★枯草を踏みおり人に離れおり 正子
冬の野山は雑草が枯れつくし、物寂しい感じがします。その枯草を踏みながら歩いて行っていますと、だんだん人から離れてゆき、静かな冬の自然の光景に吸い込まれてゆくように感じました。「踏みおり」、「離れおり」とリズムよく詠まれていて、楽しいひとときを過ごされたことと思います。 (藤田裕子)
○キク科

[野紺菊/横浜市港北区松の川緑道]_[白嫁菜(シロヨメナ)/東京・自然教育園]
★黄と白の小花が好きで野の菊よ/高橋信之
野紺菊(ノコンギク、学名:Aster microcephalus var. ovatus)は、キク科シオン属の多年草で、ごくありふれた野菊の1つ。道ばたでもよく見かける植物である。ヨメナに非常に似ている。ただし種内の変異は大きく、同種とされるものにはかなり見かけの異なるものがある。地下茎が横に這い、あちこちから枝を出すので、まとまった群落を作りやすい。茎は立ち上がって枝を出し、高さは50-100cmに達するが、草刈りをされた場合など、はるかに小さい姿でも花をつけている。根出葉は柄があって卵状長楕円形、茎葉は柄がなくて卵状楕円形から卵形で三行脈、縁には粗くて浅い鋸歯が出る。いずれも葉の両面ともに短い毛がある。根出葉は花時にはなくなる。花は8月から11月頃まで咲く。茎の先端の花序は散房状で、頭花は径2.5cmほど、周辺の舌状花は細長くて紫を帯びた白から薄紫、中央の管状花は黄色。痩果は長さ1.5-3mmで先端には4-6mmの冠毛が多数ある。名前の由来はコンギクが紺菊で、ノコンギクは「野生のコンギク」とのこと。なお、伊藤左千夫の小説『野菊の墓』の野菊がこれではないかとの説がある。
もっともよく似ているのはヨメナである。葉の形、花の色形まで非常によく似ている。ヨメナは時に野菊の代表とされ、辞典等では野菊をヨメナの別称とする例もあり、はるかに知名度が高い。しかし実際には両者はよく似ている上に分布も重複しており、同じような環境によく見かけられるから、両者混同されてヨメナと呼ばれていることが多いと思われる。もっともはっきりした違いは、ヨメナの種(果実であるが)には冠毛がないことで、花期が終わった花序があれば一目でわかる。葉の両面に毛があることも、ほぼ無毛のヨメナとは異なるが、あまり目立たない。
白嫁菜(シロヨメナ、学名:Aster ageratoides subsp. leiophyllus)は、キク科シオン属の多年草である。いわゆる「野菊」の仲間で、主として林縁などの半日陰になるような場所に自生する。草丈50cm前後、しばしば1m近くになり、上部で花茎を分け、初秋から秋の初めまで、茎頂で花茎を分けて径1.5~2cm前後のやや小さい白色のキク型の花を皿型(散房状)につける。葉は、長さ10cmほどの長楕円形で葉先は鋭三角形で、粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)がある。名は「ヨメナ」だが「ヨメナ属」ではなく「シオン属」。ノコンギク(Aster ageratoides)の亜種(subsp. leiophyllus)とされ、シロヨメナには数種の変種が知られていて、神奈川県には葉が細長い「サガミギク(var. harae)」が分布する。関東地方には、ノコンギク、カントウヨメナ、ユウガギク、シラヤマギク、シロヨメナやリュウノウギクが分布する。リュウノウギクも分布する。なお、「シオン」は本来中国地方~九州・北東アジアに自生していたとされるが、美しいので平安時代に日本各地に植栽されたようである。
○今日の俳句
桜紅葉園児らの声透りくる/藤田裕子
園児の声が透るほど、桜紅葉が色美しい。空気が澄んでいるためであろうし、昼夜の温度の差が桜紅葉を美しく仕上げたことにもよるだろう。かわいい声が桜紅葉をさらに美しくした。(高橋正子)
◇生活する花たち「冬薔薇①②・ウィンターコスモス」(横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ)

★あかるさは林檎の花の帰り咲く 正子
冬に入る今頃は、空がぐんと暗くなり、緊張が高まります。そんな中、小春日和に誘われて、うっかり咲いた帰り花は、冬のほほ笑みのよう。秋に実を赤くした、林檎の木なれば尚のことでしょう。白い花びらが、木の深さ、実の光、透徹した蒼空、それぞれに映え、あかるいばかりです。(川名ますみ)
○今日の俳句
脱稿をこの日と決めし一葉忌/川名ますみ
「一葉忌」に託す思いが知れる。ここを踏ん張って脱稿にこぎつけようという意思の強さが、一葉に通じるようだ。(高橋正子)
○キク科

[ユリオプスデージー/横浜日吉本町] [アゲラタム/横浜日吉本町]
★ユリオプスデージー大きな鉢が店先に/高橋信之
ユリオプスデージーは、キク科ユリオプス属の常緑低木で、小さいうちは草花のような姿ですが、年を経ると茎は太くなって表面がごつごつした樹木らしい姿になる。葉は羽状に深く切れ込んで表面に柔らかい毛が密生し、灰白色に見える。冬~春の花の少ない時期に一重の黄色い花を咲かす。花径は3cm-4cm、花茎を15cm前後伸ばして先端に1輪をつける。日本へは昭和40年代に渡来し、鉢花として普及した。性質強健で、寒さにも強いので平地や暖地では露地で低木状に茂った株もよく見られ、生垣にも利用できる。属名のユリオプスはギリシア語で「大きな目をもつ」の意で、花姿に由来する。南アフリカ原産で、南アフリカを中心にアラビア半島にかけて、60種以上の仲間が知られているが、ペクティナツス種〔E. pectinatus〕のことを指して「ユリオプスデージー」と呼ぶのが一般的である。代表的な園芸品種に八重咲き種の’ティアラ・ミキ’があり、苗が広く出回っている。本種以外にはバージネウス種〔E. virgineus〕が「ゴールデンクラッカー」の名前で鉢花として流通している。
アゲラタムは、カッコウアザミ属(カッコウアザミぞく、学名:Ageratum)の別名で、キク科の1属である。学名よりアゲラタム属、アゲラタムと呼ばれる。属名は a(否定の接頭語)+ geras(古くなる)で、長い間鮮やかな青紫の花色が保たれることによる。戦前から栽培されていたのは、カッコウアザミ Ageratum conyzoides であったが、現在栽培されているのは、ほとんどがオオカッコウアザミ Ageratum houstonianum である。メキシコ原産の、半耐寒性常緑多年草または亜灌木であるが、園芸上は春播き一年草としている。草丈は、F1(一代交配種)の矮性種で15〜20cm、切り花用種や四倍体の「ブルーミンク」などは、70cmくらいになる。全草に粗い毛が生えている。茎は直立だが、根元からよく分枝し、匍匐状になることもある。葉は直径10cmくらい、ほぼ円形で対生する。花は、1cm位の頭花が円錐状に十数輪またはそれ以上まとまって咲く。花の色は、明るい青紫が基本であるが、白やうす桃色の品種もあり、最近かなり濃い紅色のものも出ている。
◇生活する花たち「桜落葉・ドウダン紅葉・欅黄葉」(横浜日吉本町)

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広島福山
★亥の子の子らまた坂道を上の家へ 正子
四国地方も地域によっては、今もなお農作物の収穫祭と結びついて行われる「亥の子」の行事です。亥の子を搗きながら坂道を上る子どもたちの情景がありありと思い浮かべられます。故郷、福山の心に残る風景として、あたたかな思いが感じとれます。 (藤田洋子)
○今日の俳句
ペダル踏む籠に落葉とフランスパン/藤田洋子
専業主婦としての日常生活を詠んで、読み手も楽しませてくれる。季語「落葉」が効いて、生活の実感を伝えてくれる。(高橋正子)
○竜胆(りんどう)

[竜胆/横浜日吉本町] [竜胆/東京白金台・自然教育園]
★竜胆や風落ち来る空深し 龍之介
★山の声しきりに迫る花竜胆 亞浪
★山ふところの ことしもここに竜胆の花 山頭火
★龍胆の太根切りたり山刀 かな女
★龍膽をみる眼かへすや露の中 蛇笏
★かたはらに竜胆濃ゆき清水かな 風生
★好晴や壺に開いて濃竜胆 久女
★銀婚の妻のみちべに濃竜胆 青邨
★竜胆や月雲海をのぼり来る 秋櫻子
★野に出でて龍胆愛でしけふも暮れぬ 誓子
★竜胆の蕾それぞれ花にそひ 立子
★龍胆を畳に人の如く置く かな女
★竜胆の花のあいだに立つ葉かな 素十
★子へ供華のりんだう浸す山の瀬に 貞
★雲に触れ竜胆育つ美幌越 林火
★稀といふ山日和なり濃龍膽 たかし
リンドウ(竜胆)とは、リンドウ科リンドウ属の多年生植物である。1変種 Gentiana scabra var. buergeri をさすことが多いが、近縁の他品種や他種を含む総称名のこともある。古くはえやみぐさ(疫病草、瘧草)とも呼ばれた。本州から四国・九州の湿った野山に自生する。花期は秋。花は晴天の時だけ開き、釣り鐘型のきれいな紫色で、茎の先に上向きにいくつも咲かせる。高さは50cmほど。葉は細長く、対生につく。かつては水田周辺の草地やため池の堤防などにリンドウやアキノキリンソウなどの草花がたくさん自生していたが、それは農業との関係で定期的に草刈りがなされ、草丈が低い状態に保たれていたためだった。近年、そのような手入れのはいる場所が少なくなったため、リンドウをはじめこれらの植物は見る機会が少なくなってしまい、リンドウを探すことも難しくなってしまっている。園芸植物として、または野草としてよく栽培されるが、園芸店でよく売られているのは別種のエゾリンドウの栽培品種のことが多い。生薬のリュウタン(竜胆)の原料の1種である。
◇生活する花たち「石蕗の花・花八つ手・百両」(横浜日吉本町)

★冬泉手にやわらかに旅半ば 正子
どちらを旅されたのだろう、と想像が膨らみます。風が冷たい時期の旅、そんなときに触れた泉の水が意外にも暖かく感じられました。ふと気持ちが暖かくなる、そんな瞬間を思います。(多田有花)
○今日の俳句
山茶花の長き季節の始まりぬ/多田有花
抒情が削ぎ落とされ、大変シンプルで一筋通った句である。山茶花は早いものは、十月ごろから咲く。本格的に咲き始めるのは、立冬を過ぎてからであろうが、冬の間中の「長き季節」を咲き続ける。今その咲き始めのとき、花あって身辺楽しい季節が過ごせるであろう。 (高橋正子)
○地縛 (じしばり)

[地縛/横浜日吉本町]
地縛 (じしばり、学名 Ixeris stolonifera)は、キク科ニガナ属の多年草。日当たりの良い山野や田の畦などに自生する。名前の由来は、茎が地面を這っている様子が、地面を縛っているように見えることから。4-7月にタンポポに似た花を咲かせる。花茎の先に2cm程の黄色の頭花を1-3個つける。葉は1-3cmの卵円形。よく似るオオジシバリとの見分けは葉の形が、ジシバリは丸い卵形、オオジシバリの葉は細長い楕円形。別名の「岩苦菜(いわにがな)」は、岩場にも生え、茎葉は苦いことから。
ジシバリ(地縛り)の花は、雨の日や曇りの日には開かず、太陽が昇ってくると開き始め、夕方になると萎んでしまうという睡眠運動を繰り返す。茎を折ると白い乳液が出て手につくとべとべとし、やがて黒く変色する。原産地(原生地)は、日本、朝鮮半島、中国。花言葉は人知れぬ努力、忍耐である。
★じしばりの黄花に秋の陽が高し/高橋信之
◇生活する花たち「貴舟菊・山茶花・柘榴」(横浜日吉本町)

★咳こぼし青年ふたり歩み去る 正子
初冬の頃、たまたま目にされた景でしょうか。見ればふたりは咳をしながら歩み去ったという。余韻があり、解釈は読み手に委ねられているのでしょう。 (小川和子)
○今日の俳句
風寒き河辺に立てば吾は旅人/小川和子
ソウルの河辺は特に風の寒さが身にしみる。寒さが旅の身であることを意識させる。(高橋正子)
○アロエの花

[アロエの花/横浜日吉本町] [アロエの花/神奈川藤沢]
★アロエ咲くジョン万次郎生まれし地/右城暮石
★干大根細りきつたりアロエ咲き/清崎敏郎
★アロエ咲く島のくらしに富士一つ/行方克己
★硝子屋のアロエの鉢に冬の月/横山房子
★冬あたたかアロエの花を咲かす家/高橋正子
キダチアロエ(学名:Aloe alborescens)は、原産地が南アフリカ共和国、開花期が11月~1月。キダチの名は「木立ち」から原産地では数mの樹木状となる。日本の気候によく馴染み日本でアロエといえばこのキダチアロエを指す。花は赤橙色、環境によって濃淡がでる場合がある。開花株より1本の花穂を出し、数百の小さな花を咲かせる。開花期は2ヶ月ほど。花は無臭、蜜はあり天ぷらなどに利用される。食材・加工食品・染料・調味料・化粧水など用途は広い、地元の女性はアロエの焼酎漬けを寝酒にしたり、化粧水に加工したりして楽しんでいます。基本的に全葉を用いるが、外皮を剥いたゼリー質には苦味が少なく,、皮をむいた後湯通ししてアロエ刺身としても利用できる。アロエ属は全般に多量に食べるとおなかが緩くなる場合があるので注意が必要である。
日本の気候に馴染み、よく育つキダチアロエは伊豆の特産で、出荷量は静岡県が日本一。中でも伊豆のアロエは品質の高いことで知られています。伊豆白浜、アロエの里にはこのキダチアロエ以外にも、アロエアフリカーナ、アロエ不夜城、アロエベラ、アロエサポナリアなどが各所に植栽されています。伊豆にアロエの話が出てくるのは石廊崎の石室権現にある碑文に1300年前に飢饉・疫病に苦しむ村人を役の行者がアロエをもって救うとあるのが最も古いものです。伊豆は湯出ずる国が語源であるとか、再生を意味する「いず」より伊豆となったなどとする説もあり、無病息災を司る薬師如来を奉る神社仏閣の密度が濃いことでも知られています。温泉などが豊富である事も癒しの伝説多い理由でもあるそうですが、いずれにせよ千年の昔より癒しに縁のある土地柄で、伝説とはいえ、アロエ伝説が残る事も、何かしらロマンある話です。
伊豆白浜に自生するアロエはキダチアロエという品種で、原産地は南アフリカです。地球の裏側から海を渡ってきたとも、陸の口シルクロードを渡ってきたとも言われています。伊豆下田には、自生している水仙やアオギリの漂着伝説もあり、その伝播も歴史ロマンとなっています。
伊豆白浜はアロエが多く自生していて、民家の軒先などにも必ずといっていいほど植えられている土地柄です。20数年前にこのアロエを使って村興しをしようと、伊豆白浜でも特にアロエの多く自生していたこの場所をアロエの里と名づけて村人が手入れしたものです。伊豆に多く見られるアロエはキダチアロエと言い、木のように立つアロエが和名の語源と言われています。地名では下田市白浜の板戸一色(いたどいちき)という場所にあって、小さな漁師村です。ほとんどの民家の軒先にはキダチアロエが植えられていて庭先の救急箱として重宝されています。(伊豆白浜アロエ栽培地のホームページより)
◇生活する花たち「山茶花・千両・万両」(横浜日吉本町)

★水鳥を見ていて一つが潜りけり 正子
都会の公園にも水鳥が現れるようになりました。静かに群を見ていると、その内の「一つ」が潜る瞬間に出遇います。その時を捉えられた喜び、それを景色のまま詩になさった洗練が、うかがわれる一句です。水鳥の前に坐し、一羽が潜った折の発見に、ご一緒させて頂いたような温かい気分になります。 (川名ますみ)
○今日の俳句
一棟をきらきらと越す落葉風/川名ますみ
落葉を連れて風がマンションの一棟を越えていった。きらきら光るのは、落葉も、風も。明るく、高みのある句だ。(高橋正子)
○満天星紅葉(どうだんもみじ)

[ドウダン紅葉/横浜日吉本町]
★ここ西湖満天星紅葉朱を尽くし/林翔
★満天星の紅葉明りに茶室あり/熊岡俊子
★紅葉して満天星小さし女坂 永見博子
★亀の池囲む満天星紅葉かな 清子
★ささやかな満天星紅葉まなかひに 後凋庵
★満天星紅葉垣根となせる日吉村/高橋正子
11月14日、兵庫県豊岡市但東町相田の安国寺のドウダンツツジの紅葉が見ごろを迎え、多くの観光客が訪れ、にぎわいました。ドウダンツツジは、明治37年に本堂が再建されたときに裏庭に植えられたもので、樹齢約150年といわれ、高さ・幅共に約10メートルあります。本堂から裏庭を眺めると、ドウダンツツジが見事に深紅に染まり、絵画を見るようで、観光客らは、秋を感じながら、写真を撮っていました。住職の真田義永さんは、「今年も鮮やかに色づきました。生命あるものは尊いので、自然を大切に守っていこうと思います。皆さんにもそういう観点で見ていただきたい」と話していました。日没から午後8時まではライトアップされ、見ごろは20日ごろまでということです。(豊岡市のホームページより)
◇生活する花たち「白椿・茶の花・千両」(横浜下田町・松の川緑道)

★夕寒き街のはずれに花屋の燈 正子
○今日の俳句
短日の灯をはや夕食の前に/迫田和代
だれでも気づいてはいるが、言葉になかなかできにくいところをずばりと捉えた。「短日の灯」が日常生活を詩と成した。(高橋正子)
○欅黄葉(けやきもみじ)

[欅黄葉/横浜日吉本町]
★色付や豆腐に落て薄紅葉 芭蕉
★小原女の足の早さよ夕もみぢ 蕪村
★日の暮れの背中淋しき紅葉哉 一茶
★山に倚つて家まばらなりむら紅葉 子規
★瀑五段一段毎の紅葉かな 漱石
★阿賀川も紅葉も下に見ゆるなり 碧梧桐
★たかあしの膳に菓子盛り紅葉寺 虚子
★紅葉してしばし日の照る谷間かな 鬼城
★山門に赫と日浮ぶ紅葉かな 蛇笏
★岩畳をながるゝ水に紅葉かな 石鼎
★黄葉一樹輝きたてり紅葉山 泊雲
★仰ぎ見る欅黄葉と青空を/高橋信之
★欅黄葉いま北国の空が欲し/高橋正子
千葉公園には、イロハモミジ、イチョウ、トウカエデ、ケヤキ、カツラ、ニワウルシ、シマサルスベリ、トチノキ、ハナミヅキ、ヒメシャラ、ドウダンツツジなどの紅葉・黄葉する樹木があります。10月中~下旬からケヤキ、サクラ、カツラなどが色づきはじめ、11月上旬から中旬にイロハモミジ、トウカエデ、トチノキが見ごろになり、11月下旬から12月上旬にはボタン園の大イチョウが見事な黄葉を見せます。
今年の紅葉の見ごろ時期は、(社)日本観光振興協会の予想によれば「例年よりやや遅くなる見込み」だそうです。因みに東京(明治神宮外苑)の見ごろ時期は、12月上旬~中旬(例年11月下旬~12月上旬)の予想です。
紅葉は最低気温が8度になると始まり、5~6度以下になると色づきが進むといわれます。前記の予想は、9月の平均気温から予想する気象庁作成の予測式を用いており、今年は9月の平均気温が例年より高かったため、紅葉の見ごろが「やや遅れる」予想結果となっています。
紅葉・黄葉の色は樹種によって概ね同じですが、ケヤキの場合は、黄~橙~赤と樹木によって紅葉の色が異なります。同一の樹木が年によって紅葉色が変わることはなく、樹木の個体ごとに紅葉する色が遺伝的に決まっていることが分かっています。千葉公園でも、黄色のものから赤色のものまで色とりどりのケヤキが見られます。(千葉市のホームページより)
◇生活する花たち「白ほととぎす・茶の花・むべの実」(東京白金台・国立自然教育園)

★うす桃の菊の日差しも写し撮る 正子
黄菊、白菊が季語の傍題になっているが菊の色はさまざまである。作者は薄桃色の菊に立ち寄り写真を撮る。秋の日差しがうまい具合に菊に当たっている。「日差しも写し撮る」が句の中で新しい表現としてユニークな感じを与える。(古田敬二)
○今日の俳句
木の実あまた落ちたばかりの輝きに/古田敬二
落ちたばかりの木の実は、驚くほどつやつやしている。それが「あまた」なので、あたりの森や、その木のゆたかさが思われるできる。(高橋正子)
○桜落葉

[桜落葉/横浜日吉本町]
★踏みてゆく桜ばかりの落葉かな/野村喜舟
★桜落葉嵩なしてゐる兵舎跡/皆川盤水
★納骨へ桜落葉の坂くだる/宮津昭彦
★いつの間に桜紅葉の落葉して/稲畑汀子
★すれ違う彼も桜の落葉踏む/高橋信之
★桜落葉が靴をうずめるほどの道/高橋正子
★桜紅葉水平線のけむりたる/高橋正子
新宿御苑の桜落葉:今日も朝から雨模様。とはいえ、雨が雪に変わりそうなほどの寒さも今日はいく分か和らぎました。昨日から続く雨に、しっとりと舞い落ちたサクラの葉。イギリス風景式庭園では、地面に色とりどりの落ち葉のじゅうたんが敷き詰められました。おなじみの場所でも、落ち葉が積もると、ずいぶん雰囲気が変わるものですね。武蔵野の雑木林を思わせる母と子の森は、さまざまな種類の紅葉が楽しめる自然観察フィールド。野山の木々の色づきのような、素朴な味わいが魅力です。
じつは、ここ母と子の森も、落ち葉のじゅうたんを楽しめるスポットのひとつ。地面にきれいな色模様を描いているのはサクラの落ち葉。しっとりと水分を含み、踏みしめると足に柔らかな感触が伝わります。木の枝についていた時はピンと張りつめていた葉も、落葉するとくるくると丸まり、何とも可愛らしい印象に。春に芽吹き、夏の太陽をめいっぱい浴びた葉が、いま役割を終えて、最後の彩りをのせて散り落ちていく。季節とともに巡る、自然の息づかいを身近に感じ、落ち葉の一枚一枚もいとおしく思えてきます。コンクリートの多い都会では落ち葉を掃除してしまうことがほとんどですが、新宿御苑では、園路など安全への配慮が必要な場所と、葉を残す場所を分けて管理を行っているため、自然のままに降り積もる落ち葉も楽しめます。(新宿御苑のホームページより)
◇生活する花たち「冬薔薇①②・ウィンターコスモス」(横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ)

★落葉ふる空の青さのどこまでも 正子
落ち葉降る時期となった初冬の大空は、まだ秋の気配を残していて空も澄み青々としています。葉が落ちてくる向こう側には、その青空がどこまでも広がって気持ちよいです。 (高橋秀之)
○今日の俳句
大根を手に余らせてすりおろす/高橋秀之
大きな水気たっぷりの大根がすぐさま思い浮かぶ。手に余るほどの大根を摩り下ろすのは、ちょっと大変だが、それも大根らしいところ。(高橋正子)
○木賊

[木賊/横浜日吉本町]
★ものいはぬ男なりけり木賊刈り/大島蓼太
★笠一ッ動いて行くや木賊刈/正岡子規
★子を負ふて木賊刈る里の女哉/正岡子規
★木の国は義仲育て木賊刈る/坂内康花
★深淵は空にありけり木賊刈る/八田木枯
★悪声の鳥来る木賊刈り頃に/三浦照子
★木賊刈るや雪のにほひの絶縁状/塚本邦雄
★こもれびを受けて木賊の青眩し/大津留公彦
木賊を見るときは、いつも、世の中には、面白い植物もあるものだなと思う。そして、いつも「けんけんぱ」の遊びを思い出す。庭の踏み石の端などに木賊が生えている。その踏み石の配置が、子供には、「けんけんぱ」の遊びに都合よいように思えた。正式の遊びは、地面にロウセキで丸を描いて遊ぶ。時には、薬缶に水を汲んできて、土に水で丸く輪を描いた。水が乾けば、また描きなおすのだ。
★木賊生う秋の日差しは斜めから/高橋正子
トクサ(砥草、木賊、学名:Equisetum hyemale L.)とは、シダ植物門のトクサ科トクサ属の植物。本州中部から北海道にかけての山間の湿地に自生するが、観賞用などの目的で栽培されることも多い。表皮細胞の細胞壁にケイ酸が蓄積して硬化し、砥石に似て茎でものを研ぐことができることから、砥草の名がある。地下茎があって横に伸び、地上茎を直立させる。茎は直立していて同じトクサ科のスギナやイヌドクサ、ミズドクサの様に枝分かれせず、中空で節がある。茎は触るとザラついた感じがし、引っ張ると節で抜ける。節の部分にはギザギザのはかま状のものがあって、それより上の節の茎がソケットのように収まっているが、このはかま状のぎざぎざが葉に当たる。茎の先端にツクシの頭部のような胞子葉群をつけ、ここに胞子ができる。その姿のおもしろさから、庭で栽培されることもある。
茎は煮て乾燥させたものを紙ヤスリのようにして研磨の用途に使う。また紙ヤスリが一般的な現代でも高級なつげぐしの歯や漆器の木地加工、木製品の作業工程などの磨き仕上げる工程に使用されていることや、音楽家の滝廉太郎は、身だしなみに気を遣ったため、常々トクサで爪を磨いていたことがよく知られている。クラリネットなどのリード楽器の竹製リードを磨いて調整するのにもトクサが用いられる。干した茎は木賊(もくぞく)と呼ばれる生薬で、その煎液を飲用すると目の充血や涙目に効果があるといわれている。小話に、明治時代の郵便夫が、わらじがあまりにすり減るのを嘆き、すり減らなさそうな材料としてトクサを使う話がある。その結果、足先からすり減って頭だけになった郵便夫は、頭を鞄に片づけて帰ったという落ちである。
「木賊刈る」は秋の季語。
◇生活する花たち「冬薔薇①②・ウィンターコスモス」(横浜いずみ野/カフェ・ド・ダラ)

★眩しかり渚に並ぶゆりかもめ 正子
冬の海は暗く、波も厳しく寒々しいのですが、そんな渚にゆったりと浮かぶゆりかもめの白い揺れは明るく鮮明で、印象的です。(小西 宏)
○今日の俳句
欅立つ落葉きらめく陽の中に/小西 宏
情景がよく整理されている。陽を受けてきらめきながら散る落葉。その中心に黄葉した大きな欅の存在が示されている。(高橋正子)
○八つ手の花

[八つ手の花/横浜日吉本町]
★花八つ手鶏下へ潜り入る/高橋正子
★裏庭を掃きて清まる花八つ手/高橋正子
八つ手は、手をぱっと開いたような形をして、新しい葉はつやつやとして、梅雨どきには、蝸牛を乗せたり、雨だれを受けたりする。夏が過ぎ秋が来て冬至のころになると、球状に花火が弾けたような白い花を咲かせる。八つ手の花を見ると、冬が来たと思うのだ。瀬戸内の温暖な気候のなかで長く暮らした私は確かに冬が来たと感じてしまうのだ。
高村光太郎の詩に「冬が来た」がある。厳しくきりもみするような冬だ。そんな冬は、八つ手の花が消えたとき来る。冬をどう感じとるかが、その人の力そのものであるような気がする。
「冬が来た」
高村光太郎
きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒(ほうき)になった
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
◇生活する花たち「錦木・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)
