曇り
花冷えの水の旨きをごくごくと 正子
畳拭く花にひらきし六畳間 正子
●日曜日。床に就いたのは今朝の3時前。リルケが晩年なぜ母語でないフランス語で詩を書いたのか、ネット上の論文を探していて、気づいたらそんな時間になっていた。戸口日出夫先生の名前の論文がでてきた。信之先生が「戸口さん」と呼んでいた方だろうと思うが。リルケを研究されていたのだと知る。
●『リルケ詩集』(富士川英郎訳/新潮社)の「オルフォイスへのソネット」を読んでいて、「呼吸よ、目に見えない詩よ」に出会った。この『リルケ詩集』には、「オルフォイスへのソネット」(55篇)から11篇が選ばれているが、その9番目の詩。
リルケも、そう思ったのかと、古い知己に出会った気持になった。私も捨てた人間ではないと、ひそかに喜んだ。私の考えとぴったりで、リルケの言うことに全面的に共感する。結局、「詩は呼吸である」と私は結論付けている。ひいては、文体は呼吸なのである。17字音の俳句の文体の面白さを、俳壇の評価と関係なく、私はひとり楽しんでいる。短い俳句のなかでさえ文体があるのだ。俳句は5-7-5に音楽性があると思っているかもしれないが、もっと細かく5の中の、7の中の音節が作る音楽がある。音律と言っていいだろうが、そこに詩人の品性や本性がよく現れるのだ。
ここで「オルフォイス」という言葉に馴染がない方に説明を加えると、「オルフォイスOrpheus」は、ふつう「オルフェウス」と言われていて、それのドイツ語読みである。「オルフォイス」はギリシャ神話に登場する伝説的な詩人で音楽家。アポロンから贈られたリラ(竪琴)を弾き、その美しい音楽で自然界のあらゆるものを魅了したと言われる。音楽や芸術の象徴と言える。「オルフォイスへ捧げる詩(ここではソネット形式の)」の意味合いなので、音楽や詩についての書かれたリルケの詩(ソネット)と判断してよい。
「呼吸よ、眼に見えない詩よ」
R. M. リルケ
呼吸よ、眼に見えない詩よ
絶えず私自身の存在と引換えに
純粋に交換された世界空間 その中で
私がリズミカルに生まれ出る対重よ
ただ一つの波よ 私は
それが集まって海となったもの
あらゆる可能な海のうちで最も倹ましい海よ!
空間の獲得よ
(後略)
Wiping tatami mats ―
six-tatami room
opens to the cherry blossoms.
― Masako
I was reading the Poetry "The Sonnets to Orpheus (Die Sonnete an Orpheus) " by R.M.Rilke in Japanese traslarion. I came across "Breathing, you invisible poem! (Atmen, du unsichtbares Gedicht!) ". I was really surprised and delighted to read this poem. What the poem intends is the same as what I've been thinking of 'Breathing is poetry itself, and poetry is breathing itself. And style of writing is breathing.'
Ich habe die Gedichtsammlung ,Die Sonette an Orpheus‘ von R.M. Rilke in der japanischen Übersetzung gelesen. Dabei bin ich auf ‚Atmen, du unsichtbares Gedicht!‘ gestoßen. Ich war wirklich überrascht und erfreut, dieses Gedicht zu lesen. Was das Gedicht beabsichtigt, ist genau das, was ich selbst gedacht habe: Das Atmen ist Poesie selbst, und Poesie ist das Atmen selbst. Und der Schreibstil ist das Atmen."
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