伊豆
★わさび田の田毎に春水こぼれ落つ 正子
わさび田に水が満たされ、それぞれの田から水がこぼれ落ちる。春になり、わさびの栽培にも本腰が入ってきます。 (高橋秀之)
○今日の俳句
水鳥の羽ばたきの音春空へ/高橋 秀之
冬の間も生きいきと暮らしていた水鳥が、北へ帰る日も近いのか、羽を広げ羽ばたきの音をさせる。春空へ向けて力強い羽ばたきである。(高橋正子)
○梅林

[梅/伊豆修善寺梅林(2011/02/22)]
○修善寺梅林10句/高橋正子
野に飛べる春鶺鴒や修善寺へ
修善寺の街のこぞって雛飾る
蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し
春浅し川に突き出す足湯なり
紅梅がかすみ白梅がかすみ
梅林の丘をのぼりて伊豆連山
鮎を焼く炉火に手を寄せ暖をとり
梢より富士の雪嶺に風光る
わさび田の田毎に春水こぼれ落つ
天城越ゆ春の夕日の杉間より
2011年2月22日(火)
修善寺駅に到着してから、修善寺梅林へすぐ向かう。修善寺駅から東海バスの「もみじ林行」に乗る。この終点となっているもみじ林に梅林がある。梅見に行く老婦人たちが乗っているが、途中、梅林ではないところで、なんども降りようとする。運転手は、観光案内も兼ねて、そのたび、ここは違う、終点で降りると案内する。立てば、よろけないように注意する。もみじ林で下車。入り口の蕎麦屋と、四十八ヶ所の札所の小さい菩薩の石碑を一つを過ぎて山道を梅林へ。三ヘクタールあるという梅林。歩くと落葉樹が葉を落として、日がよく降り注いでいる。もみじ林の名の由来がわかる。若楓のころは、美しいことだろうと思いながら歩く。ほどなく、右手に西梅林の入り口がある。数歩入れば、漂う梅の花の香り。ここの梅の木はどれも古木。幹はウメノキゴケが覆っている。百年の古木もある。樹のかたちも写真家が喜びそうな形が多くある。梅林の中の竹林は竹の秋。紅白の梅の花の後ろの竹の秋は色がつやつやとしている。梅林は丘となったりしている。丘に登れば、何か見えそうだ。登って見る。伊豆の高い山々が見える。
丘を降りて谷を下ると東梅林へ。こちらは、修善寺温泉へ通じる道らしい。文人の句碑もある。石の鳥居を潜ってさらに下り、温泉への分かれ道のところから、また登る。すると、戸外に太い薪を組んで、大きな炉をつくり、鮎を串刺しにして焼いている。一匹が六百円。一本ずつ食べる。腸までがおいしく食べれる。寒いので炉のほとりに近寄りたいが、火の粉が散って服に穴が開くのでいけないという。食べ終われば、ポリタンクのお湯で手が洗える。鮎を食べて、また梅林を。今度は、雪どけのあと、ますます葉の色が青くなった水仙の小道がある。ここを辿り、もとの西梅林へ。だれか少し上から不意に現れ驚くが、写真を撮っていたらしい。気づくと富士山の山頂が見えている。ちょうどその人がいた場所が富士見には一番良いところだ。写真はもっぱら句美子が撮っているが、富士を収めて来た道をバス停まで下る。バスが来るまで二十分ほど。山すそにパンジーや菜の花の花壇があって、三椏の花が咲いている。咲いているものは、黄色い花簪のようで、かわいらしい。
◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

★賽銭を放りて拝む梅の寺 正子
寺の梅を観に出かけられたのでしょうか。寺の梅は樹齢が古く苔むした幹が多いようです。古ければ香りもよいものです。梅の開花は春の到来を知らせてくれるものであり、それを観るのはなんとなく心を豊かにしてくれます。本堂にある賽銭箱に向かって賽銭を投げ、祈ることはわが子の幸、連れ添いの健康でしょうか。(古田敬二)
○今日の俳句
★春植えの畝の支度や鍬光る/古田敬二
春に植えるものには、じゃがいもなどがあるが、その畝の支度に余念がない。振り上げる鍬も早春の光に光るという耕しの楽しさがある。(高橋正子)
○雲間草
[雲間草/横浜・四季の森公園] [雲間草/横浜日吉本町]
★春浅き庭の一角雲間草/杉竹
★夏の暁け目覚め早きや雲間草/百茶庵
★駅前の花屋に雲間草を買う/高橋信之
本種の雲間草(くもまぐさ、学名:Saxifraga merkii var. idsuroei)は、ユキノシタ科ユキノシタ属の日本原産の多年草で、北アルプスと御嶽山に自生する珍しい高山植物。標高3000m付近の雲の切れ間に咲くため「雲の合間の花」からクモマグサ(雲間草)と名づけられたと言われている。生花店などで栽培に販売されている品種は、ヨーロッパ、北欧を原産とするクモマグサの原種を品種改良した、ピンク色の花などの園芸品種で、西洋雲間草(せいようくもまぐさ、学名:Saxifraga rosacea)、または洋種雲間草(ようしゅくもまぐさ)と呼ばれる。日本種と比べ花の色や形状、開花時期などが異なる。開花時期は、雲間草が 7月~8月、西洋雲間草(洋種雲間草)が3月~5月。2月27日、3月22日の誕生花で、花言葉は活力、自信、愛らしい告白。
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
★二月はや雛の鼓笛を持たさるる 正子
早春、春浅しと言った気分の頃で、寒さはなお厳しい。季節風も強いが、次第に日は永くなり春らしくなつていく。ひな祭りも近くなり三人官女も鼓笛を持って春のおとずれを楽しんでいる。(小口泰與)
○今日の俳句
榛名富士むらさきに明けクロッカス/小口泰與
榛名山が紫色に明ける。雄大な山にも、小さなクロッカスが咲いて足元にも春が来ている。クロッカスも紫色であろうか。(高橋正子)
○雪割草

[雪割草/横浜・四季の森公園(左:2013年2月10日/右:2012年3月22日)]
★雪割草雲千切れとぶ国上山/朝妻 力
★雪割草佐渡がもつとも純なとき/中嶋秀子
★雪割草垂水の滝は巌つたふ/山口草堂
★雪割草風透き通るこの辺り/高澤良一
★日に飢ゑし雪割草と灯をわかち/軽部烏頭子
★森の空高し雪割草に吾に/高橋信之
★雪割草の色いろいろに咲く日向/高橋正子
国営越後丘陵公園(新潟県長岡市)の雪割草まつり
○2013年3月16日(土)から4月7日(日)開催
○主なイベント:展示会講演会花苗・資材販売
平成20年3月1日に「新潟県の草花」に指定された雪割草。長い冬を耐えて可憐な花をつける雪割草の魅力を屋内展示や群生地にてご鑑賞いただけます。4月上旬には約9万株の雪割草の群生地が見頃を迎えます。「新潟県の草花」雪割草。
「雪割草」は、キンポウゲ科ミスミソウ属( Hepatica )の園芸名で、北半球に9種類の分布が知られています。日本にはその中の1種類( H.nobilis )から分かれたミスミソウ・スハマソウ・オオミスミソウ・ケスハマソウが自生しています。これら雪割草の中で最も注目される「オオミスミソウ」。自生地は新潟県を中心とする日本海側にあります。このオオミスミソウは、雪割草の中でも最も変異の幅が広く、さまざまな色や形が楽しめ、しかも性質が丈夫であるため交配に熱中する愛好家も増えています。また、個体もさることながら色とりどりの群生の素晴らしさも言い尽くせません。早春、木立の中で愛らしい花々が咲き乱れ、互いを引き立てながら調和しあう美しさは、出会った人々にすばらしい思い出を与えてくれることでしょう。
http://echigo-park.jp/guide/flower/hepatica/index.html
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

★ヒヤシンスの香り水より立つごとし/高橋正子
春まだ浅き今頃になりますと、冬の乾燥していたころろより雨や霙、あるいは春の雪が降るにつけても、とにかく水の匂いがします。ヒヤシンスの水耕栽培を行ったことがありますが、まさに香り立つごとく花が咲きます。浅春の今頃の時季にぴったりの素敵な一句です。(桑本栄太郎)
○今日の俳句
海苔掻や潮目沖へと流れおり/桑本栄太郎
沖へと流れる潮目を見ながらの海苔掻きに、春の磯の伸びやかな風景が見えて、素晴らしい。(高橋正子)
○孫橋元希誕生
元希は2013年2月19日生まれ。
○節分草

[節分草/東京白金台・自然教育園]
★雨光る節分草の咲く日より/後藤比奈夫
★節分草つぶらなる蕊もちゐたる/加藤三七子
★節分草渓の水引く村の風呂/鈴木政子
★大峰の秘湯ゆたけし節分草/竹内美登里
★節分草よき木漏日のありにけり/渡辺玄子
★たまゆらのもれびこもれび節分草/大堀柊花
★節分はおとといなりき節分草/高橋正子
セツブンソウ(節分草)Shibateranthis pinnatifida (Maxim.) Satake et Okuyama は、キンポウゲ科セツブンソウ属の多年草。関東地方以西に分布し、山地のブナ林など、落葉広葉樹林の林床に生え、石灰岩地を好む傾向がある。高さ10cmほど。地下の1.5センチほどの塊茎から、数本の茎を伸ばし、不揃いに分裂した苞葉をつける。花期は2~3月で花茎の先に2センチほどの白色の花をつけるが、花弁に見えるのは、実は萼片である。花弁自体は退化して黄色の蜜槽となり、多数のおしべと共にめしべの周りに並んでいる。めしべは2~5個あり、5月の中ごろに熟し、種子を蒔いた後で地上部は枯れてしまう。和名は、早春に芽を出し節分の頃に花を咲かせることからついた。可憐な花は人気が高く、現在は、乱獲や自生地の環境破壊によって希少植物になっている。 節分草の自生地として有名な場所は、埼玉県小鹿野町(旧両神村地区)、栃木県栃木市(星野の里)、広島県庄原市(旧総領町地区)などがある。
千曲市戸倉のセツブンソウの群生地は地域の人達が丁寧に守り保護して来ました。千曲市では昨年の2006年に「珍奇または絶滅にひんした植物の自生地」などとして、戸倉の1万2000平方メートルと倉科の約2000平方メートルを市の天然記念物に指定。両地域では2006年11月以降、市民らによる下草刈りや遊歩道の整備をして、一般公開に踏み切った。戸倉地域では2007年2月に発足した「戸倉セツブンソウを育てる会」(会員約60名)が毎日群生地を見回っている。地域では「群生地は地域の誇り、貴重な花への理解を深めてほしい」と呼び掛けている。
◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

★青空の果てしなきこと二月なる 正子
澄み切った青空がどこまでも広がっている二月、暦の上では春とは言え冷え冷えとした二月が詠まれています。また春遠からじの思いも伝わります。 (黒谷光子)
○今日の俳句
鐘の音に児ら寄ってくる春の夕 黒谷 光子
春の夕べ、まだ外で遊んでいた幼い子たちが鐘の音に不思議そうに、もの珍しげに寄ってくる。鐘を撞く人と幼い子のほのぼのとした世界が童画を見るようだ。(高橋正子)
○菊咲き一華(キクザキイチゲ)

[菊咲き一華/横浜・四季の森公園]
★うちとけて一輪草の中にゐる/古館曹人
★一輪草強気な色を投げらるゝ/鈴木早春
★山の日は一輪草に届かざる/田中かつ子
★一華咲く春の確かな陽の中へ/高橋信之
★うす青き沼の光りに一華咲く/高橋正子
キクザキイチゲ(菊咲一華、学名:Anemone pseudoaltaica)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。キクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)とも呼ばれる。本州近畿地方以北~北海道に分布し、落葉広葉樹林の林床などに生育する。高さ10~30cm。花期は3~5月で、白色~紫色の花を一輪つける。キクに似た花を一輪つけることからこの名がついた。春先に花を咲かせ、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、その後は翌春まで地中の地下茎で過ごすスプリング・エフェメラルの一種。山梨県など複数の都道府県で、レッドリストの絶滅危惧種(絶滅危惧I類)や絶滅危惧II類などに指定されている。近縁種は、アズマイチゲ(東一華、学名:Anemone raddeana)、ユキワリイチゲ(雪割一華、学名:Anemone keiskeana)。
イチリンソウ属(イチリンソウぞく、学名:Anemone )は、キンポウゲ科の属の一つ。日本の種にシュウメイギク(帰化)、ユキワリイチゲ、キクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、サンリンソウ等がある。
◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

横浜港
★港湾の動きに満ちて春浅し 正子
春浅く風もまだ冷たい海辺ですが、すでに動き出している港の活気が伝わってきます。荷揚げクレーンの動き、タグボートの音や人の声も聞こえてくるようです。「動きに満ちて」の措辞から港中の多くの動きが活き活きと見えてまいります。(河野啓一)
○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)
○雪割一華(ユキワリイチゲ)

[ユキワリイチゲの花/東京白金台・自然教育園]
★雪割一華へ浅春の陽が燦々と/高橋信之
★一華咲く春の確かな陽の中へ/高橋信之
四季の森公園で初めて「キクザキイチゲ」を見た。去年3月22日のこと。「イチゲ」とは、どんな字を書くのだろうと名札のカタカナを見ながら思った。「一華」である。一茎に一つ花を咲かせる。
先日2月14日に小石川植物園に行った。園内を巡り、売店で柚子茶を飲んでもう帰ろうかと思ったところ植物園で作業をしている男性に出会って立ち話を少々した。一旦別れ、歩いているとまた出会って「下にユキワリイチゲの蕾がちょうど出たところだよ。神社の下の小さい池がある辺り。」と東北訛りで教えてくれた。神社は太郎神社、小さな沼池は榛の木が生えているところと見当がついた。危うく見逃すところだったが、言われた所に行くと、榛の木の生えている少し上に名札が立ててあるのに気付いた。近づくと、紫がかった三つ葉の葉に似た叢に小さな白い蕾が見える。名札がなければ、発見は難しいところだった。一輪だけが咲きかけていた。白い小さな蕾が葉に浮くように、どれも向こうを向くか横向きであった。沼に足を滑らせないように気をつけて、写真を撮った。
★うす青き沼の光りに一華咲く/高橋正子
★榛の木の根方一華の蕾みたり/高橋正子
雪割一華(ユキワリイチゲ、学名:Anemone keiskeana)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草である。日本固有種である。本州の滋賀県から九州にかけて分布し、林の中や渓流沿いなどに生える。「雪割」は早春植物を意味し、「一華」は一茎に一輪の花を咲かせるという意味である。草丈は20から30センチくらいである。根際から生える葉は3小葉からなる。小葉は三角状の卵形でミツバの葉に似ていて、裏面は紫色を帯びる。茎につく葉は茎先に3枚が輪のようになって生える(輪生)。開花時期は3月から4月である。花の色は白く、淡い紫色を帯びている。花びらは8枚から12枚くらいである。ただし、花弁のように見えるのは萼片である。花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。花言葉は「幸せになる」である。属名の Anemone はギリシャ語の「anemos(風)」からきている。種小名の keiskeana は明治初期の植物学者「伊藤圭介さんの」という意味である。圭介はオランダ商館のシーボルトのもとで植物学を学んだ。(花図鑑、©龍&華凛)
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
慶大日吉キャンパス
★煙る銀杏芽吹く気配を一心に 正子
慶応大学日吉キャンパスの銀杏を詠まれた御句。前途有望な学生が集まる学舎にふさわしい、銀杏の芽吹きの清々しさが伝わってきます。銀杏の芽はやがて青葉となり、学生たちの成長を静かに見守るのでしょう。(小川和子)
○今日の俳句
二月の陽を反射させつつバス来たる/小川和子
バスを待っていると、向こうから陽を反射させながらバスがやって来た。光は、早くも明るい二月の光。二月の光を連れて来たバスである。(高橋正子)
○榛の木(ハンノキ)の花

[榛の木の雄花)/東大・小石川植物園] [榛の木の雄花と雌花/国立自然教育園]
★はんの木のそれでも花のつもりかな 一茶
★渓声に山羊啼き榛の花垂りぬ/飯田蛇笏
★空ふかく夜風わたりて榛の花/飯田龍太
★はんの木の花咲く窓や明日は発つ/高野素十
★榛咲けり溝には去(こ)年(ぞ)の水さびて/川島彷徨子
★百姓の忙しくなる榛咲けり/樋口玉蹊子
★榛の花いつかは人の中で死ぬ/岩尾美義
★空深し榛の花とは垂るる花/高橋正子
ハンノキの花は単性で雄花と雌花は別々につく。雄花穂は、枝先に5cmぐらいの長さで尾状に下垂し、雌花穂は、雄花穂の付け根の近くの葉腋に高さ2cmほどの小さな楕円状になって直立する。両花穂とも小さな花の集合体で、目立つような花弁もなく、よく注意をしないと花とは気がつきにくい。
ハンノキ(榛の木、学名:Alnus japonica)は、カバノキ科ハンノキ属の落葉高木。日本、朝鮮半島、ウスリー、満州に分布する。日本では全国の山野の低地や湿地、沼に自生する。樹高は15~20m、直径60cmほど。湿原のような過湿地において森林を形成する数少ない樹木。花期は冬の12-2月頃で、葉に先だって単性花をつける。雄花穂は黒褐色の円柱形で尾状に垂れ、雌花穂は楕円形で紅紫色を帯び雄花穂の下部につける。花はあまり目立たない。果実は松かさ状で10月頃熟す。葉は有柄で長さ5~13cmの長楕円形。縁に細鋸歯がある。良質の木炭の材料となるために、以前にはさかんに伐採された。材に油分が含まれ生木でもよく燃えるため、北陸地方では火葬の薪に使用された。近年では水田耕作放棄地に繁殖する例が多く見られる。
◇生活する花たち「満作①・満作②・蝋梅」(大船フラワーセンター)

★さきがけて咲く菜の花が風のまま 正子
一番先に咲いた菜の花が風に揺れている。その景色の周囲を連想するとその中にいるようで嬉しくなります。(祝 恵子)
○今日の俳句
もてなさる一つに椀のあさり汁/祝 恵子
もてなしの料理が並ぶなかの一つの椀があさり汁である。春らしい一椀に、ほっと気持ちが解きほぐされ、主客ともに春をいただく気持ちが湧く。(高橋正子)
○満作

[ニシキマンサク/東大・小石川植物園] [アテツマンサク/東大・小石川植物園]
★まんさくに水激しくて村静か/飯田龍太
★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
ニシキマンサク(錦満作、学名:Hamamelis japonica var. obtusata forma flavo-purpurascens)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。分布:北海道の西南部、本州の東北地方から鳥取県の日本海側、樹高:5~6m、花期:2~3月仲間:マンサク、シナマンサク、マルバマンサク、アカバナマンサク、アテツマンサク等、同科トキワマンサク属:ベニバナトキワマンサク。多雪地の山地に生える日本在来種マルバマンサクの変種で、日本海側の山地に自生する。前年枝の葉腋から花柄を伸ばし黄色い花を咲かせる。他のマンサクの仲間と同様に、葉の展開より先に開花する。冬芽の表面は、褐色の毛で覆われている。葉は単葉で互生し、葉身は菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。長さ5~11cm。葉縁の先端側に粗い波状の鋸歯があり、基部側は全縁。果実は果で、毛が生えた直径1cmほどの卵状球形、熟すと2つに裂け、光沢のある黒い種子を2個はじき出す。黄色い花弁の基部が、煤けたような、黒ずんだ赤色を帯びる。花弁は4枚あり、長さ1~1.5cm。
アテツマンサク(阿哲満作、学名:Hamamelis japonica var. glauca)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。アテツマンサクは中国地方から四国・九州に分布する落葉の小高木。暖帯の中・上部からブナ帯にかけての急傾斜地に生育する。雪の消えた頃から咲き始め、場所によっては2月の中頃から落葉樹林の中で、黄色い花を咲かせて、春の訪れを知らせている。花はおもしろい形であり、4枚のリボン状の花弁がよれて広がっている。アテツは最初に発見された岡山県阿哲地方を意味しており、マンサクは最初に咲くので、「まず咲く」であるともいうが、どうであろうか。満作とか、万作などの漢字をあてると、豊作を期待させるイメージになる。基本種であるマンサクは関東以西から九州に広く分布し、若葉の星状毛は早期に脱落するが、アテツマンサクは褐色の毛が残る点で区別される。
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

東海道53次川崎宿
★下萌えの六郷川の水青し 正子
春の訪れに、種々の草が緑の芽を出し陽に輝いています。そばを流れる川の水も青く輝き、草の緑と川の青が呼応し明るい世界が広がっています。(井上治代)
○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上 治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)
○浅蜊
★浅蜊に水いっぱい張って熟睡す/菖蒲あや
淡水の多少混じった砂泥の浅海に埋没して棲息する二枚貝。潮干狩の最たる獲物である。川が流れ込む砂浜で、浅蜊はよく取れる。今は春に限らず、養殖の浅蜊が手に入り、砂出しの必要もないものが多くなった。我が家でもよく食べる貝で、一番好きなのは浅蜊のお汁。食べた後の殻はきれいに洗って乾かし、小布でくるんで遊んだことがある。中学生のときに、多摩美大から教生の先生が来られて、貝殻をデザインする授業だったが、熱心に描いた。教頭先生のご子息で、詰襟姿で教壇に立たれたが、本当の美術って、こんなのかなと中学生に思わせてくれた。
小学2,3年の頃だったと思う。近所の人たちが数キロ先に浮かぶ無人島に浅蜊掘りに行くのに誘われた。この島は源平合戦のとき、義経が矢を放って浮き流れているのを射とめてその位置にとどまったという島で「矢の島」と呼ばれて、お椀を伏せたようなごく小さい島である。無人島なので、もちろん桟橋や舟着き場などない。小舟を砂浜に寄せて海水を歩いて島に上がる。子供の私には浅蜊はほとんど採れなかったと思うが、それはまだよい。帰るときその島に独りおいてきぼりにされかかったのだ。誰かが気付いて舟に乗せてくれた。海の水の緑ふかい青さと島の緑が異様に恐ろしく思えた。
松山にいたころは、海辺に出かけて何気なく砂を掘ると小さな浅蜊を見つけることがあった。少し拾って、夜は申し訳程度の浅蜊汁にしたが、けっこう楽しいことである。
○ヘレボルス(クリスマスローズ)

[ヘレボルス/横浜日吉本町]
★クリスマスローズ咲かせる窪の家/松崎鉄之介
★クリスマスローズ仰向くことのなく/椋本一子
★クリスマスローズかかへて友を訪ふ/坂本知子
ヘレボルスとは、キンポウゲ科(Ranunculaceae)ヘレボルス(属)(helleborus)の植物。『ヘレボルス』というと、なんだか聞きなれない名前だが『クリスマスローズ』と言えばご存知の方も多いのではないか。実は、クリスマスローズとは通称で、本名はヘレボルスと言う。ヘレボルスの中の一種である『ニゲル』という原種がイギリスのクリスマス時期に咲くことからクリスマスローズと名付けられた。しかしほとんどのヘレボルスはクリスマスの時期には咲かず2月ごろからの開花となる。
『クリスマスローズ』はローズと言ってもバラではなく、キンポウゲ科の多年草で、ギリシャ語の、殺す「helein」と食べ物「bore」が合わさって出来た名前だそうである。この植物には毒性があって狩などにつかわれていたという話もある。最近では、スーパーの花屋でも買い求めることができるほど人気がでてきたクリスマスローズ。花(本当はガク)の色がカラフルで、株分けやクローンでないかぎり2つとして同じものはないというのも魅力のひとつで、うつむき加減がしおらしい、日本人好みの花。
◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)
★下萌えは大樹の太る根もとより 正子
早春になると、冬枯れの大地よりあちこちに草の芽が萌え始めます。大樹の太る根もとは落葉などで土が温かく、また朽た葉が肥料にもなり下萌えが早いのでしょうか。大樹の根もとに若芽の淡い緑の姿が見え春の到来に嬉しくなります。御句より広々とした公園を想像致しますが、辺りも次第に春の色合いが増す事でしょう。(佃 康水)
○今日の俳句
まんさくの丘へ親子の声弾む/佃 康水
まんさくは、「先ず咲く」の訛りとも言われる。春が兆したばかりの丘に、母と子が声を弾ませ、楽しそうである。春が来たと思う光景だ。(高橋正子)
○赤花満作

[赤花満作/横浜・四季の森公園]
★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
★作紅し森の階段森奥へ/高橋句美子
アカバナマンサク(赤花満作、学名:Hamamelis japonica var.obtusata)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。別名はベニバナマンサク(紅花満作)だが、あまり使われない。花弁が赤色のマンサクだが、外国種や交配種の赤花もアカバナマンサクという名前で表示されていたり、売られていたりする。分類的には、本来の”アカバナマンサク”は在来の”マンサクの変種のマルバマンサクの一つの品種”のことを指す。外国種や交配種には別の学名がつけられている。分布:本州の日本海側、樹高:3~8m、花期:2~3月、果期:9月
落葉の小高木で落葉樹の多いところに生えている。マルバマンサクの品種で花弁全体が暗い赤色を帯びる。枯れ葉が枝に残っていることがある。葉は単葉で互生し、長さ5~11cm。幅3~7cm。葉の先が半円形の菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。葉縁は先半分に波状の鋸歯があり、基部半分は全縁。果は直径1cmほどの卵状球形。熟すと2つに裂けて光沢のある黒い種子を2個はじきとばす。葉の展開に先立って花を咲かせ、花弁は4枚、煤けたような暗い赤色で、鮮やかな赤色ではない。黄色い縁取りがあり、長さ1~1.5cm。萼片も4枚ある。花は良い香りはせず、生臭い香りがかすかにする。
◇生活する花たち「満満作①・満作②・蝋梅」(大船フラワーセンター)
