5月23日(木)

★燕子花を抱え一束の湿り  正子
燕子花の数本を抱え、その一束の湿りを通して、水辺に群れ咲く燕子花のみずみずしさ、剣状の葉とともにある花のありようが伝わります。美しい季節の花を手にして、快い湿りを感じます。(藤田洋子)

○今日の俳句
若葉山抜けて琵琶湖の真青なる/多田有花
若葉の山を越えて見えるもは、真っ青に水を湛えた琵琶湖である。初夏の琵琶湖の真青さは、爽快に目に映るだろう。また、若葉の色と湖の青とが美しい色合いである。(高橋正子)

○白金台の自然教育園に吟行に出かけた。朝10時に家を出て帰宅は午後2時前。今日の見どころは、山あじさい。こあじさいという薄むらさきに煙るような花もあった。しもつけの青い花と思えばいいか。それに、こあじさいの手前の沼にあさざの黄色い花が一つだけ咲いていた。園路には、飯桐の雄花がたくさん落ちていた。雌花は木に残って秋に赤い実となるようだ。山ぼうしが、見事に花を咲かせていた。こんなに花の多い山ぼうしは、初めてだ。園内は、野茨も杜若もあやめも終わり、目立つ花というのは、黄菖蒲か。もう、野竹の花が二本咲いていた。森の匂いがなんともすがすがしい。もう、花は終わり、森の木々の季節かと思っていると、目の前の木にこげらが止まった。目を疑ったが、垂直に止まるところ、羽の色、木をつつく仕草を見れば、こげらに違いない。思ったより小さい。昔、愛鳥週間、バードウィークとよくいったが、今ちょうどそんな季節になったのかと思った。帰り間際、展示室で休憩がてら、鳥の剥製を見たり、ボタンを押して鳴き声を聞いた。ごげらの鳴き声はなかった。ジージーを鳴いていたように思う。園を出て、白金台の駅に行く途中の小さい八百屋でトマトを一盛り買った。露地物らしく、トマトの青臭い匂いが新鮮だ。

★浮葉抜けたった一花のあさざの黄    高橋正子
★山あじさい色は青とも虹色とも     高橋正子
★杜若名残の花は草に浮き        高橋正子
★飯桐のあまたの落花道濡れて      高橋正子
★わが前の木に来るこげらバードウィーク 高橋正子

○釣鐘草

[釣鐘草/横浜日吉本町]

★釣鐘草道をなじみし土着の子/貞弘 衛
★どの花も青い光よ釣鐘草/高橋正子
★畳屋が育てて愛す釣鐘草/高橋正子

○フェアリーのベルを鳴らせよ釣鐘草(ブログ「二〇世紀ひみつ基地」より)
 盛夏から晩夏にかけて、釣鐘形で薄青紫の可憐な花をつける、キキョウ科の多年草・ツリガネニンジン(釣鐘人参)、別名・ツリガネソウ(釣鐘草)。春先の若葉は山菜として、ゴマ和えや天ぷらで食され、細いニンジン状の根も食用にするほか、漢方では咳止め・去痰薬として使われる。ツリガネニンジンをトトキともいい、長野県の俗謡に「山でうまいはオケラにトトキ 里でうまいはウリナスビ 嫁に食わすも惜しゅうござる」とうたわれるほど珍重された山菜だった。オケラはキク科の多年草でこれも若葉を食べる。秋田県内での呼び名(方言)は、トドキ、トットキ、ヤマダイコン、ヌノバなど。
 妖精が宿るかのような愛らしいその花は詩人たちに愛され、宮沢賢治は「ブリューベル」青いベルと呼んだ。

あやしい鉄の隈取りや
数の苔から彩られ
また捕虜岩(ゼノリス)の浮彫と
石絨の神経を懸ける
この山巓の岩組を
雲がきれぎれ叫んで飛べば
露はひかってこぼれ
釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるえる
‥‥後略‥‥
           宮沢賢治『早池峰山嶺』より

風が吹いて草の露がバラバラとこぼれます。つりがねそうが朝の鐘を、
「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と鳴らしています。
                    宮沢賢治『貝の火』より

釣鐘草 野口雨情

小さい蜂が 来てたたく
釣鐘草の 釣鐘よ
子供が見てても 来てたたく
大人が見てても 来てたたく
釣鐘草の 釣鐘よ
静かに咲いてる 釣鐘よ

   『青い眼の人形』より

風の子供 竹久夢二

風の子供が 山へ出て
釣鐘草をふきました
釣鐘草は目をさまし
ちんから ころりと 鳴きだすと
薄(すすき)も桔梗も刈萱(かるかや)も
みんな夢からさめました
‥‥後略‥‥
      『日本童謡集』より

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)


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