10月10日(木)

曇り、ときどき晴れ
 にんじんケーキが焼けたので
友訪ぬ葛と穂草の道を踏み       正子
  バッハを聞いて
身に入むに「人の望みのよろこびよ」  正子
夜寒さの床(ゆか)にリルケの本三冊   正子
●寒露がすぎて、すっかり晩秋らしくなった。人参ケーキを焼いた。新しいオーブンでケーキを焼くのは初めてなので、焦げ過ぎないようにするのに苦労したが、何とか、しっかり焼けた。人参ケーキはこれまで何本焼いたか数知れないのに、オーブンの機嫌をとるのは難しい。冷めたところで半分を晴美さんに持って行った。

●ここ寒暖差がひどくて、11月ではないか、と思うこともある。そろそろ花冠の編集に入らなければいけないかと思ったり。いや、もう少しあとでもいいのではと、思ったり。季節を読みとる感覚がどうにかなっている。
●「俳壇」11月号が届く。俳人の大井恒行さんが「俳壇時評」で「現代俳句協会は、俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会から離脱せよ」の文を書いていた。推進協議会ができた時の会長は有馬朗人先生だった。私などが言うのもどうかと承知しているが、「なんと馬鹿なことを」を思っていたので、大井恒行さんのような意見があることを嬉しく思った。俳句はゲーテが言うような「世界文学」になっている。一応、われわれは俳句を文学と考えている。こんなことを考えると、細部の意見はそれぞれ異なると思うが、世界遺産への登録は止めておくのがいい。
『世紀末ウィーン文化評論集』(ヘルマン・バール著/西村雅樹編訳/岩波文庫)の「日本展」のところを何気なく読んでいた。これはヘルマン・バールと言う評論家が「日本展」について書いたものを西村雅樹先生が訳されたもの。パリやウィーンでの万国博覧会に出展された日本の絵画や工芸品、果ては民具などを通して、19世紀末ヨーロッパで日本流のものが芸術家たちに大変関心を持たれ、根本的なところで影響を与えたたことを述べている。前にも読んでいたので、知識としてそうなのだと知っていた。しかし、どのくらい?どんな感じで?というのが実感としてわからなかった。それが久しぶりに本を開いてリアルにわかった気がした。

「日本展」にバールが書いてあることが実感でき、これはこの事を言っている、あれは、あのことだろうと繋がってきた。日本流のものの流行りはジャポニスムと呼ばれる。
なぜ実感できるようになったのかは、ここ涼しくなってからの、私の事を振り返ってみるとわかる。第一に。ネット上に公開された大学の論文のお陰と言えるのだ。ジャポニスムについて疑問に思ったことは、ネット上でそれに関して大学や国会図書館、情報研究所が公開している論文が読めたことが大きい。だれかが、考えてくれている。論文は7本読んだだけだが、ジャポニスムについてはゲルマにストの先生方の功績が大きいと思えた。同時に「リルケと俳句」についての論文もネットから印刷して読むうちに繋がるものもあった。多層的に理解できたと言える。
またヴァーチャル・ツアーのお陰もある。「モネのジヴェルニーの家」などが論文の実際を見せてくれた。「セザンヌとリルケ」の論文で、セザンヌの画が見たいと思えば、ネットを探せば、解説付きで見れた。クリムトの画も、北斎漫画も、富岳三十六景も見れた。
また、図書館の本は二、三十年前の本がほとんど。この古さが深いところで関連性を気づかせてくれるので役立った。「日本展」がよく読めるようになったのが、この秋のみのり。

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