12月18日(日)

  藤沢
★栴檀の実に藤沢の白き雲  正子
「金色の実が青空に散らばったようにくっきりと見える。栴檀の実は何時も空にある。」との先生のお言葉は大いに納得致します。御句から栴檀の実が白い雲の上に有ると云う大きな木と雄大な景色に心が開けます。(佃康水)

○今日の俳句
出漁や妻に焚き火の温み置き/佃 康水
出漁まで夫婦で焚火をして体を温めていたのだが、体も温もって、妻を残して船音もかるく漁に出て行った。漁師夫婦の情愛が焚火をとおして温かく詠まれている。

○俳句(東海道53次/戸塚宿~藤沢宿)

戸塚
清源院長林寺
水仙のまだ咲かぬ花芭蕉句碑
水仙の二三花朝日の清源院
 神社
狛犬の阿吽愉快や散銀杏

大坂・原宿
ブラマンジェ食べてここより冬の坂
大坂の坂の上りを冬日浴ぶ
冬の日に芒立てるはよかりけり
冬晴れの長き坂なり上りけり
切り通しの崖下冷える背が冷える
栴檀の実に藤沢の白き雲
徒歩旅にはやも椿の赤い花
富士山はあちらかここに枯すすき
冬がすみ富士のこちらの山いくつ

遊行寺坂落葉たまるも切りもなし
遊行寺坂日に透けいたる冬黄葉
きらきらと靴かがやせ冬の坂

藤沢宿
 境川
冬川の来る水来る水ささら波
遊行寺橋を架けて冬川流れたり
本陣跡と札のみありて十二月
旧き家開かずの窓に冬日照り
山茶花の一樹咲き添う古き壁
ひとすじの門前町の十二月
アイリッシュコーヒー泡から飲んで温かし

◇生活する花たち「椿・水仙・野ぶどう」(東海道53次/戸塚宿~藤沢宿)

12月17日(土)

 石鎚山
★雪嶺の座りし空のまだ余る  正子
四国の屋根、山岳信仰の山として知られる霊峰石鎚山。雪に覆われ、より美しく崇高な姿となる山容に、畏敬の念を抱きます。その雪嶺の上、冴えわたる冬空の視野の広やかさに、心も澄みわたります。(藤田洋子)

○今日の俳句
音立てて山の日差しの落葉踏む/藤田洋子
「山の日差しの落葉」がいい。山の落葉にあかるく日があたり、そこを歩くとほっこりとした落葉の音がする。

○東海道五十三次を歩く(平塚宿~大磯宿)
16日の午後を信之先生が一人旅に出かけ、宿場の写真をいただく。

  平塚宿
 宿場本陣銀杏黄葉の振りしきる   信之
  大磯宿
 海が近くにあるらし冬の空立てて  信之

▼平塚宿京方見附之跡

 旅人の宿泊の少なかった平塚では、日暮れにはまだ間があって通り過ぎようとするのを、「大磯へは、あの高麗山を越えなければ行けません。これから越えるのは大変です。」と言葉巧みに無理やり宿泊させたという話が残っています。平塚の名は、「吾妻鏡」に「範隆寺平塚」「黒部宮平塚」とあるのを初見とし、宿の形成は鎌倉期にさかのぼる。

▼大磯宿南組問屋場跡

 大磯宿は、神奈川・保土ケ谷・藤沢・平塚・小田原などと並んで最初に設置された宿場の一つで、江戸から八番目の宿場、日本橋からの距離は65・8㎞でした。
 南側の海と北側の山に挟まれた細長い町並みで、宿場としてはどちらかといえば、寂れた宿場の一つであったようです。その主な理由は、江戸からの旅人は翌日の箱根越えに備え小田原にまで足を伸ばしてしまい、又、箱根を下ってきた人は、酒匂川の渡しを前に、その疲れを休めるために小田原に宿泊してしまうことが多かったからだと言われています。

▼大磯海岸の入り日

大磯ビーチは、日本での海水浴場発祥の地として知られている。

12月16日(金)

★冬オリオン杉の木立に懸かりたり  正子
冬の夜空にひときわ明るくひかる星座・オリオン。今、杉の木立の天辺に懸かって見えるという。群青に澄んだ空にきらめくオリオンは杉の木立を得ていっそう輝きをますようです。 (小川和子)

○今日の俳句
冬椿蕾結べりきっぱりと/小川和子
冬椿の蕾の固さが凛とした空気に「きっぱりと」した姿を特に印象付けている。

○東海道五十三次を歩く(戸塚宿~藤沢宿)
戸塚から藤沢宿まで約10キロほどの東海道を信之先生のお伴で歩いた。靴は、踵から着地できるよう設計されたウォーキングシューズ。この靴が頼りとなる。手袋と帽子、自分で編んだモヘアの小さいマフラー、いつものポーターの革リュックという出で立ち。朝8時過ぎに家を出て、グリーンライン・ブルーラインを乗り継いで、戸塚まで。結構乗っている時間がながいので、「東海道492キロ」という歩き方の本を読む。
戸塚の駅に降り立って、吉田茂を怒らせた「開かずの踏切」を渡る。わかりにくいのだが、右手にいって、家康の側室のお万の方が建てた清源院長林寺へ。奥のほうに芭蕉の句碑があったので、写真にとる。万両は、人の背丈ほどありそうなのがある。黄色い千両と赤い千両も。水仙は、冠のようなところも白い水仙があった。純白の水仙である。
 観るほどのものはなく、15分ほどいて東海道となる道を行く。写真に収められる花があれば撮るつもりである。道端に、案内標識が出ていて、澤辺本陣跡とか、上方見附跡、お軽勘平の碑、松並木跡などがあった。
 藤沢宿に近づくと、遊行寺がある。遊行寺は通称で、清浄光寺(しょうじょうこうじ)といい、時宗総本山の寺院。境内には、樹齢660年、樹高31メートルの大銀杏があった。一遍上人の念仏する姿の像もある。
遊行寺を過ぎて、藤沢宿の本陣跡あたりを見て、藤沢宿の町並みを見る。紙問屋らしい古い造りの家が残っていたり、老舗の豊島屋という「松露羊羹」で知られる店もある。お茶屋には、古い茶壷などもあった。昔ながらの商いの店がこじんまりと並んでいる通りである。
この通りが藤沢本町通りで、その端にある小田急の藤沢本町近くの喫茶店で、遅い昼食をとり、きょうの東海道の歩き旅の終わりとした。

▼清源院芭蕉句碑(戸塚宿)

清源院は、徳川家康の側女・お万の方によって、元和6年(1620)に開基され、境内には、松尾芭蕉の句碑「世の人の見つけぬ花や軒のくり」、洪鐘、徳本上人の名号塔、心中句碑、お万の方の供養碑等がある。

▼東海道松並木(戸塚宿~藤沢宿)

ところどころに旧東海道を偲ばせる松並木がある。藤沢宿遊行寺近くの坂に松並木後の碑が建てられている。

▼遊行寺大銀杏(藤沢宿)

清浄光寺(しょうじょうこうじ)は、神奈川県藤沢市にある時宗総本山の寺院。遊行寺(ゆぎょうじ)の通称の方が知られている。境内には、樹齢660年、樹高31メートルの大銀杏がある。

12月15日(木)

★跳躍の真紅の花のシクラメン  正子
シクラメンの花は、翼にも炎にも似て、美しいダンサーのようです。特に真紅のそれは、この真冬によくぞ咲いてくれた、と拍手をおくりたくなるほど。その姿から「跳躍」という言葉を見つけられた、正確さに驚きつつ、共感いたします。(川名ますみ)

○今日の俳句
冬晴れて登ることなき山のぞむ/川名ますみ
冬晴れに高い山が望める。その山に自分は決して登ることはできないが、その山の姿のすばらしさに、登ることはかなわないが、せめて心だけでも登ってみたい思いや憧れがある。

◇生活する花たち「椿・水仙・栴檀の実」(東海道53次/戸塚宿~藤沢宿)

12月14日(水)

★南天に日はうららかに暮れにけり  正子

○今日の俳句
水仙の目線にあれば香りくる/祝恵子
目線の位置から、すっと真っ直ぐ水仙のいい香りが届く。香りがたゆたわず、すっと真っ直ぐ届くところが、水仙の花らしい。

○南天の実
冬が来ると、縁側にふれそうに南天の実が色づいた。その南天は私の記憶では、一間(1.8メートル)ぐらいの高さで、大きくもならなかった。築山のほかの木が剪定されても南天はそのままで、正月用にその実も葉も残されていた。年末のごみを焼くけむりにも巻かれていた。これは、広島の生家の話であるが、南天はどの家にもある。「難を転ずる」の意味で植えられるらしい。松山の家の庭隅にも、植木屋さんが勝手に持ってきて植えてくれて、正月料理や赤飯にその葉を飾りに使ったりした。一枝切って、正月花にも使った。今住んでいる横浜の日吉本町を散歩すると、農家の藪のようなところにも木の姿は乱れているが、たわわに実を付けている。もう年末だな、もうすぐ正月が来るな、と思う。そう、正月が過ぎて、雪が降る日があると、赤い実が雪を冠り、かわいいのだ。雪うさぎの目にもなったりする。墨彩画に書かれたものも実だけが赤くて面白い。書きだせばきりがないほど、南天は身近にある。

◇生活する花たち「木瓜・花八つ手・南天の実」(横浜日吉本町)

生活する花たち 冬①

生活する花たち 冬①


○現代俳句1日1句鑑賞

12月31日
★去年今年貫く棒の如きもの     高濱虚子

「去年今年」の季語であまりにも有名になった句である。虚子は、客観写生を唱えたが、虚子自身は、大変主観の強い人間である。去年が今年となっていく時を「棒の如きもの」と主観の強さで把握した。太い棒のような時は、虚子の一貫した人間の太さや力とも言えよう。(高橋正子)

12月28日
★身にまとふ黒きショールも古りにけり      杉田久女

防寒にショールをまとう。ショールは、防寒の用だけでなく、気に入ったお洒落なものをまとう楽しみもある。買ったときは華やかに身を包んでくれたショールも、年々使って古びてしまった。ショールが古くなることは、つまり自身から、若さや華やかさが失せることでもある。うだつの揚がらない田舎教師の妻として、境遇を思う悲哀がある。(高橋正子)

12月27日
★許したししづかに静かに白息吐く     橋本多佳子

許しがたく憤ることがあって、昂ぶっていたが、考え、時間が過ぎてみると、次第に「許したし」の心境に落ち着いてきた。憤りを静めるように、意識して静かに吐く息である。寒い折、その息は白くなって、自分の目に、静まって行く気持ちが確かめられる。多佳子らしい感情が出ている。(高橋正子)

12月26日
★冬霧やしづかに移る朝の刻        谷野予志

霧に包まれた冬の朝の静かな時間を、作者自身の静かな行為の中で詠んでいる。霧が深く立ち込める情景は、空間も時間も動かないというほどに、「しづかに」動いているのである。(高橋正子)

12月25日
★足袋つぐやノラともならず教師妻     杉田久女

久女は女子高等師範学校を卒業した秀才であるが、絵描きの田舎教師の妻となった。夫の将来に夢を託していたが、凡々と暮らす夫に不満が募り、そうかといってイプセンの「人形の家」の主人公ノラのように家を飛び出していくこともせず、もんもんとして、足袋の破れをつぐような生活を送る日もあった。女性の自立を問う句であることに、今も変わらない。(高橋正子)

12月24日
★冬の海越す硫酸の壺並ぶ        谷野予志

船に載せられて運ばれる工業用の硫酸だろうが、硫酸とは、ただならぬ。その硫酸が壺に入れられて並べられているのを目にした。冬海が荒れれば、硫酸は壺のなかで揺れる。いかなる事件が待ち受けているかもしれない危険がある。そういったことを予測させて、ミステリーが始まるような鋭い句。(高橋正子)

▼現代俳句1日1句鑑賞
http://blog.goo.ne.jp/kakan2011

12月13日(火)

★落葉踏み階踏みてわが家の燈  正子

○今日の俳句
冬鳥の声澄み渡る大欅/後藤あゆみ
冬鳥が大きな欅の枝で、のびやかに歌っている。声も澄みわたるほどに。大欅なればこそ、の世界。

○枇杷の花
枇杷の花はうす茶色の蕾がはじけて、花が開くと芳香が漂う。絹のような匂い、気品のある匂いである。冬の花では、水仙も気高い匂いがするが、枇杷のほうがしっかりと匂う。自転車で通りすがるときも、自転車を降りて、そばに寄ってみたりする。魚の骨のような葉も文人趣味といおうか、墨絵などに書けば面白いが、年も押し迫ったころにこの枇杷が咲くのがなんともよいのである。

◇生活する花たち「木瓜・山茶花・枇杷の花」(横浜日吉本町)

12月12日(月)

★孟宗の冬竹林に日がまわり  正子
孟宗竹は太く、節と節の間が真竹に比較して短い。そんな竹林に、軌跡が低い冬の陽が射してきて孟宗竹の半分を照らし、まっすぐな竹の影を美しく伸ばす。冷え冷えとした冬の竹林も陽が射すとなんだかほっとする気持ちになる風景となる。 (古田敬二)

○今日の俳句
山茶花や軒端の薪の真新し/古田敬二
山茶花が咲き、軒端には真新しい薪が積み重ねられて、本格的な冬を迎える準備が整った。「薪の真新し」がさっぱりとしている。

◇生活する花たち「ウィンターコスモス・ローズマリー・花水木の実」(横浜日吉本町)

12月11日(日)

★木蓮の冬芽みどりにみな空へ  正子

○今日の俳句
夕影に折れて破れて枯蓮/黒谷光子
蓮田か蓮池であろう。蓮の茎が折れ、葉が破れて、夕影にシルエットのようになっている。枯れたり破れたりした姿に、決然としたところがある。

◇生活する花たち「イソギク・石蕗の花・万両」(横浜日吉本町)

12月10日(土)

★大根の純白手中に面取りす  正子
調理する前の純白の大根、新鮮でみずみずしい旬の冬野菜を手に、季節の喜びを感じます。丁寧に面取りされた大根は、より仕上がりもよく、美味しさも引き立ちます。お料理上手な正子先生の、細やかなお心配りも感じられます。(藤田洋子)

○今日の俳句
南天の実と実の触れていて眩し/藤田洋子
南天の赤い実がびっしりと付き、実と実が触れ、互いに輝きあうようだ。(高橋正子)

◇生活する花たち「山茶花・木瓜・栴檀の実」(横浜日吉本町)