10月8日(木)

小雨。台風14号くる。
●『浮世の画家』をおととい読み終わったのだが、小津映画の影響、日本の祖父母の家のイメージがあってか、戦後まもなくの日本家屋やそこに住む人たちの様子はこまかに描写されている。けれど、それは物語のなかのようで、靄っている。「ためらい橋」とか「みぎひだり」というバーの名前は日本人ならつけないだろう。原文を知らないが、「リラクタント ブリッジ」とか、「ライト アンド レフト」とかでも言うのだろうか。
『日の名残り』も確かにイングランドの風景が描かれている。地図にあたり、ネットで写真を見たり、思い出す限りのイギリス旅行のときの風景を目に浮かべながら読んだが、なんだか、景色が靄っている。
前、「嵐が丘」の舞台となったハワースへ観光ツアーでいったが、『嵐が丘』に書かれた風景は、ハワースに立って見ると実態としてなんとなく想像できる。イシグロは、5歳のときにイギリスに移住したという体験がその後のイシグロの故郷形成に大きく作用しているのではないかと思えた。故郷喪失という解説者もある。故郷を喪失した人へのいとおしみというものが湧いてくる感じだ。
ノーベル賞作家には、故郷というものが非常に大きな役割を果たしていると聞いている。イシグロの場合の故郷はなんだろうと、思う。故郷を喪失した人は、アイデンティティーを模索し続けなければならないのだろうかとも。
松山から横浜に引っ越して15年になるが、周りの景色、いうなれば風土が自分の体にようやく定着してきつつあるように思える。まだ、血肉となったとは言えない。引っ越し当初より、俳句が作りやすくなったという気がする。

10月7日(水)

曇、夕方から小雨。
野牡丹を花屋二軒が並べ売り 正子
椎茸の香りよきこと鍋にして 正子
金木犀雨糸とおる大樹なり  正子
●学術会議のメンバーに、拒否された6人の1人に東大の加藤陽子先生がおられて、びっくり。どこがどうなの? これじゃ普通にものが言えないじゃない。なにがどうなってどうなのか。
●『光年の星』を家探しするが、見つからない。これに一日大方の時間を費やす。とんでもないところにあるんだろう。まったく、見当がつかない。お風呂の棚とか、タンスの中とかを探す。
「 ANN OF GREENGABLES 」の読んでなさそうなのが出てきた。いつ買ったのだか。この前、紀伊国屋で買いたいな、と思ったけど買わないでよかった。英訳サザエさんも出てくる。

10月6日(火)

晴れ。
●今日は、病院の梯子。午前ハート内科、午後整形外科のリハビリ。
●句集『光年の星』のお礼を書こうと思うが、忽然と紛失。信之先生が読んでいたと思うが。家中探すが見つからない。非常に憂鬱。
●月刊誌「燎」10月号「現代俳句展望」に「俳壇8月号」に掲載の私の句の句評を頂く。すっ飛ばされそうな私の句ながら、目に留めていただいた。「燎」は、師系角川源義。
その記事
「燎/10月号」
★ 田溝のぞく子らに吾子いて夏休み 高橋正子
「俳壇」8月号「プレミアシート『夏休み』」より
 たんぼの用水を覗いている子供たちがいる。何気なしに目をやると、その中に我が子もいた、と言うだけの句。そのことに意表を突かれたような思いでいる作者。それが「夏休み」ということなのだ。(蔵多得三郎)
「麻/9月号」
★三つ編みも腕も日焼け宿題す 正子
『俳壇』八月号「夏休み」より。
 この子供もやはり、私と同じように夏休みの宿題は、無計画で、最終日に終わらせるタイプの子どもだろう。髪の毛が邪魔にならないようにきりっと三つ編みにして、よく日に焼けた腕で、宿題をこなすのだ。今年は夏休みが短かったようだが、どうか間に合うように泣かずに頑張ってほしいものだ。(「麻9月号」田中幸雪)

10月5日(月)

晴れ。
●花屋に野牡丹の鉢植えを見る。
●井口文華堂で、鳩居堂の葉書と便箋を買う。葉書は7行の罫が書きやすい。便箋もたしかにペンに馴染みがよく、書きやすい。紙質がどこか違うのだろう。
シルクスクリーンの絵葉書3種も。絵は、栗、柿、銀杏黄葉。

10月4日(日)

曇り。
●『光年の星』(川原正著・くぢら同人/ふらんす堂発行/2020年9月)を贈呈される。
●名残りの花を楽しむ。朝顔は、まだ咲かせている。金魚草は、夏よく咲いた後切り詰めておいたのが、花を咲かせる。ミニバラは、四季咲きと見えて、色が澄んでいる。オフホワイトにオレンジのフリル。言うなれば、「エリーゼのために」みたい。春には見せなかったオレンジの色。ポーチュラカは、さし芽したのもが育ち、それを切り詰めたのが、これも澄んだ色で咲く。バジル、ほどんど根元から切ったが、また葉が出てきた。
●栗を茹でる。タイマーを30分、20分、10分とかけて鍋を焦がさないため、水加減を見ながらゆでる。黒々とした利平栗を横目で見ながらも、普通のを買ったが、ほどよい大きさだったので、味がよくてお得。
●角川武蔵野ミュージアム(所沢市)の写真を朝日の朝刊で見る。隈研吾の設計。8月にプレオープンしているらしい。大きな岩石のよう。武蔵野台地だからだそうだ。ここに角川出版も入っている模様。
♪交響曲2番/ベートーベン/ヤルヴィ指揮・DKB(2007年)
♪交響曲3番/ベートーベン/フィリップ・ヘレヴェッツ/オランダ放送室内フィルハーモニー

10月3日(土)

晴れ。
●句集『宇宙の音符』(豊里友行著/松本太郎英訳/沖縄書房発行 2020/9月23日)を贈呈される。
豊里さんは、沖縄の基地の状況を写真に撮り続けている写真家で、俳人。
英訳は、著者以外からの俳句理解、俳句解釈として読むと面白いと思えた。
俳句は、写真家の技法として、言葉によるイメージのコラージュと捉えれば読み易い。つまり聴覚を消して目で感じる。言葉のイメージを相互交換しながら読む。これは、私の今回の発見。沖縄の平和な状態が垣間見れるきれいな句もある。
夢を漕ぐ
おおばこのあしおとより銀河の線路
青空の画鋲のような戦闘機
月も踊れ(モーレ)/花も踊れ(モーレ)/日も踊れ(モーレ)/宇宙の音符よ
わが湖底の咆哮は一滴の虎
こおろぎの投網の星のさざなみ
りんりんと月を身籠る花月桃 
終戦はまだよさざなみのまらそん
ホームラン虹の根ぐいぐい伸ばしてく
●『浮世の画家』、三分の二ほど読んだが、場所はどこかを想定しているようでもあるし、架空の場所とも思えて、見当が付かない。5歳からイギリスにいて、日本家屋や庭の陰影、日本人らしい心情の動きがよくわかるなあと思いつつ。「両親に」献呈されている。それがこの小説のキーかも。彼はいったい日本人なのであろうか、イギリス人なのであろうかと思いつつ。不思議な感覚である。安易にグローバルな人とも言いにくい。

10月2日(金)

晴れ。満月。
●「麻」(嶋田麻紀主宰)(9月号/2020年・師系渡辺水巴)を贈呈される。その18ページ「現代俳句月評」に「俳壇8月号」に掲載の拙句について田中幸雪氏から評をいただいた。ご縁のなかったところなのに、目に留めていただいて光栄のかぎり。
その句評。
三つ編みも腕も日焼け宿題す 正子
『俳壇』八月号「夏休み」より。
 この子供もやはり、私と同じように夏休みの宿題は、無計画で、最終日に終わらせるタイプの子どもだろう。髪の毛が邪魔にならないようにきりっと三つ編みにして、よく日に焼けた腕で、宿題をこなすのだ。今年は夏休みが短かったようだが、どうか間に合うように泣かずに頑張ってほしいものだ。
共感をいただいて、「私と同じように夏休みの宿題は、無計画で、最終日に終わらせるタイプの子どもだろう。」「どうか間に合うように泣かずに頑張ってほしいものだ。」に思わず苦笑した。

10月1日(木)

曇のち晴れ。中秋の名月
●表参道の伊藤病院へ定期検査に。主治医の先生が、8月末に転勤されていて、今度は女性のO先生。
●待ち時間、山陽堂に寄って本を見て、青山あたりを歩く。おいそうなパン屋を見つける。店で自家製粉してそこで焼いて、すぐに食べさせてくれる。若い女性でほぼ満員。入るのをあきらめ、交差点近くの桃林堂をのぞく。今日はお月見団子があるというので、3個買うが、972円。それよりも懐中しるこを買うべきだったかな。気のせいか、敷いてある紙のにおい?がした。
●表参道の欅はまだ青い。欅のしずく雨で、舗道が汚れている。明治神宮鎮座100年祭が行われるようだ。
●『浮世の画家』(カズオ・イシグロ)を読み始める。日本語で書かれたような錯覚を受ける。

9月30日(水)

晴れ。
●朝7時。5丁目を歩く。快晴なので、丘の一番上から富士山が見えるが、遠くは靄がかかってシルエットだけ。公園に寄る。四十雀が一羽電線でよく鳴く。ブランコに乗る。ポプラ、楓の葉が風によく鳴る。秋風が快い。こんなに快い秋風は、またとない。めったにない。
●マイナンバーカードが必要と言われたので、区役所に電話。申込書を書くように言われる。今日はたて続けに忙しい。明日は表参道の病院までゆかねば。
午後、マイナンバーの申し込みに区役所に行く。窓口対応、一人に15分かかっている。しばらく待ったのち、15分×(20人÷3窓口)で、約100分待ち。キャンセルして帰る。あと20分だから待つようにと言われたが、そんな計算ありえない。交付までに4か月。間に合わない。間に合わないものを申請してもなあ。マイナンバーは住民票でわかるんだけど。

9月29日(火)

曇り。小雨が時おり。
かす漬けの柚子の香りの鮭を焼く 正子
秋うららふっくら乾く羽根布団  正子
芒・菊活けて芒がすぐ呆け    正子
●昨日の天気が今日も続くかなとおもったが、それは無理。秋の天気と女心は。洋服は、長袖でちょうどよい。
●『日の名残り』三日目夜、フォードがガス欠になるところから場面が展開して興にのって読む。
●信之先生の病院の添い。井田病院へ。皮膚が乾燥したり、炎症をおこしたりとのこと。軟膏やローションを処方してくれた。2時間ほど。
送迎料がいるが、往復送迎の東都タクシーを頼む。病院にもタクシーが待機しているが、ごく近くの道も知らないし、病人と思うのか横柄。
♪交響曲2番/ベートーベン/マリス・ヤンソンス/バイエル放送管弦楽団(2016年)(ヤンソンス氏は2019年12月に亡くなられた。)
♪Beethoven: Symphony No.2; Jarvi, DKB(2011)