石垣に垂れ下がるように咲いたあじさい。石垣を被い尽くしている。そこに雨がかかり、みずみずしい色に輝いている。「石垣」が効いている。(髙橋正子)
夏の朝のすがすがしさの中で、せっせと巣作りする燕の姿に人間的なものが見える。(髙橋正子)
5月29日(1句)
★浜寺の潮騒聞こゆ晶子の忌/桑本栄太郎
堺市生まれの情熱の歌人与謝野晶子は、浜寺で催された歌会で初めて鉄幹と出会ったと言われる。白砂青松の風光明媚な浜寺公園には晶子の次の歌碑がある。
ふるさとの和泉の山をきはやかに
浮けし海より朝風ぞ吹く 与謝野晶子
これらの情景や事情を踏まえた忌日俳句。「潮騒聞こゆ」が効果的。(髙橋正子)
5月28日(1句)
★萍や愚かに日日を過ごしけり/小口泰與
萍が増えるころ、日々がいたずらに過ぎていくような気がする。萍が浮くようにどこか力が入りきらない感じになる。よりよく生きようとする気持ちが「愚かに」という感覚を誘いだしてしまったのだろう。(髙橋正子)
5月27日(1句)
★挨拶す薔薇香らせる家の前/多田有花
きれいに薔薇を咲かせている家の前で偶然知人に会って、挨拶を交わす。薔薇の香りの漂うところで、挨拶する人も、その挨拶も明るく華やいでかぐわしい感じがする。(髙橋正子)
5月26日(1句)
★麦秋の能登路を花嫁のれん号/多田有花
「花嫁のれん」号は、金沢と和倉温泉を走る観光列車。加賀友禅のような絵模様が描かれ、花嫁衣裳のような列車。婚礼の日に花嫁の幸せを願ってのれんが送られる風習にならっての列車名。「麦秋の能登路」がいかにもふさわしい。(髙橋正子)
★発条の玩具の如き夏雲雀/小口泰與
発条の巻きが弾けほどけるように、小さい体が弾けるように夏空に鳴く雲雀。
さらに高みを目指す雲雀の快活さが楽しい。(髙橋正子)
5月24日(2句)
★湯の白きタイルや大夕焼/小口泰與
昭和の時代が懐かしさとともに蘇る。昭和の匂いまでしてきそう。銭湯の白いタイルと大夕焼けがいやでも昭和を感じさせてくれる。(髙橋正子)
<和倉温泉>
★温泉に小さき港夏浅し/多田有花
北陸路の旅の情緒がよく出ている。「小さき港」が手のひらにのるような
愛おしさがあって、「夏浅し」が効いている。(髙橋正子)
5月23日(1句)
★老鶯の朝の森なり風の歌/桑本栄太郎
老鶯の声が伸びやかな朝の森。涼しい風が吹いて老鶯の歌はまさに風の歌となって届いて来る。(髙橋正子)
5月22日(1句)
★野放図の柔き泳ぎの目高かな/小口泰與
飼っている目高だろう。夏になると元気になり、野放図なほど奔放で自由な動きを見せる。見ていると面白くて飽きない。(髙橋正子)
5月21日(1句)
<金沢から和倉温泉へ>
★能登かがり火植田の中を走りゆく/多田有花
「能登かがり火」というJRの列車名。植田の中を走る列車が見せてくれる風景は、日本の真髄と言える風景。「かがり火」のイメージが植田を走るのもまたいい。(髙橋正子)
コメント
お礼
正子先生、いつもご懇切なご指導をありがとうございます。
拙句「命日の夕べざくざくきゃべつ切る」へ心に沁みるご講評を賜り、感謝申し上げます。父の十三回忌でした。命日には、父の好物だった、きゃべつと豚バラのスープをいただきました。