7月29日(日)

★わが視線揚羽の青に流さるる  正子
ふと、色鮮やかな揚羽蝶との出会い。目に追う揚羽の、美しく爽やかな青の流れです。夏の日差しの中、揚羽の生命の輝きに、揚羽の青の軌跡がいっそう鮮明に印象付けられます。(藤田洋子)

○今日の俳句
山の雨上り茅の輪の列に入る/藤田洋子
山の雨が、一句の雰囲気を作り出し、夏越し祭の茅の輪の緑が生き生きしている。茅の輪をくぐる順番の列に入って、無事に夏を越せることを祈る。(高橋正子)

○えぞぎく(翠菊・蝦夷菊)

[蝦夷菊/横浜日吉本町]

★蝦夷菊に日向ながらの雨涼し/内藤鳴雪
★独りゆきて吾子蝦夷菊を買ふほどに/星野立子
★蝦夷菊や老医のことばあたたかく/柴田白葉女
★翠菊や妻の願はきくばかり/石田破郷
★蝦夷菊や犬に牽かれて人走る/石原早苗
★蝦夷菊を力強きと見て思う/高橋信之 
 
 蝦夷菊を最近はあまり見ない、と思ったら公民館の少しばかりの空き地に咲いていた。アメリカ芙蓉、向日葵、キンレンカなどと混ぜて植えてあって、男性の老人の方がひもで結わえたりして手入れをしていた。そして思い出したのが、暑い盛り、祖母に言われて仏様にあげる花に蝦夷菊をよく切った。暑いのですぐに茎が傷む。少しでも長くもたせようと、水は冷たい井戸水を汲んで挿した。蝦夷菊は暖かい地方では育ちにくいそうだが、実際そう思う。きれいに咲きそうになると、葉が枯れてきたり、花がしゃっきりしなかったり。なぜか、供花として蝦夷菊がうえられていた。蝦夷菊のとりどりの色が涅槃を想像させるのかとも思う。

★井戸水に活けし蝦夷菊色五色/高橋正子

 エゾギク(蝦夷菊、学名:Callistephus chinensis)は、キク科の園芸植物である。かつてはシオン属 Aster に分類されていたため、一般にアスターと呼ばれているが、現在では1種だけでエゾギク属 Callistephus に分類される。中国北部原産の半耐寒性一年草で、草丈は30-100cmに達する。茎は直立し、葉は柄があり、長楕円形で互生、茎・葉共に白い毛が生えている。花は花径3cmくらいの小輪から10cmを超える大輪まであり、頭花は白・ピンク・赤・藍色などがあり、中心の黄色と美しいコントラストをなす物も多い。花の形には、一重咲きと八重咲き、重ねの厚いぽんぽん咲きがあり、管弁のものもある。日本では江戸時代から改良が進み、日本のエゾギクは欧米でも非常に評価されている。切り花、特に佛花用として栽培されている。中部地方、東北地方、北海道など寒い地方では割合よく育つが、暖地では病気が出やすく栽培しにくい。また、連作障害を起こしやすいので、エゾギクを5年ほど植えていない土地に植える必要がある。花言葉は、同感、追想、信じる心。花占いで恋の行方を占っていたことから、「信ずる心」という花言葉が生まれたとされている。江戸時代には日本へ伝わっていたとされ、当時鹿児島県である薩摩で広く栽培されていた。その地名に因んで薩摩菊とも言われる。

◇生活する花たち「桔梗・ヤブミョウガ・むくげ」(東京・新宿御苑)


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