[11月10日]
★猪が二頭駆け去る森の道/多田有花
森の道で、二頭の猪が駆け去るのを目撃。私なら驚いて肝を冷やすだろうが、山の経験豊富な作者は猪に出会うこともあったのか、ニ頭の様子を面白がっている。森の道での出来事、森の生活者との遭遇に秋深さを感じる。(高橋正子)
[11月9日]
★銀杏落葉掬つては撒く子の笑顔/廣田洋一
散り重なった落葉を踏んだり、撒いたり。子供はこんな遊びをするのが好きだ。落葉を掬っては撒き散らす。ルールのある遊びではないが、「遊び」の心が可愛らしい。ふと思ったが、外国人の子どもはこんな遊びをするのだろうか。(高橋正子)
[11月8日]
★上州のだんべい言葉空っ風/小口泰與
上州の冬と言えば空っ風。空っ風の吹く中で、「だんべい」を語尾につけて白い息と共に話すのだろうが、上州言葉がほっこりとしている。上州人の冬の生活が偲ばれる。(高橋正子)
[11月7日]
★飛んだかも鬼の子姿消しにけり/谷口博望(満天星)
「鬼の子」は蓑虫のこと。枕草子の41段の『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば』に由来する。枝にぶら下がっていた蓑虫が秋風が吹くままに、いつの間にか消えている。あわれで、さびしい風情の蓑虫であるが、蓑虫を「鬼の子」と言い、鬼の子ならば、元気に「飛んだかも」と想像するのは作者の個性。蓑を着た者は、異界からの使者、つまり鬼とされていた。(高橋正子)
[11月6日]
★ひしひしと気の伝わりぬ返り花/佃 康水
小春日和によく咲いている返り花。躑躅なのだろうか。季節外れに凛と咲く花に「ひしひしとした気」を感じた。作者にひしひしとした「気」があればこそ。(高橋正子)
[11月5日]
★嘴の赤さいとおし百合鴎/谷口博望 (満天星)
冬鳥として渡って来た百合鴎は、枯れ進む景色のなかで、嘴の赤さ、脚の赤さが印象的。都鳥の名もあるように、華やかな赤さが目立つ。白い羽に赤い嘴が可愛らしい。(高橋正子)
[11月4日]
★秋天の水底と見ゆ深さかな/桑本栄太郎
秋の天を見あげ、目をとどめれば、あまりの青さに、そこに水底を見ているような錯覚になる。水底の青の恐ろしさも脳裏をよぎる。(高橋正子)
[11月3日]
★ジューサーからぱっと柚子の香りたつ/多田有花
ジューサーに柚子を入れ、ジューサーが動き出すとすぐさま柚子の香りが、ぱっと拡がる。驚くべき柚子の香りだ。(高橋正子)
[11月2日]
★鍬を振る頭上に広がる鰯雲/古田敬二
鍬を振り、畑を土をたがやす日は快く晴れた日が嬉しい。高い空に鰯雲が広がり、その下で鍬を振るう。力も自然に入ることだろう。働くことの爽快さ。(高橋正子)
[11月1日]
★発車待つバスの車窓や水木の実/桑本栄太郎
発車を待っているいる間、バスの窓から小さな景色が楽しめる。水木の実が熟れているのもありありと見える。水木の紫紺の実を、小鳥たちが好んで食べている様子が重ねて思い浮かぶ。(高橋正子)
コメント
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月1日の今日の秀句に「発車待つバスの車窓や水木の実」の句をお選び頂き、丁寧なる嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
阪急桂駅のバスロータリーには周囲に花水木、水木も植栽されていて、発車待ちのバスの車窓から照葉、実などを眺めて楽しみました。
お礼
信之先生、正子先生
「ジューサーからぱっと柚子の香りたつ」を11月3日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
正子先生のお言葉どおり、まことに驚くべき柚子の香りです。
御礼
高橋信之先生、正子先生
11月4日の今日の秀句に「秋天の水底と見い深さかな」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難うございます!!。
昨日の朝は一昨日の強い風の所為か、朝から吸い込まれそうな真っ青な青空でした。しかもぐるりと頭上を見渡しても、何処にも雲の無い完璧な青空でした。この秋は9月より天候が不順であったため、驚くばかりの秋空でした。
御礼
高橋信之先生 高橋正子先生
11月6日の今日の秀句に「ひしひしと気の伝わりぬ返り花」をお選び頂き、また正子先生には実に余る句評を賜り心より感謝申し上げます。縮景園を巡っていますと日の良く当たる山斜面に赤い色の躑躅が一花活き活きと咲いていました。暫く前に佇みその気を貰いました。
御礼
11月8日の投句「空っ風」の句を今日の秀句にお取り上げいただき、その上、正子先生には素晴らしい句評をたまわり有難う御座いました。
今朝も上州名物の空っ風が吹きまくっています。
今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難う御座います。
11月9日の今日の秀句に銀杏落葉の句をお選び頂き、また正子先生には素敵な句評を賜り心より御礼申し上げます。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
追伸:海外では落葉を拾う子供はいますが、それを掬っては撒くと言う様な遊びをする子は見たことが有りません。
お礼
信之先生、正子先生
「猪が二頭駆け去る森の道」を11月10日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
森を歩いていると最近はよく猪のたてる物音を聞きます。
ずんぐりしていますが、非常に俊敏でまともにぶつかられたら人間など飛んでしまうだろうと思います。
しかし、猪たちも基本的には人間を避けて行動しているようです。