2月8日(金)

★梅の花遠きに咲きて白さ満つ   正子
春が来て梅林がにぎやかになってきました。まだ遠くに白梅が咲き始めた頃かもしれませんが、遠目にも華やかな白い花色が満ちており、心なしか清らかな白梅の香もただよってくるように想われます。 (河野啓一)

○今日の俳句
水音して箕面連山春浅し/河野啓一
「水音して・・春浅し」の感覚がいい。箕面連山を行くと、ころころと水音が絶えずしている。自然に身を入れると、確かに春が来ている。(高橋正子)

○伊予柑
伊予柑は、愛媛県の「宮内」というところに原木があるらしい。正月があけ、蜜柑に酸味が抜けてくるころいわゆる晩柑類が出始める。八朔や伊予柑などがそうであるが、以前はもっと遅く2月の半ばごろから3月にかけて出荷されていたように思うが、今はもっと早くなった。柑橘らしいよい香りと果汁がたっぷりある。果汁が多すぎて手を汚すこともしばしばだが、風邪気味のときなど風邪が抜けそうでうれしい。春一番が吹き、戸外はうすら肌寒いが空は明るい。以前は国立大の入試や、卒業式のあったころ。歓喜や落胆、別れ、また祝など悲喜こもごもの、ニュアンスのある季節。料峭の空気感と合わせて食べれば美味しさのニュアンスも増すというもの。
 
★風吹ける一日伊予柑香らせ食ぶ/高橋正子

○菫(すみれ)

[菫(すみれ)/横浜市都筑区緑道ふじやとの道]

★山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
★一鍬や折敷にのせしすみれ草 鬼貫
★居りたる舟を上ればすみれ哉 蕪村
★奥山や人住あればすみれぐさ 暁台
★にくまれし妹が菫は咲にけり 一茶
★山路来て品よく菫の花並ぶ/高橋正子
★降り積もる落葉のなかにすみれ草/高橋正子

スミレ(菫)は、スミレ科スミレ属の植物の総称であるが、狭義には、Viola mandshurica という種の和名である。なお、類似種や近縁種も多く、一般にはそれらを区別せずにスミレと総称していることが多い。種名としてのスミレ(Viola mandshurica)は、道ばたで春に花を咲かせる野草である。深い紫(菫色)の花を咲かせる。地下茎は太くて短く、多数の葉を根出状に出す。葉は根際から出て、少し長めの葉柄があって、少しやじり形っぽい先の丸い葉をつける。花は独特の形で、ラッパのような形の花を横向きかやや斜め下向きにつける。5枚の花びらは大きさが同じでなく、下側の1枚が大きいので、花の形は左右対称になる。ラッパの管に当たるのは大きい花弁の奥が隆起したもので距(きょ)という。花茎は根際から出て、やや立ち上がり、てっぺんで下を向いて花のラッパの管の中程に上側から着く。平地に普通で、山間部の道ばたから都会まで、都会ではコンクリートのひび割れ等からも顔を出す。山菜としても利用されている。葉は天ぷらにしたり、茹でておひたしや和え物になり、花の部分は酢の物や吸い物の椀ダネにする。ただし他のスミレ科植物、例えばパンジーやニオイスミレなど有毒なものがあるため注意が必要である。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)

2月7日(木)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子

○今日の俳句
にぎわいを芽木に残して目白飛ぶ/藤田裕子
目白の季語は、その繁殖期である夏とする歳時記、また秋とする歳時記がある。実際に人里でよく見られるようになるのは秋の終わりごろから。椿のころはよく庭に来る。芽木のころも丁度このころ。チリチリという小さな声ににぎわう芽木は、早春のあかるさに満ちている。(高橋正子)

○パンジー

[パンジー/横浜日吉本町(2013年1月30日)]_[パンジー/横浜日吉本町(2012年2月19日)]

2月6日(水)

★おしばなの紅梅円形にて匂う   正子
早春の冷たい空気の中に色も香も清々しい五弁の梅の花が開いた。本の間に挟み、押し花にした紅梅は美しい円形を成し、尚且つ馥郁とした香りを放っている。梅の花をこよなく愛でられている作者の温かい心情が伝わって参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
野に覚めし淡きみどりや蕗のとう/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗のとうのみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)

○福寿草「秩父紅」

[福寿草「秩父紅」/横浜日吉本町]     [福寿草「秩父紅」/埼玉県皆野町「ムクゲ自然公園」(ネットより)]

★小さくても昇殿すなり福寿草 一茶
★暖炉たく部屋暖かに福寿草 子規
★一日の温さに開く福寿草/高橋正子
★福寿草紅色がちな花は光り/高橋正子

幻の福寿草「秩父紅」を訪ねて(2010年 02月 27日) 父からの誘いで埼玉県皆野町のムクゲ自然公園というところに行く。西武秩父駅前で午前10時に待ち合わせ、車で皆野町へ。とはいえムクゲは夏の花なので当然いま咲いているわけがない。今日の目的は「秩父紅」というここだけに咲く幻の福寿草。雨模様だったがしだいに晴れてきた。秩父紅は陽が当たらないと開かないそうだ。母がしきりに「わたしは晴れ女だから」と自慢する。ロウバイが咲いている。マンサクも咲いている。その先の山腹に一万株の秩父紅が植わっている。セイヨウミツバチがちらほら来ていた。半透明のデリケートな花弁と華やかな雄しべ。一般種の福寿草は目の覚めるような強烈イエロー。材木に生えていたきのこ。池で鳴いていたカジカガエル。カジカガエルの卵。公園案内所に戻って甘酒と目薬の木のお茶をごちそうになった。ここでは園内のハーブ園で栽培したハーブや、花の種や鉢植えの販売もしている。母は目薬の木のお茶を、私は古代米をおみやげに買い求めた。(ブログ「いったりきたり日記」より)
 フクジュソウ(福寿草、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草。春を告げる花の代表である。そのため元日草(がんじつそう)の別名を持つ。福寿草という和名もまた新春を祝う意味がある。正月にはヤブコウジなどと寄せ植えにした植木鉢が販売される。花言葉は永久の幸福、思い出、幸福を招く、祝福。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月5日(火)

★水掛けて春水かがやく仏なる  正子
観音様でしょうか、柄杓などで水を掛け、手を合わされたのでしょう。仏様のお顔や肩に滴る水が春日に輝き、その優しく温かなお姿に感動されたご様子が、私たちの心にも伝わってきます。 (小西 宏)

○今日の俳句
蝋梅の向こう甍とひかる海/小西 宏
蝋梅越しに、甍と光る海が見える景色。海辺の景色だが、甍があることによって句が絵画的になった。(高橋正子)

○第21回(立春)フェイスブック句会入賞発表
【金賞】
★枝ゆらし光ゆらして春の鳥/小西 宏
枝に止まった鳥が、枝移りをするのか枝が揺れる。それを見ていると、光も揺らしているのだ。枝を張る陽光に満ちた木、枝移りする鳥が、なんと早春らしいことよ。(高橋正子)
▼その他の入賞作品:
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○蕗の薹

[蕗の薹/横浜日吉本町]

★莟とはなれもしらずよ蕗のたう  蕪村
★ほろ苦き恋の味なり蕗の薹/杉田久女
★蕗の薹おもひおもひの夕汽笛/中村汀女
★猪を炙り蕗の薹まぶしかな/長谷川櫂

 蕗は菊科の多年草で山野に自生する。早春、新葉が出る前に根茎から卵の形をした緑色の花茎を出す。花茎は数枚の大きな鱗のような葉で包まれ、特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれる。花がほうけたものを蕗の姑(ふきのしゅうとめ)という。 学名:Petasites japonicus、Petasites(ペタシテス)は、ギリシャ語の「petasos(つば広の帽子)」が語源で、葉が広く大きいところから。
 蕗の薹(ふきのとうは、蕗の花芽のことで、天ぷらにするとおいしい。花が咲く前の柔らかいうちがベスト(地面から出てきた直後ぐらいの状態のもの)。春の代表的な山菜。花が咲いてから、地下茎を通じてつながっている葉が大きく伸びて広がってくる。(花と葉が別々につく)。この”葉柄”(葉の茎の部分)がいわゆる「フキ」として食用になる。市販されているものはほとんどが「秋田フキ」と呼ばれる、葉柄2mほどの大型のもの。葉自体は円形。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・芽柳」(横浜・四季の森公園)

2月4日(月)/立春

★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
ピアノの鍵盤がすべて押されるのは、調律時くらいでしょうか。で​も、その弦がいちどきに「すべて鳴る」瞬間があります。ピアニス​トも、倍音を聴き、弾かない弦を共鳴させるべく心を砕きますから​、そのように響いたら嬉しいことでしょう。澄んだ陽と程よく乾い​た空気の内に、弦の全てを鳴らすピアノ。こよなく明るい立春です​。(川名ますみ)

○今日の俳句
立春や光と翳と飛ぶ鳥と/矢野文彦
立春となると光がにわかに明るく感じられる。身辺にも光があり翳がある。空を見れば、自由に飛ぶ鳥も。光と翳と自由な鳥が立春の日に明るく詠まれた。(高橋正子)

○立春
★立春の米こぼれをり葛西橋/石田波郷
★立春の海よりの風海見えず/桂 信子

★立春の夜道どこからか水の匂い/高橋信之(昭和四十八年作)
「立春」と聞くと、それだけで気持ちがほぐれる。厳しい冬の寒さと別れ、いよいよ春になる。夜道を歩けば、どこからか水の匂いがする。小川の流れか、水はいち早く温み始めたのだろう。夜道の暗さに水の匂いが春のはなやぎのように感じられる。(高橋正子)

陰暦では、1年360日を二十四気七十二候に分けたが、立春はその二十四気の一つで、陽暦では2月4日か5日、節分の翌日に当たる。節分は冬の季語となっている。節分を境に翌日は春となる。あくまでも暦の上だが、この切り替えがまた、人の心の切り替えにも役立って、立春と聞くと見るもの聞くものが艶めいて感じられる。冬木もいよいよ芽を動かすのだろうと思う。寒禽と呼ばれていた鳥も鳴き声がかわいらしく聞こえる。

★立春の朝は襖の白に明け/高橋正子
★立春の朝のデージー鉢いっぱい/高橋句美子

○梅

[白梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]_[紅梅/横浜日吉本町(2013年2月3日)]

★梅白しきのふや鶴をぬすまれし 芭蕉
★白雲の竜をつつむや梅の花 嵐雪
★とぼとぼと日は入切て梅の花 杉風
★からからと猫のあがるやむめの花 許六
★山里や井戸のはたなる梅の花 鬼貫
★手折らるる人に薫るや梅の花 千代女
★此村に一えだ咲きぬ梅の華 也有
★二もとの梅に遅速を愛す哉 蕪村

 梅の開花前線
 和歌山県南部に位置する月向農園では、1月下旬~2月に梅が開花します。南北になが~い日本列島!あなたの処ではいつ頃かな?梅は百花に先駆けて咲き、桜などに比べ休眠が浅いために開花時期が天候によって大きく左右されます。
 高温・適湿・多照の年は開花時期が早まり、乾燥の激しい年や気温の低い年はやや遅くなります。また、品種によって多少差があります。寒い中、いち早く春の訪れを知らせる梅の花は、1月下旬~5月上旬まで、約3ヶ月間かけて、ゆっくりと日本列島を北上します。

◇生活する花たち「満作・立寒椿・蝋梅」(大船フラワーセンター)

2月3日(日)/節分

★銀色の椿の蕾となっており   正子
毎日椿の冬芽を見て今か今かと待っておられたのでしょう。「銀色」という言葉はよく観察したうえでないと出てこない表現と思います。椿や梅のように晩冬から早春に開く花は春をもたらす趣があり、花を待ち焦がれる気持ちはひとしおです。(多田有花)

○今日の俳句
霜踏んで今日の工事の始まりぬ/多田 有花
土木工事に携わる人たちは、霜がまだ固い内に仕事を始める。バリバリと霜を踏み工事に取り掛かる様子が力強い。その時間帯に現場に来るには、まだ薄暗いうちに家を出たのであろうと思うとなおさらだ。(高橋正子)

○柊挿す(ひいらぎさす)・柊鰯

[柊/横浜日吉本町]               [柊鰯/ネットより]

★かきけむりけり節分の櫟原/石田波郷
★節分の火の粉を散らす孤独の手/鈴木六林男
★節分の豆がひしめく子の拳/高橋信之
★柊さすはてしや外の浜びさし 蕪村
★柊をさすや築地の崩れまで 蝶夢
★猫の子のざれなくしけりさし柊 一茶
★古りし宿柊挿すをわすれざり/水原秋桜子
★烈風の戸に柊のさしてあり 石橋秀野

★宵闇のどこかが匂い豆を撒く/高橋正子
★節分寺五色の幕が風孕み/高橋正子

午後、スニーカーを買いに日吉駅あたりへ出かけた。スニーカーは、同じものばかり履くので、1年半ぐらいで破れてしまう。アーバントラッドという、オーソドックスなのを一足買った。日吉まで歩いて出かけたが、途中日吉2丁目の金蔵寺の境内を通り抜けていった。お寺には節分のためか、五色の幕が張り巡らされていた。豆撒きがあるにかなとも思ったがしずかだった。日吉からの帰り、また境内を通ったが、4時半ごろ、五色の幕は外されて、いつもの寺になっていた。豆撒きをした気配はなかった。

 昔は四季の移り目をそれぞれ節分といったが、今は立春の前日だけが節分と呼ばれる。冬の節から春の節に移る分岐点。この夜。寺社では悪魔を追い払い、春を迎える意味で追儺が行われる。民間でも豆を撒いたり、鰯の頭や柊を戸口に飾ったりする。
節分の夜の豆まきは、特に幼い子どもたちにとっては楽しい行事。なんしろ、悪い鬼を豆をぶつけてやっつけるのだから。「福は内、鬼は外」の「鬼は外」は、大人には闇にひそむ姿の見えない鬼へ向かっての礫投げ。戸口に飾る鰯の頭、柊も庶民らしい追儺のしつらい。「鰯の頭も信心から」ということわざもあるが、これはどこから出てきたのか。
 柊挿す(ひいらぎさす)は、節分の夜、魔除(まよ)けのために、焼いた鰯(いわし)の頭を付けたヒイラギの枝を門口に挿し、臭いものや鋭くとがったもので悪魔払いをする風習。この、焼いた鰯の魔除けを「やいかがし」と言い、「焼き嗅し」が語原と言われている。

◇生活する花たち「満作・立寒椿・蝋梅」(大船フラワーセンター)

2月2日(土)

★白木蓮冬芽の銀の日にまぶし   正子
温かな鱗片にくるまれ空へ向く白木蓮の冬芽、数多の冬芽の中で一際大きな存在感です。降り注ぐ日差しの中で、銀色に輝く冬芽の眩いばかりの明るさに、心和み、近づく春を感じます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)

○老鴉柿(ロウヤガキ)

[老鴉柿/東京・小石川植物園(2013年1月20日)]

 小石川植物園(2013年1月20日)
★寒天に散らばり朱し老鴉柿/高橋信之

1月20日、大寒であったが、信之先生が小石川植物園に花を探しに出掛けた。梅はまだであるし、大方は芽である。土佐水木の冬芽の明るい茶色に、土佐水木の淡い黄色の花が思い浮かんだ。冬の植物園でいちいち芽を探すには広すぎるのではと思われた。2008年の4月19日の小石川植物園吟行は、桜が散って、一面に桜蕊が降り重なって、踏めばやわらかなクッションとなって、足裏に応えてくれた。その記憶が今蘇った。

 小石川植物園(2008年4月19日)
★やわらかに足裏に踏んで桜蘂/高橋正子

ロウヤガキ(老鴉柿、学名:Diospyros rhombifolia)は、中国原産のカキノキ属の植物。ツクバネガキ(衝羽根柿)とも呼ばれる。葉は丸味を帯びた菱形で、3月から4月頃に花を着ける。液果は小さく尖った楕円形状で、熟すと橙に色付く。株は雌雄異株で、着果には雄株が必要である。渋柿で食用には向かないが、盆栽や庭木として広く用いられている。日本への導入は遅く、第二次世界大戦中に京都府立植物園初代園長である菊地秋雄が持ち帰ったとされる。

▼東京大学・小石川植物園:
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/

◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)

2月1日(金)

★枯木立星のあおさに揺れもせず   正子
寒さの中,あおあおとした星座を見つめる時、しんとして枯木立も微動だにしない,冬の静けさです。 (祝恵子)

○今日の俳句
今の音ぽんがしの音冬広場/祝恵子
がらんとなった広場に「ぽん」と弾ける音がした。あの音はポン菓子を弾かす音。急に広場がいきいきと温かく感じられた。冬の楽しさがある。(高橋正子)

○切山椒
★わかくさのいろも添えたり切山椒/久保田万太郎
★切山椒買ってふたたび雪に出る/高橋正子
★やわらかに紅白そろう切山椒/高橋正子

 昨日、1月31日に鎌倉の鶴岡八幡にお参りし、境内にある神苑ぼたん庭園を信之先生と訪ねた。正月牡丹(寒牡丹)が見ごろで、写真に撮った。帰宅して早速その写真に俳句を付けてフェイスブックにアップした。帰りに、鎌倉駅近くの長島屋で 切山椒を買った。

 「正月用の餅菓子。しん粉に白砂糖を加え、水でとろとろ加減にこねて、山椒の実を熱湯に浸した汁を少量混ぜ、蒸してから臼で搗いたものを、小さく蒸しって、さらにもう一度蒸しなおしたものを、長方形に切った餅の一種。食用紅で淡赤色に染めたものと、白いのをつくるのが普通で、ほのかな山椒の香味が喜ばれる。蒸羊羹に添えて出したりする。」(角川歳時記)
 歳時記にこうはあるものの、切山椒を初めて食べたのは、横浜に越してきて初めての正月だと思う。だから、6年ほど前。切山椒を売る店も少なくなったようで、年中売られているのは、鎌倉の長島屋だけらしい。年中といっても夏場あるかどうかわからないが。鶴岡八幡様に初詣に出かけた折にお土産で買った。その日は雪だった。雪の寒さとともに切山椒が思い浮かぶ。買ってかえって食べると、まずいとも、美味しいとも言えないような味。たしかに紅白そろって長方形に切られていた。風邪引きの予防になるらしい。味がほんとうによくわからないので、もうひとつ、もうひとつと食べているうちに、この奇妙な味に病みつきなった。しばらく鎌倉に行っていないので、節分の前のこの寒さに切山椒を食べてみたくなった。浅草では2月に売られると聞いた記憶がある。

○立寒椿

[立寒椿/大船フラワーセンター]

★立寒椿花の真中に日を受けし/高橋正子
★寒椿というや雪の公園に/高橋正子

 寒椿(カンツバキ)は、ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、山茶花(サザンカ)を母種としたカンツバキ群の園芸品種である。枝が横に広がる傾向がある。これに対して枝が上に伸びるものは、立寒椿(タチカンツバキ)といって区別をする。学名:Camellia x hiemalis cv. Tachikantsubaki(=Camellia sasanqua cv. Hiemalis)
 サザンカとカンツバキの見分け方。(「ガーデニング – 教えて!goo」より): どちらもかなりの近隣種ですので、これですという区別は難しいですね。というのも寒椿には二種類の系統があり、現在の主流は本来の寒椿(中国原産)とサザンカの交雑種である「寒椿群」という系統が一般に流通しています。交雑種ですのでどちらの血も流れていますのでますます見分けにくくなっているのは仕方がないことですね。さらに「寒椿群」はサザンカの一種として認知されています。 これはその学名からも理解できます。「Camellia sasanqua」です。この寒椿群はすべて立ち性(椿系)で通称はあなたがいうように立ち寒椿と言われています。 その品種の一つに「勘次郎」があります。一方、中国原産の「カンツバキ」は学名を「Camellia hiemalis」という冬咲きという名が学名についているとおり冬咲きで、その特徴は矮性であることです。種類は少なく、主に「獅子頭」というものが出回っているようです。 さらにこの「獅子頭」が前述した「寒椿群」のもとになったという複雑さがあります。つまりサザンカもカンツバキも同じ仲間と認識したほうが間違いありません。その違いはと言われれば、次のようにまとめることができます。<花の咲く時期>サザンカ→寒椿群(勘次郎)→カンツバキ(獅子頭)。*注意:サザンカにも春咲きが例外として存在します。<樹木の特徴>*サザンカ・寒椿群は、立ち性で、別名タチカンツバキ。*カンツバキは、矮性。サザンカと椿(春咲きの一般種)との顕著な違いは「毛の有無」です。 サザンカにのみ子房と新葉の葉と枝に微毛があります。これが見分け方ですね。

◇生活する花たち「寒牡丹」(鎌倉・鶴岡八幡宮)