★海に向き伊豆の椿の紅きなり 正子
春の暖かな日を浴びてつやつやした葉の間に大輪の艶麗な紅の花を咲かせる椿の素晴らしさと伊豆の踊り子の小説を思い出させていただきました。ありがとうございます。(小口泰與)
○今日の俳句
大屋根の雪解滴や光りあう/小口泰與
「大屋根」にインパクトがある。雪解滴もあちこちから滴り、賑やかに光りあう。(高橋正子)
○椿

[椿/横浜日吉本町]
★赤門を入れば椿の林かな/正岡子規
★飯食へばまぶたに重き椿かな/夏目漱石
★十本に十色の椿わが狭庭/稲畑汀子
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★虚子の忌の風たをやかな椿山/皆川盤水
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★またひとつ鉦に落ちけり藪椿/言水
★一日を陽を見ぬ谷戸の藪椿 鈴木卓
★藪椿かがやく電車停まるたび/小島みつ代
★城垣の石の番号藪椿/大塚禎子
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花
★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之
★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子
ツバキ(椿)は、ツバキ科ツバキ属の植物、学名Camellia japonicaであり、日本原産の常緑樹。野生種の標準和名はヤブツバキ。国内外でヤブツバキや近縁のユキツバキから作り出された数々の園芸品種、ワビスケ、中国・ベトナム産の原種や園芸品種などを総称的に「椿」と呼ぶが、同じツバキ属であってもサザンカを椿と呼ぶことはあまりない。照葉樹林の代表的な樹木。花期は冬から春にかけてにまたがり、早咲きのものは冬さなかに咲く。「花椿」は春の季語であるが、「寒椿」「冬椿」は冬の季語。海柘榴とも表記する。花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている。
日本のツバキはヤブツバキ、ユキツバキ、ワビスケ。
ヤブツバキ(原種)は、南西諸島から青森県夏泊半島まで分布している。これはツバキ属の自生地の北限である。西日本にはほぼ全域に分布しているが、東日本では温暖な地域に自生している。
ユキツバキ(雪椿)は、花糸が黄色 ユキツバキの学名はCamellia rusticana (シノニム:Camellia japonica var. decumbens/Camellia japonica subsp. rusticana)。上記のヤブツバキとは別種、またはヤブツバキの豪雪地帯適応型変種、あるいは亜種という見解があり、ヤブツバキに比べ、枝がしなやか、花弁が水平に開く、等の特徴がある。花の変異が多く八重咲きの品種改良に大きく貢献した。別名サルイワツバキ。ヤブツバキとの交雑系統を「ユキバタツバキ」と呼ぶ。
ワビスケ(侘助)は、中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

★枯れしもの沈め春水透き通る 正子
日毎に春の日差しが強くなり、水の耀きが増して来ました。穏やかな池の底かと想われますが、透き通る底には枯れ葉も見え、はっきりと季節替りを実感する光景です。 (桑本栄太郎)
○今日の俳句
まんさくの青き深空に解きけり/桑本栄太郎
「解き」がまんさくの花をよく詠んでいる。リボンのように細い花びらが深空にほどけ咲くのが印象的だ。(高橋正子)
○雛祭ネット句会入賞発表/3月4日
【金賞】★春暁の新しき水仏前に/高橋秀之
春の暁は、華やいだ感じはするが、空気がしんと冷えている。仏前に線香をあげ、汲みたての水をあげる。そこに充足した緊張感が生まれている。(高橋正子)
【銀賞】
★桃咲いてひときわ明るき花売り場/柳原美知子
春先の花売り場はいろいろな花の色が溢れている。そこに桃の花が咲くと、その花色にひときわ明るくなる。その明るさは雛の明るさにも通じる。(高橋正子)
【銅賞2句】
★山茱萸の開花に似合う空の青/古田敬二
山茱萸の花は、レモン色に近い黄色で、早春のひんやりとした空気感によくマッチしているが、空の青にもっとよく似合っている。黄色と青色の対比が美しい。(高橋正子)
★くっきりと石鎚霊峰梅咲ける/藤田洋子
石鎚の霊峰は、まだ雪を冠っているのだろうが、晴れた日はその独特の山容がくっきりと見える。そんな日梅が咲いてくれた。高潔な景色だ。(高橋正子)
▼その他の入賞作品は、下記アドレスをクリックしてご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
○ノースポール

[ノースポール/横浜日吉本町]
★ノースポールの真白き花に四月来ぬ/高橋正子
ノースポール(North Pole、学名:Leucsnthrmum paludosum Syn. Chrysanthemum paludosum)は、キク科 フランスギク属の半耐寒性多年草である。しかし、高温多湿に極端に弱いため、国内では一年草として扱われている。「ノースポール」はサカタのタネの商品名であるが、種苗登録などはされていないため、一般名として定着している。旧学名またはシノニムの「クリサンセマム・パルドーサム」と表記されることもある。12月から翌6月にかけ、白い花を咲かせる。名の由来は、花付がよく株全体を真っ白に覆うように見えるところが北極を連想させることによる。
原産地はアフリカのアルジェリア周辺ないしはヨーロッパ。地中海沿岸に広く分布している。日本へは1960年代に入って輸入された。 草丈は15cm-25cmほど。まだ寒い12月ごろから初夏までの長期間、マーガレットによく似た白い花を付け、矮性でよく分枝し、芯の管状花は黄色。今日では冬のガーデニングにはなくてはならない存在にまでなった。
比較的強健で、こぼれ種でもよく増え、雑草混じりの場所などでもよく育つ。しかし、市販品のタネから育てるときは、タネの数が少ないので、浅鉢にまき、覆土しないか、タネが隠れる程度に覆土して、鉢底から吸水させる方がよい。蒔き時は東京付近で9月中旬から10月上旬、日のよく当たる場所を好み、乾き気味に管理する。過湿は根腐れの原因となる。日本では6月頃までよく咲くが、暑くなると急速に枯れてしまう。
パンジーやヴィオラなどとともに、春先から初夏までの庭を彩る主役をつとめる。とくに、性質のよく似た植物で黄花のクリサンセマム・ムルチコーレと一緒に植えると、コントラストが美しい。(Wikipedia より)
◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・猫柳」(東大・小石川植物園)

★花菜の束一つが開き売られたり 正子
花菜が束にして売られていて,かわいい花先が見えている。待ちに待った春のお店での出会いです。(祝恵子)
○今日の俳句
春の日をせりだす床に坐して受け/祝 恵子
「春の日をせり出す」は、ようやく暖かくなった春の日差しをうまく表現している。「せり出す」は、言えそうでなかなか言えない。(高橋正子)
○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]
★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子
中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。
○2013年3月4日:
きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を刈った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。
◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

★手渡されながら花桃散りいたり 正子
○今日の俳句
一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)
○桃の花

[桃の花/横浜日吉本町]
★故郷に桃咲く家や知らぬ人/正岡子規
★百姓の娘うつくし桃の花/正岡子規
★桃咲くや古き都の子守唄/正岡子規
★雛の影桃の影壁に重なりぬ/正岡子規
★両の手に桃とさくらや草の餅/松尾芭蕉
★葛飾や桃の籬も水田べり/水原秋桜子
★風吹かず桃と蒸されて桃は八重/細見綾子
★桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々/川崎展宏
★金貸してすこし日の経つ桃の花/長谷川双魚
モモ(桃、学名は Amygdalus persica L.で[1][2]、Prunus persica (L.) Batsch はシノニムとなっている[3]。)はバラ科モモ属の落葉小高木。また、その果実のこと。春には五弁または多重弁の花を咲かせ、夏には水分が多く甘い球形の果実を実らせる。中国原産。食用・観賞用として世界各地で栽培されている。
3月下旬から4月上旬頃に薄桃色の花をつける。「桃の花」は春の季語。桃が咲き始める時期は七十二候において、中国では桃始華、日本は桃始笑と呼ばれ、それぞれ啓蟄(驚蟄)の初候、次候にあたる。淡い紅色であるものが多いが、白色から濃紅色まで様々な色のものがある。五弁または多重弁で、多くの雄しべを持つ。花柄は非常に短く、枝に直接着生しているように見える。観賞用の品種(花桃)は源平桃(げんぺいもも)・枝垂れ桃(しだれもも)など。庭木として、あるいは華道で切り花として用いられる。
葉は花よりやや遅れて茂る。幅5cm、長さ15cm程度の細長い形で互生し、縁は粗い鋸歯状。湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。
7月 – 8月に実る。「桃の実」は秋の季語。球形で縦に割れているのが特徴的。果実は赤みがかった白色の薄い皮に包まれている。果肉は水分を多く含んで柔らかい。水分や糖分、カリウムなどを多く含んでいる。栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、痛みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。
◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
★芽柳のるると色燃ゆ向こう岸 正子
柔らかい風にさ緑の芽を付けた柳の枝が川の畔などで靡くさまに瑞々しい春の趣を感じます。「るると色燃ゆ」の措辞に向こう岸の若緑の芽柳は日毎に濃い緑へと成長し、しなやかにそして爽やかに揺れる光景が目に浮かびます。傍で見るよりも向こう岸に揺れている芽柳の方が朧に見えて余計風情を感じられる様に思います。(佃 康水)
○今日の俳句
海の味口に溢るる牡蠣祭り/佃 康水
牡蠣をはじめ貝類は、とくに潮の香りがする。牡蠣祭りでたくさん牡蠣を召し上がったことだろうから、口中には海の味があふれるほどに。(高橋正子)
○ヒアシンス(風信子)
[ヒアシンスの花/横浜日吉本町]
★一筋の縄ひきてありヒヤシンス/高浜虚子
★敷く雪の中に春置くヒヤシンス/水原秋桜子
★銀河系のとある酒場のヒヤシンス/橋石
★誰もゐなくて満開の風信子/如月美樹
★ヒアシンス白水仙とあわせ活け/高橋正子
★ヒアシンスの香り水より立つごとし/高橋正子
ヒアシンスともいう。小アジア原産。草丈20センチほど。色は白・黄・桃色・紫紺・赤など。香りが高い。ヒヤシンスの名は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスに由来する。彼は愛する医学の神アポロンと一緒に円盤投げに興じていた。その楽しそうな様子を見ていた西風の神ゼピュロスは、やきもちを焼いて、意地悪な風を起こした。その風によってアポロンが投げた円盤の軌道が変わり、ヒュアキントスの額を直撃してしまった。アポロンは医学の神の力をもって懸命に治療するが、その甲斐なくヒュアキントスは大量の血を流して死んでしまった。ヒヤシンスはこの時に流れた大量の血から生まれたとされる。
ヒヤシンスは花茎がまっすぐで意外と頼もしい。しかし優艶。こんなところからか、特に青い花を見ていると美青年が髣髴される。
ヒヤシンスを植えたところは踏まれないように縄を一筋張って置く。縄を張るなんていかにも昭和らしい。今日2月29日は朝から粉雪が舞い、2センチほど積もっている。春の雪が敷く花壇にヒヤシンスが咲けば、そこだけ「春」が置かれたようになる。虚子、秋桜子と対照的な句だが、ヒヤシンスの姿をよく表わしている。わが家では、年末水栽培のヒヤシンスを買い、早も咲いていたのだが、花の匂いを楽しんだ。水栽培で子どもたちでも楽しめる。
以上の文は、2月が29日あった最近の年の文。つまり、2012年。
今年(2013年)も年が明けてヒアシンスの鉢植を近所の花屋で買って楽しんだ。薄い紫を選んだ。一鉢に三球ある。花は全部で六本咲いた。一球から二本ずつ花が咲いた。二本目が立ちあがるころ最初の花の茎が斜めに倒れるので切り取って花瓶やコップに挿した。ヒアシンスが一番似合ったのはキッチン。薄紫ばかりで単調なので散歩の途中、山裾の捨て球根から育った蕾の水仙を二本摘んで来て一緒に挿して置いたら、とても清楚なまっしろな水仙が開いた。それが、またヒアシンスと特別よく似合った。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
★身を固く春雪吹くを帰り来る 正子
先日の関東地方の思わぬ春の大雪を詠まれたものと思います。雪国の人には慣れたものでも、都会生活者には驚くような大雪でした。滑らないよう、足元に注意して帰られる様子が「身を固く」によく現れています。(多田有花)
○今日の俳句
末黒野の彼方に海の光りけり/多田有花
半焼けになった茨や萱などは、無残なようだが、新しい芽吹きのためであるので、春へと期待のふくらむ風景だ。海の光が期待を象徴している。(高橋正子)
○早咲き桜

[早咲き桜/横浜日吉本町(2013年3月9日)]
毎年立春が過ぎると、気持ちは早くも春を迎える心の準備です。春は名のみの風の寒さや♪~♪~と歌いつつも、寒風を肌に突き刺しながらも、春風を心地よく感じる時を心待ちにするものです。そこで春一番の早咲き桜を探してみたいと思います。「早咲き」とは、2月中に「満開」または「さくら祭り」を行っている場所と決めました。種類としては、全国的には2種類のようです。相模湾沿岸地域の「河津桜」と沖縄県の「寒緋桜」のようです。
河津桜は、緋寒桜と早咲き大島桜との自然交配種と言われています。昭和30年頃、河津川沿いの冬枯れの雑草の中に芽吹いている、一本の桜の苗が発見され、庭に植えたのが始まりのようです。約10年後の昭和41年に開花が見られたが、開花期間が長いことから注目を集め、その後、伊東市の勝又氏や農林関係機関・河津町等々が、改良を加え現在に至っているとの事。一般的な桜と異なる淡紅色が、なぜかとても綺麗で魅力的です。この桜の原木が現在も、河津町田中の飯田邸にあることから、昭和49年に「河津桜」と命名され、徐々に有名になっていったようです。この桜の特徴は、開花時期が2月上旬と早いことと、開花期間が、2月上旬から3月上旬までと約一ヶ月に亘っていることです。 もっとも、見頃は六分から八分にかけてが最も良いらしく、矢張り一週間程度との事。ソメイヨシノと異なり散る前には葉が出て
くるので、花と一緒に葉も同時に楽しめることも、人気のひとつのようです。
◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
★クロッカス塊り咲けば日が集う 正子
クロッカスは水捌けのよいやわらかな土に、低く咲くような印象を持っています。そのせいでしょうか、かたまって咲く姿に、周辺の地面もろ共、日の光が集中しているような温かさ感じます。そして先生の俳句からは、きっぱりと咲く早春の花の姿と明るさを間近に受け取ることができます。(小西 宏)
○今日の俳句
梅咲き初め空高らかにバグパイプ/小西 宏
梅の咲きはじめの空気はまだ冷たいが、どこどなく春の気配に華やいだところがある。たからかにバグパイプの音が響くと、異国情緒があって、梅の花に新しさが加わった。(高橋正子)
○白梅紅梅
[白梅/横浜日吉本町] [紅梅/横浜・四季の森公園]
★梅や天没地没虚空没/永田耕衣
★白梅の散るを惜しみて偲ぶのみ/稲畑汀子
★白梅の満ちて声なき子となりぬ/頓所友枝
★梅の中に紅梅咲くや上根岸 子規
★紅梅や湯上りの香の厨ごと/岡本眸
★紅梅に空あをくなれ青くなれ/林翔
○梅
梅 (うめ、学名:Prunus mume)は、薔薇(ばら)科。開花時期は、1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど、さまざま。漢名でもある「梅」の字音の「め」が変化して「うめ」になった。中国原産。奈良時代の遣隋使(けんずいし)または遣唐使(けんとうし)が中国から持ち帰ったらしい。「万葉集」の頃は白梅が、平安時代になると紅梅がもてはやされた。万葉集では梅について百首以上が詠まれており、植物の中では「萩」に次いで多い。別名は「好文木」(こうぶんぼく)、「木の花」(このはな)、「春告草」(はるつげぐさ)、「風待草」(かぜまちぐさ)。1月1日、2月3日の誕生花。花言葉は「厳しい美しさ、あでやかさ」
○白梅
禅のことば~「雪中の白梅」の意味すること 「雪裡の梅花只一枝」~迷いの世界でさとりを得る
「雪裡の梅花只一枝」(せつりのばいかただいっし)~辺り一面の銀世界のなかで、梅の木が枝を伸ばしている。降りしきる雪が積もるその枝の先には一輪の梅の花が咲き、ほのかな香りを放っている…。
「雪裡の梅花只一枝」。何だか光景が目に浮かぶような、イメージするだけでも素敵な禅語ですが、ここでいう「梅の花」とは、「さとり」をあらわすもの。厳しい寒さ(困難)を乗り越えてこそ、美しい梅花(さとり)があらわれるのだ、というものです。私たちの日常に置き換えれば「悲しみや苦しみ、困難なことを乗り越えた時に、人生の素敵な花を咲かせることができるのだ」とも言えそうです。でも、この禅語の美しさの源にあるのは、雪の中にあっても梅が花を咲かせたということ。
厳しい冬が過ぎた時に梅が花を咲かせたのではなく、雪の中において既に花を咲かせていることが、何とも言えない凛とした気配を与えていることだと思うのです。それは、「苦しみや困難を乗り越えた時に花が咲く」のではなく「苦しみや困難の中にあっても、確かな花を咲かせることができるのだ」と、私たちを励ましてくれているようにも読み取れます。日常生活から離れたところにさとりの世界があるのではない。この迷いの世界の中に生きていても、そこで真実を得ることができる。一枝の梅が咲く姿に、そんな思いを重ねずにはいられません。ちなみにここでいう「梅の花」は、紅梅でしょうか? 白梅でしょうか? コントラスト的には断然紅梅に軍配が上がりそうですが、正解は「白梅」。雪中の白梅。これもまた、「苦しみや迷い」と「さとり」の関係を考えると、とっても意味深ですね。(「nikkei BPnet)
○紅梅
紅梅は白梅よりも晴れた空が似合う。50年以上前のある風景について鮮明に記憶がよみがえる。生家の隣に分家があって、そこに立派な紅梅が咲く。その季節は、分家(分家には慶応3年生まれ、漱石や子規と同い年の百歳のおばあさんが健在であった)の法事があり、遠い親戚の黒衣の人たちまでもがうららかな日差しに出入りする。そいうときの紅梅は、ひときわあでやかに見えた。まだ私は小学校低学年で非常に人見知りであっから、遠くから紅梅を眺めていた。故人の忌日は変わりなく、紅梅の咲く日も変わらない。
★紅梅は高くて黒衣まぶしかり/高橋正子
★紅梅咲く隣家に黒衣の人出入り/高橋正子
四季の森公園へ行った帰り道、辛夷が無数に蕾を付ける街路樹のある歩道を脇に入ったところ。紅梅の匂いがした。紅梅のあることを知らなかった場所にこれも無数の蕾を付けた紅梅の木が立っている。二本。ふくよかな匂いがする。かすかに薔薇のような匂いがする。まじまじと見れば童女のようにあどけない。
★おしばなの紅梅円形にて匂う/高橋正子
日記帳にひそかに挟み、忘れたころに見つかる。押し花になってもいい匂いがする。自分の、誰に見せるわけでもない小さな宝物である。
◇生活する花たち「菜の花・白梅・紅梅」(横浜日吉本町)

★天城越ゆ春の夕日の杉間より 正子
修善寺から下田を結ぶ天城峠を超えると春の柔らかな日差しが沢山の杉の木の間から射し込み、のんびりと穏やかな気持ちになりますね。とっても春らしい素敵な句だと思います。(小口泰與)
○今日の俳句
ほつほつと梅のふふむや水ゆたか/小口泰與
雪解け水や雨で水嵩の増えた川。ちょうどその季節梅の蕾がほころび始める。「水ゆたか」に季節をよく詠わせている。(高橋正子)
○白梅

[白梅/横浜・大倉山公園梅林]
○俳句
★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
修善寺梅林
★紅梅がかすみ白梅がかすみ/高橋正子
○大倉山公園梅林/横浜市港北区大倉山二丁目(東急東横線の大倉山駅北)
梅林の最盛期は昭和12年頃であるらしく、当時は白梅を中心に14種1,000本を越える規模であったという。第二次大戦中には燃料用のたきぎとして伐採され、また食料不足のためにイモ畑に転用されるなどしたらしいが、戦後昭和25年頃から昭和40年頃には、再び盛大に梅祭りが行われるなどして賑わったという。その後、施設の老朽化などが目立ってきた梅林を横浜市が東京急行電鉄から昭和62年に買収、施設の整備や梅の木の増植などを行って現在に至っている。現在は面積1.1ヘクタールの敷地に紅梅白梅合わせて約20種150本が植えられているということだ。
東急東横線の大倉山駅を北に出て、線路沿いの坂道を綱島方面へと登り、大倉山記念館の傍らを抜けてゆくと、ひとやま越えるような感じで梅林に辿り着く。大倉山公園は丘陵に位置しているが、梅林はその中の窪地にあって周囲を閉ざされており、それが山里のような印象を伴っていてなかなか良い風情がある。梅林に降りて行き、散策路沿いに梅を楽しむのももちろん良いものだが、周囲の高みから見下ろす梅林の風情も素晴らしい。
梅の木にはそれぞれ品種の名を示すプレートが付けられており、特に品種などに興味がなくともついその名を確かめてしまう。なかなかの老木らしき梅も少なくなく、地を這うように幹を伸ばした梅や、端正な立ち姿で気品すら漂うような梅の木など、それぞれに見応えのある梅が立ち並んでいる。ゆっくりのんびりと一本一本を鑑賞しつつ歩きたい梅林だ。
梅の名所としてよく知られているだけあって観梅客も多い。お昼時にはお弁当を広げる人も少なくなく、大きなシートを広げて宴会を催すグループの姿もある。園内には池や四阿などもあり、トイレも設置してあるので、早春の一日をのんびりと過ごすのに良い場所だろう。梅林のすぐ北側には龍松院という小机の雲松院の末寺にあたる寺もあり、興味のある人は立ち寄るのも良いかもしれない。梅の花の盛りとなる2月下旬にはさまざまなイベントも開催されるようなので、お祭り的に楽しみたい人はそれらの開催予定を調べて、それに合わせて訪れるのも良いだろう。
▼公園探訪/横浜線沿線散歩:
http://www.natsuzora.com/may/park/okurayama_ume.html
◇生活する花たち「節分草・蒲の穂絮・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

★さきがけて咲く菜の花が風のまま 正子
梅や水仙にさきがけて菜の花が咲いています。早春の風の中で揺れている趣のあるさまが目に浮かびます。(河野啓一)
○今日の俳句
雪消えて餌箱架ける昼下がり/河野啓一
雪の積むあいだ、小鳥たちは餌をどうしていたのか。小鳥たちを思いやって、雪が消えるのを待ってさっそく餌箱を取り付けた。 慈しみのある句。(高橋正子)
○元希一歳の誕生日祝
2月22日(土)に元希の一歳の誕生日を日吉の家で祝う。元希は2月19日生まれ。元希にはケーキと鯛の入った和風ポトフとりんごと薩摩芋にレモン汁と砂糖を加えたスウィートポテト。ケーキは上に載っている苺とオレンジを食べた。手で掴んで食べれるようになっている。卵・小麦・牛乳のアレルギーが少しあるらしい。つかまり立ちができるようになって、指さしを始め、なんでも指さす。ケーキにろうそくを点したときは、ろうそくの火を掴まないかと思ったが、「おー」と言いそうに、一番目を輝かせていた。成長がずいぶん早い。句美子は、引っ越し準備で不在。プレゼントは、私たち祖父母からは押し車と木琴。句美子からはルーピング。これらは先日元の自宅に送った。
○クロッカス

[クロッカス/横浜日吉本町]
★日が射してもうクロッカス咲く時分/高野素十
★クロッカス天円くして微風みつ/柴田白葉女
★クロッカスときめきに似し脈数ふ/石田波郷
★髭に似ておどけ細葉のクロッカス/上村占魚
★クロッカス咲かせ山住みの老夫婦/見学玄
★クロッカス光を貯めて咲けりけり/草間時彦
★忘れゐし地より湧く花クロッカス/手島靖一
★クロッカス苑に咲き満つ朝の弥撒/羽田岳水
★朝礼の列はみ出す子クロッカス/指澤紀子
★膝に乗せ遊ぶ子が慾しクロッカス/安藤三保子
★忽然と地から湧き出すクロッカス/安井やすお
★クロッカスはや咲き初めぬパリの窓/桜井道子
クロッカス (Crocus) は、アヤメ科クロッカス属の総称、または、クロッカス属の内で花を楽しむ園芸植物の流通名。耐寒性秋植え球根植物。原産地は地中海沿岸から小アジアである。晩秋に咲き、花を薬用やスパイスとして用いるサフランに対し、クロッカスは早春に咲き、観賞用のみに栽培されるため、春サフラン、花サフランなどと呼ばれる。球根は直径4cmくらいの球茎で、根生葉は革質のさやに覆われているが、細長く、花の終わった後によく伸びる。花はほとんど地上すれすれのところに咲き、黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなどがある。植物学上は、クリサントゥスCrocus chrysanthusを原種とする黄色種と、ヴェルヌスC. vernusを原種とする白・紫系の品種とは別種だが、園芸では同一種として扱われ、花壇・鉢植え・水栽培に利用されている。
◇生活する花たち「雪割草・さんしゅゆの花蕾・土筆」(横浜・四季の森公園)

★青空の果てしなきこと二月なる 正子
季節の替り目、二月は晩冬から早春にかけて風も強く空は哀しいまでに真っ青です。その青さは秋のそれよりも青いかもしれません。そして、凛とした青空は厳しい寒さの中にも、暖かい春の近い事を予感させてくれます。 (桑本栄太郎)
○今日の俳句
故郷回想
海苔掻や潮目沖へと流れおり/桑本栄太郎
沖へと流れる潮目を見ながらの海苔掻きに、春の磯の伸びやかな風景が見えて、素晴らしい。(高橋正子)
○三椏の花

[三椏の花/伊豆修善寺(2011年2月22日)]_[三椏の花蕾/横浜四季の森公園(2012年1月26日)]
★三椏や皆首垂れて花盛り/前田普羅
★三椏の咲くや古雪に又降りつむ/水原秋櫻子
★三椏のはなやぎ咲けるうららかな/芝不器男
★三椏の花に暈見て衰ふ眼/宮津昭彦
★三椏や石橋くぐる水の音/渡邉孝彦
★三椏の花紅の雫せり/檀原さち子
三椏は、蕾の期間が長いようだ。初詣に行けば神社の境内に蕾の三椏を見つけることがある。私は長い間、この蕾を花と思い違っていた。去年修善寺の梅林を訪ねたときに、それは二月下旬だったが、梅林の入口のバス停の近くに三椏の花が咲いていた。蕾がはじけて山吹色が内側に見えて、毬のように咲いていた。大変可憐な花である。横浜の四季の森公園のせせらぎ沿いに植えられているのが、いま最も身近にある三椏である。
三椏の花でもっとも印象に残っているのは、四国八十八か所のお寺出石寺の山門の脇に咲いていたものである。ふもとからバスで山道をうねうねと登ると雲海の上に寺がある。雲海が寄せてくるところの三椏の花は、それが和紙の原料であるということも考えれば、生活の花として別の意味合いやイメージが湧いてくる。事実ふもとの大洲市は和紙の産地である。
ミツマタ(三椏、学名:Edgeworthia chrysantha)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木。中国中南部、ヒマラヤ地方原産。皮は和紙の原料として用いられる。ミツマタは、その枝が必ず三叉、すなわち三つに分岐する特徴があるため、この名があり、三枝、三又とも書く。中国語では「結香」(ジエシアン)と称している。春の訪れを、待ちかねたように咲く花の一つがミツマタである。春を告げるように一足先に、淡い黄色の花を一斉に開くので、サキサクと万葉歌人はよんだ(またはサキクサ:三枝[さいぐさ、さえぐさ]という姓の語源とされる)。
「赤花三叉(あかばなみつまた)」は、戦後、愛媛県の栽培地で発見され、今では黄色花とともによく栽培されている。
◇生活する花たち「修善寺梅林・河津川花菜・河津桜」(静岡県伊豆半島)