今日の秀句/12月1日~6日

[12月6日]
★晴るる日の新雪積みし山の襞/小口泰與★★★★(正子添削)
もとの句は、「小春日」と「新雪」と季語重なり。晴れた日の山を見渡せば、新雪を冠って、山襞がひときわ際やかだ。真新しい雪、真新しい季節が清々しい。(高橋正子)

 白内障手術で入院(3日間)
★病床に手術待つ間や虎落笛/佃 康水
手術を待つ前の緊張と不安が高まるなか、耳に虎落笛が聞こえ、不安が一層募る。しかし、そこは俳句を作る者。虎落笛を耳に聞き留めることで、手術への覚悟ができる。手術の成功をお祈りします。(高橋正子)

[12月5日]
★ゆらゆらと女人高野の冬黄蝶/古田敬二
女人高野の室生寺へ歩を進めると、寒さの中に生まれたばかりのように、ゆらゆらと飛ぶ黄蝶に出会った。
黄蝶の可憐な魂が思われる。(高橋正子)

★部活子の走り去りけり落葉道/桑本栄太郎
校外の道であろう。落葉の重なる道を部活の子らが走り去って行った。落葉道を駆け抜ける部活の子が自然の中に吸い込まれて行くような感じだ。(高橋正子)

[12月4日]
★磨がかれし楽器に映る冬紅葉/祝 恵子
ブラスバンドの金管楽器だろう。演奏に持ち出され、冬紅葉の近くに置くと、あるいは、演奏中かもしれないが、冬紅葉がきれいに映っている。意外なところに見つけた冬紅葉。磨かれた楽器と冬紅葉と取り合わせがいい。(高橋正子)

★焼べ足さる薪ストーブや食事処/黒谷光子
薪ストーブの燃える炎に温まりながら食事をするのは、心から豊かになれる至福の時。燃え尽きないよう、薪が焼べ足されて至福の時間は続く。(高橋正子)

★手袋の手で鹿を描く幼子ら/川名ますみ
動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。(高橋正子)

[12月3日]
★頂上へ霧昇り行く紅葉山/古田敬二
紅葉山を霧が覆うように、頂上へと昇ってゆく。ダイナミックな霧の動きだ。(高橋正子)

★綿虫の拠りどころなく浮かびけり/桑本栄太郎
綿虫はふわふわと浮かんでいるが、その浮かぶ様子が、「拠りどころなく」なのだ。綿虫の虫とは思えないような実態をうまく表現している。季節の空気の感触が感じられる。(高橋正子)

[12月2日]
★振り向けば枇榔葉騒ぐ里の秋/下地 鉄
ざわざわ騒ぐ音に振り向けば、枇榔の葉が秋風に吹かれている。枇榔が風に吹かれる音に沖縄の里の秋が感じられる。(高橋正子)

★遠くに見ゆ初冠雪の金剛山/高橋秀之
1日は今年一番の寒波がやってきて、近畿地方で親しまれている。金剛山も初冠雪の姿が遠くから眺められた。以外にも早い初冠雪に、寒い日が思われる。(高橋正子)

[12月1日]
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
★時雨るるや牧より仔山羊連れもどし/佃 康水
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

★冬日さす迷える我の影薄し/福田ひろし
「迷い」をテーマにした句で、難しい内容を実感を大切によく表現している。(高橋正子)

★青空の美しきこと初しぐれ/小西 宏
晴れていると思うと急にはらはらと雨が降る。時雨はそんな雨だ。「初しぐれ」なればこそ、青空から降ってくる。こういった美しさは日本独特と思える。(高橋正子)


コメント

  1. 佃 康水
    2014年12月2日 18:22

    御礼
    高橋信之先生 高橋正子先生
    今日の秀句に「時雨るるや牧より仔山羊連れもどし」の句をお選び頂き、又正子先生には心温まる句評を賜り感謝申し上げます。たまたまその牧場を知ることが有って、行って来ました。朝は冬晴れの良いお天気だったのに急に黒い雲が這い出て俄かな時雨となりました。先生の仰る様に仔山羊を急いで連れ戻しに行かれたのにはその牧場の心優しさを感じました。毎日そこの牛乳を飲んでいます。

  2. 小西 宏
    2014年12月2日 21:21

    お礼
    高橋正子先生
    「青空の美しきこと初しぐれ」を「今日の秀句」にお加え下さり、たいへん有難うございました。急な雨には降られましたが、折り畳みの傘の下から遠くの青空を見上げ、心楽しく歩くことができました。

  3. 福田ひろし
    2014年12月3日 22:22

    御礼
    高橋信之先生、正子先生

    冬日さす迷える我の影薄し、を秀句に選んでいただきまして、ありがとうございました。北風の強い休日、仕事のことを鬱々と考えながら歩いていると、夏に比べ、輪郭がひどくぼんやりとした自分の影に気付きました。なんとなくおかしくもあり、句にしてみました。

  4. 桑本栄太郎
    2014年12月4日 17:36

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    12月3日の今日の秀句に「綿虫の拠りどころなく浮かびけり」の句をお選び頂き、正子先生には過分なるご句評を賜り大変有難うございます。
    先日の当地洛西の小春日の光景ですが、草の穂絮と思って見ていたふわふわと、浮かぶとも飛ぶとも見えない物体は綿虫でした。冬のさなかでも日中の暖かい日には、活動している微生物がいる事に驚きです。

  5. 高橋秀之
    2014年12月4日 21:36

    お礼
    高橋正子先生
    遠くに見ゆ初冠雪の金剛山/の句を今日の秀句にお選びくださりありがとうございました。
    大阪も急に寒くなりました。自然のなせる光景は素晴らしいものです。

  6. 祝恵子
    2014年12月6日 17:57

    お礼
    信之先生、正子先生、4日の(冬紅葉)を今日の秀句にお取りいただき、嬉しい句評をありがとうございました。

  7. 佃 康水
    2014年12月7日 18:51

    御礼
    高橋信之先生 高橋正子先生
    12月6日の「病床に手術待つ間や虎落笛」の句を今日の秀句にお選び頂き、また温かい句評を賜り感謝申し上げます。このところ急に寒気が押し寄せ、木枯らし・虎落笛・初冠雪など等、手術の日に合わせたかの様に襲って参りました。医療関係の経歴が有るにも関わらずどちらかと言えば怖がりの所が有る自分です。しかし、何故か不安の中にも句財を見つけた事の嬉しさが先立ち、不思議な事に怖さが薄れていた事に気づいていました。それを先生が言い当てて下さったことがまた嬉しく思います。有難うございます。今は視力が回復し、感謝しています。

  8. 桑本栄太郎
    2014年12月7日 19:29

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    12月5日の今日の秀句に、「部活子の走り去りけり落葉道」の句をお選び頂き、嬉しい素敵なご句評も頂戴しまして大変有難うございます。住まいのすぐ近くに中学校があり、夕方に練習の仕上げでしょうか?掛け声を出しながら一団が走り去りました。静かな落葉道が一層の静けさを誘い、冬の深くなったことを覚えました。

  9. 小口泰與
    2014年12月8日 9:30

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    12月6日の投句に★印のご指導をたまわり、「新雪」の句に正子先生より添削をいただき、秀句にお取り上げいただき、大変にうれしく感謝申し上げます。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。

  10. 川名ますみ
    2014年12月13日 22:18

    お礼
    信之先生、正子先生、いつもご懇切なご指導を賜りまして、ありがとうございます。
    「手袋の手で鹿を描く幼子ら」は、近所の動物公園で見掛けた、コメントの通りの景色です。鹿だけを描いた絵でも、手袋をはめ、寒かった心地は、きっと残るのだろうなぁと、ほほえましく想いました。