1月20日(1句)
★冬枯を静かに流る昼の川/多田有花
「昼」と時を特定された川は、朝や夕べの川と何が違うのだろうか。姿を良く見せて明らかに、急がず緩まず流れる。冬枯には昼の川を一本通したい。枯れの静かさがいい。(髙橋正子)
1月19日(1句)
★日に光るビニールハウス春隣り/桑本栄太郎
日に光るビニールハウスを見ると春が近いと感じてします。ふんだんに差す明るい日の光は春なればこそのもの。(髙橋正子)
1月18日(1句)
★葱提げて妙義の風を纏いけり/小口泰與
上毛三山の一つ妙義山の麓下仁田は葱の産地で有名。丈が短く太い下仁田葱は煮ると甘くとろけるようになり美味。葱を提げ、土産にして誰かを訪ねるところか。畑から抜いて帰るところか。それはわからないが、妙義山からの寒風をまとい葱を提げるのは、この地の生活であろう。(髙橋正子)
1月17日(1句)
★明けやらぬ刻や阪神震災忌/桑本栄太郎
阪神・淡路大震災が起こったのは、1月17日の未明。明けやらぬ刻。そのとき私たちは松山に住んでいたが、揺れに起こされ、テレビをつけると死者のニュースや、新幹線の橋脚が倒れ、道路が曲がっている映像。死者もはじめ500人になるのではと思っていたが、時間が経つにつれ、大変な災害になっているとわかった。死者は5000人を超え始め、近所の娘さんも一日経って遺体となって松山への実家へ帰られた。その「明けやらぬ刻」が記憶されるべき追悼の時となった。(髙橋正子)
1月16日(2句)
★寒風の竹林大きくゆらぎけり/桑本栄太郎
寒風に竹林がゆらぐ。こきざみではなく、大きくゆらぐ。竹のしなやかさ、寒風の力強さが思われる。(髙橋正子)
★初風呂や新たな湯気を胸いっぱい/弓削和人
新年初めて風呂に入った。新年の風呂の湯気は、新しく、ぬくぬくと湯船から立ち上がる。その湯気をためらわず胸いっぱい吸った。気持ちのよい大らかな句。(髙橋正子)
1月15日(2句)
★寒中の快晴水音軽やかに/多田有花
寒中の瀬戸内は快晴が続いた。雨も降らないので、流れる水の音は軽やかに鳴っている。寒中の清潔さのなかの水音がきれいだ。(髙橋正子)
★夜来の雨止みたる空にどんどの火/廣田洋一
夜来の雨があがったばかりの空は、塵が洗われてうるんだような感じ。その空へどんどの火が大きく燃え上がる。正月の飾りを焼くどんど火がきよらかだ。(髙橋正子)
1月14日(1句)
★先んずる鴨の鋭声や沼真中/小口泰與
先を行く鴨が鋭い声を発している。何かを警戒する声か。沼の真ん中というのも気になるが、状況が真に迫って読み取れる。(髙橋正子)
1月13日(句)
★新海苔の香り立ちたる握飯/廣田洋一
新海苔と聞けば、どこか粋な印象を私はもつ。握飯に巻けばいい香りが立ち食欲がそそられる。単刀直入な表現があっさりしていて内容にふさわしい。(髙橋正子)
1月12日(2句)
★存分に日差しを浴びる刈田かな/多田有花
存分に日差しを浴びる刈田がおだやか。瀬戸内沿岸の刈田の風景を思い起こす。日差しはその地方地方の気候の特徴をよく表しているように思う。日差しがよく観察された句。(髙橋正子)
★獣ゆく足跡のほか雪ばかり/弓削和人
降り積もった雪を歩いて行ったのは獣だけ。残されているのはその獣の足跡。
それ以外は何もない世界のさびしさ。少し気持ちを離してみれば、メルヘンの世界のようである。(髙橋正子)
1月11日(1句)
★寒梅や澄みたる空に伸びる枝/廣田洋一
寒梅の若枝がすっと空に伸びている。伸びた枝が寒空の青さを印象付けて、余分のないすっきりした句になっている。(髙橋正子)
コメント
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
1月11日の「寒梅や澄みたる空に伸びる枝」及び1月13日の「新海苔の香り立ちたる握飯」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月14日の投句「鴨の鋭声」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、その上正子先生にはうれしい句評を頂き有難う御座います。
今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
信之先生、正子先生
「存分に日差しを浴びる刈田かな」を1月12日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
近所は水田や畑が埋め立てられて次々家が建っています。
それでもまだ家の間に田は残っています。
今は冬も深まり田はすっかり枯色になり、そこに寒の日差しがあたっています。
暖かいなあと感じるのはこういう風景です。
自由な投句箱
★女正月わすれ寝過ごす夫のいて
★どんど日の妻は徒歩にて神社へと
★日差したる峰のけぶりぬ冬霞
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月16日の今日の秀句に「寒風の竹林大きくゆらぎけり」の句を、又1月17日の今日の秀句に「明けやらぬ刻や阪神震災忌」の句をお選び頂き、それぞれの句に素晴らしいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。「寒風」の句は当地洛西には竹林が多く、風の強い日は煽るように大きく揺らぎます。又「阪神震災忌」の句は寒さ厳しい未明の発災であり、体験した誰の記憶にもその時のことは忘れられない記憶のようです。
御礼
高橋信之先生
正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
1月15日の「夜来の雨止みたる空にどんどの火」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月19日の今日の秀句に「日に光るビニールハウス春隣り」の句をお選び頂き、嬉しい語句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
先日の寒晴れの日に、近在の田園地帯を散策ウオーキングしました。
風はまだ寒いものの、明るい陽光に立ち並ぶビニールハウスが輝き春の近い事を覚えました。
お礼
信之先生、正子先生
「冬枯を静かに流る昼の川」を1月20日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
近所を流れている市川の様子です。
昼の日差しをいっぱいに受け、周囲には冬枯れと冬の山があります。
晩冬のこの時期昼の日差しは日ごと明るさを増しています。