3月6日(水)

★枯れしもの沈め春水透き通る   正子
春は降雨が多くなり、河川も水かさを増し、それが冬の間に枯葉を沈めたせせらぎを流れ、その上に明るい日差しが照ると、冬涸れの後だけに、豊かに勢いづく感じがすます。 (小口 泰與)

○今日の俳句
まんさくや浅間南面斑なり/小口 泰與
浅間山の南面は雪が解け始めたところもあるのだろう、斑になっている。その山を背景に春を先駆けるまんさくが咲いている。色彩的にも美しい早春の景色である。(高橋正子)

○椿

[椿/横浜日吉本町]

★赤門を入れば椿の林かな/正岡子規
★飯食へばまぶたに重き椿かな/夏目漱石
★十本に十色の椿わが狭庭/稲畑汀子
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★虚子の忌の風たをやかな椿山/皆川盤水
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★またひとつ鉦に落ちけり藪椿/言水
★一日を陽を見ぬ谷戸の藪椿 鈴木卓
★藪椿かがやく電車停まるたび/小島みつ代
★城垣の石の番号藪椿/大塚禎子
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花
★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之

★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子

 ツバキ(椿)は、ツバキ科ツバキ属の植物、学名Camellia japonicaであり、日本原産の常緑樹。野生種の標準和名はヤブツバキ。国内外でヤブツバキや近縁のユキツバキから作り出された数々の園芸品種、ワビスケ、中国・ベトナム産の原種や園芸品種などを総称的に「椿」と呼ぶが、同じツバキ属であってもサザンカを椿と呼ぶことはあまりない。照葉樹林の代表的な樹木。花期は冬から春にかけてにまたがり、早咲きのものは冬さなかに咲く。「花椿」は春の季語であるが、「寒椿」「冬椿」は冬の季語。海柘榴とも表記する。花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている。
 日本のツバキはヤブツバキ、ユキツバキ、ワビスケ。
ヤブツバキ(原種)は、南西諸島から青森県夏泊半島まで分布している。これはツバキ属の自生地の北限である。西日本にはほぼ全域に分布しているが、東日本では温暖な地域に自生している。
 ユキツバキ(雪椿)は、花糸が黄色 ユキツバキの学名はCamellia rusticana (シノニム:Camellia japonica var. decumbens/Camellia japonica subsp. rusticana)。上記のヤブツバキとは別種、またはヤブツバキの豪雪地帯適応型変種、あるいは亜種という見解があり、ヤブツバキに比べ、枝がしなやか、花弁が水平に開く、等の特徴がある。花の変異が多く八重咲きの品種改良に大きく貢献した。別名サルイワツバキ。ヤブツバキとの交雑系統を「ユキバタツバキ」と呼ぶ。
 ワビスケ(侘助)は、中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。

◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

3月5日(火)

★身を固く春雪吹くを帰り来る   正子
一度暖かくなってから寒の戻りによる、春の雪は殊更寒く感じます。ましてや吹雪ともなれば、尚更です。戻り寒の身に沁みる情景が「身を固く」との措辞により、巧みに表現され大変共感致します。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
春潮や水面輝きふくらみぬ/桑本 栄太郎
瀬戸内海の春潮は、水面がゆったりと膨らんで寄せてくる感じがするのは事実。このやわらかな膨らみに日の輝きが加わると「春潮」も実にゆたかな潮となる。(高橋正子)

○ノースポール

[ノースポール/横浜日吉本町]

★ノースポールの真白き花に四月来ぬ/高橋正子

 ノースポール(North Pole、学名:Leucsnthrmum paludosum Syn. Chrysanthemum paludosum)は、キク科 フランスギク属の半耐寒性多年草である。しかし、高温多湿に極端に弱いため、国内では一年草として扱われている。「ノースポール」はサカタのタネの商品名であるが、種苗登録などはされていないため、一般名として定着している。旧学名またはシノニムの「クリサンセマム・パルドーサム」と表記されることもある。12月から翌6月にかけ、白い花を咲かせる。名の由来は、花付がよく株全体を真っ白に覆うように見えるところが北極を連想させることによる。
 原産地はアフリカのアルジェリア周辺ないしはヨーロッパ。地中海沿岸に広く分布している。日本へは1960年代に入って輸入された。 草丈は15cm-25cmほど。まだ寒い12月ごろから初夏までの長期間、マーガレットによく似た白い花を付け、矮性でよく分枝し、芯の管状花は黄色。今日では冬のガーデニングにはなくてはならない存在にまでなった。
比較的強健で、こぼれ種でもよく増え、雑草混じりの場所などでもよく育つ。しかし、市販品のタネから育てるときは、タネの数が少ないので、浅鉢にまき、覆土しないか、タネが隠れる程度に覆土して、鉢底から吸水させる方がよい。蒔き時は東京付近で9月中旬から10月上旬、日のよく当たる場所を好み、乾き気味に管理する。過湿は根腐れの原因となる。日本では6月頃までよく咲くが、暑くなると急速に枯れてしまう。
 パンジーやヴィオラなどとともに、春先から初夏までの庭を彩る主役をつとめる。とくに、性質のよく似た植物で黄花のクリサンセマム・ムルチコーレと一緒に植えると、コントラストが美しい。(Wikipedia より)

○「金蔵寺の裏山に咲きかけていたのだが、ヒアシンスだろうが、それにしては咲くのがちょっと早いが、この写真を見てくれ。」を信之先生に言われた。炊事の途中なので話だけ聞いて、「それはヒアシンスです。裏山の階段の始まるところでしょう。」と自信をもって答えた。濡れた手を拭いて写真を見ると、確かに開きかけたヒアシンス。四国から横浜に引っ越して6年半。普段歩いているところの植物は、ほぼ頭に入った。このヒアシンスある場所も覚えている。そのほかにも、ゆきのしたのある場所、木苺のある場所、ミモザのある家、辛夷の大きな木がある家なども頭に入っている。引っ越した当初は、こういった植物が記憶に、あるいは心にないので、毎日の暮らしが心もとない感じであった。子ども時代に野山や近所を駆けまわって遊んだときも、花や木の実のあるところをいつの間にか覚えていた。故郷の景色はそのようにして形成された。6年半の間にようやく今住むところの景色が心に形成されようとしている。近所を随分歩き回ったので。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

3月4日(月)


★花菜の束一つが開き売られたり   正子
売られている花菜はふっくらとした蕾なのでしょう。その中の一つは開いている、さ緑の豊かな葉の中に淡い黄の菜の花の蕾と花、いろいろな花の中でも一番に自然の春を感じられたことと思います。(黒谷光子)

○今日の俳句
春の川村の真中を光りつつ/黒谷 光子
のどかなで平和な村。村の真ん中を緩やかに光りながら流れる春の川は、皆の生活の中に愛される川。「村の真中」であるのがいい。(高橋正子)

○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子

 中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
 木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。

○きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を買った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

3月3日(日)/雛祭

★雛菓子の届きてからのうららかさ   正子
春まだ寒い時季の雛祭りを前に、一箱の雛菓子が届けられた。彩とりどりの雛あられを小さな高杯に盛るのも愉しい。菱餅も飾ろうか。たちまちうきうきと気分が華やいできます。 (河野啓一)

○今日の俳句
一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)

○桃の花

[桃の花/横浜日吉本町]

★故郷に桃咲く家や知らぬ人/正岡子規
★百姓の娘うつくし桃の花/正岡子規
★桃咲くや古き都の子守唄/正岡子規
★雛の影桃の影壁に重なりぬ/正岡子規

★両の手に桃とさくらや草の餅/松尾芭蕉
★葛飾や桃の籬も水田べり/水原秋桜子
★風吹かず桃と蒸されて桃は八重/細見綾子
★桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々/川崎展宏
★金貸してすこし日の経つ桃の花/長谷川双魚

 モモ(桃、学名は Amygdalus persica L.で[1][2]、Prunus persica (L.) Batsch はシノニムとなっている[3]。)はバラ科モモ属の落葉小高木。また、その果実のこと。春には五弁または多重弁の花を咲かせ、夏には水分が多く甘い球形の果実を実らせる。中国原産。食用・観賞用として世界各地で栽培されている。
 3月下旬から4月上旬頃に薄桃色の花をつける。「桃の花」は春の季語。桃が咲き始める時期は七十二候において、中国では桃始華、日本は桃始笑と呼ばれ、それぞれ啓蟄(驚蟄)の初候、次候にあたる。淡い紅色であるものが多いが、白色から濃紅色まで様々な色のものがある。五弁または多重弁で、多くの雄しべを持つ。花柄は非常に短く、枝に直接着生しているように見える。観賞用の品種(花桃)は源平桃(げんぺいもも)・枝垂れ桃(しだれもも)など。庭木として、あるいは華道で切り花として用いられる。
 葉は花よりやや遅れて茂る。幅5cm、長さ15cm程度の細長い形で互生し、縁は粗い鋸歯状。湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。
 7月 – 8月に実る。「桃の実」は秋の季語。球形で縦に割れているのが特徴的。果実は赤みがかった白色の薄い皮に包まれている。果肉は水分を多く含んで柔らかい。水分や糖分、カリウムなどを多く含んでいる。栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、痛みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

3月2日(土)

★手渡されながら花桃散りいたり   正子
手渡されるそばから、はらはらと散る花桃。咲き満ちた花桃の一枝から散りこぼれる柔らかな花びらの美しさが思われます。手から手への温もりが伝わる、春の明るくあたたかな情景です。(藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○ヒアシンス(風信子)

[ヒアシンスの花/横浜日吉本町]

★一筋の縄ひきてありヒヤシンス/高浜虚子
★敷く雪の中に春置くヒヤシンス/水原秋桜子
★銀河系のとある酒場のヒヤシンス/橋石
★誰もゐなくて満開の風信子/如月美樹

★ヒアシンス白水仙とあわせ活け/高橋正子
★ヒアシンスの香り水より立つごとし/高橋正子

ヒアシンスともいう。小アジア原産。草丈20センチほど。色は白・黄・桃色・紫紺・赤など。香りが高い。ヒヤシンスの名は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスに由来する。彼は愛する医学の神アポロンと一緒に円盤投げに興じていた。その楽しそうな様子を見ていた西風の神ゼピュロスは、やきもちを焼いて、意地悪な風を起こした。その風によってアポロンが投げた円盤の軌道が変わり、ヒュアキントスの額を直撃してしまった。アポロンは医学の神の力をもって懸命に治療するが、その甲斐なくヒュアキントスは大量の血を流して死んでしまった。ヒヤシンスはこの時に流れた大量の血から生まれたとされる。
ヒヤシンスは花茎がまっすぐで意外と頼もしい。しかし優艶。こんなところからか、特に青い花を見ていると美青年が髣髴される。
ヒヤシンスを植えたところは踏まれないように縄を一筋張って置く。縄を張るなんていかにも昭和らしい。今日2月29日は朝から粉雪が舞い、2センチほど積もっている。春の雪が敷く花壇にヒヤシンスが咲けば、そこだけ「春」が置かれたようになる。虚子、秋桜子と対照的な句だが、ヒヤシンスの姿をよく表わしている。わが家では、年末水栽培のヒヤシンスを買い、早も咲いていたのだが、花の匂いを楽しんだ。水栽培で子どもたちでも楽しめる。

以上の文は、2月が29日あった最近の年の文。つまり、2012年。
今年も年が明けてヒアシンスの鉢植を近所の花屋で買って楽しんだ。薄い紫を選んだ。一鉢に三球ある。花は全部で六本咲いた。一球から二本ずつ花が咲いた。二本目が立ちあがるころ最初の花の茎が斜めに倒れるので切り取って花瓶やコップに挿した。ヒアシンスが一番似合ったのはキッチン。薄紫ばかりで単調なので散歩の途中、山裾の捨て球根から育った蕾の水仙を二本摘んで来て一緒に挿して置いたら、とても清楚なまっしろな水仙が開いた。それが、またヒアシンスと特別よく似合った。

◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

3月1日(金)

★雛飾り今宵雛と灯を分かつ   正子
お雛様を飾っているお部屋でのことでしょう。お雛様にも詠者にも同じ灯を分け合っている。嬉しい雛飾りのひと時です。(祝恵子)

○今日の俳句
雨降るよ軒下で抱く桃の花/祝恵子
桃の花を買って帰る途中か。雨が降りだした。止むのを待って軒下で雨宿り。桃の花と春先の雨の湿った空気は馴染みがよい。桃の花の咲くころは降ったかと思うと上がり、また降るという雨の降り方が多い。(高橋正子)

○きのう、花冠同人会長の小西宏さん、信之先生、それに私と花冠30周年記念の花冠特別号について会食しながら話す。場所は、北山田のファミレスのデニーズ。いつものイタリア料理店チーチョに行ったが、改装工事中のため、近くのデニーズになった。私は、久しぶりにビーフシチューを注文した。十分なほうれん草のソテーと、人参、じゃが芋が添えてあった。こういう野菜の摂り方は、ひと昔前の外食のイメージとは変ったと思う。アンバランスにもデザートに白玉あずきを注文した。4時間近く話した。

○ネット短信
■ネット短信No.181/2013年2月28日発信
□発信者:高橋正子(花冠代表)
□電話:045-534-3290

◆ご案内/小西 宏◆
既にご覧になった方もおられるかと思いますが、私もつい最近拝見する機会があったのでご紹介させていただきます。
「文学の森」発行の月刊「俳句界」3月号(通巻200号記念)に「俳句の未来人結社期待の新人52」の一人として、高橋句美子さんがカラー写真入りで紹介されています。
また、同誌の別冊付録「平成名句大鑑」には「現代俳句を代表する俳人500名の、代表句5000句」として、高橋信之先生、高橋正子先生の俳句がそれぞれ10句ずつ掲載されています。

月刊「俳句界」3月号
噴水の真っ直ぐ立ちて虹生る      高橋句美子

「平成名句大鑑」
水平線寒き一本沖に引く         高橋信之
雪載せてものの形の明らかに
永き日のここはどこかと振り返る
さくらさくらさくらさくらてのひらに
囀りの強き一声して去れる
海青あお記憶の夏と一つになる
赤とんぼ群れる辺りの空気がきれい
秋天の青つつぬけの一色に
わが影の付き来て楽し寒き日も
刈田の上の空までが何もない

こどもらが密かに葛湯吹いている     高橋正子
スイートピー眠くなるほど束にする
白バラの空気を巻いていて崩る
わが視線揚羽の青に流さるる
ライン上る巨船の人の裸かな
鐘の音のわれを包んで夏空へ
胸内に今日の夏野を棲まわせる
水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ
手袋に手を入れ五指を広げみる
もろもろもパンも年越す楽しさよ

句美子さんは今日本で最も期待される新人の一人として注目されているわけですし、信之先生、正子先生は平成に入ってからこれまで、現代俳句を代表する優れた俳人の一人として評価されているのだと思います。ご家族3人がそろって、同時にこれほど高い評価を得ることはめったにないことなのではないでしょうか。
月刊「俳句界」はすこし大きな書店では取り扱われていると思いますので、まだご覧になっておられない方はちょっと覗いてみてはいかがでしょうか。当然のことですが、他の優れた俳人先生方のすばらしい俳句(平成に入ってからの作品)も堪能することができます。

■□花冠雑詠投句箱
5月号投句の締切は3月10日です。
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
■□3月ネット句会のご案内
花冠3月ネット句会の投句期間:2013年3月10日(日)午前0時~午後6時ですが、
事前投句が許されます。
※句会場(投句選句場所):
下記ブログ(花冠ネット句会掲示板)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
●高橋正子の俳句日記(ブログ)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
●インターネット俳句センター
http://kakan.info/

○猫柳

[猫柳/東大・小石川植物園(2013年2月14日]_[猫柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★ぎんねずに朱ケのさばしるねこやなぎ/飯田蛇笏
★ひもすがら日は枯草に猫柳/松村蒼石
★猫柳奈良も果てなる築地越し/加藤楸邨
★猫柳高嶺は雪をあらたにす/山口誓子
★そばへ寄れば急に大きく猫柳/加倉井秋を
★ときをりの水のささやき猫柳/中村汀女
★二月はや天に影してねこやなぎ/百合山羽公
★猫柳四五歩離れて暮れてをり/高野素十
★猫柳大利根ゆるぎなく流れ/渡辺潔
★猫柳今日水音の高きこと/稲畑汀子
★谿風の鳴る日鳴らぬ日猫柳/山田弘子
★猫柳水を鏡に呆け初む/皆川盤水
★子を肩に猫柳しかない空ぞ/加藤かな文
★水音は川幅を出ず猫柳/鷹羽狩行

★猫柳さざ波向こうから寄せて/高橋正子

ネコヤナギ(猫柳、学名:Salix gracilistyla)は、ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、ヤナギの1種である。北海道〜九州までの河川の水辺で見られ、早春に川辺で穂の出る姿は美しいものである。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせることから、春の訪れを告げる植物とみなされる。他のヤナギ類よりも水際に生育し、株元は水に浸かるところに育つ。根本からも枝を出し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。葉は細い楕円形でつやがない。初夏には綿毛につつまれた種子を飛ばす。花期は3〜4月。雌雄異株で、雄株と雌株がそれぞれ雄花と雌花を咲かす。高さは3mほど。銀白色の毛で目立つ花穂が特徴的であり、「ネコヤナギ」の和名はこれをネコの尾に見立てたことによる。花穂は生け花にもよく用いられる。ネコヤナギの樹液はカブトムシやクワガタムシ、カナブン、スズメバチの好物である。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

2月28日(木)

★梅林の影あわあわと草にあり   正子
梅は桜に比べると花びらが小さく華やかさと言うよりも仄かな香りに清楚・気品・上品さを感じます。「影あわあわと」の措辞でその淡さを強調され、枝にバラバラと散らばって咲いている梅の花がうっすらと影を落としている静かな梅林の景色が目に浮んで参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
牛鳴いてサイロの丘に草萌ゆる/佃 康水
サイロのある丘に草が萌え、牛の鳴き声ものどかに聞こえる。あかるい風景がのびやかに詠まれている。(高橋正子)

○白梅紅梅

[白梅/横浜日吉本町]             [紅梅/横浜・四季の森公園]   

★梅や天没地没虚空没/永田耕衣
★白梅の散るを惜しみて偲ぶのみ/稲畑汀子
★白梅の満ちて声なき子となりぬ/頓所友枝
★梅の中に紅梅咲くや上根岸 子規
★紅梅や湯上りの香の厨ごと/岡本眸
★紅梅に空あをくなれ青くなれ/林翔

○梅
 梅 (うめ、学名:Prunus mume)は、薔薇(ばら)科。開花時期は、1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど、さまざま。漢名でもある「梅」の字音の「め」が変化して「うめ」になった。中国原産。奈良時代の遣隋使(けんずいし)または遣唐使(けんとうし)が中国から持ち帰ったらしい。「万葉集」の頃は白梅が、平安時代になると紅梅がもてはやされた。万葉集では梅について百首以上が詠まれており、植物の中では「萩」に次いで多い。別名は「好文木」(こうぶんぼく)、「木の花」(このはな)、「春告草」(はるつげぐさ)、「風待草」(かぜまちぐさ)。1月1日、2月3日の誕生花。花言葉は「厳しい美しさ、あでやかさ」

○白梅
禅のことば~「雪中の白梅」の意味すること 「雪裡の梅花只一枝」~迷いの世界でさとりを得る
「雪裡の梅花只一枝」(せつりのばいかただいっし)~辺り一面の銀世界のなかで、梅の木が枝を伸ばしている。降りしきる雪が積もるその枝の先には一輪の梅の花が咲き、ほのかな香りを放っている…。
「雪裡の梅花只一枝」。何だか光景が目に浮かぶような、イメージするだけでも素敵な禅語ですが、ここでいう「梅の花」とは、「さとり」をあらわすもの。厳しい寒さ(困難)を乗り越えてこそ、美しい梅花(さとり)があらわれるのだ、というものです。私たちの日常に置き換えれば「悲しみや苦しみ、困難なことを乗り越えた時に、人生の素敵な花を咲かせることができるのだ」とも言えそうです。でも、この禅語の美しさの源にあるのは、雪の中にあっても梅が花を咲かせたということ。
 厳しい冬が過ぎた時に梅が花を咲かせたのではなく、雪の中において既に花を咲かせていることが、何とも言えない凛とした気配を与えていることだと思うのです。それは、「苦しみや困難を乗り越えた時に花が咲く」のではなく「苦しみや困難の中にあっても、確かな花を咲かせることができるのだ」と、私たちを励ましてくれているようにも読み取れます。日常生活から離れたところにさとりの世界があるのではない。この迷いの世界の中に生きていても、そこで真実を得ることができる。一枝の梅が咲く姿に、そんな思いを重ねずにはいられません。ちなみにここでいう「梅の花」は、紅梅でしょうか? 白梅でしょうか? コントラスト的には断然紅梅に軍配が上がりそうですが、正解は「白梅」。雪中の白梅。これもまた、「苦しみや迷い」と「さとり」の関係を考えると、とっても意味深ですね。(「nikkei BPnet)

○紅梅
紅梅は白梅よりも晴れた空が似合う。50年以上前のある風景について鮮明に記憶がよみがえる。生家の隣に分家があって、そこに立派な紅梅が咲く。その季節は、分家(分家には慶応3年生まれ、漱石や子規と同い年の百歳のおばあさんが健在であった)の法事があり、遠い親戚の黒衣の人たちまでもがうららかな日差しに出入りする。そいうときの紅梅は、ひときわあでやかに見えた。まだ私は小学校低学年で非常に人見知りであっから、遠くから紅梅を眺めていた。故人の忌日は変わりなく、紅梅の咲く日も変わらない。
★紅梅は高くて黒衣まぶしかり/高橋正子
★紅梅咲く隣家に黒衣の人出入り/高橋正子

四季の森公園へ行った帰り道、辛夷が無数に蕾を付ける街路樹のある歩道を脇に入ったところ。紅梅の匂いがした。紅梅のあることを知らなかった場所にこれも無数の蕾を付けた紅梅の木が立っている。二本。ふくよかな匂いがする。かすかに薔薇のような匂いがする。まじまじと見れば童女のようにあどけない。

★おしばなの紅梅円形にて匂う/高橋正子
日記帳にひそかに挟み、忘れたころに見つかる。押し花になってもいい匂いがする。自分の、誰に見せるわけでもない小さな宝物である。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

2月27日(水)

★クロッカス塊り咲けば日が集う   正子
咲く色によって、清楚な花、可憐な花、明るい花といろいろに楽しめる豊かな花ですね。そのクロッカスが群生する様は、まさに春の日が集えるように暖かでしょう。句の音の響きも朗らかに感じられます。 (小西 宏)

○今日の俳句
枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)

○犬ふぐり

[犬ふぐり/横浜・四季の森公園]

★陽は一つだに数へあまさず犬ふぐり/中村草田男
★下船してさ揺らぐ足や犬ふぐり/能村研三
★犬ふぐり牛を繋ぎし綱ゆるむ/皆川盤水
★犬ふぐり野川に水が鳴り始め/高橋正子
★犬ふぐり黄砂来ぬ日はすずやかに/高橋正子  

オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢、学名 Veronica persica)とはオオバコ科クワガタソウ属の越年草。別名、瑠璃唐草・天人唐草・星の瞳。路傍や畑の畦道などに見られる雑草。ヨーロッパ原産[1]。アジア(日本を含む)、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、アフリカに外来種(帰化植物)として定着している[1]。日本では全国に広がっており、最初に定着が確認されたのは1887年の東京である。早春にコバルトブルーの花をつける。まれに白い花をつけることがある[2]。花弁は4枚。ただしそれぞれ大きさが少し異なるので花は左右対称である。花の寿命は1日。葉は1–2cmの卵円形で鋸歯がある。草丈10–20cm。名前のフグリとは陰嚢の事で、実の形が雄犬のそれに似ている事からこの名前が付いた。ただし、これは近縁のイヌノフグリに対してつけられたもので、この種の果実はそれほど似ていない。したがって正しくはイヌノフグリに似た大型の植物の意である。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

2月26日(火)

★さきがけて咲く菜の花が風のまま   正子
早春の野原などに、まずさきがけて咲く菜の花。その菜の花が、春風にやさしく揺れています。風のままに揺れる黄色の菜の花がとても美しく、見ている人の気持ちを楽しくしてくれます。「さきがけて」に、明るい春の訪れの喜びが感じられます。(藤田裕子)

○今日の俳句
風二月鳥よろこびの声散らし/藤田裕子
二月の、まだまだ寒い風に、鳥はもう「よろこびの声」を散らしている。真冬とは違う風の暖かさを知ったのだろう。野の生きるものたちは、季節の変化に敏感だ。(高橋正子)

○クロッカス

[クロッカス/横浜日吉本町]

★日が射してもうクロッカス咲く時分/高野素十
★クロッカス天円くして微風みつ/柴田白葉女
★クロッカスときめきに似し脈数ふ/石田波郷
★髭に似ておどけ細葉のクロッカス/上村占魚
★クロッカス咲かせ山住みの老夫婦/見学玄
★クロッカス光を貯めて咲けりけり/草間時彦
★忘れゐし地より湧く花クロッカス/手島靖一
★クロッカス苑に咲き満つ朝の弥撒/羽田岳水
★朝礼の列はみ出す子クロッカス/指澤紀子
★膝に乗せ遊ぶ子が慾しクロッカス/安藤三保子
★忽然と地から湧き出すクロッカス/安井やすお
★クロッカスはや咲き初めぬパリの窓/桜井道子

クロッカス (Crocus) は、アヤメ科クロッカス属の総称、または、クロッカス属の内で花を楽しむ園芸植物の流通名。耐寒性秋植え球根植物。原産地は地中海沿岸から小アジアである。晩秋に咲き、花を薬用やスパイスとして用いるサフランに対し、クロッカスは早春に咲き、観賞用のみに栽培されるため、春サフラン、花サフランなどと呼ばれる。球根は直径4cmくらいの球茎で、根生葉は革質のさやに覆われているが、細長く、花の終わった後によく伸びる。花はほとんど地上すれすれのところに咲き、黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなどがある。植物学上は、クリサントゥスCrocus chrysanthusを原種とする黄色種と、ヴェルヌスC. vernusを原種とする白・紫系の品種とは別種だが、園芸では同一種として扱われ、花壇・鉢植え・水栽培に利用されている。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・沈丁花の蕾・木瓜」(横浜日吉本町)

2月25日(月)

★天城越ゆ春の夕日の杉間より   正子
天城峠を越えるゆっくりとした旅路。大きな杉の向こうから夕日が差し込みます。大らかな春の夕べに心和むひとときです。(川名ますみ)

○今日の俳句
梅ひとつ咲いて朝餉の一時間/川名ますみ
ゆっくりと進む朝餉の間、ほのかに香る一輪の梅の花。一輪の梅が咲いたよろこび、心が洗われる気持ち、それが意外にも大きい。(高橋正子)

○三椏の花

[三椏の花/伊豆修善寺(2011年2月22日)]_[三椏の花蕾/横浜四季の森公園(2012年1月26日)]

★三椏や皆首垂れて花盛り/前田普羅
★三椏の咲くや古雪に又降りつむ/水原秋櫻子
★三椏のはなやぎ咲けるうららかな/芝不器男
★三椏の花に暈見て衰ふ眼/宮津昭彦
★三椏や石橋くぐる水の音/渡邉孝彦
★三椏の花紅の雫せり/檀原さち子

 三椏は、蕾の期間が長いようだ。初詣に行けば神社の境内に蕾の三椏を見つけることがある。私は長い間、この蕾を花と思い違っていた。去年修善寺の梅林を訪ねたときに、それは二月下旬だったが、梅林の入口のバス停の近くに三椏の花が咲いていた。蕾がはじけて山吹色が内側に見えて、毬のように咲いていた。大変可憐な花である。横浜の四季の森公園のせせらぎ沿いに植えられているのが、いま最も身近にある三椏である。
 三椏の花でもっとも印象に残っているのは、四国八十八か所のお寺出石寺の山門の脇に咲いていたものである。ふもとからバスで山道をうねうねと登ると雲海の上に寺がある。雲海が寄せてくるところの三椏の花は、それが和紙の原料であるということも考えれば、生活の花として別の意味合いやイメージが湧いてくる。事実ふもとの大洲市は和紙の産地である。
 ミツマタ(三椏、学名:Edgeworthia chrysantha)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木。中国中南部、ヒマラヤ地方原産。皮は和紙の原料として用いられる。ミツマタは、その枝が必ず三叉、すなわち三つに分岐する特徴があるため、この名があり、三枝、三又とも書く。中国語では「結香」(ジエシアン)と称している。春の訪れを、待ちかねたように咲く花の一つがミツマタである。春を告げるように一足先に、淡い黄色の花を一斉に開くので、サキサクと万葉歌人はよんだ(またはサキクサ:三枝[さいぐさ、さえぐさ]という姓の語源とされる)。
 「赤花三叉(あかばなみつまた)」は、戦後、愛媛県の栽培地で発見され、今では黄色花とともによく栽培されている。

◇生活する花たち「クリスマスローズ・木瓜の蕾・枝垂れ梅」(横浜日吉本町)