4月5日(火)

★子らあそばす丘の平地の桃さくら  正子
丘の上の平らかな地に桃やさくらが咲いています。桃色や淡いピンクの明るい花の下、子供たちが楽しそうに遊んでいます。日本の春の穏やかな光景が目に浮かんできます。(藤田裕子)

○今日の俳句
まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)

◇生活する花たち「桜・馬酔木・牡丹の蕾」(横浜日吉本町・金蔵寺)

▼地下鉄日吉本町駅案内
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E5%90%89%E6%9C%AC%E7%94%BA%E9%A7%85

4月4日(月)

★春水の流るる音をパソコンに  正子
パソコンのディスプレイには、膨大な情報が現れます。言葉はもちろん画像も音声も無数にあって、うっかりすると、自分が何を求めているのか分からなくなるほどです。その中から「春水の流るる音」を選び取る。インターネットの吟行ですね。 (川名ますみ)

○今日の俳句
朝桜ふれたき空はうすき青/川名ますみ
「朝桜」と、「うすき青」の二つが繊細な感覚で捉えられている。朝桜によって、空のうすい青は、実際触れたい、そして触れられそうなものとなった。そこに詩がある。(高橋正子)

○午後、信之先生が一人吟行に出掛ける。東横線の日吉駅から松の川緑道を歩く。3月31日に歩いた松の川緑道の続きである。
歩く。
http://www.youtube.com/watch?v=u-hHD-t2HPk

◇生活する花たち「桜1・桜2・辛夷(こぶし)」(横浜日吉本町・松の川緑道)

4月3日(日)

★煽られて花のゆるるは大いなる  正子
ほぼ満開となった桜のひとかたまりが、風にゆれる様子にはボリューム感がありますね。「大いなる」という言葉のおおらかさが、とても好きです。(池田加代子)

○今日の俳句
風光る沖で入港待ちの船/高橋秀之
きらきらと耀く沖で、入港を沖で待っている船。船の待つ沖は、心地よい風が吹いているであろう。急がない春の時間がここにある。(高橋正子)

○朝晴れていた空が昼ごろから曇り、雨が降りそうな気配となる。一時過ぎ、金蔵寺の桜を撮りに雨傘を用意して出かける。三分咲き。お寺の瓦屋根や白障子などを入れて撮る。寺の前のマンションの青柳がきれいに風に吹かれている。帰り、南日吉商店街のマルヤさんで、柏餅を7個買う。蓬のつぶあん、普通のこしあん、それに桜色のみそあん買う。すぐお茶にしていただく。肌寒い一日で、溜まった仕事も滞る。しかも、福島の原発事故は憂鬱だ。

◇生活する花たち「桜」(横浜日吉・金蔵寺)

▼金蔵寺案内
http://soubouwalk.exblog.jp/841165/

4月2日(土)

★来るまでを辛夷のひかり見て待てる  正子
待ち時間。ついこの間まで、足もとに萌える色を探していたのが、今は「辛夷のひかり」を見上げていることに気づきます。季節の細やかな動きをとらえる作者は、人ばかりでなく、春の「来るまでを」も、無私の内に「見て」いらっしゃるのかもしれません。自然を見ていれば、待ち時間の焦りや退屈とは無縁でしょう。結果を求めて苛立つ心境を、優しく平して下さる一句です。 (川名ますみ)

○今日の俳句
山辛夷一気に空の青へ咲く/藤田洋子
「一気に」が野生である山の辛夷らしい。待ちこがれたように噴き出して咲く。辛夷の見方に元気があり新しい。(高橋正子)

◇生活する花たち「桜・馬酔木・曙つつじ」(横浜日吉・鯛ヶ崎公園)

▼鯛ヶ崎公園案内写真
http://takatan.mods.jp/hiyoshi/No2.htm

4月1日(金)

★雪柳の自由な茎と空気と触れ  正子
雪柳の動きは見ていて楽しいですね。ほんのかすかな風にもゆらゆらと揺れ、その白い細かな花の動きが人を招いているようにも見え、微笑ましいです。(多田有花)

○今日の俳句
朝日はや照らして峰の山桜/多田有花
明けるとはやも朝日が射す山桜がみずみずしい。山気を含み、神々しいほどの桜である。

◇生活する花たち「桜」(横浜日吉・金蔵寺)

3月31日(木)

★水浴びの水にかがやく春の椋鳥(むく)   正子
椋鳥の水浴びの動く輝く様子がみえてきます。春が来て活発になってきました。 (祝恵子)

○今日の俳句
春鳥の飛び去り棒の揺れるのみ/祝恵子
たとえば、畑に突っ立っている棒に、鳥が飛んで来て止まり、辺りを見たり、鳴いたりして、飛び去る。飛び去るときのはずみで棒が揺れる。春になると特に小さな生き物がいきいきと動き始める。春らしい景色。(高橋正子)

○丘を走るバス
 三月の終わりの三十一日。港北区日吉本町から下田町にかけてある「松の川緑道」を信之先生が案内してくれるというので出かける。この緑道は、以前は「松の川」という清流であったが、その川を埋めてしまって、今は川なりに細い道となっている。道にあるマンホールの蓋に「あめ」などと書いているが、川の名残りであろうか。ボランティアの人たちがここを緑道として護っているようである。今日歩いたところは、緑道とは程遠い抜け道のようなところ。別なところは(句美子の話では)せせらぎが流れ、金魚もいたりするようだ。今日はそこを通らなかった。
 日吉本町三丁目のわが家を出て、氏神の駒林神社前の住宅の並ぶ坂道を上り、日吉本町二丁目の丘に出る。その丘を下り、慶応大学の日吉下田学生寮に出る。丘から石段を少し降りて行く。石段の手前にメルヘンティクな家がある。家も手作りのようだ。柱の木も枝が残っている。「piano lesson」と表札にある。薪を焚いているようで、薪を積んであり、それにも可愛い屋根がつけてある。ブルーグレーを基調とした家はどんな子どもが住んでいるんだろう。石段を降るあたりは、慶大の合同練習場で、野球の練習など大きな声が終始聞こえる。しばらく歩くと「松の川緑道」と緑の案内札の掛かったところがあった。
 川の流れの通りの細い道がある。取り立てて植物もない。ほどなくゆくと、ベンチがあったので、持参のコーヒーを飲む。買い物袋を提げた人が時々通る。道が終わるあたり山吹が早くも咲きはじめている。桜も咲き始めている。左手の丘に大きなマンションが建ち並ぶ。UR住宅機構、公団のマンションで、サンヴァリエ日吉。日吉本町六丁目の丘の続きがここ下田町のサンヴァリエである。サンバリエを下るとすぐ下田小学校があり、突き当たりの道路向こうにコンビニのミニストップがある。ミニストップにソフトクリーの旗。地震や原発事故で、アイスクリームの存在などは忘れていたが、ソフトクリームの旗を見て、買うことを即決。二つ買って店の広場の椅子で小休憩。信之先生は、ソフトクリームを持ってどこか道を探しに行った。
 「東山田行」のバスに乗ろうとして停留所を探すがない。スーパーらしい店の前を通り、喫茶店を通り、下田郵便局を過ぎて、高田町に出る。町の商店街らしきところの四つ角にガラクタと積み上げた骨董屋があり、引き取った骨董を磨いている夫婦があって、道を尋ねる。信之先生が、「山本記念病院はどちらへ行けばよいのか」と聞くと、真っ直ぐ行って四つ角に当たるから、そこを左に折れて、坂を上って右に行けばバス停があるという。その通りに歩くが、だんだん訝しくなってきた。坂を上るあたりは、丘となって丘は、広い畑となっている。丘の上の遠くに、二本の大きな桜の木があり、よく咲いているようだ。遠景だがよい景色なので写真を撮る。「あの桜を見よう。」というと、「そこまで行く元気がない。」と信之先生が皮肉っていう。しかし、畑の坂を上ると、「高田五丁目」のバス停があった。やはり、桜のところまで来なければならなかった。行き先は、「高田町」とある。「おかしい、地元の人は案外いい加減だから。」とそこのバス停で待つことを懐疑する。バスの運行時刻表を見ると、一時間に二本くらいしかバスが走っていない。次のバスまで四十分近くある。さて、どうするか。畑の傍のはこべや、諸葛菜などを写真に撮る。いなりずしと、細まきずしを持って来ていたので、畑の斜面の風の当たらないところで、ビニールシートをひろげてお弁当を開く。見渡す限りの畑には、今、なにも植わっていない。ジャガイモが玉葱が植えられるのだろうと思うが、全く人影さえもない。畑の斜面は風が当たらなくて暖かい。弁当を食べているうちにすぐに時間が経って、バスの出発まであと四分となった。先にバス停に行った信之先生が、ひとり現われた老婦人に、「山本記念病院に行くバスはここから出ますか。」と聞いている。「そうですよ。一時間に二本しかないバスだから。」山本記念病院経由で東山田へ行こうとしているのだ。まもなく、「高田町行」のバスが日吉駅の方から上って来た。このバスは、全く丘の上を走っている。バスに乗ろうとする人は、丘の下のほうにある家家から坂を上って来るのだ。遠くに桃の花が咲いている。辛夷の花が二本、真っ白になって立っている。桜らしい花も遠くに見える。県立団地も丘から離れてある。どこか迂回するような道だが山本記念病院に着いた。バス停の看板に「高田町(山本記念病院)
」とある。山本記念病院が終点の「高田町」であった。バスはそこに留まったまま、運転手もバスから降りた。記念病院の庭の花の写真を撮る。花にら、ムスカリと黄水仙、菜の花など。山本記念病院から地下鉄グリーンラインの「東山田」駅に歩いてゆき、そこから電車で帰る予定である。記念病院を後にして歩き始めた。町内会の地図看板を見たり、手元の地図を見たりして、高田西五丁目の丘の住宅地を降りる。途中からは港北区ではなく、都筑区東山田となっている。住宅地を行くうち行き止まり表示あって、その先は急な石段がある。すぐそこに第三京浜国道が見えるので、ともかく石段を降りる。途中、崖の菫の花を撮る。降りると、国道であって、「下根」というバス停がある。降りたところを振りあおぐと、今来たところは、「危険崩落地区」の看板がある。恐ろしい。国道沿いに小鳥屋があって「うす雪鳩」という風流な名の鳥の番がいた。うすいグレーの羽に雪がはらはらと降りかかったような白い班がある。バスに乗ろうと時刻表を見るが、あと、一時間ほどはバスが来ない。信之先生が、早淵川に出て東山田に行くという。早淵川は鶴見川の支流で前に歩いた。川には何もいないと見えたが、水の色とよく似た、あるいは石の色とよく似た鴨が二十羽ほどしきりに水苔を食べているようであった。川石かと思うと動くので、鴨とわかる次第。白鷺が一羽。鴨の仕草などを見て川から離れ、東山田の駅に着いた。地下鉄グリーンラインで、東山田、高田、日吉本町と帰る。駅のエスかレーターは、福島第一原発の事故で節電のため、どこもストップ。若いスーツの男性が鞄を提げて、とんとんと拍子をつけて階段を降りてゆく。
 こんなところに丘があって、畑が広がって、桃や辛夷が咲いている。丘を走るバスは、初夏にはどんな景色を見せるだろう。城ヶ島を訪ねたとき、三浦半島の丘の鯉幟がそよぐキャベツ畑に魅了されたが、ここの丘も
すばらしい。

 桃の花まだ咲き残り丘ゆくバス    正子
 丘の上総身白き花辛夷
 丘の上遠く桜が咲いている 
 はこべらの花を撮りつつバスを待つ
 三月の終わりの畑の丘をなす
 山吹の花にかかれる日照り雨
 日照り雨ゆすらの花にきらきらと
 辛夷咲く小学校はさびしすぎ

◇生活する花たち「しでこぶし・山吹・桜」(横浜市港北区下田町)

3月30日(水)

 不器男記念館
★詩人死してただ春風の竹葉吹く  正子
夭逝した俳人の生家を尋ねれば、自ずと死のことを思うのでしょうか。記念館には「筆始歌仙ひそめくけしきかな」の句碑があるそうですが、正子先生は竹の葉を吹く春風に詩人のささやきを感じられたのかもしれません。 (小西 宏)

○今日の俳句
水色のそらに連翹の明るい岸/小西 宏
元の句は、「水色のそら」で切れ過ぎ。感動のありどころを、論理的に詰めて表現するとリアルな句になる。水色の空であるから、真っ黄色い連翹の咲く岸がくっきりと眼前に見える。そのコントラストが美しい。(高橋正子)

◇生活する花たち「はこべ・花にら・花もも」(横浜市港北区高田町)

▼花冠ブログ句会/高橋正子主宰
http://blog.goo.ne.jp/kakan17/
▼現代俳句1日1句/高橋正子鑑賞
http://blog.goo.ne.jp/kakan2011/
▼インターネット俳句センター/花冠発行所
http://suien.ne.jp/haiku/

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3月29日(火)

★春雷のいなづま明かりを胸に受く  正子
冬の眠りから大地が動き出す頃、空にも雷が現れます。春雷の明かりを胸に受け、その拍動を感じる時、自身もまた季節と共に活発になってゆくことを思われるのでしょう。(川名ますみ)

○今日の俳句
残る鴨みずから生みし輪の芯に/川名ますみ
「残る鴨」なので、みずからが生んだ輪の中心にいるという事実が生きる。温んだ水が、しずかに輪を描き、その中心にいる鴨に、独りでいる意思が読み取れる。

◇生活する花たち「梅・椿・ミモザ」(横浜日吉本町3丁目)

3月28日(月)

★花馬酔木しずけきものに山の道  正子

○今日の俳句
揚ひばり畑ねんごろに打ちにけり/小口泰與
ひばりが空高く揚がり、のどかな日和。畑の土を丁寧に打ち返す。行いを丁寧にすれば、心の内も平たんになる。また逆も。(高橋正子)

◇生活する花たち「スズラン水仙・木瓜(ぼけ)・蕗の花」(横浜日吉本町)

3月27日(日)

春の夜のむかし炭火を持ち運び  正子

○今日の俳句
青空の青を返して犬ふぐり/渋谷洋介
犬ふぐりは、地に咲く星に例えられたり、その他、いろいろな表現で称えられてきた。この句のよさは、「青を返して」にある。青空の青を映し、その青をまた空へそっくり返す。この力が花の生命力、あるいは生命感というものであろう。(高橋正子)

◇生活する花たち「苺の花、雪割草、雲間草」(横浜日吉本町自宅)

▼花冠5月号2011年/電子書籍
http://kakan.info/km/k1105/
▼正子の俳句紀行/電子書籍
http://kakan.info/01/c/haiku_kikou/
▼高橋正子五十句鑑賞/電子書籍
http://kakan.info/01/c/masako50/
▼高橋正子第2句集「花冠」/電子書籍
http://kakan.info/01/b/kakan/

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