹這わし★★★★(正子添削)
正月の餅花を個人の家で飾ることは少なくなったが、菓子舗などでは華やかに飾っていることがある。この菓子舗は老舗なのだろう。梁も立派で、その梁に添わせて幹の堂々とした餅花が大ぶりで新春の明るさを振りまいている。(高橋正子)

●小西 宏
餌(え)を撒けば池の氷を駆ける鳩★★★
声掛け合い松持って今日どんど焼き★★★★
枯山の朱のやわらかに夕映える★★★

1月11日(7名)

●小口泰與
水仙を朝の冷気と剪りにけり★★★★
ごうごうと風吹く里や水仙花★★★
鳶を追う二羽の鴉や雪浅間★★★

●内山富佐子
雁木下町内のどんど焼き告ぐ★★★★
雁木のある雪国にも、正月のお飾りなどを集めて焼く「どんど焼き」の日が来た。雁木を通って町内に「どんど焼き」を知せて歩く雪国の暮らしがしのべる。(高橋正子)

引越しの荷物並ぶや蔵開き★★★
背の丈の万両のある店の景★★★

●迫田和代
春近く原爆ドームや空高く★★★
ごうごうと白波狂う冬の海★★★

雪道と朝焼けの色混じり合う★★★★
雪道を朝日が染めて、雪に朝焼けのバラ色が見える。雪道に絵画的な明るい美しさを見た。(高橋正子)

●小川和子
 佐倉
正月の枯木影なす城址かな★★★
竹林に日差しゆたかや藪椿★★★

 追悼
友召され岩木の山に雪降り積む★★★★
岩木山は津軽富士と呼ばれているが、富士山よりも優しい山容。岩木山を友と眺めたことであろうが、その友が天に召されて、ただ今は、静かに雪が降り積もる。悲しみがあまりにも静かである。(高橋正子)

●桑本栄太郎
(鴨川、四条大橋)
橋上の人集まりぬ都鳥★★★
外つ人の橋にあまたや初写真★★★
寒釣りや底のきらめく竿の先★★★★

●河野啓一
七福神めぐり終わりしご朱印帳★★★★
正月のテレビを孫子とともに見る★★★
初凪や鳥声さえも澄みわたり★★★

●古田敬二
風邪癒えて山茶花朝に透き通る★★★
風邪癒えて庭の山茶花いよよ紅★★★
湯たんぽを抱きて山本周五郎★★★★

1月10日(5名)

●小口泰與
蝋梅や妙義山(みょうぎ)の風のやわらかし★★★★
轆轤のこけしの音や寒椿★★★
侘助に雨の校庭子犬かな★★★

●河野啓一
戎講青笹どっと奉じられ★★★★
この句は100万人の人出で賑わうという今宮神社の十日戎の様子だろう。福笹の青笹に千両万両の小判を付けて捧げる。青笹は目に爽やかで、芳しく縁起がよい。それが「どっと」というほどの量で思わず笑みがこぼれる。(高橋正子)

お偉方揃いの法被で戎講★★★
天下茶屋戻れば今宮戎かな★★★

●桑本栄太郎
<雪の四条大橋界隈>
雪積みの祇園小路や弁柄壁★★★★
寒釣りの魚籠(びく)下がり居り鴨川に★★★
せせらぎの小枝雪乗せ高瀬川★★★

●小西 宏
泥にまみれ素手赤くして氷遊び★★★★
遊ぶ野に冬暖かな日の恵み★★★
藪低く冬鶯の跳ぶ忙しさ★★★

●古田敬二
庭のものまん丸くして雪積もる★★★★
暁暗に仕事はじめの子を送る★★★
薄暮なる街路樹枝までくっきりと★★★

1月9日(6名)

●小口泰與
我が影の冬田越えける朝ぼらけ★★★
寒梅や湯宿の柱黒光★★★★
寒鴉声高らかや家庭ごみ★★★

●河野啓一
千両を鳥運び来て木の根元★★★★
ほのかなる食パン焼ける香りして★★★
正月も歯を大切に医者初め★★★

●祝恵子
スノータイヤ履かせ犬連れ皆でくる★★★
穂を散らす注連縄つつく雀いて★★★

五日には天神宮へペダルこぐ★★★★
松の内も過ぎ、五日となった今日は、日常に戻りはしたもののどこか正月気分がまだ残っている。馴染みの天満宮まで自転車を漕いで初詣がてらに出かけたのであろうか。うきうきした気分楽しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<雪の桂川>
蕭条と白き中洲や枯尾花★★★
<雪の四条大橋>
見渡せば遙か鞍馬や雪の嶺★★★
南座の大屋根雪の初化粧★★★★

●小西 宏
ユニクロで身を固め行く冬の月★★★
動かざる人あり寒の松手入★★★★
枯れ蔦にまだ住む人の在りや無しや★★★

●高橋秀之
松過ぎて神社の本殿幕を替え★★★★
八日の町名残りは門松だけとなり★★★
尾道へ在来線の旅初め★★★

1月8日(6名)

●古田敬二
夕食は鍋よと菜を抜く鍬初め★★★
子へ持たす最後の一株冬野菜★★★★
銀色に光りて遊ぶ冬花芽★★★

●小口泰與
山風のビル駆け抜けし達磨市★★★
群雀四方に居りし枯野かな★★★★
蕭条とした枯野にも、四方に雀の群れが居て草の穂からこぼれた種などを啄んでいる。枯野と言えど生き生きと暮らす雀を育んでいる。(高橋正子)

あけぼのの霜を鎧ひし車かな★★★

●河野啓一
餅花の明るき朝やデイの窓★★★★
正月明けデイサービスに通うと、窓には餅花が明るく、柔らかな色合いで垂れ下がっている。目にすれば心和む餅花だ。(高橋正子)

成人式羽織袴のリハーサル★★★
枯れ葎光るものあり寒の入り★★★

●桑本栄太郎
<三日夕方山口から京都へ>
孫を抱きうから確かむ三日かな★★★★
汽笛鳴り別れ哀しき三日かな★★★
冬茜うしろに残す車窓かな★★★

●小西 宏
釣り人の石投げ池の氷割る★★★
冬ざれの小山の円し青空に★★★★
葉を削ぎて棘(いばら)に重し冬の薔薇★★★

●佃 康水
空曇るかに旋回す鴨千羽★★★
人日や眼科受診にお墨付き★★★
 
松過ぎや漆器を布に包み入れ★★★★
松も過ぎ、正月に使った雑煮の椀や、お節の重箱などをしまう仕事がある。漆器を傷めないように、布に包んで箱にしまう。正月を無事終えた安堵に加え、「松」「布」の言葉から、漆器の柔らかな艶がことさら印象に残る。(高橋正子)


コメント