1月1日(日)


賀正 2012年元旦

あけましておめでとうございます。本年も高橋正子の俳句日記をよろしくご愛読ください。

○今日の俳句①(ツィター1月1日投句)
★元旦や朝日棚田へ溢れおり/小口泰與
元旦のあふれる朝日をまず棚田に眺める。上州の棚田であろうか。すがすがしい元旦を詠んでいる。

○今日の俳句②(気がるに句会1月1日投句)
★富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)
★元日の大空朝日で青々と/高橋秀之
元旦の空が大きく、まっさらな朝日で青い。「朝日で青々と」が秀之さんらしく、印象に残る空である。(高橋正子)

○去年今年
★去年今年貫く棒の如きもの/高濱虚子
「去年今年」の季語であまりにも有名になった句である。虚子は、客観写生を唱えたが、虚子自身は、大変主観の強い人間である。去年が今年となっていく時を「棒の如きもの」と主観の強さで把握した。太い棒のような時は、虚子の一貫した人間の太さや力とも言えよう。(高橋正子)

★去年今年鐘の余韻のなかにおり/高橋正子
除夜の鐘を日吉本町の古刹金蔵寺で撞きました。撞いた後時計を見たら11時59分でした。鐘の音は、予想以上によい音で、家康親子が寄進した鐘にやはり、さすがと思いました。金蔵寺では、職場の友人二人にあって、これも想定外でした。(高橋正子)

○元日
★せせらぎの砂に日差してお元日/高橋正子
浅瀬の水際に佇み、迎える新年。流れゆく水はもちろん、その岸の砂、一粒一粒に日が差していることに、慶びを感じます。見るもの全てがあらたまり、清らかに想われるお元日です。(川名ますみ)

○初詣
★子を抱いて石段高し初詣/星野立子
初詣に鎌倉八幡へでも出かけたのであろうか。子どもを抱いて上る石段が特に高いと感じられる。健やかに成長した子の重さゆえの「高し」であるだろう。晴れ着の子を抱く新春らしい光景である。(高橋正子)

○若水
★若水のくらきを汲んで手を清む/高橋正子
初詣は氏神様である駒林神社に行きましたが、神社の坂の下から、拝礼の列ができて、30分ほど並んでやっとお参りすることができました。参拝のあと、お神酒をいただき、お札を買って、おみくじを引きました。学生風の若い人たちが大勢いて、その人たちらしい話題が漏れ聞こえてきました。(高橋正子)

○年頭
★年頭躍筆墨条のみの白馬の図/中村草田男
正月の床を飾るに相応しく、健康で、力強い句である。俳句の短い詩形、それに白と黒の単純さを生かした。
俳句のよさである。(高橋信之)

○嘱目吟
◎高橋信之5句
元朝の零時吾も鎮守の杜に
思うことあり夜空の遠き去年今年
元日の白く大きな日が昇る
元日の日が昇る吾の真っ正面に
初晴にひとり喜びいる朝よ

◎高橋正子6句
一つ聞き二つ目聞きゆく除夜の鐘
石段に水打ってあり初詣
新年となりしや巫女の薄絹も
かがり火に開きて読める初みくじ
ともる灯にそれぞれ立ち読む初みくじ
水仙の向きを変えみて正月花

○駒林神社

狛犬は、飯嶋吉六の名品といわれている。石工飯嶋吉六については、下記のサイトが詳しい。
http://shuuun.mokusiroku.com/ship_history/tanbou-1.html
境内の石垣は、江戸城外濠に用いられていた石である。
http://soubouwalk.exblog.jp/3744150

◇生活する花たち「侘助・千両・南天」(横浜日吉本町)

12月31日(土)



★大年の山河も晴れを賜りし  正子
大年のこの日にあって、恵まれた晴天が、この上なく清々しく晴れやかに感じられます。明るく輝かしい自然の大らかさに、一年の末日の深い感慨とともに、来たる年への明るい希望もあふれます。(藤田洋子)

○今日の俳句
★年の瀬の遮断機上り街動く/藤田洋子
遮断機が上ると一斉に車が忙しく動き出す。年の瀬の街の風景をよい視点でとらえた。

○大晦日/大年、大つごもり、大三十日
★大年の日落ち流水尚見ゆる/中村草田男
終わりのない自然の営みを見た。自然の生命を読み取った。(高橋信之)

★ここでも子等笑う大晦日の湯舟/高橋信之
松山市内に住んでいたころ、まだ銭湯があちこちにあった時代の句。「ここでも」は、「銭湯でも」である。昼間元気に笑いころげて遊び、大晦日はなおさらのこと、子どもたちはお湯をかけあったり、顔を湯にくぐらせたり、屈託なく笑う。そういう明るいにぎやかさが楽しい。(高橋正子)

○樋口一葉作「大つごもり」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000064/files/388_15295.html
映画「にごりえ」は、樋口一葉の短編小説『十三夜』『大つごもり』『にごりえ』を原作とするオムニバス映画で、キネマ旬報日本映画ベスト・ワン、毎日映画コンクール日本映画大賞、ブルーリボン賞作品賞などを受賞した。

○除夜/年の夜
★年の夜やめざめて仰ぐ星ひとつ/石田波郷
波郷は、子規と同じ病に臥し、その生涯を送った。その一生は、すぐれた句を残し、ただ俳句のために生まれ来たかのようであった。(高橋信之)

○金蔵寺/除夜の鐘
★除夜の鐘闇はむかしにかへりたる/五十嵐播水


梵鐘は、江戸幕府初代と二代将軍である徳川家康・秀忠父子により寄進されたものである。大晦日の夜、12時近くなると百八の鐘が鳴り響く。

詳細はここをクリックしてご覧ください。

◇生活する花たち「侘助・水仙・万両」(横浜日吉本町・金蔵寺)

12月30日(金)

★枯れ道の白くかがやく固さ踏む  正子
作者身辺のささやかな行為ではあるが、そこに日常生活の力強さがある。作者内面の強さを評価したい。(高橋信之)

○今日の俳句
大雪の朝の光と鳥の声と/矢野文彦
生き生きとして、かがやきのある句。目に大雪の朝のまぶしい光、耳に鳥のはずんだ声。こういった世界が目の前にあるよろこび。

○年逝く/年の瀬
ゆく年の硯を洗ふ厨(くりや)かな/三好達治
年賀状など書くのに使った硯であろうか。日常的にも筆がまだ使われていた時代である。私も、硯をどこで洗おうかと思うと、厨となるのだが、硯を洗ってさっぱりとして年をゆかし、新年を迎える。そういう心持が読み取れる。

年の瀬の遮断機上り街動く/藤田洋子
遮断機が上ると一斉に車が忙しく動き出す。年の瀬の街の風景をよい視点でとらえた。(高橋正子)

年逝かす蘭の華やぐ丈見上げ/高橋正子
一日一日と慌しくなる年の瀬ですが、花茎を高く上げて咲く見事な蘭の花々に、心和み明るくなります。その華やかな存在感に、過ぎ行く年の感慨と、来る年を迎える新たな喜びも感じられます。(藤田洋子)

○29日に、ブログを読んでくださる皆様へ、年末のご挨拶を済ませたので、正月が来るまでの30日、31日は、まるでこの世を辞して、千里を走る靴をはいて、あの世へいったような気持ちとなっている。また、正月には帰ってきますが、なかなか快適な年の瀬です。
昨日信之先生が、白万両、南天の実ばかりの小束、満開のヒアシンス、それに水仙、千両、ひめ南天の花束を買ってきて、狭い部屋を満たしている。シクラメンの鉢も取り込んで咲くのを待つばかりとなっている。

○千両
花束の中より散らばる実千両/平田弘

千両は生家にはなくて、砥部の家の玄関脇に赤と黄色を植えていた。植木屋さんの勧めで植えたと思う。万両は日当たりがいらないが、千両はいると聞いている。間違いかもしれない。正月花に赤い千両を一枝切って入れたいと思うが、一枝切ると間が抜けたような姿になるので、正月花には花屋で買っていた。先日東海道53次の戸塚から藤沢まで歩いたときには、お寺などに千両をあきるほど見た。こちらのお寺は千両がお好きなようだ。

◇生活する花たち「南天・ヒアシンス・白万両」(横浜日吉本町)

12月29日(木)

★オーバーの肩の落ちしが身に安し  正子
ゆったりとしたオーバーが暖かく身体を包んでくれます。寒い冬も心はほかほかしてきて安らぎます。(井上治代)

○今日の俳句
花束の中より散らばる実千両/平田弘
正月用の花束であろう。実千両も束のなかに。その花束より千両の実がこぼれて散った。その驚きと、その可憐な実の鮮やかさが印象的で、心が軽い。

○2011年回顧
▼高橋信之先生(花冠創刊者)喜寿お祝/5月28日
http://blog.goo.ne.jp/kakan115/
▼インターネット俳句センターアクセス百万回達成/8月24日
http://kakan.info/km/2011/11/10.doc
▼イギリス俳句の旅/9月19日~26日
http://kakan.info/01/c/eng2011/
▼花冠俳句フェスティバル2011in大阪/11月26日~27日
http://blog.goo.ne.jp/haiku_festival

○高橋正子の俳句日記をお読みいただき、ありがとうございます。このブログが連続ランク入りを果たすほど多くの皆さまお訪ねいただき、感謝しています。「生活する花たち」にも、「花に表情があって、きれいだ」とおほめいただきました。花の表情をとらえることが、花を撮るたのしみとなっています。来年もいろいろと歩いて花を見つけたいと思います。

今年は、花冠では、ツイッターとフェイスブック句会を開始し、5月には信之先生の傘寿のお祝いがあり、8月24日には、インターネット俳句センターアクセス百万回を達成した。

私的には、震災の翌日長男の結婚式があった。9月には句美子とイギリスへ出かけ、11月には琵琶湖、大阪へと出掛けた。12月には、東海道53次の戸塚藤沢間10キロを歩いた。ブログに載せる「生活する花たち」もカメラを新しくして、少し写すコツがわかってきた。クリスマスには、iPad2をプレゼントされたが、これが前進の一歩かもしれないと楽しみにしている。

皆さま、よいお年をお迎えください。

○百両
冬になると、赤い実をつけた植物が多くなる。庭にあるものでは、万両、千両、百両、十両、と揃って見られることもある。こういう我が家の庭(四国に住んでいたころのことだが)にこれらが全部そろっていた。十両はやぶこうじのことで、木の下の苔が生えているところに植えていた。もとは、山に出かけてとってきたものを植えたが、丈が低くて、地面に近くに実を付ける。普段着感覚の実物で冬の庭が楽しくなる。
横浜当たりの山には、万両がよく生えている。千両は山で見かけたことはない。百両もない。万両、千両、十両があれば、あとは、百両があればそろえたいという人情に駆られて、植木屋さんにもってきてもらった。

◇生活する花たち「百両・石蕗の花・白万両」(横浜日吉本町)

謹賀新年2012年元旦

俳誌花冠 高橋正子

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★初明りしたまいて慈母観音像/川本臥風
「初明り」という美しい言葉で新年の清らかさを教えてくれています。また「寒清し床に白磁の観世音」という句もあって臥風先生の心の向かう先が念仏の世界で、これは先生の身ほとりにある世界のことでした。(高橋正子)

★年頭躍筆墨条のみの白馬の図/中村草田男
正月の床を飾るに相応しく、健康で、力強い句である。俳句の短い詩形、それに白と黒の単純さを生かした。俳句のよさである。(高橋信之)

★せせらぎの砂に日差してお元日/高橋正子
浅瀬の水際に佇み、迎える新年。流れゆく水はもちろん、その岸の砂、一粒一粒に日が差していることに、慶びを感じます。見るもの全てがあらたまり、清らかに想われるお元日です。(川名ますみ)