★一陣の風や牡丹のこぼれける/小口泰與
豪華に咲いた牡丹が、一陣の風に花びらを零してしまった。たっぷりと咲いた花があっという間に散る儚さ。まるで夢のなかの出来事のように。(髙橋正子)
5月19日(1句)
<金沢21世紀美術館 スイミング・プール>
★それらしく見えども泳げぬプールかな/多田有花
「スイミング・プール」という展示物。見たとたん泳ぎたいと思うだろうが、実はそれらしく見えるが、泳げないプールなのだ。実際を見ていないが、そんな想像ができて、面白い句だ。(髙橋正子)
5月18日(1句)
★冠雪の白山見ゆる夏はじめ/多田有花
冠雪の白山が見える。見ていると日差しや風に、冠雪の白山があって、すがすがしくて、夏のはじめの季節を強く感じた。(髙橋正子)
5月17日(1句)
<金沢城公園>
★金沢の城は直線夏浅し/多田有花
金沢城は特に横の線を基調とした建築となって、防衛の要素はもちろんあるが、美的な要素も加えられている。縦の線が強調されるゴチック建築にくれべれば、平和的印象がある。それが「夏浅し」とよく合っている。(髙橋正子)
5月16日(1句)
★小流れの岸辺明るし九輪草/小口泰與
小流れの岸辺は、緑のほかに色がなければ、淋しいかもしれない。そこにピンクの九輪草が咲くと、岸辺は目覚めたように明るくなる。九輪草の可愛さが引き立つ。(髙橋正子)
5月15日(1句)
★兼六園池は新樹の影に満つ/多田有花
名園として知られる兼六園は、四季折々にの良さがある。今は新樹の影が池に満ちている。それほどに庭園の木々の盛んな様子がうかがえる。「満つ」の効果が大きい。(髙橋正子)
5月14日(1句)
★石楠花や暁の冷気を浴びにける/小口泰與
石楠花はもともと高山に自生する花なので、その姿からは山の気配が感じられる。暁の冷気がひやひやと石楠花の花を包み、朝を迎える清々しさがある。(髙橋正子)
5月13日(1句)
★みどりさす在所となりぬ大原野/桑本栄太郎
「住んでいる大原野がみどりさすところとなった」という嬉しさが読み取れる。「みどりさす」「大原野」は、現実でありながら、風雅な景色。(髙橋正子)
5月12日(1句)
★鳥声に起こさるる朝柿若葉/小口泰與
若葉が輝く朝、鳥の鳴き声に目覚めるとき、幸せを感じる。自然のやさしさに包まれた感覚がいい。(髙橋正子)
5月11日(1句)
★信号にエンジン止まり夏兆す/桑本栄太郎
信号がゴーサインである青に変わるまで車はエンジンを止めて待つことになる。エンジンが止まると音よりも車外の町の景色や日差しに目が向く。そのとき、夏の兆しを感じたのだ。(髙橋正子)
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