琵琶湖
平らかな湖水に向きて冬はじめ/高橋正子
お天気に恵まれた湖北吟行での情景と思われます。波一つない平らかな湖の広がりに心も澄みわたるようです。満々と水を湛えた湖面の輝かしさに、心明るく穏やかな冬のはじまりです。(藤田洋子)
○今日の俳句
しんとある鵜船の河畔冬初め/藤田洋子
「しんと」の擬態語がこの句のよさ。鵜飼の季節を終えた鵜舟が置かれている河畔の風景に、初冬に対する作者の気持ちが良く出ている。(高橋正子)
○立冬(冬立つ・冬に入る・冬来る/ふゆきたる・今朝の冬)
★百姓に花瓶売りけり今朝の冬 蕪村
★菊の香や月夜ながらに冬に入る 子規
★蜂の巣のこはれて落ちぬ今朝の冬 鬼城
★立冬やとも枯れしたる藪からし 亞浪
★冬来たる眼みひらきて思ふこと 鷹女
★妻子居て味噌汁うまし今朝の冬/高橋信之
★立冬の洗濯機なりよく回る/高橋正子
○神代植物公園
11月6日、調布市にある神代植物公園へ初めて出かけた。東京都の植物園では、三番目に人が多く訪れる植物園とのこと。三鷹駅からも、調布市のつつじが丘駅からもほぼ二十分ほどバスに乗ったところにあり、そばに深大寺がある。この日の見ごろは秋の薔薇とダリアであり、入り口では、盆栽仕立ての菊花展があった。入り口右手にダリア園があり、園の中央の広い場所に薔薇園がある。初夏の薔薇と違って、やはり、華やかさには欠けるが澄んだ花の色と、咲きほどける様子が美しい。中央に噴水が幾本もあがり、カリヨンの音色が響いている。薔薇園の向こうに大温室がある。水生植物園は、また別のところにある。薔薇園を楽しんだあと、武蔵野の面影の残る雑木林を抜けて、椿・さざんか園へ行く。椿は蕾が固い。山茶花は散ったのもあれば、見ごろのもある。紅葉には少し早い植物園であった。芝生広場には、パンパスグラが白い穂を風にそよがせていた。売店で軽食とアイスクリームを買い昼食とした。
神代植物園へは自宅からグリーンラインで中山まで行き、JR横浜線に乗り換え八王子まで。八王子から中央線に乗って三鷹駅下車。そこより調布駅北口行のバスにのり、植物園前で下車。帰りは植物園前から京王線のつつじが丘駅までバスでゆき、そこより、京王線の橋本駅行きにのり、京王稲田堤で下車。徒歩五分ほどで南武線稲田堤駅まで。そこから武蔵小杉駅まで乗り、東横線に乗り換えて日吉、それからグリーンラインで日吉本町という行程をとった。朝九時半に出かけ、四時前の帰宅となった。
稲田堤の小さいの和菓子店をのぞき、白小豆の羊羹と、すはまを買った。白小豆は初めて見たが確かに小豆の白いものである。鬼饅頭(蒸しパンにサツマイモの角切りをのせたもの)も売っていて、この店を開いて三年ということであった。どうも、定年退職後の商売であるようだった。
JR横浜線で八王子へ、
★空晴れて穭田の生きいきとみどり/高橋信之
神代植物園三句
★山茶花の気ままに風に吹かれいる/〃
★秋の陽がさんさん白ばらに吾に/〃
★紫の秋ばら今日を静かに咲く/〃
★秋の陽の射し来てダリアの黄が鮮烈/〃
行き
★秋空の車窓はすでに武蔵野へ/高橋正子
★秋の野を下る電車にある速さ/〃
植物園
★カリヨンの響き渡れる秋の薔薇/高橋正子
★月光のうすむらさきの秋の薔薇
★ケネディを称えかなしも白き薔薇
★リンカンに捧ぐは紅濃き秋の薔薇
★秋日差しうすくれないの薔薇咲かす
★日の光あやに畳みて露の薔薇
★秋の日を眩しみ歩む薔薇の園
★武蔵野の林に入れば薄紅葉
帰り
★行けど知らぬ秋の武蔵野駅いくつ
★多摩川を越えて懐かし秋野原
★山茶花のここを書斎と定めたり 子規
★山茶花や日南に氷る手水桶 碧梧桐
★霜を掃き山茶花を掃くばかりかな 虚子
★山茶花や生れて十日の仔牛立つ 秋櫻子
★山茶花の樹々が真黄に母葬る 多佳子
山茶花が咲き始めると、もう、冬が近いんだぞと思う。冬物の服を早めに出したり、炬燵は、ストーブは、と冬支度が始まる。焚火の煙がうすうすと上って匂ってきたりすると、暖かいところが恋しくなる。椿と山茶花の違いはとよく効かれるが、山茶花は花弁が一枚一枚分かれて、咲き終わると散る。赤や白だけでなく、ほんのりピンクがかったものから、また八重のものまでいろんな花があるようだ。椿ほど改まってなくて、親しみやすい花だ。山茶花の垣根からいい匂いがこぼれると、そこを通るのがうれしい。
★山茶花の一期一会の花と吾/高橋信之
★山茶花にこぼるる目白の声ばかり/高橋正子
サザンカ(山茶花、学名:Camellia sasanqua)は、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹で、秋の終わりから、冬にかけての寒い時期に、花を咲かせる。野生の個体の花の色は部分的に淡い桃色を交えた白であるのに対し、植栽される園芸品種の花の色は赤や、白や、ピンクなど様々である。童謡「たきび」(作詞:巽聖歌、作曲:渡辺茂)の歌詞に登場することでもよく知られる。漢字表記の山茶花は中国語でツバキ類一般を指す山茶に由来し、サザンカの名は山茶花の本来の読みである「サンサカ」が訛ったものといわれる。
日本では山口県、四国南部から九州中南部、南西諸島(屋久島から西表島)等に、日本国外では台湾、中国、インドネシアなどに分布する。なお、ツバキ科の植物は熱帯から亜熱帯に自生しており、ツバキ、サザンカ、チャは温帯に適応した珍しい種であり、日本は自生地としては北限である。サザンカには多くの栽培品種(園芸品種)があり、花の時期や花形などで3つの群に分けるのが一般的である。サザンカ群以外はツバキとの交雑である。
コメント
お礼
正子先生、今日の俳句に「冬初め」の句を取り上げていただきありがとうございました。
★平らかな湖水に向きて冬はじめ 正子
お天気に恵まれた湖北吟行での情景と思われます。波一つない平らかな湖の広がりに心も澄みわたるようです。満々と水を湛えた湖面の輝かしさに、心明るく穏やかな冬のはじまりです。