1月1日~10日(2021年)

1月9日(4名)
小口泰與
山風に声かすれたる達磨市★★★星
米撒くや我の先へと寒雀★★★
悪声を投げかく朝の寒鴉★★★
廣田洋一
書初の墨痕淋漓万葉歌★★★★
書初や希望を込めて収束と★★★
寒鯉の口を開けども波立たず★★★
桑本栄太郎
暁闇の早起き妻のなずな粥★★★
夕暮れの群青空や寒波来る★★★
ふるさとの夜は長きや雪の雷★★★★

多田有花

厳寒の朝厳かに明けてくる★★★★
風荒れて光明るし寒四郎★★★
寝る前の布団へ白金懐炉かな★★★
1月8日(3名)
小口泰與
白鳥の水脈の文様夕日影★★★★
ひと筋の没日の沼や小白鳥★★★
町医者の待合室の隙間風★★★
廣田洋一
輪飾りを次々取りて廻りけり★★★
動かざる寒鯉に日の差しにけり★★★
寒鯉に御神酒含ませ厄払い★★★
多田有花
青空や風ごうごうと寒波急★★★★
寒波が急に訪れ、今回は北陸や秋田は大雪となった。雪が来なくても、青空に風がごうごうと鳴る。急に来襲した寒波のすざましさ。(高橋正子)
雲なき夜明けベランダの蛇口凍て★★★
着膨れてやじろべえを真似てみる★★★
1月7日(3名)
小口泰與
達磨市赤城は風を放ちけり★★★
風も無き赤城榛名や薺打★★★
山風を含む松取る夕べかな★★★★
門松や松飾を取る夕べ。7日に取るところもあれば、14日に取るところもある。松は、そこにあるままに、山風に吹かれているが、それを下す。松過ぎの一抹のさびしさが伝わる。(高橋正子)
廣田洋一
宝船風運ぶ帆も装へり★★★★
たまたまに齧れる俳句嫁が君★★★
戯れに神棚に乗る嫁が君★★★
多田有花
昼は背に夜は布団に懐炉あり★★★
ほこほこと日差しの中に山眠る★★★★
顔の横冷たき耳がついている★★★
1月6日(3名)
小口泰與
冬鷺の田へ目を向け動かざる★★★
干上がりし畔川の底笹子鳴く★★★★
畔川も干上がって、冬ざれの景色を目の当たりにするようになった。そんな冬ざれのなかにもチャッチャッと、笹子の鳴く声が聞こえる。鴬がそばにいるのは、嬉しい。(高橋正子)
赤城晴風に包まる寒雀★★★
廣田洋一
水仙の揃ひて日差し浴びてをり★★★★
4日の投句の「水仙の揃ひて日を浴びてをり」の方が、字足らずですが、いいです。この句の字足らずは、課題としておいてください。
寒鯉の二匹寄り添ひ動かざる★★★
寒鯉の身を潜めたる岩の影★★★
多田有花
手袋外すタッチパネルに触れるため★★★
松の内午後から風の少し出る★★★★
寒晴れや川波きらきらと光る★★★
1月5日(3名)
小口泰與
夕影の沼へひと筋初写真★★★
大利根の流れ清かや福寿草★★★★
大利根川の流れに沿うところの自生する福寿草か。寒さに耐え、かたまって、日に向くように花を開く様子は、見る人をあたたかい思いにさせてくれる。(高橋正子)
裏白や妻とそろいの服装に★★★
廣田洋一
乾杯を省きし仕事始めかな★★★
凧揚げる風柔らかく子らの声★★★
凧揚がり糸巻きを子に渡しけり★★★★
凧をめったに上げない最近の子供たち。なかなかうまく風を捕まえられないので凧が揚がらない。代わって凧揚げに。凧があがったところで、凧の糸巻きを子に返してやる。子ども時代に帰ったような愉快なひとときと、人柄のやさしさ。(高橋正子)
多田有花
小寒や兵庫はかまぼこ発祥地★★★
小寒の街を小径自転車で(原句)
小寒の街を小径を自転車で★★★★
いよいよ寒くなった街。自転車で、街を走る。小径をちょこちょこと走る。いろんな景色、いろんな人、いろんなものを見て、変わって楽しいもの。(高橋正子)
通院も一年を超ゆ寒の入★★★
1月4日(3名)
小口泰與
乗初や山の社の静寂なる★★★
トラックの変哲も無き初荷かな★★★★
昨今の初荷は、特に飾り立てることもないが、新年初めて送り出し、また、受け入れる荷は、初荷に違いない。変哲もない初荷に、心のうちでは、しっかりと今年の幸先よいことを願っている。(高橋正子)
晴着着てお酌の妻のかいがいし★★★
廣田洋一
文机また散らばりぬ三が日★★★★
水仙の揃ひて日を浴びてをり★★★★
中七の字足らずが気になります。いい句だけに惜しいです。
水仙の蕾ふくらみ丈比べ★★★
多田有花
よく冷えて穏やかに過ぎ三が日(原句)
冷え込んで穏やかに過ぎ三が日★★★★(正子添削①)
三が日よく冷え穏やかに過ぎぬ(正子添削②)
「よく晴れて」の場合なら、すぐ天候のこととわかるのですが、「よく冷えて」で、天候以外のことがまず、浮かんできます。
日常へ人みな戻る四日かな★★★
新しき塵を吸い取り初掃除★★★
1月3日(3名)
小口泰與
輪飾りの揺れし床の間小犬かな★★★
静かなる夫婦と犬や鏡餅★★★
行きかわすプールの中の年賀かな★★★★
廣田洋一
一斉に草木の息吹く初明り★★★★
初明かりが差すと、一斉に息吹く草木に、年の改まったことを思う。草木に息吹を感じたのは、新年のはつらつとした作者の精神そのもの。すがすがしい句。(高橋正子)
福寿草盃のごと黄金色★★★
いつもより人出少なき初詣★★★
多田有花
帰省子と卓を囲める二日かな★★★
洗濯機回す三日の清々し★★★
初暦スマホアプリをクリックす★★★★
1月2日(3名)
小口泰與
福寿草今年は子らの帰省せぬ★★★★
今年は新型コロナウィルスの感染拡大で、年末年始を静かに過ごすよう、政府や知事から要請されている。帰省を控えた人たちも多い。子や孫たちが正月に帰省しないのは、さびしいが、時が時だけに止むを得ない。そんな中この句の「福寿草」は、しずかな豊かさを象徴しているようで、心に沁みてくる。(高橋正子)
日を受けし雪の浅間の淑気かな★★★★
日本酒も餡子も好きやお正月★★★
廣田洋一
月皓皓初日の前の一時を★★★★
数へ年八十路となりぬ初明り★★★
図らずも手を合わせたり初明り★★★★
多田有花
新年の挨拶すべてSNS★★★
穏やかに二日の光さしにけり★★★
パソコンで写真見ている二日かな★★★
※桑本栄太郎さんは、パソコンの不調で投句できないとのことです。Faxでのご投句をお勧めしています。(高橋正子)
1月1日(4名)
小口泰與
初浅間坂東太郎滔滔と★★★
赤赤と白き浅間へ朝日かな(原句)
赤々と雪の浅間へ朝日かな★★★★(正子添削)
青空へ長きすそ野や初景色★★★

廣田洋一

雑煮椀先ずは遺影に供へけり★★★
ひたすらに青く光れる初御空★★★
初御空富士の白さの際立てり(原句)
初御空富士の真白さ際立てり★★★★(正子添削)
作者の住まうところからは、冠雪の富士が望める。初空に真っ白な富士の嶺を眺め、年の新しさにめでたくも、粛然とした気持ちになられたことだろう。(高橋正子)
多田有花
元日の未明の空に月残り★★★
沈みゆく月に差したり初日影★★★
明けの空鳴きかわしつつ初鴉★★★★

桑本栄太郎

紅白の終えて峰より除夜の鐘(原句)
「紅白」を終えて峰より除夜の鐘★★★★(正子添削)
NHKの「紅白歌合戦」は、大晦日の恒例番組となって久しい。「紅白」と省略して呼ばれたりしている。その「紅白」が終わると峰から除夜の鐘が聞こえて来る。京都嵯峨にお住いの作者ならではの、峰よりの除夜の鐘の響きに古都のゆかしさが忍ばれる。(高橋正子)
一天の曇りのなきや年明くる★★★
あたらしき物を身につけ年迎ふ★★★

コメント

  1. 小口泰與
    2021年1月3日 14:10

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    新年早々私の季語がない句を添削して頂き、俳句として成り立つ句にして頂き有難う御座いました。今年もよろしくご指導の程お願い申し上げます。
    また、1月2日の投句「福寿草の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評をたまわり有難う御座いました。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  2. 廣田洋一
    2021年1月3日 17:48

    御礼
    高橋正子先生
    新年早々、元日の「初御空富士の白さの際立てり」を「初御空富士の真白さ際立てり」と添削して頂き、真に有難う御座います。白さが余計に際立ちました。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 多田有花
    2021年1月5日 20:06

    お礼
    正子先生
    「よく冷えて穏やかに過ぎ三が日」を添削くださりありがとうございます。
    ご指摘のとおり、「よく冷えて」ではビールか何かを連想します。
    「冷え込む」という言葉にすれば、天候であるとすぐに理解できます。
    十七音でしっかり伝えることを意識しなければいけないと学びました。

  4. 廣田洋一
    2021年1月7日 16:10

    御礼
    1月4日、6日の水仙の句についてのコメントありがとうございます。
    1月4日の句の字足らずについてじっくり考えます。
    有難う御座いました。