今日の秀句/6月1日-10日

◆今日の秀句◆

[6月10日]
★山桑やまだ濡れている朝の道/小西 宏
「山桑」は、季語では山帽子のこと。梅雨にはいってもまだ咲いている山帽子があるが、まだ雨に濡れている朝の道に白い山桑の花を見つけると、湿りのある中にもすがすがしさを思う。(高橋正子)

[6月9日]
★雨粒を含みしばらをきりにけり/小口泰與
雨のかかった薔薇の花は重くなっている。剪りとるときにその意外な重さを感じたことであろう。その気持ちが「きりにけり」の詠嘆となっている。(高橋正子)

[6月8日]
★田植え終えし田植機を洗い清む/多田有花
田植えが終われば、活躍した田植機の泥をきれいさっぱり洗い流す。これですっかり田植えが終わったという安堵となる。(高橋正子)

[6月7日]
★黄熟の匂い立たせて梅漬ける/佃 康水
梅干しに漬ける梅は青梅ではなく、黄色く熟れてやわらくなった梅を用いる。青梅が黄熟する間に放つ梅の甘くかぐわしい匂いは、「梅仕事」を楽しくしてくれる。(高橋正子)

[6月6日]
★手に触れる近さで逃げるヒメホタル/古田敬二
ヒメホタルの小さなあかりが手に触れるくらいに近づいたと思うと、触れはしないですうっと逃げた。はかなくも美しい一瞬。(高橋正子)

[6月5日]
★ひさびさの雨をたたえし茄子の花/小口泰與
久々の雨に茄子の枝葉もぴんと張りつめ、いきいきとしている。薄紫の花にもたっぷりと雨滴がかかり、目に涼しさをよぶ。(高橋正子)

[6月4日]
★雨宿りする場に大きく夏木立/高橋秀之
雨宿りする場所のすぐそばに夏木立がある。夏木立に盛んに降る雨がよく見える。夏の雨の力強さ詠まれている。(高橋正子)

[6月3日]
★田植する苗の一部は水の中/祝恵子
おそらく、手植えされる苗であろうが、すぐ植えれるように、束ねて田の水に入れてある。田植えの最中はこういったこともなにか嬉しい気持ちになるものだ。(高橋正子)

[6月2日]
★D五一の蒸気たくまし夏木立/小口泰與
日本でもっとも量産され、主に貨物列車として活躍した蒸気機関車のD五一。力強く貨車をひく姿は多くの日本人の目に焼き付いている。蒸気機関車の時代は終わったが、観光用に残された区間があるのだろう。夏木立に蒸気を吐いて進むD五一を目にして、新たにその勇姿に目を奪われた。(高橋正子)

[6月1日]
★早苗田に母屋どっしり映さるる/佃 康水
母屋の傍から田が広がる。田植えが済んだ田には、早苗の影ばかりではなく、母屋のどっしりと建物が映っている。田植えの後の安堵と、秋の実りが約束されている明るさがある。(高橋正子)


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