7月31日(水)

★冬瓜にさくっという音のみありぬ  正子
冬瓜は形も大きくグロテスクで、切るときに身体を乗せて切りますが「さくっという音のみありぬ」に冬瓜の本質そのままを詠まれて居り、納得!と思わず笑ってしまいました。しかし、事と次第によっては重宝で、保存方法も工夫して我が家では夏から冬にかけて何度か食卓に上る美味しい食材です。リアルで面白く台所に立つ主婦として共感の一句です。(佃 康水)

○今日の俳句
噴水のしぶきや児らを走らせる/佃 康水
噴水のしぶきを避けながらも、喜々として水に濡れたり、水から逃げたりする幼い子たちの無邪気な姿がよく詠めている。(高橋正子)

○風船葛

[風船葛/横浜日吉本町]

★あそび仲間ふやし風船葛かな/宮津昭彦
★風船葛色づき風のなき日かな/宮津昭彦
★風船葛花の微細の夜に溶けず/宮津昭彦
★風筋の風船葛狂ふがごと/松崎鉄之介
★フランスヘ行かう風船かづらの唄/豊田都峰
★風が来て風船かづら少し浮く/島谷征良
★風吹けば吹かれ風船葛かな/大橋敦子
★離れ住む吾子や風船蔓揺れ/伊藤とら
★風船葛逝きしばかりの人の垣/二瓶洋子
★孫去りて風船かずら揺れやまず/長瀬節子
★風船かづら風知るほどに育ちけり/水谷芳子
★生家跡垣に風船かづら揺れ/早水秀久
★風船葛われ青空を一人じめ/竹内悦子
★透明の朝風に揺れ風船かづら/岸本林立
★帰りにも触るる風船葛かな/森清堯

★吹かるるは風船かずらと子の髪と/高橋正子
★風船かずら割れて飛び出すみどりの空気/〃
★風船かずら夜空の星をきらめかす/〃

フウセンカズラ(風船葛、学名:Cardiospermum halicacabum)とはムクロジ科の植物の一種。花を観賞するためよりむしろ、風船状の果実を観て楽しむために栽培される。北米原産。つる性の植物で一年草。葉は三出複葉、小葉は草質で柔らかく、あらい鋸歯がある。7月~9月頃に白い5mmくらいの花を咲かせる。花は葉腋からでる長い柄の先に数個付き、巻きヒゲを共につける。果実は風船状に大きく膨らみ、緑色。後に茶色く枯れる。種子は球形で大粒、なめらかな黒でハート形の白い部分がある。ちょうど栃の実を小さくした姿に見える。よく茂ったときは非常に涼しげで、家庭の壁面緑化にも使われる。種子は、白っぽいハート形の部分をサルの顔に見立てて遊ぶこともある。属名は「ハートの種」の意。

◇生活する花たち「蓮の花」(横浜市港北区箕輪町・大聖院)

7月30日(火)

★月見草の大きな花にさよならを  正子
黄色の花弁を開く大輪の月見草。その際立つ明るさに佇み、身に添うような親しさを覚え「さよならを」告げ立ち去られたのでしょう。凛と野に立ち健気に開く月見草の大きな存在感が感じられます。(藤田洋子)

○今日の俳句
山の雨上り茅の輪の列に入る/藤田洋子
山の雨が、一句の雰囲気を作り出し、夏越し祭の茅の輪の緑が生き生きしている。茅の輪をくぐる順番の列に入って、無事に夏を越せることを祈る。(高橋正子)

○秋葵(オクラ)の花

[秋葵(オクラ)の花/横浜市緑区北八朔町]_[トロロアオイ(黄蜀葵)/ネットより]

★秋葵川は南へ流れ去る/高橋信之
★秋葵花は黄色を澄ましきる/高橋正子

オクラ(秋葵、Okra、学名:Abelmoschus esculentus)は、アオイ科トロロアオイ属の植物、または食用とするその果実。和名をアメリカネリと言い、ほかに陸蓮根(おかれんこん)の異名もある。英名okraの語源はガーナで話されるトウィ語 (Twi) のnkramaから。沖縄県や鹿児島県、伊豆諸島など、この野菜が全国的に普及する昭和50年代以前から食べられていた地域では「ネリ」という語で呼ばれていた。今日では当該地域以外では「オクラ」という英語名称以外では通じないことが多い。以前はフヨウ属(Hibiscus)に分類されていたが、現在ではトロロアオイ属に分類されている。短期間で50cm-2mほどに生長し、15-30cmの大きさの掌状の葉をつけ、黄色に中央が赤色のトロロアオイに非常に似た花をつける。開花は夜から早朝にかけてで、昼にはしぼんでしまう。開花後、長さ5-30cmの先の尖った形の五稜の果実をつけ、表面に短毛が生えており、熟すと木質化する。原産地はアフリカ北東部(エチオピアが有力)で、熱帯から温帯で栽培されている。エジプトでは、紀元前元年頃にはすでに栽培されていた。アメリカ州では、主に西アフリカから移住させられた奴隷によって栽培が始まり、現在でもアメリカ合衆国南部、西インド諸島、ブラジル北部など、アフリカ系住民の多い地域でよく栽培されている。熱帯では多年草であるが、オクラは少しの霜で枯れてしまうほどに寒さに弱いために、日本では一年草となっている。日本に入って来たのは明治初期である。従来「ネリ」と呼んでいたトロロアオイの近縁種であるため、アメリカネリと名付けられた。現在の日本で主流を占めるのは、稜がはっきりしていて断面は丸みを帯びた星型になる品種だが、沖縄や八丈島などでは大型で稜がほとんどなく、断面の丸いものが栽培されている。他にも莢が暗紅色になるもの(赤オクラ)など亜種は多い。大きくなりすぎると繊維が発達して食感が悪くなるので、角オクラは10cm、丸オクラは15-20cmくらいに成長した段階で収穫される。

 トロロアオイ(黄蜀葵、学名:Abelmoschus manihot )は、アオイ科トロロアオイ属の植物。オクラに似た花を咲かせることから花オクラとも呼ばれる。原産地は中国。この植物から採取される粘液はネリと呼ばれ、和紙作りのほか、蒲鉾や蕎麦のつなぎ、漢方薬の成形などに利用される。高さは1.5メートル以上に達し、葉は掌状に五から九裂する。茎には細くて堅い棘がある。8月から9月に開花する。花の色は淡黄からやや白に近く、濃紫色の模様を花びらの中心につける。花は綿の花に似た形状をしており、花弁は5つ。花の大きさは10から20センチで、オクラの倍近い。朝に咲いて夕方にしぼみ、夜になると地面に落ちる。花びらは横の方向を向いて咲くため、側近盞花(そっきんさんか)とも呼ばれる。果実はオクラに似ているが太くて短く、剛毛が多いうえ固いため食用にはならない。熟すると褐変して割れ、種子を散らす。根は太くて長く、温暖地では多年草となる。
 主に根部から抽出される粘液を「ネリ(糊)」と呼び、紙漉きの際にコウゾ、ミツマタなどの植物の繊維を均一に分散させるための添加剤として利用される。日本ではガンピ(雁皮)という植物を和紙の材料として煮溶かすと粘性が出て、均質ないい紙
 現在、機械抄き和紙はもちろん、手すき和紙の中でも古来の方法でネリを使用しているところは少なく、ポリアクリルアミドなどの化学薬品を合成ネリとして使用しているところが増えている。
 同属植物であるオクラと異なり、実は不味で食用に適さないが、紙漉きのためにトロロアオイを栽培する地域では、ネリには不要な花を食用に供することもある。花野菜(エディブル・フラワー)として家庭菜園などで栽培されることもあり、花弁を生のままサラダにしたり、天婦羅、湯がいて三杯酢などで酢の物として食される。特有のぬめりがあり美味であるが、一日花であるため市場にはほとんど流通しない。

◇生活する花たち「蓮の花・のうぜんかずら・ブラックベリー」(横浜市港北区箕輪町)

7月29日(月)

★わが視線揚羽の青に流さるる  正子
この揚羽はアオスジアゲハでしょうか?きっとそうだろうと思いました。軽快にきびきびと飛ぶこの蝶は、翅のブルーの線が美しく目を引きます。思わず目を奪われてその姿を追っていかれた、そのことに共感いたします。 (多田有花)

○今日の俳句
雲の峰四方八方立ち上がる/多田有花
ぐるりと空を見渡すと、四方八方から雲の峰が立ちあがり、まさに夏をそれに感じる。四方八方の雲の峰は勇壮なことである。(高橋正子)

○屁糞葛(へくそかずら)

[屁糞葛/横浜・四季の森公園]

 「へくそかずら」は、埃っぽい真夏の暑さにも負けず道路わきの草に巻きついたり、涼しそうな竹藪の下草に巻きついたり、結構あちこちで見かける。初めてへくそかずらの名前を知ったのは、小学生の時だった。そのころは、夏休みの宿題は夏休み帳だけ。夏休み帳だけやるのは少な過ぎると考えたのだろう。上級生から夏休みには、漢字の百字練習と、計算ドリル、絵を2,3枚。工作1点、押し花か昆虫採集、これらをそろえて新学期に持ってゆくものと教えらえていた。一緒に勉強したり、絵を描いたり、工作をしたりすることもあった。押し花は小学3年生のころから始めた。毎夏のことで、家の周りのいわゆる雑草を採集して押し花にし、画用紙に貼り付けた。10枚から20枚くらいを綴じた。植物の名前は、図鑑で調べるののではなく、上級生や大人に聞いた。わからないものは何も書かないで提出。「へくそかずら」の名前は、夏休みの植物採集で知った。かわいい花だと思ったが、それが花にはかわいそうな名前であることなどちっとも思わなかった。実際、意味を考えもしなかったのだろう。

★へくそかずら涙を溜めし目に映る/高橋正子

 ヘクソカズラ (屁糞葛, Paederia scandens) とはアカネ科ヘクソカズラ属の植物の一種。別名ヤイトバナ、サオトメバナ。古名はクソカズラ(糞葛・屎葛)。日本各地、東アジアに分布する蔓性の多年草で、至る所に多い雑草。葉や茎に悪臭があることから屁屎葛(ヘクソカズラ)の名がある。葉は蔓性の茎に対生し、形は披針形から広卵形で、縁は全縁。花期は7月から9月頃で、花弁は白色、中心は紅紫色であり、その色合いが灸を据えた跡のようなのでヤイトバナ(灸花)の別名がある。果実は黄褐色。干して水分を飛ばした果実、または生の実を薬用とする。ただ、生の果実はかなりの臭気を放つのに対して、乾燥したものは不思議と臭いが消えるため、乾燥したものを使うことのほうが多い。劇的ではないが効用は認められており、しもやけ、あかぎれなどの外用民間薬のほか、生薬の鶏屎藤果としてもしられている。「ヘ」の上に「クソ」までつく気の毒な名をもつヘクソカズラは、荒れた雑木林などに生える。名前のとおりに花などをもむといやなにおいがするが、芯の部分は落ちついたアズキ色でしゃれている。冬になれば枯れたつるで素敵なリースができる。

◇生活する花たち「鬼百合・コムラサキ・藪茗荷」(東京・新宿御苑)

7月28日(日)

 ドイツの旅平成2年夏
★ラインのぼる巨船の人の裸かな  正子
中部ヨーロッパ最大の川で大型船はハーゼルまでの可航でローレライなどの伝説や河岸の古城が多くの観光客を楽しましている。大型船で上半身裸になり夏の太陽をのんびりと当りながら河岸の名所を見学している観光客の素敵な景ですね。(小口泰與)

○今日の俳句
湖へ虎杖の花咲きいそぎ/小口泰與
湖のほとりに虎杖の花が咲き急いでいる。夏が短い北国を思わせる。虎杖の花は小さく白い。散れば葉に埃がかかるように散る。夏の短さも、花のもろさも、みな移ろいやすさでえある。(高橋正子)

○万両の花

[万両の花/横浜日吉本町]

★向き合って万両の花の確かさに/高橋信之

 センリョウと一緒の所に、マンリョウの普通葉のものと斑入り葉のものを植えていたが、何故か其処の場所ではセンリョウだけが元気が良く、マンリョウの株は細り、今では痩せて1本だけとなり花付きも侘しい。だが、何年か前から庭の2箇所に鳥の落し物からか実生苗が生えてきて、やっと去年から花が咲き実が生り、今年初めて写真を撮ってみた。
 センリョウ、ヤブコウジの花と違ってマンリョウの蕾は尖ってしっかりとしており、開いた花も1センチ位と小さいながらも随分とはっきりとして造花のような5弁が美しい。真っ白だと思っていたが、どうも斑点が入っているようにも見える。花も下向きに咲き、雨風に散ることなく実もしっかりと生り、恐らく鳥も食べないものだろうと思っていた。しかし庭のあちこちに実生苗が生えてくるって事は、センリョウより大き目の実が鳥にとってはご馳走なのかも知れない。
マンリョウの実には、赤、白、黄色があるが、花は何れも同じ色なのであろうか?
 さて、人間にとっては毒の植物があるが、鳥にとっては植物の実は総て無害なのであろうか?そして何れが美味しいものかと鳥達も選別するものなのか?今年初めて見たマンリョウの花、結構花付きも去年より殖えてくれたようだが、このまま実も豊作で秋に朱美がたわわになってくれることを期待したい。(ブログ「一花一葉」より)

 <マンリョウ(万両)>
ヤブコウジ科ヤブコウジ属、学名:Ardisia crenata、花期:7月、分布:関東以西、四国、九州、沖縄、アジア東南部、実の色:赤、黄、白、性状:常緑小低木

◇生活する花たち「桔梗・風船かずら・芹の花」(横浜都筑区ふじやとの道)

7月27日(土)

★初蝉は一蝉遠く鳴いて止む  正子
初蝉の他の蝉はまだ羽化していないのでしょう。遠くで一蝉が鳴いて、そのまま止んでしまう。夏の始まりの光景を感じます。(高橋秀之)

○今日の俳句
子らに買うバナナを袋いっぱいに/高橋秀之
袋の詰められたバナナの黄色に元気がある。子供たちへの格好の土産となったバナナであるが、夏にあって楽しい。(高橋正子)

○グラジオラス

[グラジオラス/横浜日吉本町]

★グラジオラス妻は愛憎鮮烈に/日野草城
★グラジオラスゆるるは誰か来るごとし/永田耕一郎
★グラジオラス揺れておのおの席につく/下田実花
★刃のごとくグラジオラスの反りにけり/佐久間慧子

 花にも流行り廃れがあるが、私の記憶では、昭和30年代から40年代の初めごろ、グラジオラスは、ダリアと並んで人気の花だったと思う。葉が菖蒲のようで、花が連なって咲く。ヒメヒオウギズイセンに似たマジェンダ色のグラジオラスが一般的だったころ、生家にもあった。それから花がずいぶん華やかに豪華になった。グラジオラスは、ガラスの花器に活けたい。茎を水に透かせて、豪華な花の暑苦しさから解放されたい。そうすれば随分涼しい花となる。連なった花は根元から先へと咲く。最後の蕾まで咲き切らすのは意外と難しい。
 グラジオラス (Gladiolus) は、アヤメ科グラジオラス属の植物の総称。日本には自生種はなく、園芸植物として植えられている。別名、トウショウブ(唐菖蒲)、オランダショウブ(阿蘭陀菖蒲)。名前は古代ローマの剣であるグラディウスに由来し、葉が剣に類似していることが根拠と言われる。日本では明治時代に輸入され、栽培が開始された。根は湿布薬の材料に使われる。原産地は、アフリカ・地中海沿岸など。赤、黄、橙、白などの花を開花する。葉(一説には花が咲く前の一連のつぼみ)が剣のようなのでGladius(ラテン語で「剣」)にちなんで名づけられた。春に球根(球茎)を植え、夏の7 – 8月にかけて開花する春植え球根として流通しているものが一般的である。一部の原種には秋植え球根で、春に開花するものもある。花言葉には勝利・密会・用心などがある。

◇生活する花たち「蓮の花・ひまわり・百日紅(さるすべり)」(フラワーセンター大船植物園)

7月26日(金)

★白すぎて花おおらかに泰山木  正子
いつも見る梅雨空は、雨が降り星が見えません。今日見る梅雨空には、星が瞬いています。じめじめしたうっとおしい日が続く梅雨の季節、ひとときほっとされ、明日の晴天を期待しながら眠りに就かれました。(藤田裕子)

○今日の俳句
朝を歩く吾にポピーの揺れやさし/藤田裕子
何かの用事で、朝、戸外を歩くことがあった。歩く傍にはポピーがそよ風を受けてやさしく揺れている。日常の中にもふっとした小さな詩の世界がある。(高橋正子)

○クィーン・ネックレス

[クィーン・ネックレス/横浜日吉本町]

★夕涼に行き遇うクィーン・ネックレス/高橋正子

 「クィーン・ネックレス」という花がある。「女王様の首飾り」。女王様は、エリザベス女王以外には考えられない。わざわざ「クィーン」がつくところが、メルヘン的。この花のピンクが英国女王に似合っているようにも思う。蔓性の花、案外丈夫で、いったん咲いて、剪定して、また咲いてを、しばらく繰り返しているようだ。ちょうど角の家にあるし、ピンクの小花がネックレスのように10センチほど連なっていて、珍しいので、通る人がよく名前を尋ねるらしい。
 クイーンネックレスは、タデ科アンティゴノン属で、学名はAntigonon leptopus。メキシコ原産の熱帯つる性で、7月~10月にかけて、ピンク色の花を咲かす。耐暑性はあるが、耐寒性(5度以上)は弱い。日あたりのよい場所、また水はけ、水もちのよい土で育て、フェンス・トレリス等に這わせ、ベランダからも垂らしたりする。別名をアサヒカズラ、アンティゴノン、ニトベカズラという。

◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)

7月25日(木)

★枇杷の実のあかるさ葉ごと買いにけり  正子
厚手の緑葉の中にかたまって生る輝くような枇杷の実。その姿そのままに買い帰られたのでしょうね。帰路の軽い足取りが目に見えるようです。(小西 宏)

○今日の俳句
金蚊の仰向いて脚生きんとす/小西 宏
金蚊が何かにぶち当たってひっくり返った。起き上がろうとしてか、必死に脚を動かしている。作者はその様子を「生きんとす」と捉えた。金蚊の命を直視しているのがよい。(高橋正子)

○鬼百合

[鬼百合/東京・新宿御苑]          [鬼百合/大船植物園]

★亭寂寞薊鬼百合なんど咲く/夏目漱石
★望岳のころの鬼百合おいらん草/和知喜八
★鬼百合も写ってしまう心電図/岸本マチ子
★鬼百合を闘志の花として残す/柴田悦子
★鬼百合あれは出征前夜の父/石倉夏生
★鬼百合に負けてはならじとぞ思う/高橋正子

オニユリ(鬼百合・学名Lilium lancifolium)とは、ユリ科ユリ属の植物。グアム東部、中国、朝鮮半島、日本に自生する。日本では北海道から九州の平地から低山で普通に見られ、一説には中国からの渡来種と言われている。変種に対馬に自生するオウゴンオニユリ(Lilium lancifolium var. flaviflorum)がある。草丈は1~2m程となる大型のユリ。葉は互生し、小さめの披針形で先端はゆるく尖る。茎は紫褐色で細かい斑点がある。花季は7月から8月で、花弁はオレンジ色、濃褐色で暗紫色の斑点を生じる。花弁は強く反り返る。種子は作らないが、葉の付け根に暗紫色のムカゴを作る。鱗茎はヤマユリと同様、食用となる。 花言葉は「賢者」「愉快」「華麗」「陽気」など。

◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)

7月24日(水)

★ゆうすげに月まだ淡くありにけり  正子

○今日の俳句
青葡萄白磁の皿の静かさに/河野啓一
静物画のような静謐な雰囲気がある。マスカットのような青い葡萄と白い皿を思う。(高橋正子)

○蒲の花(蒲の穂)

[蒲の花(穂の下部は雌花、穂の上部は雄花)/日吉本町]

★蒲の穂は剪るべくなりぬ盆の前/水原秋桜子
★蒲の穂に緋の絨緞の見ゆる家/飯田蛇笏
★蒲の穂やはだしのままに子の育つ/池内たけし
★蒲の穂を捧げ自転車向うから/中 ひろし

 蒲の穂に初めて接したのはお花を習っていたとき。はたしてそれが栽培されているものか、水辺に生えているものかあまり考えたこともなかった。面白い形状の花材ではあるが。松山城より西にある衣山に住んだときに蒲が生い茂る湿地があった。近くにある考古館の傍の池にも蒲があった。身近にあることに驚いたが、こどものころは一度も見たことがなく、因幡の白さぎの話で知って、どんなものかと思っていた。
赤茶色の雌蕊の部分とその上に突き出た細い棒状の雄蕊の部分が蒲の特徴であろう。秋になると穂絮が風に千切れて吹かれているのを見るが、国生みのころを想像して、淋しさを感じる。横浜では、四季の森公園の池の辺にある。写真に撮ればそれなりに雰囲気のある写真になるがやはり暗さと淋しさがある。

★蒲の花遊ぶ子どもを透かしたり/高橋正子

 ガマ(蒲、香蒲、学名:Typha latifolia L.)は、ガマ科ガマ属の多年草の抽水植物である。北半球の温暖な地域やオーストラリアと日本の北海道から九州の広範囲に分布する。池や沼などの水辺に生える。葉は高さ1-2 mで、水中の泥の中に地下茎をのばす。夏に茎を伸ばし、円柱形の穂をつける。穂の下部は赤褐色で太く、雌花の集まりでありソーセージに似た形状である。穂の上半分は細く、雄花が集まり、開花時には黄色い葯が一面に出る。風媒花である。雄花も雌花も花びらなどはなく、ごく単純な構造になっている。雌花は結実後は、綿クズのような冠毛を持つ微小な果実になる。この果実は風によって飛散し、水面に落ちると速やかに種子が実から放出されて水底に沈み、そこで発芽する。 また、強い衝撃によって、種が飛び散ることもある。花粉は生薬としては「蒲黄」(ほおう)と呼ばれる。雌花の熟したものは綿状(毛の密生した棒様のブラシ状)になり、これを穂綿と呼ぶ。日本神話の因幡の白兎の説話では、毛をむしり取られた兎に対して大国主は蒲黄を体につけるように助言している。しかし、唱歌の「大黒さま」の中ではそれが「がまのほわた」となっており、両者は混同されていたことがわかる(もっとも、摘みたての「がまのほ」に触ると大量の黄色い花粉がつく)。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

7月23日(火)

★睡蓮の花のひとつが離れ浮き  正子
睡蓮の花のひとつのありのままの描写に、水面に咲く睡蓮の全体のたたずまいまでもが見えてきます。水面に浮かぶ睡蓮の清楚な美しさに心惹かれ、ひとときの涼しさを感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
青田から青田をつなぐ水の音/藤田洋子
青田に流れ込む水は、水源から小川へ、そして、それぞれの田へ分けれた水。「つなぐ」が的確で、どの田も青々と育っている。(高橋正子)

○カサブランカ

[カサブランカ/横浜日吉本町]

★カサブランカ咲き特別な日々となる/山崎 杏
★今年またカサブランカの紅の蕊/稲森如風
★風そよぎカサブランカの薫りあり/中居秀童
★カサブランカに風あり白いと思う朝/高橋信之

 カサブランカがブームになって、田舎都市の松山でも愛好者が増えた。大変美しく豪華な百合であると知ったし、花屋でもまず目についた。それを自分で咲かせてみようと思ったのは、加入しているコープのパンフレットでカサブランカの球根の案内があったから。試しに注文して球根が届いた。秋に鉢植えにして花を楽しみにしていた。普通の百合のように芽がでるものとおもっていたが、筍ようような切っ先が伸びてきて驚いた。なんの手入れもなく、カサブランカの花を楽しんだ。翌年は咲かせようとはおもわなかったので、私が咲かせたカサブランカはこのときだけになっている。
 横浜・四季の森公園で山百合を見て、カサブランカほどの大きさだと思ったが、カサブランカのもとは日本の山百合であることを後で知った。私の大きさの認識については間違っていなかったということだろう。

  松山・衣山
★カサブランカ海をうしろに咲く今朝よ/高橋正子

 カサブランカの原産地は北半球の日本を含む亜熱帯~亜寒帯である。ユリ属のうちヤマユリ、タモトユリなどを原種とするオリエンタルハイブリッドの一品種。開花時期は7~8月。1970年代にオランダで作出され、世界的なブームを呼んだ。純白の大輪の花を咲かせ「ユリの女王」と言われる。結婚式の際のブーケをはじめ、主に贈り物の花束として喜ばれる花である。オリエンタル・ハイブリッドは、ヤマユリやカノコユリ、タモトユリなど森林のユリを交配して作られた品種群で、その中の「カサブランカ」が有名であるが、カサブランカを生み出す交配で主要な役割を果たしたトカラ列島口之島原産のタモトユリは、皮肉なことに自然状態ではほぼ絶滅してしまっている。なおカサブランカはモロッコの都市の一つ。なお、映画『カサブランカ(英語: Casablanca)』は、第二次世界大戦にアメリカが参戦した1942年に製作が開始され、同年11月26日に公開されたアメリカ映画で、フランス領モロッコのカサブランカを舞台にした。ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが出演しており、映画スターベスト100(1999年)の男性1位にハンフリー・ボガート、女性4位にイングリッド・バーグマンが選ばれている。

◇生活する花たち「月見草・大賀蓮・のうぜんかずら」(横浜・四季の森公園)

7月22日(月)

★うっすらと平らに緋鯉の浮いて来し  正子
池を眺めているとやや深い所から、緋鯉が「うっすらと」そして「平らかに」水面に透けて見えてきました。ゆったりとした大きな緋鯉の動きとその様子をじっと眺めている作者の感動が伝わって参ります。水の豊かな広い池を想像します。(佃 康水)

○今日の俳句
園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
園丁の優しさで、文字摺り草が刈り残された。小さなピンク色の花がらせん状に巻きあがる文字摺草は目立つ花ではないが、人を心優しくさせる花である。(高橋正子)

○凌霄葛(のうぜんかずら)

[凌霄の花/横浜市港北区箕輪町]     [凌霄の花/横浜・四季の森公園]

○のうぜんかずら

[凌霄の花(のうぜんかずら)/横浜市港北区箕輪町]

★家毎に凌霄咲ける温泉(いでゆ)かな/正岡子規
★のうぜんの花を数へて幾日影/夏目漱石
★凌霄や長者のあとのやれ築土/芥川龍之介
★のうぜんの暮れて色なし山の家/臼田亞浪
★噴井あり凌霄これを暗くせり/富安風生
★凌霄花落ちてかかるや松の上/山口青邨
★凌霄のかづらをかむり咲きにけり/後藤夜半
★凌霄花や子は道の上に絵をかける/星野立子
★のうぜんや海近ければ手狭でも/阿部みどり女
★凌霄花の朱に散り浮く草むらに/杉田久女
★塵とりて凌霄の花と塵すこし/高野素十
★凌霄に井戸替すみし夕日影/西島麦南
★松高き限りを凌霄咲きのぼる/橋本多佳子
★凌霄花や問ふべくもなき門つづき/中村汀女
★今日の日の凌霄花にまで傾きし/中村汀女
★凌霄は妻恋ふ真昼のシヤンデリヤ/中村草田男
★のうぜんや眞白き函の地震計/日野草城
★凌霄花に沈みて上るはね釣瓶/星野立子
★凌霄花の咲き垂れし門父母います/加藤楸邨

 のうぜんかずらを初めて知ったのは、大学2年生の夏。島根県へ注ぐ江川が流れる広島県三次盆地の高台のお寺に咲いていた。当時所属していた松山の俳句結社の吟行に参加させてもらったときのこと。真夏の煙るような空に曙色の大ぶりな花が魅力的だった。
 砥部の家にも植木屋さんが持ってきてくれたが、できつつある庭の雰囲気にあわなかったので、お隣にあげたら見事に花を咲かせて、それを楽しませてもらっていた。その花を向かいの方が植えたがり、隣の方が分けてあげて、向かいの家にもそののうぜんかずらが玄関脇を覆うほど花を咲かせた。夏が来ると、隣と向かいののうぜんの花を我が家の花のごとく楽しんだものである。

★凌霄花の朝(あした)の花と目が合いぬ/高橋正子

 ノウゼンカズラ(凌霄花、紫葳、Campsis grandiflora)はノウゼンカズラ科のつる性木本。夏から秋にかけ橙色あるいは赤色の大きな美しい花をつけ、るつる性の落葉樹。気根を出して樹木や壁などの他物に付着してつるを延ばす。花冠は漏斗状。結実はまれである。日本で栽培されるノウゼンカズラは中国原産で平安時代に渡来したといわれる。ノウゼンというのは凌霄の字音によるといわれる。古くはノウセウカズラと読まれ、これがなまってノウゼンカズラとなった。霄は「空」「雲」の意味があり、空に向かって高く咲く花の姿を表している。夏の暑い時期は花木が少なく、枝を延ばした樹木全体に、ハッとするような鮮やかな色の花を付け、日に日に咲き変るので、よく目立つ。茎の先に房状花序をつける。花冠はラッパ型で先が5片に裂けて開く。葉は奇数羽状複葉。つるは気根を出し固着すしながら伸びる。幹はフジと同じように太くなる。樹勢が非常に強く丈夫な花木であり、地下茎を延ばしひこばえを周囲に芽生えさせ、繁殖する。落花すると、蜜がたれ周りを湿らすほど。その蜜に、メジロが目ざとく感知して集まってくる。蜂も姿を現す。その蜜は毒性があるといわれるが、根拠のない俗説・風評である。花や樹皮は漢方薬では利尿や通経に使われる。園芸品種が複数存在し、ピンクや黄色などの花色もある。新梢に房となって花が枝元から次々に咲き、花は毎日のようにすぐに散る。花が終わった新梢をそのままにしておくと、樹の姿が乱れ、樹勢が衰えるので適切な剪定が必要。ノウゼンカズラ属はノウゼンカズラと、アメリカ合衆国南東部原産のアメリカノウゼンカズラ(C. radicans)、およびこれらの雑種C. x tagliabuana からなる。アメリカノウゼンカズラの花は中国系ノウゼンカズラより小ぶりで細長く、濃い赤橙色。送粉の仕方に特色があり、世界でもっとも小さい鳥といわれるハチドリが空中をホバリングしながら嘴を花の中にさし込んで蜜を吸う。花の形がラッパに似ていることから英語では「トランペット・フラワー」、「トランペット・ヴァイン」あるいは「トランペット・クリーパー」と呼ばれる。

◇生活する花たち「あさざ・野萱草(のかんぞう)・山百合」(東京白金台・自然教育園)