★芽麦まで遠き夕陽の差しいたり 正子
初冬のころに播かれた麦は今青い芽を出し少しずつ伸び始めています。この時季太陽は低く弱く、夕日は遥かに遠く感じられますが、それでも広い畑に春への希望を伝える如く柔らかな光を注いでいます。ミレーの絵などと一脈通じるような大景を思います。 (河野啓一)
○今日の俳句
作品を提げ行く冬の車椅子/河野啓一
「作品」がいい。一つの作品となった画か、書。それを自分で車椅子の膝に載せて、搬入しようとしている。作品は自分自身ともいえる。作品はそうでありたい。(高橋正子)
○藪柑子(やぶこうじ、十両)
[藪柑子/東京白金台・自然教育園]
★髪かくるやと薢にかざす藪柑子 杉風
★ぬれいろや色なる雪の藪柑子 白雄
★ちゝと鳴く鳥の行方や藪柑子 巌谷小波
★洗ひ場に湯気こもりけり藪柑子/長谷川櫂
★藪柑子やまめく庭の隅々に/長谷川かな女
★樹のうろの藪柑子にも実の一つ/飯田蛇笏
★かがみ見てさらに地のもの藪柑子/井沢正江
★曙の掃除の水捨つ藪柑子/高橋正子
万両・千両・百両・十両・一両の実は、何れも秋から冬に赤熟し、その赤い実も小粒です。そのため古来、これらの赤い実を付けた植物は、お正月の縁起物としてもてはやされてきました。
万両は、センリョウより沢山実が付くことから、 マンリョウの名前が付いたと云われる。園芸種では白や黄色の実を付けるものがあります。
千両は、本州中部以南から台湾、インドなど暖帯から熱帯に分布。山林の半日陰に自生する常緑小低木。花は黄緑色で小さい。 果実は球形で、赤く熟する。
百両は、江戸時代のタチバナは非常に高価で、 百両以下では手に入れることができないため、 「百両金」と呼ばれました。
十両は、ヤブコウジの名は近代になって付けられたが、 古くは赤い果実を山のミカンに見立てたヤマタチバナ(山橘) の名で良く知られていた。 それがヤブコウジ(藪柑子)になったという。 タチバナはコウジミカン(柑子)の古名。
一両は、常緑小低木。腋に鋭い長い刺がある葉の付け根から出ているトゲが蟻をも刺し通すという意味です。お正月のおめでたいときの飾ります。「千両、万両をお持ちでも、このアリドオシがないと「千両、万両、有り通し」に なりません。この機会にぜひ揃えてみたいです。
コメント
お礼
正子先生
「作品を提げ行く冬の車椅子」を今日の俳句にご紹介くださり、過分のご評を誠に有難うございます。昔の仲間で作品展をするからと誘われてのことでした。
鑑賞
★芽麦まで遠き夕陽の差しいたり 正子
初冬のころに播かれた麦は今青い芽を出し少しずつ伸び始めています。この時季太陽は低く弱く、夕日は遥かに遠く感じられますが、それでも広い畑に春への希望を伝える如く柔らかな光を注いでいます。ミレーの絵などと一脈通じるような大景を思います。