③「種採」祝恵子ーー俳壇10月号(2023年)より


「俳壇」10月号 プレミアシート生活の部に祝恵子さんの句が掲載されました。

「種採」
    祝 恵子
種採やしまう袋に名を入れて
鳥威し常に回りて吊るさるる
稲刈らるまずは角っこ手刈にて
朝歩き稲架に輝く稲の粒
秋耕の隅に残さる鍬一つ

花冠会員の句評(順不同・敬称略)
①小口泰與
祝恵子様 おめでとう御座います。素晴らしい御句を拝読させて頂きました。有難う御座います。「俳壇10月号」俳句5句掲載おめでとう御座います。
5句とも素晴らしい御句ですが、特に「鳥脅し」の御句が好きな句です。健康にご留意して頂きますますのご活躍を祈念申し上げます。

②吉田晃
秋耕の隅に残さる鍬一つ
静かで、郷愁を呼ぶ作品だと思います。春への用意の秋耕を終え、夕陽と共に帰路につく。ぽつんと残された鍬に秋の夕日がかかり、今日の充実を感じさせる。「隅に」の表現が素直で、作者の物事に対する純粋な目が窺える大好きな一句である。

③多田有花
祝 恵子さま
俳壇プレミアシートへの掲載おめでとうございます。

種採やしまう袋に名を入れて
農作業とは丁寧な気持ちでおこなうのだな、ということが見て取れます。育てた作物から来年播く種を採り、それぞれ作物の名前を書いた袋に入れてとっておかれます。

鳥威し常に回りて吊るさるる
恵子さまらしいユーモアを感じる視点の御句です。そういえば鳥脅しはいろいろな種類があるけれどどれもどこかが回っています。

稲刈らるまずは角っこ手刈にて
稲刈りは稲刈機で一気に刈ってしまいますが、それでも田んぼの隅までは刈れません。そこで人がまず手でその部分を刈っておきます。ここにも農作業に必要な丁寧な細やかさが感じられます。

朝歩き稲架に輝く稲の粒
稲刈りが終わりました。
最近では稲架にかけられる稲も減ってきましたが、今でもそのようにされている農家もあります。そうした田のそばを朝歩くと、稲の粒がきらきらと輝いています。

秋耕の隅に残さる鍬一つ
小さな畑でしょうか。取り入れが終わった後に耕され、その鍬が畑の隅にぽつんと残されています。秋の深まりを感じますね。

④廣田洋一
祝 恵子様
おめでとうございます。
秋耕の隅に残さる鍬一つ
秋耕を終えた畑の隅に鍬が一つ残されている。晩秋の、淋しさが良く出て上手い句。

⑤高橋秀之
朝歩き稲架に輝く稲の粒
早朝の散歩であろう。朝日を受けて輝く稲架の稲の粒。田植えから始まり実りを経て収穫の時を迎えた稲の粒を見て自然の恵みの感謝のひとときです。

⑥川名ますみ
恵子さま、「俳壇」十月号掲載おめでとうございます。
○稲刈らるまずは角っこ手刈にて
稲架掛け前の稲刈り、機械で刈りにくい四隅は、事前に手で刈り取っておくのですね。「まずは角っこ」という現代語によって、作者の実感がより伝わります。

⑦柳原美知子
「稲刈らるまずは角っこ手刈にて」
見慣れた景色を見過ごさず、あるがままにさらりと日常の言葉で表現されていて楽しく、リズムがよく、口ずさみたくなるようなお句ですね。恵子さんの自然体の魅力が詰まった5句、楽しませていただきました。


コメント