H23 花冠1月号後記

後記
★あけましておめでとうございます。本年も
よろしくお願いいたします。今年は卯年。う
さぎは福を招き、飛躍を期待する意味がある
ということです。花冠と誌名を変えてから三
年目となり、「花冠」と言う名前も次第に皆
様に馴染んでいただけるようになったかと思
います。卯年にあやかり、飛躍を期待いたし
ます。
★一月号ということもありまして、信之先生
が生涯に渡って研究されてきた文学について、
「私の文学」として、わかりやすくまとめて
いただきました。信之先生は、ドイツ文学者
ですが、文学研究の方法は独特で、現代文学
の果たす使命を考えられて、これまで様々な
実践行動をとってこられました。ホームペー
ジ「インターネット俳句センター」もその一
つですが、本文の終わりに示された論文項目
は、ネット上で閲覧できますので、お読みく
ださい。
★「俳句の風景」を連載していますが、お読
みになっていかがでしょうか。花冠には、全
国からご参加いただいて、それぞれお住いの
、それぞれの生活周辺から生まれた句をご投
句いただいております。美しい景色や、思わ
ぬ句の背景を知ることも愉しいことです。
★花冠同人の皆様が実行委員としてご活躍い
ただいた第十九回インターネット俳句コンテ
ストは、十月二十日の入賞発表、それに続く
賞状賞品の発送をもって、無事終了いたしま
した。一般の部、また子ども俳句の部でも好
成績を収められ、おめでとうございます。ご
協力ありがとうございました。
★私はと言えば、十月二十一日に全国俳誌協
会主催の「第一回編集賞授賞式・祝賀会」に
都内の会場でしたので、池田加代子さんと出
席しました。その詳しい報告は本号の加代子
さんの文章でお読みください。花冠は、今年
は応募いたしておりませんでしたが、全国八
百誌ほどある俳誌から、応募は十誌でした。
編集賞一誌、特別賞二誌が選ばれました。会
場で祝辞を、と突然指名されましたのであわ
てましたが、難もよい機会と思い、ネット時
代に果たす「本」の役目について祝意を申し
上げつつ、花冠やインターネット俳句コンテ
ストのことなどを話しました。全国数ある俳
誌のなかでも花冠は特異な立場であることを
ご出席の皆様の表情や雰囲気から感じ取りま
した。ご自分の俳句に誇りをお持ちになって、
ますますのご健吟をお祈りいたします。
                (正子)

高橋信之俳句十二か月鑑賞(一月)

高橋信之俳句十二か月鑑賞(一月)

正月の港が動きかもめの詩碑 
            高橋信之

正月の港は横浜港で、その港と一体となって山
下公園があり、武内俊子の童謡歌詞「かもめの
水兵さん」が刻まれた詩碑が建っている。ハワ
イに旅行する叔父を見送るために横浜港の大さ
ん橋に行った帰途で作詞されたものとされる。
横浜港は国際貿易港として正月も休むことなく
動き、白いかもめと青い海が鮮やかな対比を見
せて、明るい港となっている。正月のうららか
な気分に、かもめが波にたのしげに揺られてい
る。「かもめの水兵さん」の歌詞を重ねて、港
の正月がある。        (高橋正子)

H23 1月号選後に その①


 うす雲ひと刷け水引草真赤 喜代子

 ひと刷けのうす雲に水引草の一すじの赤い色。「ひと刷け」
も軽く、水引草も軽いが、そこに「真赤」をもって引き締めた。
その真赤も強烈な赤ではなく、水引草の可憐な赤で、その取り
合わせに詩がある。

H23 1月号投句とメモ

鶺鴒
高橋正子

芒の穂中洲にひらきみな若し 
鴨泳ぐ速き流れに乗りつつも
秋の野の黄蝶白蝶こまごまと
秋風の鳥小屋インコの羽四色
 治代さんから芋炊セット
水郷のごぼう里芋鍋に炊き
欅もみじはや夕暮れが来ておりぬ
十二夜の月にふらんす砂糖菓子
 鶴見川・鳥山川
秋川の出会いの水ののびやかに
落ちそうで落ちず鶺鴒飛ぶときは
すすきより後れて葦の穂が真白
 
  ********

 横浜スタジアム
秋天に強靭なるものスタジアム
剥かれたる芋の白さを煮て保つ
残業の子にあたためて芋煮鍋
里芋の畑にとなり芋を売る
晩稲田の刈らるるまでをそよぎけり
晩稲田の祭りすぎたるさびしさよ  
龍の口より落ちたる水の澄みていし
境内の秋澄み銀杏まだ青し
境内の崖をしばりて蔦紅葉
二丁目の丘に芒の穂の若し
酔芙蓉はれやかなるは八重であり
野ぼたんの紫あれば庭が澄み
湯上りの肌に星より来る寒さ
きょうからは色が見え出す菊蕾
ジンジャーの花の香に足る十三夜
おのこらが合唱して来る秋の坂
一鉢の小菊の色のたのしけれ
球根を植えて文化の日の晴天
秋天の青全きや指の傷

11月11日(木)

★夜は軒陰に白菜星をほしいまま  正子
大気澄む冬の夜、ひときわ輝きを増す星の光に、軒陰にある白菜がぽっと明るく白く目に浮かびます。昼は日の光、夜には星々の光を存分に浴びて旨みを増す白菜。冬夜の静けさに詩情豊かな時間が流れます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
参道の一樹一石落葉踏む/藤田洋子
落葉の積もる参道の一樹一樹の姿を見上げ、踏む道の石一つ一つの具合を確かめつつ登る。伽藍へと導く参道がそうさせる。「落葉踏む」が手堅い。(高橋正子)

○新横浜へ下見に信之先生と。新横浜駅ビルの正面を出て横浜スタジアムに行く通りでもあるレンガ通りのスタバによって、珈琲とクッキーを摂る。レンガ通りをまっすぐ進むと、鶴見川の支流の鳥山川に架かるさんかく橋に出る。橋のたもとが新横浜駅前公園。さんかく橋の川向こうには、横浜労災病院が見える。川土手を歩き、鳥山川と鶴見川の合流点に来る。さらに川土手を歩き、新羽橋までくる。新羽橋を渡り、地下鉄新羽駅から帰路に着く。帰宅は2時前。川土手には、白鷺、鶺鴒。たまに青鷺。桜紅葉、百合の木の黄葉が一番きれいなころ。

○帰宅後、1月号の選句。今月は14日をめどに編集を終える予定だが、18日までかかるかも。

○コンテストの仕事が尾を引いて、小さい緊張が続くせいか、精神、秋晴れのようにいかず。夜中2時半ごろまで雑事の整理。

11月10日(水)

★枯蓮となりつつ水に傾ぎゆき  正子
季節の深まりとともに枯れ進む蓮のありさま、枯蓮そのものの存在感を見事に描写されていると思います。その静かな水面の時の流れに、枯れゆくものの生命の哀感をしみじみと感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
しんとある鵜船の河畔冬初め/藤田洋子
「しんと」の擬態語がこの句のよさ。鵜飼の季節を終えた鵜舟が置かれている河畔の風景に、初冬に対する作者の気持ちが良く出ている。(高橋正子)

11月9日(火)

★木曽三川ひとつは鴨がいきいきと  正子

○今日の俳句
冬ごーやー濃き緑をばぶつ切に/下地 鉄
苦味のある「ごーやー」。冬の濃い緑の生命力の逞しさ。それをぶつ切る力の強さ。迷いがなく、力強い。(高橋正子)

11月8日(月)

★冬はじめ富士の裾野の長く長き  正子
立冬を過ぎたばかりの冬の初めの時期。富士はかすむこともなく、その裾野の広がりもまた、すっきりと見通せ、長く感じられます。 (高橋秀之)

○今日の俳句
大根を手に余らせてすりおろす/高橋秀之
大きな水気たっぷりの大根がすぐさま思い浮かぶ。手に余るほどの大根を摩り下ろすのは、ちょっと大変だが、それも大根らしいところ。(高橋正子)

11月7日(日)/立冬

★天の日は初冠雪の嶺に照り  正子

○今日の俳句
石蕗の花海に落ちゆくゆるき坂/成川寿美代
石蕗の花と海の色彩が美しい。海へと下るゆるい坂を歩きながら、気持ちが広く、ゆるやかに景色に溶け込んでいるのがよい。(高橋正子)

○花冠会員に平成23年度会費の案内をメール。
○信之先生は、新横浜まで授賞式祝賀会会場付近の下見に今朝も出かける。朝8時過ぎから10時過ぎまで。

コメントのお礼

○花冠同人のみなさまへ
花冠同人の皆様から、正子俳句へのご丁寧なコメントをたくさんいただいて、うれしく読ませていただきました。コンテストのことなど、多忙にかまけて、お礼が遅くなりました。どうもありがとうございます。