1月20日(2句)
★大寒の天に伸び行く梢かな/桑本栄太郎
大寒という寒さのなかで、天に伸びる梢が快い。寒さで縮こまりがちな人の背筋も伸びるようだ。(高橋正子)
★大寒や御嶽伊吹鈴鹿峰/古田敬二
大寒の厳しい寒さと対峙するように、御嶽、伊吹、鈴鹿峰の雄峰が聳えている。それらが見える位置に立つという力強さが素晴らしい。(高橋正子)
1月19日(1句)
★さざ波に舫いておりぬ鴨の陣/桑本栄太郎
鴨が陣を張っている。さざ波に揺れて、波まかせに一陣が揺れている。その一体感は、まるで舟が舫うようである。(高橋正子)
1月18日(2句)
★湖へ径真直ぐや雪催/小口泰與
湖へ真っすぐ伸びている径。今にも雪が舞いそうな底冷えの径。径の真っすぐさが、印象に残る。(高橋正子)
★鍬はじめ大根取りて帰りけり/古田敬二
鍬はじめは、大根を取って帰る。寒いときの大根はありがたいながら普段の野菜。普段の暮らしの中に、畑に旬の大根がある豊かさがいい。(高橋正子)
1月17日(1句)
★寒暁や阪神淡路震災忌/多田有花
26年前の1月17日、のちに阪神淡路大震災と呼ばれる大地震が起こった。
そのとき、松山にいた私たちは、高速道路が曲がり、橋からトラックが落ちかかった映像や、刻々増える死者の数に驚いてテレビを見ていた。数日して被害者となっ若い女性の棺が帰った。私にして、そんなことが思い出される「寒暁」だ。(髙橋正子)
1月16日(2句)
★探梅の寺苑に来たり大原野/桑本栄太郎
京都大原野には、桜や梅の名所といわれなくても、花のある寺もが多くあることだろう。探梅で歩くうちに寺苑に来た。梅だけでない、寺苑の良さにも魅了されたことだろう。(高橋正子)
★三日月へ寒中の花火あがりけり/多田有花
寒中の花火。厳しくも澄み切った空気に、打ち上げられた花火が印象強く目に入る。三日月も鋭さを増して寒中の厳しさを見せている。寒中の花火の良さ。(高橋正子)
1月15日(2句)
★あけぼのの赤城榛名の吹雪けり/小口泰與
赤城山、榛名山、どちらを見ても吹雪いている。あけぼの雄大な景色がいい。(高橋正子)
★どんど火の社に高く大原野/桑本栄太郎
どんど焼き、地方では、多く、河原や田んぼなど広い場所で行われるが、この句では、紫式部が氏神と崇めた大原野神社のどんど焼きのようだ。境内が広くどんどの火も社に高く上がったのである。高く上がれば願いが叶うという話もある。「社に高く大原野」で終止したのがいい。(髙橋正子)
1月14日(1句)
★竜の玉探して上る寺の坂/古田敬二
寺の坂は日差して暖かい。坂の縁には龍のひげが植えられているので、坂を上りながら、青く光る実、龍の玉を探しながら上った。子供のころの遊びに、龍の玉を麦藁の先を開いてのせ、息を吹いて躍らせるものがあった。遊び心がたのしい。(高橋正子)
1月13日(1句)
★冬芽立つ桜の枝を愛しめり/廣田洋一
俳人にとって、桜の楽しみは花の開花だけではない。冬芽が立つと喜び、芽が膨らみ、蕾が膨らみ、蕾の先に色を見ては喜ぶ。今は冬芽が立った桜の枝がなんとも愛しいのだ。(高橋正子)
1月12日(2句)
★枯葉坂いつも離れて妻が来る/古田敬二
枯葉の降り積もった坂道を妻と上っている。今日に限らずなのだが、妻はいつも少し離れて来る。妻には妻の見るところがあるのか、歩幅が違ってそうなるのか。付きすぎるわけでも、離れすぎるわけでもない距離。枯葉坂のこの距離感の淡さがいい。(高橋正子)
★明け遅し雪しんしんと降る朝は/多田有花
関西や日本海沿岸に大雪が降った朝なのか。雪はしんしんと降り、そんな朝は、明けるのが遅い。白とうすねず色の雪の朝が日本画のように美しい。(高橋正子)
1月11日(1句)
★夕映えの沼を綾なす小白鳥/小口泰與
夕映えの沼に小白鳥が群れをなして浮かんでいる。小白鳥によって、夕映えの沼に綾が生まれる。その時を逃さず句にした。(高橋正子)
コメント
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月15日の今日の秀句に「どんど火の社に高く大原野」の句をお選び頂き、うれしいご句評を頂戴しまして大変有難う御座います!!。
昨日15日は寒晴れの快晴となり、散歩ウオーキングの足を大原野神社まで伸ばしました。
お礼
信之先生、正子先生
「明け遅し雪しんしんと降る朝は」を
1月12日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
先週末の寒波では日本海側はいずれも災害級の大雪になりました。
瀬戸内側のこちらは積もってもすぐ溶けてしまうはかないお客様ですが、
脊梁山脈を超えると魔物に変わりますね。
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
1月13日の「冬芽立つ桜の枝を愛しめり」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月18日の投句「雪催」の句を当日の秀句にお選び頂き有難う御座います。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生、、正子先生
1月19日の今日の秀句に「さざ波の舫いておりぬ鴨の陣」、又1月20日の「大寒の天に伸び行く梢かな」の句をお選び頂き、それぞれの句に嬉しい御句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
寒さに縮む時季でも、沢山風情のある光景があるようです。
お礼
信之先生、正子先生、
「寒暁や阪神淡路震災忌」を1月17日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
26年前あの震災の一報を私はニュージーランドのクライストチャーチで聞きました。
「日本で大きな地震があったよ」とB&Bのご主人から言われて「東海地震か」と思い
部屋のテレビをつけたら、三宮の駅前が映って仰天しました。
それから二日後に帰国し、その機内で燃え盛る長田の町の映像が流れたとき、
機内から驚きと恐怖と心配といろいろなものが混じったどよめきがあがりました。
関空も大阪までのJRも異変はありませんでしたが、大阪から西への鉄路はすべて不通。
京都をまわり、山陰本線と播但線経由で家まで戻りました。
この年は地下鉄サリン事件も起こった大変な年でした。