8月8日(月)

★おみなえし山の葛垂る庭先に  正子
共に万葉の昔から親しまれてきた2つの秋の七草を優美に詠い上げげられた御句かと思います。
山の葛垂る庭先」の措辞がこれらの植物の枕詞を兼ねた、生態描写のように感じられ、実に素晴らしいと思いました。(河野啓一)

○今日の俳句
黒光りして児の掌にかぶと虫/河野啓一
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

今朝は、大変涼しい。台風5号が近づいているせいかもしれない。
ここ数日の炎暑とは打って変わって。

毎日毎日、ネットの日本語の俳句を読んでいる。小池百合子さんが、都知事になってよかったと思うこともあるせいか、「俳句民主主義」というようなことを感じてしまう。伝統文化と民主主義は矛盾しないか。
英語俳句でいえば、初期の英語俳句は、イマジストの詩人たちが作り始めた。まず、彼らの俳句の「言葉」の質が基本的にいまの英語俳句の言葉違うと感じる。

○尾花(おばな・すすき)

[薄(すすき)/横浜日吉本町]

★何ごともまねき果たるすすき哉 芭蕉
★おもしろさ急には見えぬ薄かな 鬼貫
★山は暮れて野は黄昏の薄かな 蕪村
★夕闇を静まりかへるすゝき哉 暁台
★猪追ふや芒を走る夜の声 一茶
★古郷や近よる人を切る芒 一茶
★箱根山薄八里と申さばや/正岡子規
★一株の芒動くや鉢の中/夏目漱石
★金芒ひとかたまり銀芒ひとかたまり/高浜虚子
★穂芒のほぐれ初めの艶なりし/能村登四郎
★穂を上げし芒に風の触れはじむ/稲畑汀子
★薄野を来て一山の夕日浴ぶ/小澤克己
★今日を尋めゆく落日の川すすき/千代田葛彦

 薄について書こうと思えばありすぎる。いたるところにあるけれど、夏の青い薄が風になびくのもよい。城ケ島に4年ぐらい前だったか行ったときに、はるか大島の影が見える崖に青薄が靡いていた。月があがればどんなに素敵だろうかと思った。その青薄も真夏の暑さに鍛えられ、青々とした色が幾分か抜けると紅むらさきのつややかな穂が出る。出始めの穂の色、はらりとほどける穂の具合は、初秋の風情としては一品。秋も深くなると穂が白くほおけて、銀色金色に輝く。小諸の花冠フェスに出かけた折、追分のあたりから景色はぐっと高原らしくなるが、薄は金色だった。それから、鎌倉の二階堂の虚子記念館を訪ねたときに、薄原があった。虚子がこの薄原を詠んだのではないかと思わせる雰囲気があった。
薄について風情の良さばかりを言ってはおれないのだ。薄は、別な呼称で萱なのだ。生家には家の前に広い畑がある。両親がいたころは、いろんな農作物がよく育っていた。父が亡くなり40年がたち、母がこの5月に亡くなったが、畑の隅に徐々に萱が生え始めた。畑の手入れが行き届かない。おそらくこの萱が広がって、何年か経つうちに荒れた野に戻るだろうと、寂寥とした思いにもなる。

★追分の芒はみんな金色に/高橋正子

 ススキ(芒、薄)とは、イネ科ススキ属の植物。萱(かや)、尾花ともいう。野原に生息し、ごく普通に見られる多年生草本である。高さは1から2m。地下には短いがしっかりした地下茎がある。そこから多数の花茎を立てる。葉は細長く、根出葉と稈からの葉が多数つく。また、堅く、縁は鋭い鉤状になっているため、皮膚が傷つくことがある。夏から秋にかけて茎の先端に長さ20から30cm程度の十数本に分かれた花穂をつける。花穂は赤っぽい色をしているが、種子(正しくは穎果・えいか)には白い毛が生えて、穂全体が白っぽくなる。種子は風によって飛ぶことができる。日本には全国に分布し、日当たりの良い山野に生息している。夏緑性で、地上部は冬には枯れるのが普通であるが、沖縄などでは常緑になり、高さは5mに達する。その形ゆえに、たまにサトウキビと勘違いする観光客がいる。国外では朝鮮半島・中国・台湾に分布するほか、北米では侵略的外来種として猛威をふるっている(日本にセイタカアワダチソウが侵入したのと逆の経路で伝播)。植物遷移の上から見れば、ススキ草原は草原としてはほぼ最後の段階に当たる。ススキは株が大きくなるには時間がかかるので、初期の草原では姿が見られないが、次第に背が高くなり、全体を覆うようになる。ススキ草原を放置すれば、アカマツなどの先駆者(パイオニア)的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。後述の茅場の場合、草刈りや火入れを定期的に行うことで、ススキ草原の状態を維持していたものである。

◇生活する花たち「山萩・鬼灯・蓮の花托」(横浜・四季の森公園)

8月7日(日)立秋


立秋だが、大変な暑さ。長野の松本ハイランド西瓜をまるごと買っていたのを、今日切った。夕方、不動前の句美子の家にもお裾分けにも、おかずなどと一緒にもっていった。
西瓜の季語は秋。たしかに、もう秋なのだと思いつつ、西瓜の水を味わいつつ、食べた。

★刃を入れて西瓜瞬時に割れる音/正子
★西瓜切る正午の時報鳴っており/正子

8月6日(土)


今夕、夕顔が開いた。夕顔は種を蒔いてもなかなか芽生えないし、芽生えてからも、なかなか蔓が伸びない。それで、鉢に植え替えないでいたら、今朝、5センチほどの蕾が育っているのに気が付いた。開花は23日先と思っていたが、夕方開いた。写真にもとったが、素晴らしい。源氏物語を彷彿させる。ほのかな香りがする。

★炎天の青にもありぬ昏さかな/正子
★夕顔のゆれつつ開く日は落ちつつ/正子
★夕顔の真白さ匂いほのかなり/正子
★夕顔の開きて月の出を待ちぬ/正子

8月2日(火)

★這いはじめし子に展げ敷く花茣蓙  正子
子が成長していくのは親の喜びです。這い這いしはじめの子へ花茣蓙を敷き見守られている姿が、喜びが、伝わってまいります。(祝恵子)

○今日の俳句
家裏に立てかけられてゴムプール/祝恵子
カラフルなゴムプールが、ひっそりとした家裏に立てかけられて、目に楽しく映る。家裏が涼しそうである。(高橋正子)

○落花生の花

[落花生の花/横浜市緑区北八朔町]

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月1日(月)

★撒き水の虹を生みつつ樫ぬらす  正子
散水の水しぶきが小さな虹を生んでいるのでしょう。そしてその水が樫をぬらしていく。何気ない日常ながら、ほっとするひと時をそこに感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
子らに買うバナナを袋いっぱいに/高橋秀之
袋の詰められたバナナの黄色に元気がある。子供たちへの格好の土産となったバナナであるが、夏にあって楽しい。(高橋正子)

○紫式部の花

[ムラサキシキブ/横浜・四季の森公園]   [コムラサキ/東京・新宿御苑園]

★慈雨来る紫式部の花にかな/山内八千代
★紫式部添木に添わぬ花あまた/神部 翠
★光悦垣色あはあはと花式部/高瀬亭子
★紫式部咳くやうに咲き初めし/河野?子
★夢辿る紫式部の花の香に/石地まゆみ
★花式部見つけたり日の輝きに/高橋信之

 紫式部の実は、熟れると美しい紫色となる。しだれるような枝に小さな紫色の実がつき、小鳥が好んで食べる。一度私も食べてみたが、棗に似た味がする。この美しい実がつく前には花が咲くのはとうぜんだが、6月、今ちょうどその紫式部の花が咲いている。実より少し淡い紫色である。その花の通りに実がつく。山野に自生したのを見るが、庭木に植えているものと見かけが多少ちがうように思う。私が見た限りでは、庭木に植えているもは、葉が黄緑がかっているが、自生種は葉が大ぶりで、緑色が濃い。花よりも実が美しい木の一つである。

★登り来てふと見し花は花式部/高橋正子

 ムラサキシキブ(紫式部、Callicarpa japonica)はクマツヅラ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生し、また果実が紫色で美しいので観賞用に栽培される。高さ3m程度に成長する。小枝はやや水平に伸び、葉を対生する。葉は長楕円形、鋭尖頭(先端が少し突き出すこと)、長さ6-13cm。細かい鋸歯がある。葉は黄緑で洋紙質、薄くて表面につやはない。初めは表側に細かい毛があることもある。花は淡紫色の小花が散房花序をつくり葉腋から対になって出て、6月頃咲く。秋に果実が熟すと紫色になる。果実は直径3mmで球形。栽培品種には白実のものもある。名前の由来は平安時代の女性作家「紫式部」だが、この植物にこの名が付けられたのはもともと「ムラサキシキミ」と呼ばれていたためと思われる。「シキミ」とは重る実=実がたくさんなるという意味。スウェーデンの植物学者のカール・ツンベルクが学名を命名した。北海道から九州、琉球列島まで広く見られ、国外では朝鮮半島と台湾に分布する。低山の森林にごく普通に見られ、特に崩壊地などにはよく育っている。ムラサキシキブ(コムラサキ、シロシキブ)の名所として、京都・嵯峨野の正覚寺が有名である。
 コムラサキ(C. dichotoma)も、全体に小型だが果実の数が多くて美しいのでよく栽培される。別名コシキブ。ムラサキシキブとは別種であるが混同されやすく、コムラサキをムラサキシキブといって栽培していることが大半である。全体によく似ているが、コムラサキの方がこじんまりとしている。個々の特徴では、葉はコムラサキは葉の先端半分にだけ鋸歯があるが、ムラサキシキブは葉全体に鋸歯があることで区別できる。また、花序ではムラサキシキブのそれが腋生であるのに対して、コムラサキは腋上生で、葉の付け根から数mm離れた上につく。岩手県で絶滅、その他多数の都道府県でレッドリストの絶滅寸前・絶滅危惧種・危急種・準絶滅危惧の種に指定されている。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

7月31日(日)

★冬瓜にさくっという音のみありぬ  正子
「さくっという音」に時間も空間も凝縮されたように感じました。また、これからできる、歯ざわりのいい美味しそうな冬瓜料理が、食卓に並べられている様子を想像することができました。私は冬瓜はまだ食べたことがないので、食べてみたいなと思いました。(井上治代)

○今日の俳句
鳴き交わし夏鳥高き青空へ/井上治代
夏鳥の弾けるような鳴き声が楽しげだ。高く眩しい青空へ飛びゆく姿も生命の楽しさそのものだ。(高橋正子)

○風船葛

[風船葛/横浜日吉本町]

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

7月30日(土)

★わが視線揚羽の青に流さるる  正子
ふっとあらわれた涼しそうな青い揚羽蝶。しばらくは揚羽のようすに心ひかれて目がはなせません、詩のある風景が思われます。(小川和子)

○クィーン・ネックレス

[クィーン・ネックレス/横浜日吉本町]

★夕涼に行き遇うクィーン・ネックレス/高橋正子

 「クィーン・ネックレス」という花がある。「女王様の首飾り」。女王様は、エリザベス女王以外には考えられない。わざわざ「クィーン」がつくところが、メルヘン的。この花のピンクが英国女王に似合っているようにも思う。蔓性の花、案外丈夫で、いったん咲いて、剪定して、また咲いてを、しばらく繰り返しているようだ。ちょうど角の家にあるし、ピンクの小花がネックレスのように10センチほど連なっていて、珍しいので、通る人がよく名前を尋ねるらしい。
 クイーンネックレスは、タデ科アンティゴノン属で、学名はAntigonon leptopus。メキシコ原産の熱帯つる性で、7月~10月にかけて、ピンク色の花を咲かす。耐暑性はあるが、耐寒性(5度以上)は弱い。日あたりのよい場所、また水はけ、水もちのよい土で育て、フェンス・トレリス等に這わせ、ベランダからも垂らしたりする。別名をアサヒカズラ、アンティゴノン、ニトベカズラという。

◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)