今週の秀句/11月21日~30日


[11月30日]

★鵯の広島城を縦横に/谷口博望 (満天星)
鵯は人家の庭にも飛んできて、花の蜜を吸ったり、木の実を食べたり、また、喧しく鳴きたる身近な鳥だ。句に詠まれた鵯は、広島城を縦横に飛び、遠慮もない。鵯の天下だ。鳥たちがいきいきとしているのは、人間にもいいことだ。(高橋正子)

[11月29日]

★大き種いくつも含む庭の柿/河野啓一
庭に柿の木があると、日本の昔からの家屋と庭と思う。庭の柿は、大きな実をつける年もあったり、小ぶりであったりするが、意外にも大きな種が埋もれている。私の実家は、瀬戸内海の沿岸の田舎にあるが、今では柿の名産地となっている。大きな甘い富有柿がたくさん生ったものだ。そして食べていると大きな種が出てくることがしばしばだった。そんなことを思い出させてくれる句だ。(高橋正子)

[11月28日]

★マフラーの結び目揃え下校の娘/上島祥子
下校してきた娘のマフラーの結び目がきちんと整っていた。それは、意外だったかもしれない。結び目を揃えたマフラーに、女子生徒らしい清潔感と少しお洒落な雰囲気があって、作者はそこにさりげない成長を見たのだろう。(高橋正子)

[11月27日]

★水鳥の群舞すれども池を出ず/廣田洋一
水鳥はこの池を餌場としているのであろう。何かに驚いて水面を飛び立ったり、群舞したりするが、あくまでもその池を離れない。池と水鳥が織りなす一つの世界がここにある。(高橋正子)

[11月26日]

★冬浅き瀬戸の檸檬は色づきぬ/多田有花
「冬浅き」が、瀬戸内の気候にはぴったりだ。青みがかった檸檬の黄色は、瀬戸の海とよく似合い、詩情があって、作者の思いが読み取れる。(高橋正子)

[11月25日]

★魁けて孤高をめざす朴冬芽/谷口博望(満天星)
高く聳える朴の木は葉を落とし、いちはやく冬芽を明らかにする。太くつやつやとした冬芽は「孤高をめざす」ようだ。(高橋正子)

[11月24日]

★霜柱添え木を深く挿しにけり/小口泰與
空っ風の上州。真冬に向かって添え木が必要となる。霜柱が一面を覆う朝、添え木をしっかりと挿し込む。
厳しい冬に向かう心構えが知れる。(高橋正子)

[11月23日]

★水色の空の鞍馬や北しぐれ/桑本栄太郎
「北しぐれ」は北から降って来るしぐれ。北にあたる鞍馬の方の空は明るい水色で日が差しているのだろう。ところがここは時雨。降ったと思うと日が差す時雨の降り様の淡い情緒がいい。(高橋正子)

[11月22日]

★人波に身を任せ行く酉の市/小口泰與
福を呼び、商売繁盛を願う酉の市の賑わい。賑わいの人波に身を任せるよりほかはない。任せることに幸運がありそうだ。(高橋正子)

[11月21日]

★スケートの絵毎日描きし日記帳/廣田洋一
スケートが大好きな子の日記帳だろう。子供は好きなことはどんどんするが、それにしても大変執心だ。(高橋正子)


コメント

  1. 小口泰與
    2016年11月23日 13:07

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    11月22日の投句「酉の市」の句を今日の秀句にお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。
    今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  2. 廣田洋一
    2016年11月23日 18:19

    御礼
    高橋信之先生、
       正子先生

    いつも懇切にご指導頂き有難うございます。
    11月21日の投句「スケートの絵毎日描きし日記帳」を今日の秀句にお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。
    今後とも指導のほど宜しくお願い申し上げます。

  3. 桑本栄太郎
    2016年11月24日 19:38

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    11月23日の今日の秀句に「水色の空の鞍馬や北しぐれ」の句をお選び頂き、嬉しい的確なるご句評も賜り大変有難う御座います!!。
    時雨模様の多いい京都市内です。四条大橋からはるか鞍馬山を見渡せば、すでに時雨は晴れて、水色の青空が見えています。京都には時雨模様も風情があります。

  4. 小口泰與
    2016年11月25日 10:04

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    11月24日の今日の秀句に「霜柱」の句をお選び頂き有難う御座います。
    また、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く感謝申し上げます。
    今後ともよろしくご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
    時節柄、いっそうのご自愛をお祈り申し上げます。

  5. 満天星
    2016年11月26日 16:50

    お礼
    高橋信之先生、正子先生
    11月25日投句の「魁けて孤高をめざす朴冬芽」の句を秀句に選んでいただきありがとうございます。また正子先生の鑑賞にはいつも感心させられます。
    家のすぐ近くに広島大学病院があり、その中に薬草園があります。そこに朴の木が一本あって、他にさきがけてすっかり葉を落とし、冬芽が何本も空に向かっていました。背が高くて先生の「太くつやつやとした」冬芽はなかなか見たことがありませんが、木蓮の冬芽を想像致しました。

  6. 多田有花
    2016年11月27日 18:15

    お礼
    信之先生、正子先生、
    「冬浅き瀬戸の檸檬は色づきぬ」を11月26日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    温暖な瀬戸内はレモンの産地でもあります。
    「冬浅き」が瀬戸内の気候にはぴったり、という正子先生のお言葉を読み、まさにその通りだと思いました。

  7. 廣田洋一
    2016年11月28日 11:35

    御礼
    高橋信之先生、
       正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難うございます。
    11月27日の投句「水鳥や群舞すれども池を出ず」を今日の秀句にお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい鑑賞を頂き厚く御礼申し上げます。
    今後とも指導のほど宜しくお願い申し上げます

  8. 上島祥子
    2016年12月2日 18:36

    御礼
    信之先生 正子先生
    「マフラーの結び目揃え下校の娘」を28日の秀句にお選びくださり丁寧な句評を賜り有り難うございました。

  9. 河野啓一
    2016年12月2日 20:49

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    11月29日の投句、「大き種いくつも含む庭の柿」を今日の秀句におとり上げくだされ、そのうえ正子先生の素晴らしいご句評を賜りまして誠にありがとうございました。今後ともなにとぞよろしくご指導のほどお願い申し上げます。