私の押しの一句 近藤ひとみ 「雫」秋号・令和5年11月


「私の押しの一句」  近藤ひとみ

炎天下踏切の棒下りてくる    髙橋信之
天ぷらがからりと五月の音たてる  〃

 「私の押しの一句」と言えばこの二句にならざるを得ません。この二句は子規新報「特集 髙橋信之の俳句」より引いたものです。
 俳句に出会って八年目になる私は、軟弱なんでしょうね。俳句に迷いが再三出ます。こんなに俳句が好きなのに、思っていることがピタッと表せない・・・・。気持ちに言葉の表現が追いつかないのです。もどかしいです。そんな時、先の句集を捲るのです。要所要所をマーカーしていないので、いつ、何度読んでも新鮮で、その都度、気づきを与えてくれます。
 「炎天下」のゆっくり下りてくる棒の実景に、遮断されてゆく「今」に、過去や未来が、見る見る断たれてゆく様なリアル感にゾクッとします。「天ぷら」は、流れていく口語調が気持ち良く、五感に響きます。中八は気になりません。五月じゃなきゃ成り立たない句です。
 それともう一句。
雪がふる山のかたちに雪がふる  髙橋信之
 雪と縁のない海辺に住む私ですが、この句に原風景に似た安らぎを感じます。
 こうして髙橋信之の句達に癒されてゆくのですが、難しいことなど何も言ってない。自由さに俳句の拡がりを感じるんだと思います。
 俳句を詠むことで、色いろな自分に出会えた様に思えます。嬉しい事です。それにも増して俳句仲間に出会えた事が一番の宝です。これからも自由に詠んでいきたいと思っています。

(「雫」秋号 令和5年11月15日より 発行所:愛媛県西予市)


コメント

  1. 小口泰與
    2024年2月19日 8:58

    御礼
    高橋信之先生の素晴らしい御句を拝読させていただきました。
    さすが高橋信之先生の御句ですね。
    大変勉強になりました。
    有難う御座います。

  2. 髙橋正子
    2024年2月20日 8:08

    泰與さんへ
    お読みいただき、ありがとうございます。

  3. 高橋秀之
    2024年3月3日 22:25

    コメント
    久しぶりに信之先生の句に触れました。
    「秀之さん、変な技巧なんて使いこなせないんだから、秀之さんが見たまま、感じたままを素直に詠んだらいいんですよ」とよく言われたのを思い出しました。
    著者の「俳句を詠むことで、色いろな自分に出会えた様に思えます」というのは、まさに私にも当てはまることですし、「それにも増して俳句仲間に出会えた事が一番の宝です」ということも共感です。

    正子先生、いい記事を読ませていただきありがとうございました。
    ※メールが埋もれて見落としていました。コメントが遅くなり申し訳ございません。