8月28日(日)

★稲穂田の隅にごぼごぼ水が鳴り  正子
稲の花が咲き、実がつき始める頃、稲穂は水をたくさん吸い上げて成長します。この辺では出穂水(でほみず)と言って、どの稲田からも水が迸る音がします。水源からそれぞれの稲田に送られる水は、いずれも田の隅の枡の中に一旦落とされ、それがごぼごぼと音を立てて稲田に溢れていきます。稲穂田の水の音を耳で目でよく捉えられて「隅にごぼごぼ」と生き生きと詠まれた一句と思います。 (後藤あゆみ)

○今日の俳句
葛あんに透けて冬瓜薄みどり/後藤あゆみ
「葛あんに透けて」がこの句の要。冬瓜が、料理され、葛あんをかけられて、いっそう美しく、涼やかな薄みどりとなった。(高橋正子)

○葛の花

 葛咲けり一つの花のその奥にも  正子

 葛の葉は、初夏をすぎるころから生い茂る。大きな木を覆いつくし、山を行くバスの窓からは、山肌の崖に垂れ下がる。至るところに茂っているが、花は、と思って見ても花が見つからないことが多い。花がつくものには、たくさん葛の花が咲き、地面に紫の花が落ちこぼれて、道の埃を冠っていることもある。八月二十八日、中山の四季の森公園に出かけた。朝のうちは、公園は新涼の風が吹き抜け、水引草、萩、ヤブランな
どが咲き始めていた。コスモス畑には、準備中の立て札が立っている。四季の森公園の北口から入り、紅葉谷を南口へと抜け、公園を出て、中山中学校へ通日広い道路を下った。この道は街中と違って、野の風情があって好きな道だ。葛の蕾を見つける。花は一週間ぐらい先かと下ると、花盛りの葛に出会った。花房も長く、野生の力を発揮している。芳香がする。写真に撮って歩き始めたが、引き返して句美子へのお土産と、私が匂いを忘れないようにするために一花摘んだ。葛の反対側のガードレールには、芒が穂を開いている。また少し下ると、酔芙蓉がわずかにピンクに変わり始めていた。丘の家に庭におみなえしがある。見上げて、そらの白雲を入れて写真を撮った。葛が咲けば、おみなえしも、芒も、酔芙蓉も咲くのである。

◇生活する花たち「百合・女郎花・睡蓮」(横浜・都筑中央公園)


コメント

  1. 後藤あゆみ
    2011年8月28日 12:46

    お礼とコメント
    今日の俳句に冬瓜の句をおとり上げ下さりありがとうございました。偶然冬瓜のカットしたものを買って来たところです。

    ★稲穂田の隅にごぼごぼ水が鳴り  正子
    稲の花が咲き、実がつき始める頃、稲穂は水をたくさん吸い上げて成長します。この辺では出穂水(でほみず)と言って、どの稲田からも水が迸る音がします。水源からそれぞれの稲田に送られる水は、いずれも田の隅の枡の中に一旦落とされ、それがごぼごぼと音を立てて稲田に溢れていきます。稲穂田の水の音を耳で目でよく捉えられて「隅にごぼごぼ」と生き生きと詠まれた一句と思います。